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がん検診

がん検診について

現在わが国のがんによる死亡者数は年間37万人を超え、死亡原因の第1位です。そのうち、主に20歳~60歳代前半の働く世代の方のがん死亡者数は全体の約1割ですが、40歳を過ぎると年齢とともにがん死亡者数は増えていきます。

がん検診を受けることは、がんを無症状のうちに早期発見・早期治療し、がんで亡くなることを防ぐことにつながります。ただし、がん検診には利益だけでなく、さまざまな不利益もありますので、数多く受ければよいというものではありません。

このページは働く世代の方に向けて、正しいがん検診の選び方(その年代で受けるべき検診)や、検診を受ける前に知っていただきたい情報をまとめたものです。がん検診に関する理解を深め、正しい知識を持って適切に受診しましょう。

1.がん検診の分類と職域検診

日本のがん検診は大まかに、市区町村が実施する住民検診、事業者や保険者が実施する職域検診、その他のがん検診(個人が任意に受ける検診)に分かれます。

図1 がん検診の大まかな分類
図1 がん検診の大まかな分類

事業者には「定期健康診断」、保険者には「特定健康診査」の年1回の実施がそれぞれ義務づけられていますが、がん検診はこれらに含まれていません。がん検診の実施は任意となっており、職域によっては「定期健康診断」や「特定健康診査」などに付加する形で行われています。「定期健康診断」と「特定健康診査」を受けただけでは「がん検診」を受けたことになりませんので、ご注意ください。

職域の健康診断の案内が届いたら、まずがん検診が含まれているか、および検診内容(検査項目、対象年齢、受診間隔)を確認してください。

職場でがん検診を受けられない場合、また検診内容がこのページで紹介するものと異なる場合は、お住まいの市区町村の住民検診を受診しましょう。

基本的に住民検診は規定年齢で対象となる人はどなたでも受診可能です。住民検診の内容や受診方法については、お住まいの市区町村のがん検診担当窓口、ホームページ、広報誌などでご確認ください。

お勤め先を退職された方は、積極的に住民検診を受診しましょう。

2.どんながん検診を受けるべきか

1)科学的根拠が確立したがん検診を受診しましょう

「科学的根拠が確立した」とは、新たに開発された技術や高名な専門家の意見という意味ではなく、手順を踏んで本当に効果があったかどうかの研究結果が公表されている、お墨付きがあるものを指します。

がん検診には利益と不利益があります。がんで亡くなることを防ぐためには、がん死亡を減らす効果が確実で、かつ、利益が不利益を上まわる検診を受けることが大切です。現在国は、これらの要件を満たすことが科学的に認められた検診(表1)の受診を推奨しています。

表1 国が推奨するがん検診の一覧
種類 検査項目 対象年齢 受診間隔
胃がん検診 問診および、胃部X線検査※1または
胃内視鏡検査のいずれかを選択
50歳以上 (いずれか一方を)
2年に1回
大腸がん検診 問診および便潜血検査(免疫法) 40歳以上 1年に1回
肺がん検診 問診※2および胸部X線検査および喀痰細胞診※3 40歳以上 1年に1回
乳がん検診 問診※2および、マンモグラフィ
※視診・触診の単独実施は推奨しない
40歳以上 2年に1回
子宮頸がん検診 問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診 20歳以上 2年に1回
※1当分の間、胃部X線検査については40歳以上、1年に1回の実施も可とされています。
※2肺・乳がん検診の問診では必ずしも医師が対面で聴取する必要はなく、自記式の質問用紙に記入することで問診の代わりとしてよいことになっています。
※3喀痰細胞診の対象は、50歳以上で、喫煙指数(1日本数×年数)が600以上の方です。
出典 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」
厚生労働省「職域におけるがん検診に関するマニュアル」

(1)がん検診の利益

がん検診の主な利益は、標的とするがんによる死亡を防ぐことです。そのほか、早期発見により治療が軽度ですむこと、本当にがんがない人が検診で「異常なし」と診断されることで安心して生活できることも利益です。

子宮頸がん検診と大腸がん検診では、がんだけではなく、がんになる前の病変も見つけて治療することにより、がんになることを防ぎます。また、その結果としてがんで亡くなることを防ぎます。

(2)がん検診の不利益

がん検診の主な不利益は、偽陰性、偽陽性、過剰診断、偶発症です。がん検診を受診した人はどなたでも、これらの不利益を受ける可能性があります。

偽陰性

実際にはがんがあるのに、精密検査が不要と判定されることです。その結果、がんの治療が遅れます。がんは発生してから一定の大きさになるまでは発見できませんので、1回の検診で確実に見つかるとは限りません。そのため、がん検診は1回だけではなく、適切な間隔で定期的に受け続けることが大事です。

偽陽性

実際にはがんがないのに、がんの疑いあり(精密検査が必要)と判定されることです。それにより、本来受ける必要のない精密検査(医療行為)で心身に負担がかかります。また、精密検査で問題ないことが判明するまで、不安な日々を過ごすことになります。

がん検診の仕組みは、まずがんの疑いがある人(精密検査が必要な人)を広く拾い上げ、その中からがんがある人を診断するシステムですので、偽陽性をゼロにすることはできません。

図2 がん検診受診者1万人の結果の内訳
図2 がん検診受診者1万人の結果の内訳
*子宮頸がん+CIN3(高度異形成・上皮内がん)は14人
出典 厚生労働省、2019年度「地域保健・健康増進事業報告」

過剰診断

命に別条のないがん(成長スピードが極めて遅いなどの理由により、治療をしなくても命を脅かさないがん)を検診で発見することです。発見したがんが本当に治療しなくてもよいかを正確に識別することは難しいため、(本当は過剰診断であったとしても)治療が行われます。その結果、本来不要な治療により、身体的、心理的、経済的負担がかかります。

偶発症

検診や精密検査での医療行為による合併症を指します。例として、内視鏡による出血や穿孔せんこう、バリウムの誤嚥ごえんや腸閉塞へいそく、放射線被ばくなどがあります。また出血や穿孔により、極めてまれですが、死亡に至ることがあります。

2)がん検診は適切な年齢、および適切な受診間隔で受けましょう

検診の利益と不利益のバランスに基づいて、国は「表1 国が推奨するがん検診の一覧」の対象年齢と受診間隔を推奨しています。

表1より若い年代ではがんにかかる人が少なく、有効性も確認されていないため、がん検診の利益より不利益が大きくなります。必ず表1の年齢に達してからがん検診を受診してください。

1回のがん検診ですべてのがんが確実に見つかるとは限りませんので、がん検診は定期的に受けることが大事です。ただし、必要以上に間隔を詰めて多く受診しても、検診の利益はあまり増えないものの、検診回数の増加とともに不利益はどんどん大きくなります。必ず表1の適切な間隔で受診してください。

なお、現在がんや前がん病変で治療中の方は、そのがん検診の対象にはなりません。がん検診の再開時期については、治療終了後に主治医とご相談ください。

3)科学的根拠が明確でないがん検診の考え方

現時点で「表1 国が推奨するがん検診の一覧」にない検診項目は、がんで亡くなることを防ぐ科学的根拠が不明、または現在検討中で結論が出ていないため、国は推奨していません。

これらの検診を受診することで、がんで死亡することを防げるという利益があるかどうかはまだ分かっていません。一方で、偽陰性、偽陽性、過剰診断、偶発症といった不利益は必ず一定の割合で起こります。「多少の不利益は我慢しても、がんを確実に見つけることを優先したい」と思われるかもしれませんが、検診では偽陰性の可能性が必ずありますので、確実にがんが見つけられるとは限りません。

職場によっては定期健康診断等に人間ドックが付加され、オプション項目として、高性能の検査機器や最先端の技術(CT、PET、腫瘍マーカーなど)を使った検査が選べるようになっています。これらはがんの再発や転移を調べるための検査としては大変重要ですが、がん検診としての効果(がん死亡を減らす効果が確実、かつ、利益が不利益を上まわる)は認められていません。最近では、血液や尿からがんのリスクを調べる新たな検査法も開発されていますが、がん検診としての効果はまだ十分に検証されていません。また、これらの検査が異常値となったあとにどう行動すればよいかの流れが明確に示されていません。

以上の理由から、「表1 国が推奨するがん検診の一覧」の5つのがん検診以外の受診はお勧めできません。もし迷っている場合は、今のご自身の年齢や健康状態を踏まえ、受診した場合の利益と不利益を十分に考慮して決めてください。ご自身が納得した上で受けることが大事ですので、疑問があれば、お勤め先や健康保険組合等の窓口に相談して説明を受けましょう。

事業者や保険者に求められる受診者への対応

事業者には「定期健康診断」、保険者には「特定健康診査」の年1回の実施がそれぞれ義務づけられており、このうち「定期健康診断」では従業員に受診の義務があります。一方、「がん検診」の実施は任意であり、従業員に受診の義務はありません。従業員ががん検診を受けない選択をしたことで職場から不当な扱いを受けないよう、事業者には配慮が求められます。

また、国のがん対策としては、がん死亡を減らす効果が確実な検診項目を、規定年齢に達した人が適切な間隔で積極的に受けることを推進していますが、国が推奨しない検診項目については、不利益を避ける観点から、従業員の受診しない選択をより尊重することが重要とされます。

この点について、国立がん研究センターでは、がん検診を実施する事業者、保険者、検診を行う医療機関等に情報提供を行うだけでなく、厚生労働省に全国への周知徹底を求めるなどの活動を続けていきます。

4)現在気になる症状がある場合には、検診を待たずに医療機関で受診しましょう

がん検診はがんの症状が出ないうちに受けることに意義があります。症状が出てからでは、検診は役に立たない場合があるからです。

以下のような自覚症状がある方は、がん検診ではなく、医療機関で受診して、診断のための適切な検査を受けてください。

  • 胃の痛みや不快感、食欲不振、食事がつかえる
  • 血便が出る、腹痛、便の性状や排便の回数の変化
  • 血痰けったんが出る、長引くせき、胸の痛み、声のかれ、息切れ
  • 乳房にしこりやひきつれがある、乳首から血性の液が出る、乳首の湿疹やただれ
  • 月経(生理)以外に出血がある、閉経したのに出血がある、月経が不規則

5)がん検診を受ける検診機関の探し方

検診機関(医療機関)はあらかじめ指定されている場合や、提示された医療機関リストの中からご自身で探す場合などがあります。

ご自身で検診機関(医療機関)を探す場合には、ホームページなどで、がん検診を行っているか、検査項目は何かを確認してください。

お住まいの市区町村で住民検診を行う施設を探すこともよい方法です。住民検診では、検診機関の設備や検査手順等について、国による一定の基準が設けられています。また、市区町村は、住民検診を委託した検診機関に対し、その基準に従って住民検診が実施されているかを確認することが求められています。

3.がん検診の流れ

がん検診では、検診(がん疑いの選別)・精密検査を経て、「がんがある」/「がんがない」を診断します

がん検診の流れは、まず精密検査が必要な人をふるい分け、最終的に「がんがある」/「がんがない」を診断します。

また子宮頸がん検診と大腸がん検診では、「がんがある」/「がんがない」に加えて、「前がん状態がある」/「前がん状態がない」も診断します。

がん検診結果の通知を受け取ったら、まずがんの疑いがあるか(精密検査が必要かどうか)を確認します。特定健診とがん検診の結果が同時に通知される場合が多いので、がん検診として受けた検査項目の結果欄を確認してください。例えば、胃がん検診なら胃部X線/胃内視鏡検査、大腸がん検診なら便潜血検査の結果欄を見ます。

がん検診の結果は、基本的に「がんの疑いなし(精密検査不要)」/「がんの疑いあり(要精密検査)」のいずれかで通知されます。「要精密検査」と記載されている場合はがんの疑いがあるため、精密検査を受けるように指導されます。

結果の見方が分からない場合は、がん検診を受けた検診機関にご相談ください。検診機関に聞きにくい場合は、お勤め先や健康保険組合等の窓口を通して聞く方法もあります。

図3 がん検診の流れ
図3 がん検診の流れ

1)検診判定が「がんの疑いなし(精密検査不要)」の場合

がんは1回の検診で見つからないこともありますので、適切な間隔で検診を繰り返し受けることが大事です。「表1 国が推奨するがん検診の一覧」に従って、次回のがん検診を受診してください。

前回のがん検診で「がんの疑いなし(精密検査不要)」となっても、次回の検診を受けるまでの間に急に大きくなるがんもあります。何か気になる症状があらわれた場合は、次回の検診を待たず、すぐに医療機関を受診してください。

がん検診はがんの種類ごとに分かれており、対象とするがん以外は基本的に見つけることができません。また、がん検診ではがん以外の疾患は基本的に見つけることはできません。何か症状がある場合は、検診を受けたがん以外に原因があることも考えられますので、すぐに医療機関を受診しましょう。

2)検診判定が「がんの疑いあり(要精密検査)」の場合

必ず精密検査を受けてください。医療機関でより詳しい検査を行い、本当にがんがあるかを調べる必要があります。

要精密検査と判定されたからといって、必ずしもがんであるというわけではありません。実際にがんと診断されるのはごくわずかです。しかし、「症状がない」「健康だから」といった理由で精密検査を受けないと、もしがんがあった場合、診断が遅れ、がんが進行してしまう恐れがあります。必ず精密検査を受けましょう。

厚生労働省から公表されている令和元年度「地域保健・健康増進事業報告」の結果によると、「がんの疑いあり(要精密検査、以下要精検者)」と判定された人のうち、実際にがんが見つかる割合は、胃がんでは約1.9%(要精検者約50人に1人)、大腸がんでは約3.1%(要精検者約30人に1人)、肺がんでは約2.8%(要精検者約35人に1人)、乳がんでは約5.6%(要精検者約18人に1人)、子宮頸がんでは約1.4%(要精検者約70人に1人)でした。

3)検診判定が「要再検査」/「要経過観察」の場合

基本的にがん検診の判定結果は「がんの疑いなし(精密検査不要)」か「がんの疑いあり(要精密検査)」のいずれかで通知するべきであり、「要再検査」や「要経過観察」の判定は本来ありません。もしこのような通知を受け取った場合は、以下のようなことが考えられますので、ご自身の状況を確認することが大事です。

「要再検査」とは、例えばX線写真が不明瞭で読影できなかった場合や、細胞診で検体の採り方が不適切なため判定できなかった場合などが該当します。いつ再検査を受けるのか(その費用はどうなるのか)、あるいは精密検査を受けた方がよいのかなどを確認してください。

また「要経過観察」の通知を受けた場合は、「どの臓器についての判定か」「がんの疑いがあるのか、あるいは、がん以外の疾患で要経過観察となっているのか」などを確認してください。本来であれば、「要経過観察」は例えばコレステロール値が高いなど、がん検診以外の健康診断で用いられる分類であり、がん検診の判定では用いられません。

お困りの場合は、がん検診を受けた検診機関にご相談ください。検診機関に聞きにくい場合は、お勤め先や健康保険組合等の窓口を通して聞く方法もあります。

4)精密検査でがんが発見されたら

主治医と相談しながら、がんの治療が行われます。大腸がん検診や子宮頸がん検診で前がん病変が見つかった場合には、その状態によって治療が行われます。

次にいつ検診を受けるかについては主治医とご相談ください。

5)精密検査でがんが発見されなかったら

「表1 国が推奨するがん検診の一覧」に従って、適切な間隔で次回のがん検診を受診してください。

4.精密検査について

あらかじめ精密検査の方法を知っておきましょう。

1)精密検査機関(医療機関)の探し方

がん検診の精密検査は、胃がん、大腸がんでは消化器の専門医がいる医療機関、肺がんでは呼吸器の専門医がいる医療機関、乳がんでは乳腺外科または乳腺外来のある医療機関、子宮頸がんの精密検査ができる婦人科のある医療機関で受診して行われます。

医療機関によっては精密検査ができない場合があります。精密検査の項目については、次の項「5.各がん検診について(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん)」の各検診の詳細ページをご参照ください。医療機関の予約時には、これらの検査ができるかを確認してください。

検診結果が通知される際、精密検査が受けられる医療機関のリストが同封されている場合は、リストを参考に医療機関を選んでください。医療機関のリストがない場合は、がん検診を受けた検診機関、お勤め先や健康保険組合等の窓口にご相談ください。お住まいの地域によっては、住民検診の精密検査機関のリストがホームページ等で公表されている場合もあります。

2)精密検査機関の受診時に持参するもの

精密検査は保険診療ですので、健康保険証を持参してください。検診結果通知のほか、レントゲン写真など検診データの持参を求められることがありますので、医療機関の予約時に確認してください。

5.各がん検診について(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん)

各検診の詳細についてはこちらのページを参照してください。

こちらのちらしでは、働く世代の方に向けて、各がん検診について知っていただきたいポイントを、コンパクトにまとめています。

こちらのちらしと動画では、働く世代の方に向けて、適切ながん検診の受け方とその内容について解説しています。

作成協力

こちらのページは、国立がん研究センター研究開発費「働く世代におけるがん検診の適切な情報提供に関する研究(2021-A-22)」の研究成果を基に作成されました。

更新・確認日:2024年04月01日 [ 履歴 ]
履歴
2024年04月01日 ちらし「子宮頸がん検診」「がん検診の適切な受け方」を更新しました。
2023年12月25日 「がん検診について もっと詳しく」の内容を吸収し、「がん検診について」に集約して更新しました。また、働く世代の方に向けて、ちらしと動画を掲載しました。
2019年09月02日 「がん検診について」を「がん検診 まず知っておきたいこと」「がん検診 もっと詳しく知りたい方へ」に分割し、内容を更新しました。
2016年04月08日 「がん検診について」の「5.がん検診の効果とは?」「6.部位別がん検診の実際」について、 厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年 一部改正)」に従って、更新しました。
2011年08月03日 「がん検診について」を更新しました。
2006年10月01日 「がん検診について」を掲載しました。
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