国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター
プログラム
全体テーマ「がん相談支援センターのステップアップ~周知と協働をめざして~」
- あいさつ
- 九州各県のがん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
- がん相談支援センター周知度アンケート結果と考察について
- 特別講演「聴く・聞く・訊く」
- グループワーク・全体共有
テーマ「聴く・聞く・訊く」~「きく」って何だろう~ - 九州・沖縄相談員サロン:今語りたいことを話そう
- コメント・総評
概要とあいさつ
鹿児島県がん診療連携協議会 がん相談支援部門会および国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターの主催によって開催されたフォーラム「がん相談支援センターのステップアップ~周知と協働をめざして~」は、九州・沖縄8県の相談員を対象として平成27年11月28日(土)に鹿児島県市町村自治会館で開催され、201人のがん相談支援に携わる相談員に加え、鹿児島県内外の医師8人、自治体のがん対策主管課担当者9人、患者団体のオブザーバー12人が参加しました。
当日は、寺師真理子さん(鹿児島県立薩南病院)の総合司会のもと、最初に、主催者である若尾文彦センター長(国立がん研修センターがん対策情報センター)と熊本一朗病院長(鹿児島大学病院)のあいさつで始まりました。
若尾文彦センター長(国立がん研究センターがん対策情報センター)からは、全国で行われている地域相談支援フォーラム10回のうち4回は九州・沖縄ブロックでの開催であること、またこの取り組みが、地域ブロック内でのPDCAを回す取り組みになっていることが述べられました。平成27年6月に出されたがん対策基本計画中間報告での、がん相談支援センターの評価結果に触れ、まだがん相談支援センターの認知度向上が必要な段階にあるが、本日の充実したプログラムで、皆さんのスキルアップを図っていただき、患者さんやご家族のためのよりよいがん相談支援のサービスにつなげてほしいとの期待が述べられました。
熊本一朗病院長からは、がん対策基本計画がつくられた時に、最初に鹿児島大学病院で取り組んだのが、緩和ケアチームと相談支援センターをつくることであったこと、そしてさまざまな相談窓口が設けられている特定機能病院としても、患者さんにわかりやすい一元化された窓口を目指していきたいと述べられました。
また鹿児島県は、離島も含めると地理的にも非常に広い範囲を支えていく必要があり、それぞれのニーズに応じた相談対応は大変なことであるが、こうした鹿児島の実情も踏まえて、本日はいろいろな意味で勉強させていただきたいとのあいさつが述べられました。
九州各県のがん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
最初のプログラムである、「九州各県のがん相談支援センターの取り組み・活動状況報告」は、田畑真由美さん(鹿児島大学附属病院)、安藤真紀さん(長崎大学病院)の司会で始まりました。(各県の報告資料をご参照ください。)
沖縄県
発表者:大久保礼子さん(琉球大学医学部附属病院)
沖縄県は、がん診療連携協議会の下に設けられた相談支援部会において、ロジックモデルを用いて、活動計画の立案、実施、評価を行っていることが報告されました。がん対策推進基本計画に沿った全体目標、部会としての目標、具体的な活動計画を定めるとともに、個々の活動計画について担当者を置き、年4回の部会で進捗を確認し、年度末に評価を行っているとのことでした。今年からの新たな取り組みとして、相談支援センターのマニュアル・内規作りが紹介されました。従来の地域連携室や相談室を改組して相談支援センターが設けられた場合、位置付けや方向性が不明確な場合も多いという反省に立ち、それらを明文化し、質が担保できるよう取り組んでいるとのことでした。また県全体での「活動の見える化」として、共通の相談支援記録シートを用いて、相談件数の報告を行っているとのことでした。
各相談支援センターの取り組みとしては、社労士による就労相談の開始、患者会へのサポート、図書コーナーの整理、また行政と連携した活動として、地域の療養情報「おきなわがんサポートハンドブック」の作成、「がんを知ろう!フェア」の開催、広報活動では、新聞の無料広告やラジオ出演を行っているとの報告がありました。
沖縄県 がん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
宮崎県
報告者:森川 栄己さん(宮崎県立宮崎病院)
宮崎県では、年2回開催される専門部会で課題の設定を行っており、今年の課題として、がん相談員の研修会の開催、そして地域病院とのネットワークの2つをあげて活動を開始したとの報告がありました。がん相談員研修会は、2月に第1回「はじめの一歩」を開催したところで、ほぼ全員から参加してよかったとの感想を得られているが、今後の課題として、継続的に研修を計画していくこと、がん相談員の段階的なスキルアップの機会をつくっていくことなど、中長期的な研修計画が必要であることがあげられており、こうした課題を踏まえながら2回目の研修会を企画中であるとのことでした。
2つ目の課題、地域のネットワークの構築では、地域のネットワークづくりに取り組めていない病院や担当者が不在のところ、ネットワークの必要性が意識されていない、他人任せになっている施設などがあると考えられ、今後、部会の下にフットワークよく活動できるワーキンググループをつくることを検討中であるとの報告がありました。
宮崎県 がん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
大分県
発表者:尾立和美さん(大分赤十字病院)
大分県では、情報提供・相談支援部会の下部組織として、がん相談支援センター情報交換会が設けられ年3回、拠点病院の活動状況報告や相談事例の検討などを行っていること、情報提供・相談支援部会ではPDCAサイクルを意識しながら、H26年度は6つの活動をあげて取り組み・評価を行い、それを踏まえて27年度は特に「広報周知活動」と「教育・質向上への取り組み」を重点項目として取り組んでいるとのことでした。
広報周知活動では、各病院がさまざまな方法で院内周知を図るとともに、市立図書館、県立図書館などと連携し、がん相談支援センターを紹介する冊子などを設置してもらい、地域での周知拡大のための活動を行ったり、患者さんへのアンケートについてがん相談支援センターに関する項目も設けたりと、がん相談支援センターの周知とフィードバックを得ることの両面での取り組みを行っていること、このアンケートを県内全域に広めていくことも検討していきたいと考えていることなどが紹介されました。
教育・質向上への取り組みに関しては、がん相談指導者研修会を修了した人を中心に、本年度初めて行った研修会を評価し、来年度につなげていくことを目指していること、ピアサポート、地域型のサロン、またがんサロンから発展した「笑いヨガ」をサポートグループの活動として展開させていくことなどについて引き続き検討していきたいとの報告がありました。
大分県 がん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
福岡県
発表者:山本綾子さん(福岡東医療センター)
福岡県では、県全体と、県内を4つに分けたブロックごとの2つの次元でPDCAサイクル確保の取り組みを行っているとのことで、行っている4つのテーマについて報告されました。
1つ目の「がん相談員の質の向上」については、3カ年計画のもと、県全体で年1回、各ブロックで年1~2回の研修を実施していること、指導者研修修了者が企画・運営を行い、県行政や患者会からの報告、産業カウンセラーによる傾聴講座、またブロックそれぞれの地域の特性に添った企画など、有意義な研修を実施できているとの報告がありました。2つ目の「広報周知活動」としては、がんの在宅医療を支援する機関を紹介するガイドブックの福岡版、筑後版の作成、今年5月の博多どんたくへの参加、図書館職員へのがん相談周知の研修会を実施したとのことでした。3つ目の「就労支援・ハローワーク」との連携は、H26年度からモデル事業を進め、ハローワークの職員とともに研修会を実施していること、4つ目の「患者活動の支援」については、特に筑後ブロックでの施設合同で取り組んでいる活動で“参加者が元気になれた”と好評であることが報告されました。
今後の課題として、「がん相談員の質の向上」のため、相談対応評価表を用いた研修や県全体の知識の共有を図る研修の実施、「患者活動の支援」においては、自分たち、また病院が果たすべき役割の整理とがん相談員のリーダーシップがさらに重要と考えていること、「広報周知活動」として行った博多どんたくへの参加の継続可能性等についても検討していきたいと述べられました。
福岡県 がん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
長崎県
発表者:中島誠司さん(日本赤十字社長崎原爆病院)
長崎県では、長崎県がん診療連携協議会相談支援ワーキングを推進体制として、昨年度1月末に九州・沖縄ブロック地域相談支援フォーラムを実施したこと、その後の企画として、「がん患者の心とグループ療法」をテーマに、長崎県内の拠点病院・推進病院等と佐賀県内から、計36人が参加した平成26年度第1回相談支援ワーキング研修会を実施したことが報告されました。その他、長崎県の病院と治療のこと、お金のこと、よりよい療養生活のことなどが書かれた「がんと向き合うサポートブックながさき」の改訂作業を進めており、本年度末3月に改訂版を発行予定とのことでした。
県内のPDCAサイクル確保のための計画が立てられており、患者家族支援、就労支援、医療関係者への教育支援、がん相談支援センターの周知広報が大項目としてあげられ、計画が進められているとのことでした。また今後は、研修企画を目標としたサブグループ、サポートブック・広報を目的とした2つのサブグループを中心に活動を進めていく予定で、広報については、長崎県内38カ所の公立図書館へがん相談支援センターのポスターチラシの掲示を行っていく予定であることが報告されました。
長崎県 がん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
佐賀県
発表者:柿木伸也さん(唐津赤十字病院)
佐賀県では、「佐賀県内のがん患者・家族に対して切れ目ない相談支援・情報提供が行われる体制を整備すること」をビジョンとして掲げ、地域多職種向けの研修会、がん相談支援センター連絡会(四半期ごと)の開催、リレーフォーライフジャパンへの参加、)就労支援に向けた基盤の構築、図書館との連携の5つを行っており、新しい取り組みである後者3点を中心に報告がありました。
拠点病院としてはじめて9月のリレーフォーライフジャパン2015佐賀に参加し、4拠点病院のブースを設けて県民へPRを行ったとのことでした。
就労支援に向けた基盤の構築については、佐賀県労働局、ハローワークとの研修会を実施し成果を感じたこと、今後の改善点として、継続的に連携(連絡会)を開く、多職種でのグループ介入、がん患者の就労に関する課題を集めた情報共有、資料等の作成を検討する必要性があげられたとの報告がありました。
また、長崎市立図書館の視察を通して、図書館と連携した情報発信方法を知ること
ができ、佐賀県でも図書館においてがん相談支援センターの広報周知が可能かなどの
検討を行っていく予定であることが報告がされました。
佐賀県 がん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
熊本県
発表者:増田真由美さん(熊本赤十字病院)
熊本県では、熊本県がん診療連携協議会の下に、相談支援・情報連携部会があり、その下にがん専門相談員ワーキンググループ、そしてこのワーキンググループを支援する「がん相談員サポートセンター」が2015年6月に県の委託事業によって設置され、県内のがん相談員の資質向上、がん相談支援センターの普及啓発活動、がんピアサポート活動との連携の3点について特に取り組んでいるとのことでした。
拠点病院へのアンケートの結果、相談員が困難と感じていることは、広報周知、就労支援、業務の両立の3点であったとの報告がありました。資質向上の取り組みとして、今年は就労支援に関する研修会の開催(2回)、普及啓発活動として、リレーフォーライフへの参加、県内共通のポスターと熊本県版がん情報冊子の作成に取り組んでいるとのことでした。また 2014年9月に「PDCA体制に関する検討会」が設置され、がん診療連携協議会での相互評価結果の共有や、評価方法を含めた評価体制の確立を目的としたワーキンググループの設置が決定されたとのことです。
県が主導するがん相談関連の取り組みでは、熊本県がん患者支援向上対策会議(就労支援対策)が8月、10月に開催され、提言書がまとめられる予定であること、また昨年度、長崎県での図書館との連携の取り組みを受けて、熊本県でもミニ講演会等を県立図書館で実施し、今後も実施予定であるとの報告がありました。
熊本県 がん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
鹿児島県
発表者:久永佳弘さん(国立病院機構南九州病院)
鹿児島県では、がん診療連携協議会の中に4つの部門会が設置されており、H25年度から合同の研修会を実施していること、相談支援部門会では設置当初からアンケートをとり現状把握を行い活動の可視化に努めていることが報告されました。相談支援部門会では「がん相談支援センターの周知・広報」「患者サロンの周知・充実」「地域との連携強化」「他職種とのカンファレンスの実施」を共通の目標として活動をしているが、H26年度の状況をみると、部門会発足からの2年間で、活動が充実していること、担当者が代わっても相談支援センターの活動が維持されていることが確認できたとの報告がありました。また活動を可視化することで、院内や地域でのPRも充実してきていると考えられると述べられました。
H27年度は、教育、地域連携の取り組みを行っているところで、周知活動として、ラジオ放送番組への出演、また図書館の協力のもと、相談支援センターの施設一覧表の掲示やセンター周知を行っているとの報告がありました。
鹿児島県 がん相談支援センターの取り組み・活動状況報告
今後の課題については、相談員同士の語りの場を保ちつつ、相談員ネットワークを強化していくこと、地域相談ナビゲーターとのネットワークを維持強化しながら、利用者増を目指すこと、他施設の成功事例を共有して、自施設のがん相談支援事業を充実させていくこと、教育、広報、地域連携の3つのWGを立ち上げ、より細かなPDCAサイクル確保に取り組んでいきたいと報告されました。
各県からの報告後、若尾文彦センター長からの講評として、この日の場を利用して、各県の取り組みについてもさらに情報収集し、自県にフィードバックしていただきたいとの希望が述べられました。また、鹿児島県から報告されたアンケート方式の「見える化」は、都道府県がん診療連携協議会の情報提供・相談支援部会でも報告していただき、現在、ほかの46都道府県でも検討が進められているところであり、鹿児島県の取り組みが全国の見える化につながっていることが紹介されました。また、2015年内に策定予定で検討されている「がん対策推進加速化プラン」の中で「地域統括相談支援センター」として拠点病院以外に置かれるワンストップの相談窓口についてキーワードにあがっていることが紹介され、このセッションが終了しました。
アンケート調査から見えてきた課題について(鹿児島県)
鹿児島県内の相談支援部門会の取り組みを評価するために、医療・保健・福祉の各分野に従事している専門職種の認識の度合いを把握する鹿児島県フォーラム実行委員アンケート実行班が行ったアンケート結果について、野村瑞穂さん(鹿児島大学病院)から報告されました。県内で把握できた、診療所、訪問看護ステーションなど県内215カ所や職種団体の会員を対象に、がん診療連携拠点病院を知っているか、がん相談支援センターを知っているか、対応する相談内容や役割を知っているか、医療相談とがん相談の認識度等について無記名のアンケートを送付し、776人(56.6%)から回答を得られたとのことです。その結果、職種間により周知には幅があり、「医療相談」は大多数の回答者に知られていたのに比べて「がん相談」の周知が約5割と半分程度であったこと、96%の回答者が今後がん相談支援センターを利用・活用したいと答えたことなどが紹介されました。そして、今回の調査自体ががん相談支援センターの周知に有効であったと考えられること、今後の関係職種へのがん相談支援センターの周知については目標を設定した上で、計画的に活動を進めていきたいとのことでした。
フロアからのアンケート実施経費についての質問に対して、通信費で2万円程度の経費であったとの回答がありました。関係機関にがん相談を知っていただくことはとても重要であり、労力はかかる作業であるが、経費の面では、どこの県でも比較的実施しやすいのではないかとのコメントが寄せられました。
アンケート調査から見えてきた課題について(鹿児島県)
特別講演「聴く・聞く・訊く」
講師:長倉伯博先生(浄土真宗本願寺派善福寺住職)
最初に長倉先生ご自身の自己紹介からセッションが始まりました。長倉先生は、ベッドサイドにいる僧侶として、患者さんと家族に寄り添うビハーラ僧として活動をされているということでした。チャプレンという言葉がありますが、ビハーラとは、サンスクリット語でいうチャプレンのことだそうです。病院では緩和ケアチームの一員としても活動されているとのことでした。
この日のテーマ、「聴く・聞く・訊く」について、まず「聴く」とは話す方に許されてキクこと、「聞く」とは耳声を受けることで、私の耳に入ってくること、キいている自分を見つめながらキくこと、そして「訊く」は上より下に問うこと、尋問に近いということの説明からこの日のお話が始まりました。
患者さんと家族に寄り添う僧侶として25年もの経験を積まれる中で、始めた当初は病院からは、“縁起でもない”とほとんど受け入れられなかったこと、でもそうした中でも関心をもってくれる先生に招かれて病院で患者さんの了解を得てお話を聞く、ということを繰り返す中で徐々に、長い時間をかけて医療者からも受け入れられるようになってきたことなどが、ユーモアも交えながら語られました。時に、患者さんから怒鳴られることもあるそうですが、それこそが魂の叫びであること、相談には、何でも放り込むことができる「ゴミ箱チーム」が必要であるといった話もされました。怒りを爆発させて長倉先生に怒鳴り声をあげていた患者さんのエピソードで、その方を取り巻くご家族や医療者の皆さんはとてもいい方であったこと、だからこそ家族や医療者には表出できない怒りを表出し、投げ込む「ゴミ箱」の役割が必要であったこと、その患者さんからは、「あなたが私の怒りを受け止めてくれたから、家族には最期までいい自分でいられた」と最期に語られたというお話もありました。
つらい話をきくこと、怒鳴られることは、それを受ける相談員や医療者にとってもつらいことであるが、つらい話は誰にでも話せることではなく、相談をする人は相手を選んで相談していること、つまり「自分に話してもよいと思ってくれた」ことを心にとどめ、「話してくれてありがとう」という気持ちを大切に対応してほしいという基本的な姿勢も紹介していただきました。
また、相談は相手の力強さを引き出すことであり、問題を解決することではないこと、またつらい本人の気持ちを同等に「わかる」ことは難しいことを十分に理解した上で「わかろうとする」こと、それには「共感」というよりも「響感」、響き合いがあってこそ、よい出会い、そしてよいコミュニケーションになるのではないか、という投げかけもありました。そしてこうした相談対応をする自分にも「ゴミ箱チーム」が必要であり、ひとりで抱え込むのではなく、誰かに話を聞いてもらうことは大切であるという実感も紹介されました。
そして最後に、長倉先生が常日頃大事にしている3つのワーク、1つ目は軽快なフットワーク、2つ目は、日常からの綿密なネットワーク、そして3つ目は、少々のヘッドワーク、の紹介があり、相談員に対するメッセージで長倉先生のお話は締めくくられました。涙と笑いとであふれた講演の時間は、あっという間に過ぎ、お話を聞いた聴衆のそれぞれが、とても清らかなすがすがしい気分になれた1時間でした。
グループワーク「聴く・聞く・訊く」~「きく」って何だろう~
午後の部は「“きく”って何だろう~きくために私たち相談員ができる(すべき)こと」をテーマとして、はじめに木ノ脇真弓さん(鹿児島医療センター)の「きく」に関しての簡単なレクチャーのあとに、グループワークが行われました。2つの短い相談場面のDVDが流されたあと、グループごとに、相談員として“きく”ためにどんなことを大切にしてきくか、参加者全員で考える機会をもつこと、“きく”という意味を理解してスキルアップを図ること、セルフケアの大切さを知ることの3つを目的として、グループで、(1)あなたは、どんなことを大切にして、相談者の語りをきいたか、(2)あなた自身の心の動きはどうだったか、(3)“きく”ためにセルフケアをどのようにしているかについて、15のグループに分かれてディスカッションが行われました。
全体共有の時間には、相談者の語りをきくにあたって大事にしていることについては、「体調管理をしっかりする」「自分の力量を考えてきく」、また自身の心の動きについては、「飛び込みの相談は緊張する」「気持ちをどう整理したらいいのか迷う」といった意見があげられました。セルフケアについては、「自分の仕事が感情労働であることを意識して周りの人にも理解してもらう」「しっかりとリフレッシュする」「自分自身の価値観や傾向を知ることも大事」といった意見があげられました。
オブザーバーで参加されていた患者会の方からは、はじめて参加したがとても心温まる会で、私たちのためにがんばってくれていることを感じた、こうしたがん相談支援センターの皆さんがされている活動を伝えていきたいとコメントされました。また、鹿児島県今給黎病院でサイコオンコロジーを担当されている児玉先生からは、セルフケアの視点が、相談員の本日の課題にあがっていること自体が大事であり、話すということは、患者さんだけでなく、皆さん自身にとっても大事であり、ぜひ意識してやっていただきたいとコメントがあり、このセッションは終了しました。
九州・沖縄相談員サロン:今語りたいことを話そう
前のグループワークでの内容を受けて「相談員サロン」が行われました。
最初に、田畑真由美さん(鹿児島大学病院)より、セッションの意図の説明がありました。
“時に相談員には、相談を受けていて相談員自身だけでは持ちこたえられないような相談を受けることがある。自分ひとりで抱えきれなくなっていた時に、他施設の看護師さんに話を聞いてもらいとてもスッキリした。その時、なんでもっと早く相談しなかったんだろうかと思った。日頃蓄積している悩みを整理しながら、相談員サロン、飲みニケーションをすること、相談員自身のセルフケアをしていくことは大事、と感じていることから、相談員サロンを最後に企画させていただいた。お茶とお菓子もあるので、まずは皆さんゆっくりお話しください。”
この趣旨を受けて、皆さん、思い思いにたのしくおしゃべりし、心を軽くするとともに、自県に持ち帰っていくことをそれぞれが確認した時間となりました。
クロージングセッション
オブザーバーとして参加した三好綾さん(がんサポートかごしま)からは、「あらためて相談支援センターの意味を考える機会になった。聞いてもらうことはありがたいことなんだ、来てくれる場所があること、そして何より聞いてくれる人がいるといことは、患者にとってとてもありがたいことだとしみじみ思った。皆さんいることで救われる患者さんはいっぱいいる。ぜひお互いに情報共有されたことを持ち帰っていただいて、どうぞ患者さん、家族の皆さんのためにがんばっていただければと思う」とのコメントが述べられました。
各県から参加された行政の方々からは、「このフォーラムに参加して、がん相談員の方々と話をすることで、行政としても元気をもらっている」「今後対策を立てる上でもとても参考になる」「何かあれば話を聞くくらいはできるので、ぜひ皆さん自身が元気でいられるようにしてほしい」などの意見が述べられました。また主催権である鹿児島県の行政担当者からは、「準備の段階から鹿児島の皆さんのチームワークのよさは、ほれぼれするくらいで、結束力はこんなに高まるものだろうかと感心して見ていた。フォーラムを通して、相談支援の奥深さ、可能性を感じた1日だった。元気もいただいた。皆さんと一緒に今後もがんばっていきたい」と相談員と一緒に取り組んでいく意気込みが語られました。
総評として、高山智子部長(国立がん研究センターがん対策情報センター)から、「これまでのフォーラムの企画の中で、ほとんどの参加者を泣かせるというのは例がなく、新しい試みであった。また、昨年は相談員以外に行政グループの話し合いが行われていたのが印象的だったが、今回はさらに患者会のグループが加わりとても頼もしく感じた。またこれが、それぞれの立場で行き詰まった時のお互いの突破口になればと思う。本日は来年度フォーラム開催を予定している宮城県から3人の参加もあった。県を超えたフォーラムが、さらにブロックも超えてAll Japan の取り組みにつながっていけばと願っている」とのコメントがありました。
閉会にあたり、上野真一部門長(鹿児島県がん相談支援部門会・鹿児島大学病院)からは、鹿児島県内そして他県の実行委員、拠点病院の部門長や行政の方々へのお礼が述べられました。そして、国などががん相談支援センターに求める課題に応えていくのは大変であるが、生き方の支援、心の支援と考えると、取り組んでいくことができていくのではないか、小さな手作りの事柄でもいいと思うので、ぜひがんばっていきましょうと、集まられた相談員の皆さん、そしてがん対策に携わる多くの参加者にエールが送られ、大きな拍手とともに、鹿児島でのブロックフォーラムは終了しました。