3−2−2 放射線治療の副作用

放射線治療の副作用は、倦怠感や食欲不振など全身にあらわれるものと、治療する部位(皮膚や粘膜)に起こる局所的なものがあります。また、副作用が起こる時期によって、治療中や治療後すぐにあらわれるもの(急性期)と、治療終了後数カ月から数年たってあらわれる晩期合併症と呼ばれるものがあります。

(1)治療中や治療後すぐにあらわれる副作用

放射線治療を始めてから3〜4週目からは嗄声(声のかすれ)、口の中の乾燥、粘膜の炎症、皮膚炎が起こり始め、5〜6週目ころには最も症状が強くなります。

皮膚炎や粘膜炎は治療が終了してから1〜2カ月くらいで改善することが多いですが、粘膜炎による口の中の乾燥や、声がかれる、味が分からない、唾液が出にくくなるという症状は、改善に時間がかかるため、しばらく続く可能性があります。

放射線治療では、決められた治療回数を照射することが目標です。副作用が原因で治療が続けられなくなるという事態を避けるため、皮膚科医、看護師、歯科医、歯科衛生士、言語聴覚士、栄養士、心理士などの医療スタッフが連携して、副作用を最小限にするための治療やケアが行われます。

●口内炎/粘膜炎への対応

口の中の乾燥や粘膜炎による痛みから、水分や食べ物が飲み込みにくくなり、食事をとることが難しくなります。そのため、軟らかく煮るなど、のどへの刺激にならないような形状の食事をとる、食事の前に痛み止めを使うなどの工夫をします。

また、放射線治療によって唾液が減少すると、口の中に普段から存在する細菌から粘膜や歯を守ることができず、口内炎や、むし歯などができることがあります。そのため、粘膜に刺激のないやさしいブラッシング、うがい、こまめに水分をとるなどを心がけて、口の中を清潔で潤った環境に保つことが大切です。また、定期的に歯科医師の診察も受けましょう。

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●胃ろうの造設

口腔や咽頭の粘膜炎などによって食事を十分に食べられず体力が落ちたり、薬剤を内服できなかったりすることが原因で、治療が続けられなくなることがあります。これを防ぐため、放射線治療の前に胃ろう(おなかの皮膚から胃へくだを通す穴)をつくっておくこともあります(図8)。治療の副作用で口から食事や薬をとることができない場合、胃ろうから直接栄養や薬剤をとることができます。なお、胃ろうの造設は多くの場合、内視鏡やX線を使って、おなかの中を確認しながらつくります。

【16ページ図 図8.胃ろう】

胃ろう図

【図終わり】

●皮膚炎への対応

皮膚炎が起こった場合は、外用薬(塗り薬)を用いて皮膚の組織を保湿・保護します。皮膚炎は治療終了後1〜2カ月程度でよくなることが多いです。

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(2)治療終了後、半年から数年たってあらわれる副作用

中耳炎、嚥下えんげ・開口障害(口が開きにくくなること)、唾液が出にくいことによる味覚の低下やむし歯の増加、歯が抜ける、下顎骨壊死かがくこつえし(下あごの骨の組織が局所的に壊死すること)や下顎骨骨髄炎(普段から口の中にいる細菌による感染が下あごの骨に及んだ状態)によるあごの痛みやれなどの症状があらわれることがあります。治療終了後も口の中をきれいに保つように気をつけることが大切です。