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原発不明がん(げんぱつふめいがん)

更新・確認日:2015年04月07日 [ 履歴 ]
履歴
2015年04月07日 タブ形式への移行と、日本臨床腫瘍学会編「原発不明がん診療ガイドライン2010年版」より、内容の更新をしました。
2004年12月02日 内容を更新しました。
1996年06月24日 掲載しました。

1.病理診断による治療選択

がんは通常、胃がんなら胃がんに対する治療というように、原発臓器ごとに現時点での最良の治療(標準治療)が異なります。また、病期(がんの広がり)に応じて、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法(抗がん剤による化学療法やホルモン療法)、またそれらの組み合わせなど最適な治療法が選択されます。

ひとくくりに原発不明がんといってもいろいろながんの可能性があり、その中で強く疑われるがん種があれば、それに基づいた治療が行われます。特に、治療によって高い効果を見込むことができる予後良好ながんもあり、その機会を逃さないことは大切です。一方で、まれながんなどの理由で各治療同士を厳密に比べることができず、標準治療が定まっていないがんも多く、転移・進行している場合には治療の効果がほとんど期待できないものもあります。そのため、治療自体による負担を考えて、あえて治療をしないというのも選択肢の1つとなります。また別の選択肢として、よりよい治療を目指し、新しい治療の試みが行われる臨床試験または治験があります。臨床試験に参加する場合は、担当医や看護師の説明をよく聞き、十分納得した上で同意することが重要です。

原発不明がんでは、初めに出てきた症状や各検査結果を基に原発部位を予想し、病理検査、中でも組織像や免疫組織化学(それぞれの臓器に特異的な抗体を用いて、抗原となるがん組織を染色する方法)による原発巣の検索で十分に診断を行い、最も可能性の高い原発部位に準じた治療が行われます。原発部位の特定ができない場合には、薬物療法、緩和ケアをしながら経過観察を行います。臨床試験などへの参加については、体とがんの状態に応じて担当医とご相談ください。

図2に、原発不明がんの病理診断と大まかな治療の流れを示しました。担当医と治療方針について話し合う参考にしてください。

病理診断については「原発不明がん 検査・診断-1.検査 1)細胞診・組織診(病理検査)」、各治療については「原発不明がん 治療」をご覧ください。
図2 原発不明がんの病理診断と治療
図2 原発不明がんの病理診断と治療の図
日本臨床腫瘍学会編「原発不明がん診療ガイドライン2010年版」(メディカルレビュー社)より作成

1)腺がんと診断された場合

原発不明がんのうち、腺がんは約60~70%を占め、肺がん、膵臓(すいぞう)がん、胆道がん、腎細胞がんがその3分の2を占めます。

腺がんと診断され、原発部位特定の可能性が高そうな以下の(1)~(3)の場合には、それぞれに準じた治療が行われます。

一方で、腺がんと診断はされたものの、原発部位特定が難しい場合は標準治療とされるものはありません。また多くは病期がすでに進んで(がんが広がって)いるため、手術(外科治療)や放射線治療で治すことはできません。がんそのものに対する治療としては、抗がん剤を使ってがんの進行を抑える治療を行うのも選択肢の1つです。しかし、治療をしたとしても効果は限られるため、抗がん剤の副作用の負担を考えて、あえて治療せずに注意深く経過観察しながら緩和ケアを行うということも選択肢としてあり、体とがんの状態に応じて検討します。その緩和ケアの一環として手術(外科治療)や放射線治療を行うこともあります。また状況によっては臨床試験なども考えられます。

(1)わきの下のリンパ節(腋窩[えきか]リンパ節)の腫(は)れのみで診断された女性の腺がんの場合

詳しい病理検査や腫瘍マーカーの結果などによって、乳がんの可能性が最も高い場合は、多くは乳がんに準じた治療として、手術(外科治療)や放射線治療、抗がん剤による化学療法や、組織型によってはホルモン療法(抗エストロゲン療法)を行います(参照:「乳がん 治療」)。

(2)腹水の存在のみで診断された女性の腺がんの場合

消化器がん(胃がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がんなど)の転移で腹膜播種(はしゅ)の場合もありますが、腫瘍マーカーであるCA125が高値を示し、詳しい病理検査などで卵巣がんの可能性が最も高い場合、婦人科医による十分な検査や腹部骨盤CTなどで卵巣に異常がなくても、多くは卵巣がんに準じて手術(外科治療)や抗がん剤による化学療法を行います(参照:「卵巣がん 治療」)。

(3)骨への転移のみで診断された男性の腺がんの場合

腫瘍マーカーであるPSAが高値(特に10ng/mL以上)を示す場合には前立腺がんが強く疑われます。前立腺生検もしくは骨生検による詳しい病理検査で診断が得られれば、前立腺がんに従った標準治療を行いますが、診断が得られない場合でも前立腺がんに準じてホルモン療法(抗アンドロゲン療法)、化学療法を行うことがあります(参照:「前立腺がん 治療」)。

2)扁平(へんぺい)上皮がんと診断された場合

原発不明がんのうち、扁平上皮がんは約5%を占めます。扁平上皮がんと診断され、原発部位特定の可能性が高そうな以下の(1)(2)の場合には、それぞれに準じた治療が行われます。

一方で、扁平上皮がんと診断はされたものの、原発部位特定が難しい場合は、腺がんの場合と同様、抗がん剤による化学療法や緩和ケアをしながら経過観察、もしくは臨床試験などへの参加について、体とがんの状態に応じて検討します。

(1)首(頸部:けいぶ)のリンパ節の腫れのみで診断された場合

原発部位として頭頸部がん(耳鼻科領域のがん)の可能性が高い場合には、その標準治療に準じて、手術(頸部郭清術または腫れているリンパ節の摘出)や放射線治療を、それぞれ単独、もしくは手術の前後で放射線治療を行います。頸部郭清術については「喉頭がん 治療-2.手術(外科治療)」をご覧ください。リンパ節切除が難しい場合には、先に抗がん剤による化学療法を行って、がんが小さくなり切除できるようになるか判断したり、その見込みも乏しい場合には、放射線治療と抗がん剤による化学療法を併用したりすることもあります。

鎖骨上リンパ節の転移のみの場合は、原発部位の特定が困難です。

(2)鼠径(そけい)リンパ節の腫れのみで診断された場合

原発部位として、肛門から陰部のがん(皮膚がん、直腸肛門がん、泌尿器科がん、婦人科がん)が疑われます。その精査を十分にしてもなお原発部位特定ができない場合には、ごく限られた部位(局所)のがんを抑えるための治療として、手術(リンパ節郭清)または根治的な放射線治療を行います。

3)神経内分泌腫瘍・神経内分泌がんと診断された場合

原発不明がんのうち、神経内分泌腫瘍・神経内分泌がんは約3~4%を占めます。単発病変であれば手術(外科治療)や放射線治療などの局所療法が行われますが、病変が複数ある場合や多臓器に広がっている場合には、生物学的悪性度に応じて全身療法を行います。

(1)神経内分泌腫瘍(低悪性度)

かつてカルチノイドや膵島(すいとう)細胞腫瘍(islet cell tumor)といわれたものです。比較的ゆっくり進行することが多く、治療をするかどうか、そして治療の時期についても十分考えなければなりません。腫瘍がホルモンを過剰に分泌することによる症状がみられる場合には、症状を鎮めるためにソマトスタチンアナログの投与が有効です。

(2)神経内分泌細胞がん(高悪性度)

小細胞肺がんに近い経過をたどり、抗がん剤治療がよく効くため、小細胞肺がんに準じた化学療法を行います(参照:「肺がん 治療-3.薬物療法(抗がん剤治療)」。

4)低分化がん・未分化がんと診断された場合

原発不明がんのうち、低分化がん・未分化がんは約30%を占めます。そのうち特に精巣(睾丸:こうがん)腫瘍や卵巣胚細胞腫瘍が疑われる場合は、治療によって治る可能性もあるため、組織の免疫染色や腫瘍マーカーの検査など、診断に有用な検査をしっかり行うことが非常に重要です。

一方で、低分化がん・未分化がんと診断はされたものの、原発部位特定が難しい場合は、腺がんや扁平上皮がんの場合と同様、抗がん剤による化学療法、緩和ケアをしながら経過観察、もしくは臨床試験などへの参加について、体と病気の状態に応じて検討します。

●縦隔・後腹膜など体の中心線上に病変があり、低・未分化がんと診断された場合

腫瘍マーカーであるAFPやβ-hCGが高値を示し、男性の場合は50歳以下で睾丸の胚細胞性腫瘍に準じて、また女性の場合は卵巣の胚細胞性腫瘍に準じて、多剤併用化学療法が行われます。

2.自分に合った治療法を考える

治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではありません。自分の生活や人生において何を大切にするのか、自分で考えることが大切です。

まずは、病状を詳しく把握しましょう。わからないことは、担当医に何でも質問してみましょう。担当医とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療法であることを確認してください。

担当医と話すときの助けとして「わたしの療養手帳 自分に合った治療法は?」 もご参照ください。「患者必携 わたしの療養手帳」はさまざまな場合で必要なことを書きとめることができる手帳になっています。印刷もできますので、自分で記入してみて、わからないことや聞いてみたいことを整理してみましょう。

診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。最初にかかった担当医に何でも相談でき、治療方針に納得できれば言うことはありません。

担当医以外の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くこともできます。セカンドオピニオンを聞きたいときは、担当医に話してみましょう。多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解していますので、快く資料を作ってくれるでしょう。

セカンドオピニオンについては「セカンドオピニオン」もご参照ください。

担当医以外でも、看護師などほかの医療スタッフやがん相談支援センターのスタッフに相談することができます。あなたの抱えている問題点を整理し、一緒に考えてくれるでしょう。

がん相談支援センターについては「がん相談支援センターにご相談ください」もご参照ください。

【参考文献】
日本臨床腫瘍学会編:原発不明がん診療ガイドライン2010年版;メディカルレビュー社
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