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妊よう性 男性患者とその関係者の方へ

~がんの治療と生殖機能への影響について~
更新・確認日:2018年06月14日 [ 履歴 ]
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2018年06月14日 掲載しました。
がんの治療が生殖機能に影響し、妊よう性(妊娠するための力)が失われることがあります。こちらのページでは「1.がんの治療による妊よう性への影響」の項目で、治療ごとに妊よう性への影響について解説しています。また「2.がんの治療と妊よう性温存の選択について」の項目で、妊よう性が失われる可能性が高い場合、どのような選択があるのか、妊よう性温存の方法を含め紹介しています。妊よう性温存を検討する場合には「3.どこへ問い合わせをすればよいのか」の項目を参考にお問い合わせください。
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1.がんの治療による妊よう性への影響

生殖機能とは、性欲や精子の形成、勃起、射精などの機能を含めた、生殖に必要な機能のことをいいます。がんの治療が生殖機能に影響することによって男性不妊になる場合には、一時的な場合と永久的な場合があります。また、病状やがんの種類、どのような治療を行うかなどにより異なるため、担当医に十分な説明を受ける必要があります。

治療ごとの妊よう性への影響については、以下の1)手術による影響、2)放射線治療による影響、3)薬物療法による影響の項目で説明しています。

1)手術による影響

手術の範囲が生殖機能に関わる器官に及ぶことによって、妊よう性に影響があります。
表1 男性の手術による妊よう性への影響
両側の精巣を摘出した場合 精子を形成することができなくなります。
片側の精巣を摘出した場合 残った精巣が機能するため、妊よう性は保たれます。
膀胱や前立腺の摘出を行った場合 射精ができなくなります。
骨盤内の手術を行った場合 骨盤内臓(直腸、膀胱、前立腺)に分布している、勃起や射精に関わる神経を損傷することがあり、障害が生じることがあります。
脳の視床下部や下垂体にある腫瘍の摘出を行った場合 視床下部や下垂体は精子の形成を促すホルモンの分泌に関わっているため、精子の形成に障害が生じることがあります。

2)放射線治療による影響

腹部・骨盤部に照射が行われた場合は、分裂が盛んな精子のもととなる細胞が影響を受けます。照射される放射線の量が増えるほど精巣へのダメージは大きくなり、精子の形成ができなくなることがあります。

なお、放射線治療後の妊娠には、放射線による胎児への影響はありませんので、病状や他の治療の必要性を考慮の上、特に問題がなければ治療後の避妊は必要ありません。
表2 男性の放射線治療による妊よう性への影響
精巣へ照射した場合 精子の数を減らすため、精液の中に精子が少ない状態(乏精子症)や精子がない状態(無精子症)になることがあります。治療終了から数年後に精子形成が回復することもありますが、照射される放射線の量が多いと回復が難しくなります。
脳の視床下部や下垂体へ照射した場合 視床下部や下垂体は精子の形成を促すホルモンの分泌に関わっているため、精子の形成に障害が生じることがあります。

3)薬物療法による影響

薬剤の中には、精子や精巣の機能に大きく影響するものと、ほとんど影響しないものがあります。どのような薬剤を使うのか確認し、わからないことは担当医や薬剤師に聞いてみましょう。

なお、薬剤は胎児に影響を及ぼすため、治療中は避妊してください。また、治療終了後も薬剤によって一定期間避妊することが勧められています。
表3 男性の薬物療法による妊よう性への影響
細胞障害性抗がん剤を使用した場合 精子のもととなる細胞は分裂が盛んなため、薬剤の影響を受けやすく、精液の中に精子がない状態(無精子症)になることがあります。治療終了から数年後に精子形成が回復することがあります。
細胞障害性抗がん剤のアルキル化剤や白金製剤を使用した場合 精子のもととなる細胞を極度に減らすため、精子形成の回復は難しくなります。使用量が増えるほど精巣へのダメージは大きくなり、精子のもととなる細胞がすべてなくなってしまうことがあります。代表的な薬剤は、アルキル化剤のシクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファンやプロカルバジン、白金製剤のシスプラチンです。
新しい分子標的薬を使用した場合 生殖機能や胎児への影響については、まだ十分なデータがありません。
内分泌療法薬を使用した場合 男性ホルモンを抑制するため、性欲低下とともに精子形成に障害が生じます。
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2.がんの治療と妊よう性温存の選択について

妊よう性温存とは、「妊娠するための力を保つこと」です。がんそのものや、がんの治療によって、生殖機能にどのような影響があるのか説明を受けましょう。その上で、妊よう性温存が可能なのか、安全性や有効性についてもよく聞いて、患者とご家族やパートナーの方も含め慎重に検討することが大切です。また、患者が小児である場合には、親の同意とともに患者本人の同意も得ることが必要ですので、担当医から年齢に応じた説明をしてもらいましょう。

がんの治療を行う際に、妊よう性を温存しつつ治療を行うことがあります。例えば、手術の際に勃起や射精に関わる神経を残すといったことがあり、行う際にはがんの治療に影響がないか十分に検討します。

また、精子の凍結保存は、一般の不妊症患者に対する生殖補助医療として、安全性や有効性で確立した手法になっており、がん患者に対しても使われるようになってきました。ただし、保険適用ではありませんので、精子凍結保存や保管に関わる費用は全額自己負担になり、受診する医療機関によっても異なります。

以下で「精子凍結保存」についてまとめています。

・精子凍結保存

思春期以降では確立された妊よう性温存の方法です。できるだけ、がんの治療開始前に行います。精子の採取はマスターベーションによる精液採取が一般的です。凍結した精子は、顕微鏡下で卵子に注入する顕微授精を行うことで、出産に至る確率が良好であるとされています。

一方で、がんの治療開始前であっても、もともと精子の数が少ない場合があります。その場合には、通常の方法では精子凍結保存はできない可能性があります。また、思春期前の男児の場合で確立された妊よう性温存の方法はありません。

そのような場合には、精巣内にある精子を採取する方法もあります(精巣内精子採取術)。ただし、精巣内精子採取術が可能な施設は限られているため、男性不妊を専門としている生殖専門医に相談する必要があります。

3.どこへ問い合わせをすればよいのか

妊よう性温存について検討する際には、がんの専門医である担当医だけでなく、生殖医療を専門とする医師(泌尿器科または産婦人科医)とも相談しながら検討していくことが必要です。がんの専門医である担当医が、生殖医療についても熟知しているとは限りません。まずは担当医に相談し、必要に応じて生殖医療専門医を紹介してもらいましょう。

4.参考文献

  • 日本癌治療学会.小児、思春期・若年がん患者の妊よう性温存に関する診療ガイドライン2017年版,金原出版
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