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軟部肉腫〈成人〉(なんぶにくしゅ〈せいじん〉)

更新・確認日:2019年04月12日 [ 履歴 ]
履歴
2019年04月12日 関連情報「希少がん情報公開専門施設 診療実績データ一覧 疾患名:四肢軟部肉腫」を追記しました。
2016年02月22日 タブ形式への移行と、日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・軟部腫瘍診療ガイドライン策定委員会編「軟部腫瘍診療ガイドライン2012」「米国がん合同委員会(AJCC)による病期分類(第7版)」「国際対がん連合(UICC)による病期分類(第7版)」より、内容の更新をしました。
2007年10月30日 内容を更新しました。
1997年04月01日 掲載しました。

1.手術(外科治療)

手術は、軟部肉腫における治療の要です。腫瘍が局所にとどまっている場合、その局所の腫瘍を除去するために手術を行います。再発を最小限にするためにも、手術前に腫瘍の性質をよく調べ、切除する範囲を検討します。

腫瘍が徐々に成長するときに、腫瘍の周囲に反応層といわれる膜のようなものをつくります。一見、この膜は腫瘍とは関係ないように思われるかもしれませんが、この反応層の中にはすでに腫瘍細胞が入り込んでいます。したがって、反応層での切除は高い再発率を招きます。正しい切除法とは、反応層の外側で周囲の正常組織を十分含めて切除することです(広範切除)。また、リンパ節転移が疑われる場合にはリンパ節郭清(かくせい)を行うこともあります。

腫瘍を大きく切除したあとの再建技術は進歩してきており、別の部位の皮膚、筋肉、骨などを用いて、切除部位で細い血管を顕微鏡下でつないだり、静脈や人工血管を使って血管を移植したりすることにより、手足を残して機能を温存する患肢(かんし)温存術が広く行われるようになってきました。現在、多くの施設で患肢温存率は90%以上です。ただし、腫瘍が大きくなりすぎて血管や神経に浸潤している場合は、切離断術になることもあります。
【手術に伴う主な合併症について、もっと詳しく】
腫瘍の部位や広がりによっては、神経や手足を切断しなければならないことがあります。年齢や体の状態にもよりますが、比較的若くて体力のある患者さんの場合は、障害を受けていないほう(健側:けんそく)の機能の良好な手足と、義肢・補助具を使う訓練をすることによって、日常生活への支障を小さくすることができます。高齢者や体力の低下した患者さんの場合は、義肢や装具と松葉づえ歩行だけでなく、自立した日常生活を送るためにも、車いすの積極的な利用を考えるのもよいでしょう。

1)痛みやむくみが出る

神経や手足の切離断術では、強い痛みが生じたり、数カ月痛みが持続したりすることがあります。痛みには鎮痛剤が処方されます。また神経や血管を切除した手足や切断した部位に体液が滞り、むくんだり、義肢や装具が合わなくなったりすることもあります。むくみの軽減には、むくんだ手足や切断した手足の先を包帯で圧迫したり、やさしくマッサージしたりするのが効果的です。看護師に説明を受けて、包帯の巻き方を練習しましょう。

2)幻肢(げんし)・幻肢痛が起こることがある

治療によって手足や神経を切断した場合、手術後、失った手足があたかもあるような感覚を覚えることがあります。これを「幻肢」といいます。幻肢痛は、幻肢に伴う不快な感覚や痛みのことで、しびれた感じがする、ピリピリする、チクチクするなど、人によって 痛みの表現はさまざまです。幻肢および幻肢痛は、手術による創(きず)の痛みが治まるころに始まり、新しい体のイメージができ上がる1~2年で消えるといわれています。幻肢痛を感じたときは担当医に相談しましょう。必要に応じて鎮痛剤や安定剤が処方されます。

3)股関節が硬くなる(外転・屈曲拘縮)

長期間にわたる寝たきりの生活や、足を切断して十分なリハビリをしないまま車いす生活を続けると、切断した部位の関節が外側を向いて硬くなる外転拘縮(がいてんこうしゅく)や、曲がったまま固まる屈曲拘縮(くっきょくこうしゅく)を起こすことがあります。股関節がいったん外転・屈曲拘縮になってしまうと、起立歩行義肢を装着する際に支障を来すことがあるので予防が大切です。特に幼児や高齢者は股関節の外転・屈曲拘縮が起こりやすいので、担当医と相談しながら、関節を動かす訓練などで予防します。
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2.薬物療法

手術後の再発・転移の原因としては、いろいろな検査を行っても発見できないほどの小さな転移(微小転移)が残っていたことが考えられます。このような微小転移を治療するため、術前や術後に薬物療法を行うことがあります。また、肺転移巣やその他の転移巣の治療、あるいは手術ができない場合に、悪性腫瘍の進行をコントロールするために薬物療法を行うこともあります。

細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)は静脈からの点滴、あるいは内服(飲み薬)として投与され、血流に乗って全身に行き渡り、腫瘍細胞へ到達します(全身化学療法)。通常、抗がん剤は1種類投与されますが、場合によっては複数の抗がん剤を併用することもあります(多剤併用療法)。副作用には、吐き気、嘔吐(おうと)、食欲不振、脱毛などがありますが、症状を軽減する薬剤など、さまざまな支持療法が行われています。

3.放射線治療

腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍を小さくするために行います。しかし軟部肉腫には、放射線治療が比較的効きにくいものが多く、放射線治療が第一選択になることはほとんどありません。補助療法として、手術後の再発を減らす目的で、腫瘍を切除したあとに放射線治療を行うことがあります。また、手術ができない場合や、手術前に腫瘍をできるだけ小さくして切除しやすくする場合や、手術後に腫瘍の取り残しが考えられる場合などに行うこともあります。また対症療法として、疼痛(とうつう)を緩和するために行うことがあります。

副作用として、皮膚、関節、骨の障害が照射した場所に起こることがあります。

4.その他の治療

軟部肉腫に対する免疫療法についての報告はさまざまありますが、まだ効果は明らかにされておらず、確立されたものはありません。臨床試験については「6.臨床試験」をご覧ください。

5.生活の質を重視した治療

悪性腫瘍自体の症状のほかに、痛み、倦怠(けんたい)感などのさまざまな身体的な症状や、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛を感じることもあるでしょう。時には、手術、化学療法、放射線治療が適応できない病状のときもあります。このような場合には、緩和ケアに専念することも1つの選択肢となります。

悪性腫瘍と診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、悪性腫瘍に伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげたり、患者さんとご家族が自分らしく過ごしたりするための緩和ケアが重要です。

緩和ケアは、悪性腫瘍が進行してからだけではなく、悪性腫瘍と診断されたときから必要に応じて行われるものです。緩和ケアでは、痛みや吐き気、食欲不振、だるさなど体の症状だけに限らず、気分の落ち込みや孤独感など心のつらさを軽くすること、また、自分らしい生活を送ることができるようにすることなど、患者さんのニーズに応じて幅広い対応をします。

そのためにも、治療や療養生活について不安なこと、わからないことなど、ご自身の思いを積極的に担当医に伝えましょう。十分に話し、納得した上で治療を受けることが大切です。

痛みが強いときには、痛みの原因によって、医療用麻薬を含めた痛み止めを使ったり、痛みの原因となっている悪性腫瘍のある場所に対して放射線治療を行ったりする対症療法により、つらさを和らげることもできます。

痛みの治療については、「がんの療養と緩和ケア-4.がんの痛みと緩和ケア」もご参照ください。

6.臨床試験

悪性腫瘍の治療は治療技術の進歩とともに変わっていきますが、その時点で得られている科学的な根拠から、最もよいと考えられる治療を標準治療と呼びます。よりよい治療を目指して、日々新しい治療方法を研究・開発し、それらの新しい治療の有用性を検証するのが臨床試験です。

新しい治療の有用性を科学的に検証する臨床試験によって、がんの治療をよりよいものにしていこうとする努力が世界各地で行われています。臨床試験の結果から、現在標準とされている治療より、よい治療であることが証明されれば、新たな標準治療が生まれます。現在の標準治療は、これまでに行われた臨床試験の積み重ねの中から生まれてきた治療法です。現在行われている臨床試験で採用されている治療法は、将来の標準治療となりうる治療であり、治療の選択肢の1つであると言えます。

現在国内で行われている軟部肉腫の患者さんを対象とした臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す 軟部肉腫」で、開発の段階別に分類された情報を閲覧することができます。
【参考文献】
  • 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・軟部腫瘍診療ガイドライン策定委員会編:軟部腫瘍診療ガイドライン2012;南江堂
  • Edge, S. B., Byrd, D. R., Compton, C. C., et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual, 7th ed., 2010; 291-6, Springer, New York.
  • Sobin, L. H., Gospodarowicz, M. K., Wittekind, Ch., eds.: International Union Against Cancer, "TNM Classification of Malignant Tumours", 7th ed., 2010; 157-61, WILEY-BLACKWELL, Inc., New York.
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