1.ユーイング肉腫とは
ユーイング肉腫は、主として小児や若年者の骨や軟部組織に発生する肉腫です。粘膜や皮膚などの上皮組織に発生する悪性腫瘍は「がん」といい、骨、軟骨、筋肉や神経などの非上皮組織に発生する悪性腫瘍を「肉腫」と呼びます。小児の骨に発生する悪性腫瘍の中で最も頻度の高い代表的な骨の悪性腫瘍は骨肉腫で、10歳代の思春期、すなわち中学生や高校生くらいの年齢に発生しやすい病気です。ユーイング肉腫は、小児に発生する骨腫瘍では骨肉腫に次いで2番目に多いものです。
肉腫が発生する場所は、肉腫のある場所が領域リンパ節までに限定されている場合(限局性)、四肢(大腿骨、上腕骨、腓骨、脛骨など)が41%で、骨盤25%、肋骨12%となっています。骨肉腫が骨端線と呼ばれる骨が早く成長する部位(骨幹端部)に発生しやすいのに対し、ユーイング肉腫は幹の部分にあたる骨幹部の発生が多いことが知られています(図1)。
発症年齢としては、全体の約半数が10歳から20歳の間(10歳代)に集中しています。また、70%の患者は20歳までに発症し、30歳以上の患者はまれです。
転移(腫瘍細胞が離れた組織に移動して、そこで増えること)は、全体の25%に起こり、転移部位は、肺、骨、骨髄が多く見られます。
2.症状
ユーイング肉腫の症状は、病巣部位の間欠的な痛み(一定の時間を置いて起こる痛み)や腫れが特徴です。また、発熱を伴うこともあります。間欠的な痛みだけの場合や、骨盤などに発症して腫瘤(しこり)が触知(手の指で触って分かること)されにくい場合は、診断が遅れることがあります。
胸部に発症すると、胸に水がたまるがん性胸水を伴う胸膜浸潤(腫瘍が広がること)を合併する例もあります。発症部位によっては、足を動かしにくくなり、排尿障害などで発症に気付くこともあります。
進行すると、骨および周囲軟部組織へ浸潤し、肺や他の骨に転移していきます。
3.発生要因
最近の染色体分析や分子生物学の進歩によって、骨や骨以外のユーイング肉腫、未分化神経外胚葉腫瘍(PNET:Primitive neuroectodermal tumor)、アスキン腫瘍(胸壁に原発するPNET)と呼ばれていた疾患群には、共通の染色体異常があることが分かってきました。
これらは同じ病気の仲間としてユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT:Ewing sarcoma family of tumors)と呼ばれるようになっています。