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悪性黒色腫(皮膚)

悪性黒色腫(皮膚) 治療

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討されます。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類されます。

1)病期

病期はがんの厚さ、リンパ節や別の臓器への転移があるかどうかによって決まります。悪性黒色腫では、0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の5つの病期に分類されます。

表3 悪性黒色腫の病期分類
  がんの厚さ 潰瘍なし 潰瘍あり
がんは
原発巣のみ
0.8mm未満 ⅠA ⅠB
0.8mm以上
1mm以下
ⅠB ⅠB
1mmを超えて
いるが2mm
以下
ⅠB ⅡA
2mmを超えて
いるが4mm
以下
ⅡA ⅡB
4mmを超えている ⅡB ⅡC
がんの厚さに関わらず、
1個以上のリンパ節転移がある
がんの厚さやリンパ節転移に関わらず、
別の臓器へ転移している
0期:上皮内がん
UICC TNM Classification of Malignant Tumours, 8th Edn, Wiley-Blackwell:2017, 143-144より作成

2)治療の選択

悪性黒色腫は、病期に基づいて治療法が決まります。悪性黒色腫は全身どこの臓器にも転移します。進行した悪性黒色腫に対しては、外科治療のほか、薬物療法、および放射線治療などいろいろな手段を組み合わせた治療(集学的治療)が行われます。

図3は、悪性黒色腫に対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

図3 悪性黒色腫の治療の選択
図3 悪性黒色腫の治療の選択の図
※センチネルリンパ節生検:がんが最初に転移するリンパ節のことをセンチネルリンパ節と呼びます。ここに転移がなければ、その先のリンパ節には転移がないと推測されるため、まずはこのリンパ節の生検(細胞をとって調べること)を行います。
日本皮膚悪性腫瘍学会編「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第1版(2007年)」(金原出版),日本皮膚科学会編「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年)」、日本皮膚科学会雑誌;125(1),5-75より作成

治療は主に病期により決定されます。同じ病期でも、病気の進行具合や全身状態によって、治療が異なる場合があります。

(1)Ⅰ期の治療

初発部位の腫瘍辺縁より1cm程度離して広汎切除手術が行われます。しかし、指などの場合、切断手術になることもあり、また部位によっては植皮手術を行う場合もあります。

(2)Ⅱ期の治療

初発部位の腫瘍辺縁より1~2cm程度離して広汎切除手術を行い、しばしば植皮手術が行われます。また、センチネルリンパ節生検によってリンパ節転移の有無を確認し、転移がみられた場合にはリンパ節郭清かくせいが検討されます。

(3)Ⅲ期の治療

初発部位の腫瘍辺縁より1~2cm程度離して広汎切除手術を行い、所属リンパ節の郭清手術が行われます。皮膚転移や皮下転移に対しては大きめに切除したり、インターフェロンを注射したり、放射線治療を行ったりします。また、腫瘍の再発や転移を予防するためにインターフェロンによる治療が行われます。

(4)Ⅳ期の治療

病状により異なりますが、外科治療のほか、薬物療法および放射線治療などいろいろな手段を組み合わせた治療(集学的治療)が行われます。遠隔転移が単発で完全に切除できる場合は、転移であっても手術を行う場合があります。しかしながら、手術が可能な場合は少なく、一般に薬物療法が主体になります。皮膚転移や皮下転移に対してはⅢ期と同様な治療が行われ、手術や薬物療法が行われます。

2.手術(外科治療)

悪性黒色腫では、手術によってがんを切除する方法が優先されます。悪性黒色腫の場合、目に見える原発巣のみを切除しただけでは周囲にがんが再びあらわれる危険性があります。したがって、最初の手術で原発巣のふちから約1~2cm離して広範囲に切除するのが原則です。

一方、腫瘍が悪性のものであるか診断が確定されない場合には、腫瘍のみを切除したあと、病理医が組織について詳しく調べて診断を行うことがあります。診断が確定された場合は、広範囲に追加切除したほうがよいとされています。進行すると、原発巣の周囲に皮膚転移(衛星病巣)が数カ所発生することがありますが、その場合はさらに広く切除します。

手術による皮膚の傷が大きくて縫い寄せられない場合は、自分の皮膚の一部を移植する手術が行われることもあります。皮膚をとる場所は、主に太ももの付け根(鼠径そけい部)、耳の後ろ、太ももの前面や後面などです。

手術の際に、センチネルリンパ節(がんが最初に転移するリンパ節)生検を行うことがあります。センチネルリンパ節に転移が見つかった場合は、リンパ節の切除(リンパ節郭清)を行うことがあります。

リンパ節郭清した場合などに、手や足などがむくんだり、しびれが残ったりすることもあります。その対処法については医師や看護師に相談して上手に乗りきりましょう。

3.薬物療法

薬物療法は薬を注射や点滴または内服することにより、がん細胞を消滅させたり小さくしたりすることを目的として行います。現在では、従来用いられてきた細胞障害性抗がん剤に加えて、免疫チェックポイント阻害薬や、分子標的薬など、新たな選択の幅が広がっています。ただし、使用できる施設が限定されている薬もありますので、担当医にご相談ください。

1)免疫チェックポイント阻害薬(免疫療法)

免疫チェックポイント阻害薬とは、がん細胞が免疫から逃れようと免疫細胞にかけたブレーキを解除して、体内にもともとある免疫細胞を活用する作用のある薬です。手術ができない場合や再発した場合の悪性黒色腫に対して用いられています。悪性黒色腫に対して、ニボルマブ※1、ペムブロリズマブ※1※2、イピリムマブなどが用いられています。効果(がんの縮小)はおよそ10~40%に認められ、一度効果があると長く続くこともあります。肺炎や肝障害、下痢・大腸炎、皮膚障害、内分泌障害、神経・筋障害などの副作用が、治療が終了してから数週間から数カ月後に生じることもあるため注意が必要です。

※1:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年;金原出版)には、掲載されていません。
※2:承認されて間もない薬のため、副作用について特に慎重に検討がなされています。

2)分子標的治療薬

分子標的薬とは、正常細胞を傷つけないように、がん細胞の増殖に関わる分子を攻撃する薬です。BRAFと呼ばれる遺伝子の変異が悪性黒色腫の進行に関わっていることがわかり、腫瘍組織でBRAF遺伝子変異があると確認された場合に変異BRAFの働きを阻害するダブラフェニブ※1、トラメチニブ※1、ベムラフェニブなどが用いられています。T細胞の増殖、活性化によってがんを抑制することができると考えられています。期待できる効果(がんの縮小)は半数以上に認められますが、使い続けると薬が効きにくくなること(薬剤耐性)、ほかの皮膚がんができてしまうこと、皮膚障害、肝機能障害などの副作用に注意が必要です。今後、分子標的治療薬の併用療法などが期待されています。

※1:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年;金原出版)には、掲載されていません。

3)細胞障害性抗がん剤(化学療法)

内臓やリンパ節の転移巣の増大を抑えたり、縮小させたりすることを目的として行います。ダカルバジンなどが用いられることがあります。

細胞障害性抗がん剤はがん細胞以外の正常細胞にも影響を与えるため、いろいろな副作用を生じます。その症状や程度は抗がん剤の種類や量、個人差などによって異なります。一般的には、白血球減少、血小板減少、貧血、吐き気、嘔吐おうと、食欲不振、下痢、手足のしびれ、肝機能障害、腎機能障害、脱毛、倦怠感などです。細胞障害性抗がん剤を投与する場合は、このような副作用を軽減させるための処置が同時に行われます。

4)インターフェロン製剤

インターフェロンとは、ヒトがつくり出す生理活性物質で、一部のがんやウイルスの増殖を抑制する作用が認められています。悪性黒色腫では、原発巣切除後に、再発予防のためにインターフェロンをその切除部位周辺や皮下に注射することがあります。また、皮膚転移や皮下転移に直接注射を打つ方法も行われます。

インターフェロンの副作用として、発熱がありますが、これは解熱剤を投与することで下げることができます。また、頭痛、貧血、食欲不振や白血球減少、肝機能障害などが生じることもあります。

4.放射線治療

放射線治療には、高エネルギーのX線や電子線を照射してがん細胞を傷害し、がんを小さくする効果があります。

これまで、悪性黒色腫は放射線への感受性が低いと考えられてきましたが、悪性黒色腫が脳や全身へ遠隔転移した場合には、緩和医療として放射線治療を行うことで、転移や再発に伴う症状(痛みなど)を和らげる効果が報告されています。

また、脳転移に対しては全脳照射(脳全体を照射する方法)がよく行われていますが、転移個数が少なく、全身状態が良好な場合には、サイバーナイフやガンマナイフなどの定位放射線照射が勧められることがあります。

副作用として、放射線照射部に一致して皮膚炎を起こすことがありますが、かゆみ止めや痛み止めの薬の内服や軟こうの外用により症状は軽減し、照射終了後時間とともに軽快します。

陽子線や重粒子線といわれる特殊な放射線が効果を示すことがありますが、ごく限られた施設でしか行うことができませんので、このような治療を希望する場合は医師にご相談ください。

5.緩和ケア

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。患者さんのニーズに応じて幅広い対応をします。患者さん本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えるようにしましょう。

6.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。手術でがんを全部切除できたようにみえても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に移動している可能性があり、手術した時点では見つけられなくても、時間がたってから転移として見つかることがあります。転移が生じている場合には治療法を総合的に判断する必要があります。

再発とは、治療により目に見える大きさのがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。悪性黒色腫では病期が進むにつれて、転移・再発する可能性が高くなります。それぞれの患者さんで状態は異なりますので、患者さんの状況に応じて治療やその後のケアを決めていきます。再発した場合でも初期であれば高い治療効果が望めます。

更新・確認日:2017年07月24日 [ 履歴 ]
履歴
2017年07月24日 「1.病期と治療の選択」と「3.薬物治療」を更新しました。4タブ形式に変更しました。
2016年03月24日 タブ形式への移行と、「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年)」「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年)」より、内容の更新をしました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
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