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吐き気・嘔吐(おうと)

更新日:2004年12月02日    掲載日:1996年05月30日

1.嘔気(吐き気)・嘔吐とは

嘔気は胃の中にあるものを吐き出したいという切迫した不快感を指し、嘔吐とは胃の中の内容物が食道・口から逆流して勢いよく外に吐き出される状態をいいます。通常、食事をとると消化管(食道・胃・腸など)で食物をやわらかくし、消化液(唾液・胃液・膵液・胆汁または十二指腸液など)と混ざりあいます。その飲食物中に含まれている栄養素を、小腸の壁から血液またはリンパ管を通り吸収できるように分解します。分解された栄養素は、体内に吸収され、私たちの身体を維持し、生活を営むためのエネルギーとなります(これを消化・吸収といいます)。

嘔気・嘔吐は何らかの原因により、延髄(えんずい)にある嘔吐中枢が刺激されておこります(この刺激が軽度であれば嘔気、さらに進めば嘔吐となります)。ここに刺激が加わると胃の出口が閉ざされ、反対に胃の入口が緩み、胃に逆流運動がおこります。それとともに横隔膜や腹筋が収縮して胃を圧迫し、胃の内容物が排出される仕組みです。

2.嘔気・嘔吐の原因

原因はいろいろありますが、がんに関係したもので代表的なものには以下のものがあります。

1)化学療法による副作用

中枢神経には、嘔吐を誘発する物質に反応して嘔吐中枢を刺激する部分があります。これは、血液中の化学物質の影響を受けやすく、抗がん剤治療による嘔吐は、主にこのルートによりおこりやすいと考えられています。また、ある種の抗がん剤は末梢の神経を介し嘔吐中枢を刺激します。

化学療法による嘔気・嘔吐には症状のあらわれ方によって、大きく以下の3つに分かれています。

(1)急性悪心・嘔吐

化学療法開始後より24時間以内に出現するものです。

(2)持続性あるいは遅延性嘔吐

薬物投与後24〜48時間よりはじまり、持続するものです。

(3)予測(心因性)嘔吐

以前の嘔吐した体験から脳の中にある大脳皮質を刺激することによっておこるといわれ、主に精神的要因により出現するものです。それぞれ各種制吐剤、向精神薬の適切な使用により症状の軽減がはかられます。

2)放射線療法による副作用

放射線によって体内の細胞が変化をおこし、壊された細胞の成分が血液または神経を介し、嘔吐中枢を刺激しおこります。

3)消化管通過障害

がんの再発・転移による消化管の圧迫・狭窄(きょうさく)、手術後の腸管癒着などの原因でおこります。腹痛、腹部の張り、排便・排ガスがないなどの症状を伴い、食事中・食後に苦しくなり吐くと楽になることもあります。

4)脳圧の上昇

脳腫瘍・脳出血・髄膜炎・脳への放射線照射などにより嘔吐中枢を刺激しておこります。多くの場合、頭痛を伴います。

5)精神的・心理的な刺激

緊張・不安、不快なにおい・音・味覚などが原因となり、これらの刺激が大脳皮質を介して嘔吐中枢を刺激しおこります。個人差が強く、条件反射化されやすい、また、前記すべての嘔吐を増強させる因子(もと)になりやすいといわれています。

3.嘔気・嘔吐による身体への影響

嘔吐によって水分と一緒に胃液・十二指腸液などに含まれる電解質も体外に出てしまいます。電解質(カリウム・ナトリウム・塩素など)は、体内の水分量の調節、神経筋肉の興奮・伝達、体内の水分性状バランス保持(酸性・アルカリ性に傾き過ぎないようにする)などの働きがあります。そのため電解質や水分が多量に失われると、脱力感・倦怠感(けんたいかん:だるさ)・手足のしびれなどの電解質異常症状や口の渇き・皮膚の乾燥・尿量の減少・体重の減少などの脱水症状が出てきます。これらがさらに進むとだんだんと衰弱し、意識障害などをおこすこともあります。

また、嘔吐することによって、消化・吸収の働きが低下し、体内に必要な栄養が行き届かなくなり、栄養状態の低下・体重の減少がおこります。他に、吐物が誤って気道に入ると肺炎、ひどい時には窒息をおこすことがあります。

以上のように身体的な苦痛だけでなく、精神的にも不安・苦痛をもたらします。そして、それらによって食欲がなくなり食事が食べられなくなり、栄養状態が低下することもあります。

4.嘔気・嘔吐への対処法

原因がわからず、頻回に嘔気・嘔吐がおこった場合は病院を受診しましょう。嘔気・嘔吐は身体的な苦痛のみならず、精神的な苦痛も大きいので、少しでも軽くするには次のような工夫があげられます。

1)姿勢

誤嚥(ごえん:食物が喉頭から気管に入ってむせること)を避けるため姿勢は横向きにし、全身の緊張をほぐすために膝を深く曲げたり、意識的に深呼吸などして、気分を楽にしましょう。あおむけにしかなれない場合は、顔を横に向けましょう。また、背を低くして背中をさすってもらいましょう。急に動くと嘔吐を誘発することがあるのでゆっくり動きましょう。胃を安静(胃の運動を抑える)にするために胃に氷嚢などを置き、頭を冷やし、軽く目を閉じて静かにしていましょう。なお、飲食直後、胃の中に内容物が入っている場合は、むしろ嘔吐を誘発させるのもひとつの手です。

2)衛生面

口の中のにおいは嘔気を誘いますので、うがいなどして清潔にしましょう。うがいは番茶、レモン水、炭酸水、氷水などでするとさっぱりします。落ちついたら、氷片などを含むのもよいでしょう。

3)環境の調整

環境の調整も大切です。吐物は速やかに片づける、汚れた寝衣・寝具などは清潔なものと交換する、刺激的な香りの花を置かない、室内は静かに暗くし、時々窓をあけて空気の入れかえをしましょう。

4)食事

嘔吐のある場合は、消化管の粘膜が敏感になっています。食事ごとに吐いてしまうような激しい時は、1〜2食、食事は差し控えてみましょう。この場合でも水分はできるだけとりましょう。水分は、電解質バランス飲料・栄養バランス飲料・ジュースなどが体力保持によいでしょう。

食事がとれそうであれば、食べられそうなものから少量ずつ、または分割して食べてみましょう。食後は、30分前後安静にしましょう。

以下の事項を参考にしてみて下さい。

  • 刺激の少ない消化のよいもの
    お粥・うどん・もち・オートミール・パン・ビスケット・クラッカー・半熟卵・プリン・ヨーグルト・ジャムなど

  • 電解質を多く含むもの
    カリウムを多く含むもの―バナナ・メロンなどの生果物・ほうれん草など野菜類
    ナトリウム・塩素を多く含むもの―ブイヨン・コンソメなどのスープ類・青汁など

  • 食べやすい食品(あっさりとした冷たいもの)
    水分の多い果物・野菜(すいか・みかん・りんご・なし・トマトなど)・アイスクリーム・酢の物・和 え物・梅干しなど

  • 食事の工夫
    • 食べやすいように流動的なものにする
      ミキサーを利用した果物野菜ジュース・すりおろしたリンゴ・スープなど
    • 食欲をそそるために
      柚子・しそ・レモンなどほのかな香りの利用
      ふりかけをかけたり、お茶漬けにしたり、すし飯にしたり、一口大のおにぎりにしたりなど
      食器を小さくしてみたり、小盛に盛ったり、また惣菜は量より種類を増やすなど

5)心理的な補助

心理的な要素も影響しやすいので、身近な人が手を触れたり、背中をさすったり、優しい言葉で不安をとり除くのもよい方法です。

5.受診すべき症状

吐物の性状や回数、嘔気・嘔吐の症状があらわれる時期(食事に関係がないかなど)は、身体の異常を知る大切な目安になりますので、メモでもしておいたほうがよいでしょう。

以下の症状の時は、速やかに受診しましょう。

  • 吐物に便臭がしたり、吐物が血液である
  • 回数・量に関係なく、食事・水分摂取が全くできない時期が2日以上続く
  • 腹痛・腹部の張り・頭痛・発熱・脱力感が激しい
  • 尿量の減少(体重・年齢など個人差はありますが、通常1〜1.5l/日の尿量が300〜500ml/日以下に減少した場合)

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