放射線治療では、放射線をあててがん細胞を破壊し、がんを消滅させたり小さくしたりします。上咽頭がんでは、体の表面から放射線をあてる外部照射を、6〜7週間で30〜35回くらい行います。
薬物療法と放射線治療を併用する、化学放射線療法を行う場合もあります。薬物を併用することにより放射線治療の効果を高めることができます。
頸部リンパ節への転移があり、放射線治療で治療が難しい場合は、頸部郭清術を先に行い、その後に放射線治療を行う場合もあります。
強度変調放射線治療(IMRT)では、さまざまな方向からあてる放射線の量をコンピューターで調節し、複雑な形のがんでもそれぞれの部位に適切な量の放射線を照射することができます。このため、治療終了後にあらわれる副作用を軽減する効果があります。
●副作用について
放射線治療の副作用は、全身的なものと、治療する部位に起こる局所的なものがあります。また、治療中や治療後すぐにあらわれるものと、治療終了後半年から数年たってあらわれるものがあります。
副作用が原因で治療を中止するということがないように、副作用を最小限にする支持療法を行うことがあります。場合によっては、歯科医、歯科衛生士、言語聴覚士、栄養士などと連携をとることがあります。
(1)治療中や治療後すぐにあらわれる副作用
皮膚炎、粘膜炎、粘膜炎により飲み込みにくくなるなどの副作用があらわれることがあります。治療終了後3カ月くらいで改善することが多いのですが、唾液が出にくくなるため、口や咽頭の乾燥、味がわからないという症状は続く可能性があります。
皮膚炎への対応には、軟こうを用いて、放射線治療によって損傷した皮膚の組織を保湿します。口内炎や粘膜炎への対応には、痛みに対する薬を用いることがあります。口の乾燥が続く症状への対応には、水分をこまめにとるようにしましょう。担当医から人工唾液を処方してもらうこともできます。
口腔や咽頭の粘膜炎などの副作用により、栄養や薬剤を口から適切に摂取できず、それが原因で治療が継続できなくなることがあります。これを防ぐため、放射線治療の前に胃ろう(おなかの皮膚から胃へ管を通す穴)をつくっておくこともあります。治療中や治療後に必要な場合には、胃ろうから直接胃の中に栄養や薬剤を入れることができます。治療が終わって、口から十分食事がとれるようになったら、留置していた管を抜きます。通常、管を抜いたあとの穴は自然にふさがります。
(2)治療終了後半年から数年たってあらわれる副作用
中耳炎、開口障害、唾液が出にくいことによる虫歯の増加、歯の欠損や下顎骨壊死などがあらわれることがあります。治療終了後も口の中をきれいに保つように気をつけることが大切です。
まれではありますが、若年性の場合は脳下垂体の障害により第二次性徴へ影響することがあります。