- 日時
- 2022年11月10日(木)17:30~18:30
- テーマ
- 転移性卵巣腫瘍
(青森県立中央病院発信)
司会 青森県立中央病院 産婦人科部長 三浦 理絵
産婦人科診療において卵巣腫瘍は頻繁に経験しますが、子宮病変と違い、術前の良悪性の診断は
必ずしも正確ではありません。また、悪性腫瘍を推定しても、卵巣原発か転移性かの診断は必ずしも
容易ではありません。転移性卵巣悪性腫瘍の頻度は卵巣悪性腫瘍として手術された症例の6-7 %と報告されており、頻繁に遭遇する症例ではないものの、常に念頭において診療する必要があります。今回は当院で最近経験した転移性卵巣癌の症例提示、および、当科は弘前大学の関連病院となっているため、演者が弘前大学で5年間に経験した転移性卵巣悪性腫瘍についての経験と検討について、併せてご報告します。
1. 弘前大学で過去5年間に経験した転移性卵巣悪性腫瘍の検討と、当院で最近経験した転移性卵巣癌症例について
青森県立中央病院 産婦人科部長 三浦 理絵
弘前大学で過去5年間に経験した転移性卵巣悪性腫瘍について検討した。対象症例は11例で、同期間に手術した卵巣悪性腫瘍の9 %であった。年齢の中央値は53歳で、原発は胃:3例、虫垂:3例、大腸:2例、他、胆嚢、尿管、尿膜管が1例ずつであった。腫瘍の最大長径中央値は11.0 cm(3.0-15.0)であり、両側性は5例(45 %)で、充実性分のみの腫瘍は3例(27 %)であった。一般的に転移性卵巣悪性腫瘍は両側性が70 %程度、画像では充実性の腫瘍で原発性卵巣癌よりも腫瘍径は小さいことが多いとされるが、今回の検討では大きさ以外は典型例に当てはまる結果ではなかった。予後は低悪性度の腹膜偽粘液腫を除けば9例中7例が原病死となっており、予後の悪さが示唆された。
ついで、当院で最近経験した転移性卵巣癌について報告する。直近の半年で2症例の転移性卵巣癌を経験した。当科の1年間の平均的な初回卵巣癌手術症例数から鑑みるとおおよそ10 %程度の頻度となる。原発は胃癌、盲腸癌であり、既往歴があることから転移性を念頭において手術を開始し、術中迅速診断で転移性卵巣癌の診断となった。当院においても、弘前大学においても術中迅速診断の精度は高く、また永久病理組織診断では免疫染色を用いて正確な診断がなされていた。