1−2.腎芽腫(ウィルムス腫瘍)とは

小児の腎臓内にできる腫瘍の約70%は胎生期の後腎芽こうじんが細胞由来の腎芽腫あるいはウィルムス腫瘍と呼ばれる悪性腫瘍です。腎芽腫の約半数は3歳までに発症します。米国では年間約500例が診断されていますが、日本における発生頻度は低く、年間70〜100例程度と推測されています。

腎芽腫の大半は、治療によく反応する予後の良いがんですが、治療の効果があらわれにくいものもあります。また腎臓には、腎芽腫のほかに、腎明細胞肉腫、腎ラブドイド腫瘍などと呼ばれる腫瘍も生じます。このほか、比較的よくみられる腎腫瘍として先天性間葉芽腎腫かんようがじんしゅがあります。これは乳児期早期に多くみられ、ほとんどが手術による切除のみで治ってしまう腫瘍です。

腎芽腫は、腎周囲のリンパ節、腎門部(腎臓の中央内側のくぼみ部分)への直接浸潤しんじゅんや、腫瘍の破裂などにより腫瘍細胞が腹腔内に漏れ出して腹膜播種はしゅを来すこともあります。さらに遠隔転移として、肺、肝臓、まれですが骨や脳にも転移します。

そのほか、腫瘍が腎静脈や下大静脈内に進展し、腫瘍血栓(腫瘍組織を中心とした血のかたまり)を作ることがあります。

数は少ないですが、小児でも成人型の腎細胞がんがあり、10歳以上に多く発生します。

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