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有棘細胞がん

有棘細胞がん 治療

1.病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてStage(ステージ)とも言います。説明などでは、「ステージ」という言葉が使われることが多いかもしれません。

皮膚がん(悪性黒色腫を除く)の病期は、以下のように0期からⅣ期までの5つの時期に分けられます(UICC第7版2007年による)。

表1 有棘細胞がんの病期
0期 悪性化した細胞(がん細胞)は出現しているものの表皮の中にとどまっている。
この時期を表皮内がんと呼ぶが、これはがんの一歩手前の状態。
本物のがんではない。
Ⅰ期 腫瘍の大きさが2cm以下で、真皮だけ、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。
Ⅱ期 腫瘍の大きさは2cmを超えているが、真皮、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。
Ⅲ期 腫瘍の大きさにかかわらず、腫瘍の深さが皮下組織を越えて、さらに深い筋肉、軟骨、骨などにおよんでいる。
または腫瘍の大きさにかかわらず、所属リンパ節と呼ばれる首、わきの下、太もものつけ根のリンパ節に転移がある。
(注:同時にいくつもの腫瘍が多発している場合は、その中のもっとも進行した状態のものを代表と考えて病期分類を行う。)
Ⅳ期 最大径が6cm以上のリンパ節転移がある。
または所属リンパ節を越えて遠隔転移をしている。
日本皮膚悪性腫瘍学会編「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版」(金原出版)より作成

2.臨床病期による治療

有棘細胞がんは、病期に基づいて治療法が決まります。次に示すものは、有棘細胞がんの病期と治療方法の関係を大まかに示した図です。

図3 有棘細胞がんの臨床病期と治療
図3 有棘細胞がんの臨床病期と治療の図
日本皮膚悪性腫瘍学会編「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第1版」(金原出版)より作成

3.病期(ステージ)別治療

治療は主に病期により決定されます。同じ病期でも、病気の進行具合や全身状態によって、治療が異なる場合があります。

また、有棘細胞がんの再発リスクは、部位や大きさ、その他の臨床所見から、低リスク群と高リスク群に分類されます。手術の際には、リスクに応じて切除範囲が考慮されます。

0期

腫瘍の辺縁から5mm離して、深部は腫瘍が露出しない程度に皮下脂肪組織を含めて切除します。凍結療法や放射線治療など、手術以外の治療法を選択できる場合もあります。

Ⅰ期

腫瘍の辺縁から6mm(低リスクの場合には4mm)以上離し、表皮、真皮、皮下脂肪組織を腫瘍とともに切除します。

Ⅱ期

腫瘍の辺縁から6mm(低リスクの場合には4mm)以上離し、表皮、真皮、皮下脂肪組織を腫瘍とともに切除します。一般に腫瘍が大きくなると、浸潤しんじゅんの深いものもあり、この場合には、皮下脂肪組織と筋肉の境界部にある筋膜という薄い膜も切除します。化学療法や放射線治療を併用することがあります。

Ⅲ期

腫瘍の辺縁から6mm(低リスクの場合には4mm)以上離して切除します。腫瘍は皮膚を越えて浸潤していますので、筋肉を含めて切除したり、骨を削ったり、ときには患肢かんしの切断術が必要になります。また、リンパ節に転移がある場合は、所属リンパ節郭清と呼ばれる手術方法によって、リンパ節を切除します。Ⅲ期もⅡ期と同様に化学療法や放射線治療を併用することがあります。

Ⅳ期

薬物療法や放射線治療が中心となり、これに手術も組み合わせる集学的治療を行います。

4.手術(外科治療)

1)手術について

有棘細胞がんの治療では、可能な場合にはまず手術が選択されます。腫瘍そのものだけを切除しても、再発や転移を起こす可能性があるので、腫瘍の周りの正常に見えるところを含めて、幅も深さも余裕をもって切除する必要があります。手術によって皮膚の欠損が大きくなった場合には、植皮術をはじめ、形成外科的な方法で修復を行います。

2)手術(外科治療)に伴う主な合併症と対策

Ⅰ期、Ⅱ期で行われる手術は体の表面に近い部分の切除ですので、通常は術後大きな機能障害は起こりません。手術によってできた傷跡そのものや、腫瘍を切除したために起こる変形などの美容的な面も形成外科的な技術の進歩によって、かなりきれいに治るようになってきました。
手足の指や、上肢じょうし下肢かしの切断手術を受けた場合は、術後の機能訓練が必要です。上肢、下肢の場合は、切除してなくなったはずの部分に痛みを感じること(幻肢痛)がありますが、時間とともに薄らいでいきます。また、わきの下や太もものつけ根のリンパ節郭清を受けた場合は、手足がむくんだり、しびれたりすることがあります。首のリンパ節郭清を受けた場合には、肩の張りやこりが続いたり、一時的に顔面神経が麻痺まひすることがあります。これらは多くの場合、時間とともに軽くなり、回復していきます。

5.凍結療法

液体窒素(-196℃)を使って、がん組織内の温度が-20~-50℃になるように冷やし、がん細胞を凍結壊死とうけつえしさせる方法です。浸潤しんじゅんの浅いがんはこの方法で治療が可能です。凍結療法は治療時や治療後の体への影響の少ない方法なので、高齢の方や持病のために体の具合の悪い方にも適した治療法です。

6.放射線治療

1)放射線治療について

有棘細胞がんは皮膚がんの中でも放射線治療がよく効くものの1つです。
発症部位や内科的理由から、手術ができなかった有棘細胞がんに対しても、治癒を目指して放射線で治療を行うことがあります。
また、手術を行った場合でも、再発の可能性が高いと考えられる場合には、術後に放射線治療を行うことがあります。
放射線治療にはいくつかの方法がありますが、この場合、X線や電子線を専用の機械を使って体の外側から照射する方法が一般的です。通常1回の照射は短時間で終わるため、放射線治療は通院しながら受けることも可能です。
また、がんが進んだ場合にも、痛みなどの症状を緩和し、生活の質を保つために放射線治療が行われることがあります。

2)放射線治療の副作用

放射線を照射する部位によって副作用は異なります。一般に、放射線を照射した部位の皮膚が一種のやけどの状態になりますので、皮膚の発赤、水疱、びらん、潰瘍、かゆみ、色素沈着や関節の拘縮こうしゅく(関節が動きにくくなること)、手足のむくみなどが起こることがあります。

7.薬物療法(化学療法)

1)薬物療法について

手術や放射線治療は局所療法といって、体の一部分を狙って悪いところを治そうという治療ですが、ある程度がんが進行している場合には、全身療法である細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)が治療の中心となります。また、有棘細胞がんは頭、顔、首など人目につく部位にできることが多いので、切除する部分が少なくてすむように、手術前に抗がん剤でがんをできるだけ小さくしておく治療を行う場合もあります。
また、がんが進んだ場合に、痛みなどの症状を緩和し、生活の質を保つために化学療法が行われることがあります。

有棘細胞がんで用いられる抗がん剤の代表的な例として、以下があげられます。

  • CA療法:シスプラチン(もしくは、カルボプラチン)+ドキソルビシン(もしくは、エピルビシン)
  • FP療法:フルオロウラシル+シスプラチン
  • 塩酸イリノテカン
  • PM療法:ペプロマイシン+マイトマイシン
  • PEP療法:ペプロマイシン

2)薬物療法の副作用

主な副作用は下痢、食欲不振、吐き気、嘔吐おうと、発熱、全身倦怠けんたい感、脱毛、呼吸機能障害、肝機能障害、腎機能障害、骨髄抑制などがあり多彩です。いずれも抗がん剤によって起こる一時的なものですが、回復が遅れた場合には、それぞれの副作用を軽くするような治療を行います。

8.集学的治療

ある程度進行した有棘細胞がんは、上の1~4のうちから1つを選んで治療を行うのではなく、これらのすべてをうまく組み合わせてもっとも効果があがるような治療を行います。これを集学的治療と言います。

9.転移

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで成長したものをいいます。がんを手術で全部切除できたように見えても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に移動している可能性があり、手術した時点では見つけられなくても、時間がたってから転移として見つかることがあります。有棘細胞がんの術後の転移はリンパ節転移を経て起きることが主で、その出現は、術後数年のうちにみられることが多いです。そのため、所属リンパ節腫大の有無について、定期的な経過観察が行われます。

10.再発

再発とは、治療により目に見える大きさのがんがなくなったあと、再びがんが出現することを言います。再発と言ってもそれぞれの患者さんで状態は異なります。転移が生じている場合には治療法も総合的に判断する必要があります。患者さんの状況に応じて治療やその後のケアを決めていきます。

11.生活の質を重視した治療

近年、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)の改善を目的として、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげたり、患者さんとご家族が自分らしく過ごしたりするための緩和ケアが浸透し始めています。

緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。痛みや吐き気、食欲不振、だるさなど体の症状や、気分の落ち込みや孤独感など心のつらさを軽くするため、また、自分らしい生活を送ることができるように、緩和ケアでは医学的な側面に限らず、幅広い対応をします。
そのためにも、治療や療養生活について不安なこと、わからないことなど、ご自身の思いを積極的に担当医に伝えましょう。十分に話し、納得した上で治療を受けることが大切です。

更新・確認日:2019年07月22日 [ 履歴 ]
履歴
2019年07月22日 新規に追加された用語へのリンクを追加しました。
2016年12月20日 タブ形式への移行と、「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年)」「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年)」より、内容の更新をしました。
2007年09月03日 更新しました。
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