- 日時
- 2023年07月13日(木)17:30~18:30
- テーマ
- 重粒子線治療の現状と課題
(神奈川県立がんセンター発信)
司会 神奈川県立がんセンター 消化器内科 森本 学
これまでQST放射線医学総合研究所を中心に世界の重粒子線治療研究が牽引されてきました。2003年以降も先進医療として保険承認にむけた臨床研究が進められるなか、当院も国内5番目の治療施設として2015年から臨床研究を含めた利用を開始しました。その後、いくつかの疾患は保険適応を得てさらなる症例数の増加をみていますが、非侵襲的で治療効果も高い重粒子線治療の現状と課題についてディスカッションできればと思います。
1. 保険適応拡大による重粒子線治療の展望
神奈川県立がんセンター 放射線治療科 加藤弘之
重粒子線治療は2016年に骨軟部腫瘍が保険適応になり、2018年には前立腺がん・頭頸部がん、2022年には肝臓がん、膵臓がん、大腸がん、子宮頸部腺がんが保険適応拡大の対象となりました。従来は高額な費用の印象が強かったものの、現在は多くの疾患で、費用の点において患者負担を気にすることなく、治療法として選択できるようになっています。今後の展望を含めて当院で施行している重粒子線治療を紹介いたします。
2. 肝胆膵領域における重粒子線治療の位置付け 〜外科の立場から〜
神奈川県立がんセンター 消化器外科肝胆膵 森永聡一郎
肝胆膵領域の悪性腫瘍にも重粒子線治療が適用されるケースが増加しています。肝細胞癌においては、その優位な物理学的特性から、高い局所制御率と安全性が報告されてきました。しかしながら治療施設が限られることもあり、有効性を示唆する多数の報告がある一方、他の治療と治療効果を比較した報告は限られます。今回は、当院における初発、単発、切除可能な肝細胞癌における重粒子線治療と肝切除の治療成績の比較を中心に肝細胞癌の重粒子線治療についてご紹介します。
3. 肝胆膵領域における重粒子線治療の位置付け 〜内科の立場から〜
神奈川県立がんセンター 消化器内科肝胆膵 福島泰斗
肝胆膵領域の悪性腫瘍は切除が第一選択ですが、病期や耐術能の観点から、切除が困難な場合は重粒子線治療が選択肢に挙がります。内科は、重粒子線治療中の化学療法のマネージメントと、治療後のフォローアップを行っています。再発時には、重粒子線治療科、外科とともに治療方針を決定し、治療を行います。肝胆膵癌の症例をご紹介するとともに、内科の立場から現状と課題を考察します。