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MALTリンパ腫(まるとりんぱしゅ)

更新日:2015年11月26日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2015年11月26日 「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」「造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月(第1版)」より内容を更新しました。
2006年10月01日 掲載しました。

1.MALTリンパ腫とは

MALTリンパ腫とは、悪性リンパ腫の種類の1つで、粘膜に関連したリンパ組織からリンパ球の中のB細胞が腫瘍化する非ホジキンリンパ腫です。病気の進行が比較的遅いタイプの「低悪性度」に分類され、年単位でゆっくりとした経過をたどります。

1)疫学・統計

MALTリンパ腫は、悪性リンパ腫の中でも発症頻度が低く、発症年齢の中央値は60歳代です。

2)症状

MALT(マルト:Mucosa associated lymphoid tissue)とは、粘膜とリンパ球細胞の複合組織のことで、MALTがある臓器は約半数が消化管で、そのうちの大部分が胃に集中しています。そのため、胃MALTリンパ腫は、胃の悪性リンパ腫の約40%を占めています。胃以外の臓器では、大腸、肺、甲状腺(こうじょうせん)、唾液腺、乳腺、眼科領域などで発生することがあります。通常、1つの臓器に限局して発症しますが、胃や唾液腺では近くのリンパ節が増大することもあります。いずれの部位で発症しても、経過はゆっくりで、症状はあまり出現しません。

3)原因

原因の一部には、感染症や炎症が関係していると考えられています。胃MALTリンパ腫では、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に高い割合で感染しており、感染頻度は約50~100%です。また、唾液腺や甲状腺のMALTリンパ腫は自己免疫疾患を合併している割合が高率にみられます。

4)特徴

病理組織では、リンパ球系のがん細胞が増殖して見え、この細胞は1種類ではなくさまざまな形態をしており、濾胞(ろほう:球状のかたまり)の中ではなく濾胞の周囲(辺縁[へんえん])や濾胞と濾胞の間に増殖していることが特徴です。MALTリンパ腫は、濾胞をつくりながらがん細胞が増殖する「濾胞性リンパ腫」に対して、濾胞のまわり(濾胞辺縁帯)に増殖するため、組織学的には「辺縁帯リンパ腫」と分類されています。
ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫は総称して悪性リンパ腫と呼ばれています。
それぞれのがんの解説「悪性リンパ腫」では、悪性リンパ腫の治療の全体像や大まかな治療の流れなどを解説していますので、併せてご参照ください。

検査方法や治療効果、病期分類については、「悪性リンパ腫 —検査・診断—」をご参照ください。
治療成績については、「悪性リンパ腫 —治療の選択—」をご参照ください。

2.治療

MALTリンパ腫の治療方針は、原発部位や病期(ステージ)(限局期、進行期)によって異なります。原発部位は胃と胃以外の臓器の2つに大別され、治療が異なります。

図1、2は、MALTリンパ腫の治療の大まかな流れです。担当医と治療方針について話し合う参考にしてください。

各治療については、「悪性リンパ腫 —治療—」もご参照ください。
治療後の通院や社会復帰のタイミングについては、「悪性リンパ腫 —生活と療養—」をご参照ください。

1)胃MALTリンパ腫

(1)限局期

胃MALTリンパ腫の限局期では、ピロリ菌の感染の有無を確認し、陽性の場合は除菌療法が行われます。除菌療法の効果がなかった場合やピロリ菌が陰性の場合は放射線治療を行い、さらに効果がなければ化学療法を行います。
図1 胃MALTリンパ腫(限局期)の治療
図1 胃MALTリンパ腫(限局期)の治療
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)より作成
1. 除菌療法
ヘリコバクター・ピロリに感染している場合は、まず除菌療法を行います。プロトンポンプ阻害薬、アモキシシリン、クラリスロマイシンという3つの薬剤を1週間内服します。多くの場合、除菌は成功しますが、除菌不成功の場合は、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変えて再度除菌療法を行います(二次除菌)。除菌療法が成功すれば、MALTリンパ腫も高い割合で縮小し、長期の完全奏効(がん細胞が認められなくなる)が得られています。
2. 放射線治療
除菌に失敗した場合、また除菌に成功したにも関わらずリンパ腫が増大する場合、あるいはヘリコバクター・ピロリが陰性の場合は、放射線治療を行います。放射線治療によって、多くの場合MALTリンパ腫は消失します。
3. 経過観察
除菌療法後、MALTリンパ腫が消失するまでは、数カ月から数年かかることもあるため、長期にわたって経過をみることが大切です。また、病変が粘膜を越える場合や、隣接する臓器・リンパ節に浸潤(しんじゅん)していた場合は、除菌療法の効果が低下するため、放射線治療の実施も考慮しながら経過観察します。

(2) 進行期

胃MALTリンパ腫が進行期で診断された場合、または限局期で放射線治療の効果がなかった場合は、低悪性度B細胞リンパ腫の代表疾患である濾胞性リンパ腫の治療方針に従って、化学療法や無治療経過観察が行われます。

濾胞性リンパ腫の治療方針については、「濾胞性リンパ腫」をご参照ください。
1. 化学療法
症状や臓器障害(出血など)、巨大な腫瘤(しゅりゅう)がある場合、確実に病気が進行している場合などでは化学療法を行います。化学療法では、シクロホスファミド、フルダラビン、クラドリビン、リツキシマブなどを単剤で使用します。
2. 無治療経過観察
定期的な診察と内視鏡検査で経過観察を行います。病状が進行してきたときには、化学療法も検討されます。

(3) 再発時の治療

再発時にはまず、もう一度病理診断を行います。これは、がん細胞が今までのMALTリンパ腫とは異なるがん細胞に変化している場合(組織学的進展)や初発診断のときの生検では腫瘍の一部を採取して検査を実施しているため、必ずしも全体像が反映されていなかった可能性があるからです。多くの場合、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)への変化や混在がみられます。その場合は、胃原発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫として治療します。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫でなかった場合は、低悪性度B細胞リンパ腫の代表疾患である濾胞性リンパ腫の治療に準じて、治療法が選択されます。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針については、「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」をご参照ください。

2)胃以外のMALTリンパ腫

胃以外の臓器(大腸、肺、甲状腺、唾液腺、乳腺、眼科領域など)に発生したMALTリンパ腫も、限局期と進行期で治療が異なります。
図2 胃以外のMALTリンパ腫の治療
図2 胃以外のMALTリンパ腫の治療
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)より作成

(1) 限局期

限局期では、放射線治療や手術による局所療法が主体となりますが、注意深い経過観察も選択肢の1つとなります。

(2) 進行期

進行期で診断された場合は、濾胞性リンパ腫の治療に準じて、治療法が選択されます。症状がない場合は、慎重に経過観察を行う場合もあります。

3)脾B細胞辺縁帯リンパ腫

非常にまれな疾患として、脾臓(ひぞう)の縁の部分になる辺縁帯から発生した脾B細胞辺縁帯リンパ腫があります。治療は、C型肝炎ウイルスがある場合、その治療を優先します。C型肝炎ウイルスがなく、脾臓の腫れや血液中の白血球赤血球血小板の数が減るなどの症状がある場合は、脾臓摘出かリツキシマブ単剤の投与が考慮されます。
【参考文献】
  1. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版;金原出版
  2. 日本血液学会、日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月 第1版;金原出版
  3. 日本リンパ網内系学会教育委員会:レベルアップのためのリンパ腫セミナー, 2014年6月;南江堂
  4. Swerdlow, S.H. et al. eds.: WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues., 2008; IARC.
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