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1.がんの3大治療法の1つ

放射線治療は、手術、薬物療法と並ぶがんの3大治療法の1つです(図1)。手術と同様、局所に対する治療ですが、手術のように臓器を取り除いたりすることなくがんの部分に放射線をあてて治療します。胸部Xエックス線撮影と同様に、放射線があたっても、痛みや熱を感じることはありません。

治療の目的は、完治を目指す場合と苦痛を緩和する場合の2つに分かれます。単独で行われることもありますが、手術や薬物療法と併用されることもあります。

図1 がんの3大治療法
図1 がんの3大治療法の図

2.放射線治療の仕組み

放射線は自然界にも存在するものですが、医療においては人工的にある種の放射線をつくり出して、診断や治療に利用します。放射線治療では、腫瘍を標的とし、治療に必要な最低限の周りの正常組織を含めて放射線をあてます。

放射線治療を行う前提となっているのは放射線照射による危険性よりも患者の利益が十分に大きいことです。また、放射線治療の実施にあたっては、副作用が発生しないよう、あるいは極力小さくなるように細心の注意が払われています。

がんは細胞の遺伝子異常により分裂・増殖の力が強くなっていますが、一方で遺伝子(DNA)に傷がつきやすい・修復の力が弱いという特徴をもっています。放射線は細胞内のDNAを切断してがん細胞にダメージを与えます(図2)。

図2 放射線治療の仕組み
図2 放射線治療の仕組みの図

3.治療の流れ

主治医により放射線治療が提案されたら、まず放射線腫瘍医(放射線治療を専門とする医師)による診察を受けます。その後、治療法が検討され、治療のためのシミュレーション、治療計画の作成などを経て放射線の照射が開始されます。放射線治療は通院治療が一般的で、治療期間中は定期的に診察を受けます。

放射線治療の検討から実施までの大まかな流れは、「放射線治療の実際 2.治療の流れ」をご参照ください。

4.放射線の種類、治療の装置と方法

現在、治療用放射線としては、X線、電子線、陽子線、重粒子線、αアルファ線、βベータ線、γガンマ線、中性子線などが用いられています。

放射線治療装置としては、高エネルギーX線を発生させるリニアックと呼ばれる装置が一般的です(図3)。

図3 リニアック装置の例
図3 リニアック装置の例の図

高い治療効果と少ない副作用を目指して、がん細胞に多くの放射線量を照射し、周りの正常組織にはできる限り少ない量の放射線を照射する方法が開発されています。最近では陽子線や重粒子線を用いた治療も注目され、保険適応の範囲も広がってきています。

放射線治療では、体の外から放射線をあてる外部照射が一般的です。治療中に痛みはありませんが、照射中は動かずにじっとしていることが必要です。ほかには、放射性物質を体内に挿入する小線源治療や、飲み薬や注射で投与する核医学治療があります。

放射線治療の時間は治療によって変わりますが、おおむね10~30分で、照射は土日と祝日を除き、毎日行うことが一般的です。ほとんどの患者は通院で治療を受けており、多くは通常の日常生活を続けることができます。

それぞれの装置や治療方法については、「放射線治療の種類と方法 3.治療の方法:外部照射」「放射線治療の種類と方法 4.治療の方法:内部照射」をご参照ください。

5.副作用、治療中のサポート

放射線は正常組織にも影響を与えますが、正常組織は、がん細胞ほどには放射線の影響を強く受けません。治療内容や部位によって副作用の症状もそれぞれです。

放射線治療の副作用は、放射線治療中または終了直後に起こるもの(急性期)と、終了してから半年から数年たった後に起こるもの(晩期)があります。また、放射線治療の副作用は、全身的なものと、治療される部位に起こる局所的なものがあります。

治療が決まったら、医師や看護師から、予想される症状や注意点、対処方法などの説明がありますのでよく聞いておきましょう。

一般的な副作用については、「放射線治療の実際 4.副作用と対策」をご参照ください。

放射線治療では、治療内容によって、治療終了まで何週間もかかる場合があります。体の変化や気持ちのつらさを感じたときは、ひとりで抱え込まずに周りの医療スタッフに遠慮なく相談するようにしてください。

6.費用について

標準治療の中で行われる一般的な放射線治療は、公的医療保険の対象です。一方で、例外的に、先進医療として一部の医療機関でのみ行われる治療法があります。この場合、保険が適用されない部分の費用は、自己負担になります。詳しくは、医師、もしくはがん相談支援センターにご相談ください。

また、先進医療などの治療については、「放射線治療の種類と方法 5.先進医療などの研究段階の医療として行われている放射線治療」をご参照ください。

7.参考資料

  1. 日本放射線腫瘍学会編.放射線治療計画ガイドライン 2020年版.2020年,金原出版.
  2. 日本放射線腫瘍学会編.患者さんと家族のための放射線治療Q&A 2020年版.2020年,金原出版.
  3. 日本放射線腫瘍学会ウェブサイト.パンフレット 放射線治療を受けられる方へ;2021年(閲覧日2023年2月10日)https://www.jastro.or.jp/
  4. (公財)がん研究振興財団ウェブサイト.刊行物 知っておきたい放射線治療 改訂版;2022年(閲覧日2023年2月10日)https://www.fpcr.or.jp/index.html

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更新・確認日:2023年04月06日 [ 履歴 ]
履歴
2023年04月06日 内容を更新しました。
2017年04月14日 内容を更新し、タイトルを「放射線治療総論」から「放射線 治療の基礎知識」に変更しました。
2006年09月14日 更新しました。
1999年08月10日 掲載しました。
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