3−4−2 手術の合併症

手術の方法や頸部郭清術の範囲によって異なります。

(1)喉頭温存手術の後遺症

早期の場合は、切り取る範囲が少ないため声への影響はわずかですが、広い範囲を切り取る場合やがんの部位によっては、声が出にくくなることもあります。また、喉頭を部分的に切除したことにより、喉頭の大きさが小さくなり、動きが悪くなることなどにより、飲食物が食道ではなく気管に入ってしまう誤嚥を起こしやすくなります。そのため、手術の前後の早期から、専門知識をもった言語聴覚士や看護師などの指導のもと、飲み込みのためのリハビリテーションを行うことが勧められています。

(2)喉頭全摘出術の後遺症

喉頭をすべて取り除くため、手術直後は全く声を出すことができなくなります。そのため、発声法(食道発声、シャント発声など)の習得や電気式人工喉頭(発声を補助する器具)を使用した代用音声のリハビリテーションを行います。

また、食道と気管が完全に分かれるため、誤嚥の心配はありません。ただし、小腸の一部を利用して食道を再建する「遊離空腸移植」をした場合は、移植部分で食べたものが停滞したり、つなぎ合わせた部分が狭窄(細く狭くなること)したりして、飲み込みにくい、食べたものが逆流するといった症状があらわれることがあります。その場合は狭窄した部分を広げる手術を行ったり、食事の内容や食べ方を工夫したりします。

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(3)頸部郭清術の後遺症

手術の範囲によりますが、腕をあげにくい、首や肩の締めつけ感や痛みといった症状があらわれることがあります。また、取り除いたリンパ節の近くに神経がある場合、首や肩の麻痺まひがあらわれることがあります。そのまま動かないでいると、痛みや肩が動かしにくい状態が続くことがあるため、このような症状を軽減するためリハビリテーションを行うこともあります。詳しくは担当医に確認しましょう。

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