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細胞ががん化する仕組み

更新日:2016年09月14日 [ 更新履歴 ]    掲載日:2006年10月01日
更新履歴
2016年09月14日 「図2 多段階発がん」、「図3 がん遺伝子の作用」、「図4 がん抑制遺伝子の働き」、「図5 がん抑制遺伝子の不活性化」、「図6 遺伝子突然変異の例」、「図7 遺伝子のエピジェネティックな変異の例」、「図8 分子標的薬の作用の例」、「5.遺伝子突然変異」「8.遺伝子異常の治療への応用」を更新しました。
2006年10月01日 掲載しました。

1.がん細胞と正常細胞の違い

図1 がん細胞を実験動物に注射したあとの様子
図1 がん細胞を実験動物に注射したあとの様子
人間の体は細胞からできています。がんは、普通の細胞から発生した異常な細胞のかたまりです。

正常な細胞は、体や周囲の状態に応じて、ふえたり、ふえることをやめたりします。例えば皮膚の細胞は、けがをすれば増殖して傷口をふさぎますが、傷が治れば増殖を停止します。一方、がん細胞は、体からの命令を無視してふえ続けます。勝手にふえるので、周囲の大切な組織が壊れたり、本来がんのかたまりがあるはずがない組織で増殖したりします。

がん細胞を実験動物に注射すると勝手に増殖を開始し、大きなかたまりをつくります。正常な細胞ではこのようなことはありません。

2.多段階発がん

がん細胞は、正常な細胞の遺伝子に2個から10個程度の傷がつくことにより、発生します。これらの遺伝子の傷は一度に誘発されるわけではなく、長い間に徐々に誘発されるということもわかっています。正常からがんに向かってだんだんと進むことから、「多段階発がん」といわれています。

傷がつく遺伝子の種類として、細胞を増殖させるアクセルの役割をする遺伝子が、必要ではないときにも踏まれたままになるような場合(がん遺伝子の活性化)と、細胞増殖を停止させるブレーキとなる遺伝子がかからなくなる場合(がん抑制遺伝子の不活化)があることもわかっています。

傷の種類として、DNAの暗号に異常が生じる突然変異と、暗号自体は変わらなくても使われ方が変わってしまう、エピジェネティック変異とがあることがわかってきています。

正常な細胞に決まった異常が起こると、その細胞は増殖します。そこに第二の異常が起こると、さらに早く増殖するようになります。この異常の積み重ねにより、がん細胞が完成すると考えられます。
図2 多段階発がん
図2 多段階発がん

3.がん遺伝子

ある遺伝子に傷がついたときに、細胞増殖のアクセルが踏まれたままの状態になる場合があることが知られています。このような遺伝子は、がん遺伝子と呼ばれています。多くの場合、がん遺伝子によってつくられるタンパク質は、正常細胞も増殖をコントロールしていますが、その働きが異常に強くなることにより、細胞増殖のアクセルが踏まれたままの状態になります。

例えば、「myc」と呼ばれるがん遺伝子の場合、1個の細胞あたりの遺伝子の数が増えることにより、「myc遺伝子」によりつくられるタンパク質が増えすぎて、際限ない細胞増殖を引き起こすことがわかっています。また、「ras」と呼ばれる一群のがん遺伝子は、特定の場所に傷がつくと働きが過剰な状態になり、やはり際限ない細胞増殖を引き起こすと考えられています。

このようにがん遺伝子の変化は、特定のタンパク質の働きを異常に強めることにより、がんにつながる増殖異常を引き起こします。したがって、そのタンパク質の作用をうまく抑えるような薬を見つければ、細胞ががん化することを防いだり、すでにできているがんの増殖を抑えたりすることができます。
図3 がん遺伝子の作用
図3 がん遺伝子の作用

4.がん抑制遺伝子

がん遺伝子が車のアクセルとすると、そのブレーキにあたる遺伝子が、がん抑制遺伝子です。がん抑制遺伝子は細胞の増殖を抑制したり、細胞のDNAに生じた傷を修復したり、細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導したりする働きをします。DNAの傷が蓄積するとがん化に結びつくので、修復が必要です。異常細胞が無限に増殖しないように、異常を感知して、その細胞に細胞死を誘導することも必要です。このように、がん抑制遺伝子はブレーキの働きをしていると考えられます。

これまでの研究から、いくつかのがん抑制遺伝子が発見されましたが、代表的なものは「p53遺伝子」、「RB遺伝子」、「MLH1遺伝子」等が知られています。それぞれ細胞死の誘導、細胞増殖の抑制、DNAの修復に重要な働きを持つことがわかっています。
図4 がん抑制遺伝子の働き
図4 がん抑制遺伝子の働き
図5 がん抑制遺伝子の不活性化
図5 がん抑制遺伝子の不活性化

5.遺伝子突然変異

遺伝子の傷はDNAの傷を意味します。ヒトの細胞の中にはDNAが存在し、そこにわれわれの遺伝子が暗号として記録されています。遺伝子突然変異とは、この遺伝子の暗号に間違いが生じることを意味しています。タバコ、食物の焦げ、紫外線等、さまざまな外的要因(発がん要因)が遺伝子突然変異を引き起こすことがわかっています。

もう少し詳しく説明すると、DNAはG、A、T、Cの4種類の文字の組み合わせでできています。さまざまな発がん要因により、これらの文字に間違いが生じると突然変異が起こります。がん遺伝子やがん抑制遺伝子を記録したDNAに間違いが生じた場合、がん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活性化が起こります。

図6では、一塩基置換型、一塩基欠失型、染色体欠失による遺伝子突然変異の例を示します。通常DNAの暗号は、G、A、T、Cの中の3文字の組み合わせで決まります。したがって、赤字で示した「C」という文字が、ほかの文字に置き換わったり、失われたりした場合、まったく意味不明な暗号が伝達されることになります。また、染色体欠失がおきた場合には、暗号自体がなくなってしまうことになります。
図6 遺伝子突然変異の例
図6 遺伝子突然変異の例

6.遺伝子のエピジェネティックな変異

遺伝子の傷は、その突然変異によるものばかりであると思われてきました。しかし、遺伝子突然変異以外にも、細胞が分裂しても薄まることなく、新しくできた細胞に伝達される異常があることがわかってきました。それがエピジェネティックな変異で、具体的には、「DNAメチル化」と「ヒストン修飾」の変化です。特に、DNAメチル化の変化はヒトがんの多くで認められ、多段階発がんのステップとして関与している場合もあることが知られています。

遺伝子の暗号のもとであるG、A、T、Cの4つの文字は、細胞が分裂するときには、その通りに新しい細胞に受け継がれます。DNAメチル化(図7のうち、ピンク色の丸印)も、塩基配列と同じように、もとの通りに受け継がれます。
図7 遺伝子のエピジェネティックな変異の例
図7 遺伝子のエピジェネティックな変異の例

7.遺伝子異常の診断

遺伝子の異常は、正常細胞をがん細胞へと変化させる大変都合の悪い現象ですが、別の見方をすれば、正常細胞とがん細胞を見分けるための決定的な証拠にもなります。したがって、遺伝子異常を応用して、がんの診断や治療ができないかという研究が進んでいます。

例えば大腸がんの早期発見のために、便中に存在する微量のがん細胞の異常DNAや、血中を流れている微量のがん細胞の異常DNAを検出する試みです。がん細胞である決定的証拠の遺伝子突然変異やエピジェネティックな変異を検出することで、がん細胞を見つけようとするものです。

8.遺伝子異常の治療への応用

がん細胞に生じた遺伝子異常によってがん細胞の表面にでき上がる異常タンパク質を標的とした治療法の開発も進んでいます。異常タンパク質のみを認識したり抑制したりすることで、正常細胞に影響を及ぼさず、がん細胞だけを攻撃できる薬(分子標的薬)の開発が行われています。

例えば、イマチニブ(グリベック)という薬は、がん細胞に生じた異常タンパク質のみを抑制することで、白血病を治療することができます(図8)。また、トラスツズマブ(ハーセプチン)は、がん細胞の表面にできる異常タンパク質であるHER2受容体のみを阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。そのため、HER2受容体が過剰に発現するタイプの乳がんにおいて治療に使われます。
図8 分子標的薬の作用の例
図8 分子標的薬の作用の例
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