●手術による合併症・後遺症の予防や、手術後のスムーズな回復に役立ちます
以前は手術後に合併症が起きた場合にリハビリテーション医療が始まることが一般的でしたが、現在では、手術前から始めると良いといわれています(図 3)。手術前はさまざまな不安がある時期です。担当医やその他のスタッフに具体的な方法について相談をしながら、無理をしない範囲で、運動や、呼吸リハビリテーションなどの手術前のリハビリテーション医療を受けましょう。
【図3.がんの手術前後のリハビリテーション医療の考え方】
【図終わり】
手術前および手術後すぐからリハビリテーション医療を受けることは、(1)手術による合併症を予防し、(2)後遺症を最小限にして、(3)手術後の回復をスムーズにし、(4)早期の退院につながるメリットがあります。
また、手術前のリハビリテーション医療の具体的なメリットとしては、以下の点があげられます。
1.手術後の早い時期よりベッドから離れて生活すること(早期離床)の必要性を手術前から理解することにより、手術直後の時期から積極的にリハビリテーション医療に取り組める
2.手術前からリハビリテーションスタッフと面識があることで、手術後のリハビリテーション医療も安心してスムーズに受けられる
3.リハビリテーションスタッフから見通しを説明してもらうことで、後遺症や社会復帰に対する不安が少なくなる
4.腹式呼吸法などを手術前に訓練しておくことで、手術後に呼吸が苦しくなったときにうまく対処できる
5.身体機能(体力、筋力など)を高めて手術に臨むことで、術後の後遺症や合併症が軽くなる
手術前から受ける「呼吸リハビリテーション」は、手術後に起こりやすい肺炎を予防する効果があります。肺炎は、手術後の痛みや麻酔の影響で呼吸が浅くなり、痰がうまく出せず、肺の奥にたまることによって起こりやすくなります。「呼吸リハビリテーション」は、専用の器具を使ったり、腹式呼吸法を訓練したりして行っていきます。9ページまた、手術後の早い時期からベッドに座ったり、病室内を歩いたりすることも大切です。
このほかにも、いろいろなリハビリテーション医療の方法があります。手術を受ける際には、手術に伴う体への影響や、それに対するリハビリテーション医療の内容について担当医に確認しておきましょう。