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成人T細胞白血病/リンパ腫(せいじんてぃーさいぼうはっけつびょう/りんぱしゅ)

更新日:2016年06月30日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2016年06月30日 タブ形式に変更しました。「造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月(第1版)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」より内容を更新し、タイトルを「成人T細胞白血病/リンパ腫」に変更しました。
2006年10月01日 「成人T細胞白血病リンパ腫」を掲載しました。

1.成人T細胞白血病/リンパ腫とは

血液の中にある血液細胞には、外部から体内に侵入した細菌やウイルスなど異物の排除などを役割とする白血球、酸素を運搬する赤血球、出血を止める働きがある血小板があります。これらの血液細胞のもとは造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)と呼ばれ、骨の内部にある骨髄(こつずい)で生成され、増殖しながら分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)して血液細胞をつくります(図1)。造血幹細胞は骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれ、前者から赤血球、血小板、顆粒球(かりゅうきゅう)単球が産生され、後者からはB細胞、T細胞、NK細胞などのリンパ球が産生されます。顆粒球、単球、リンパ球を合わせて白血球と呼びます。
図1 造血幹細胞から血液の分化について
図1 造血幹細胞から血液の分化について
図2 末梢血中の花細胞
図2 末梢血中の花細胞
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成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL:adult T-cell leukemia-lymphoma)は、HTLV-1(human T-lymphotropic virus type-Ⅰ)というウイルス感染が原因で、白血球の中のT細胞に感染し、感染したT細胞からがん化した細胞(ATL細胞)が無制限に増殖することで発症します。ATL細胞は、核部分が花びらのような形をしている「花細胞(flower cell)」であることが特徴です(図2)。HTLV-1ウイルスに感染しても必ずしも発症するわけではありませんが、他の白血病やリンパ腫より病状がさまざまで、根治が難しい場合もあります。

2.症状

ATL細胞は血液中だけではなくリンパ節でも増殖するため、多くの場合はリンパ節の腫れがみられます。病変の広がりは全身性で、脾臓(ひぞう)や肝臓、肺、消化管、中枢神経系に及ぶこともあり、半数以上で皮膚に病変があります。病型は「急性型」「リンパ腫型」「慢性型」「くすぶり型」に分類され、病型によって症状が異なります。
【症状について、さらに詳しく】

1)急性型

ATL細胞が血液中で増殖するため、白血球数が著しく増加します。皮膚の発疹やリンパ節の腫脹(しゅちょう:はれ)があり、高カルシウム血症(便秘、全身倦怠感、意識障害などの症状、溶骨病変を伴う場合もある)が起こる場合が多く、肝臓や脾臓が腫大(腫れた状態)するために全身症状が起こり、早急な治療が必要です。また、免疫を担当する白血球のT細胞ががん化しているため、免疫力が低下して、健康なときには害がないような弱い細菌や真菌(カビ)、ウイルスなどによって感染症(日和見[ひよりみ]感染症)を起こしやすくなります。慢性型やくすぶり型から急性型への移行は約25%程度ですが、一般的には長い時間を経て移行します。

2)リンパ腫型

ATL細胞は血液中には増殖していませんが、急性型と同様に重症化していることが多く、早急な治療が必要です。大きなリンパ節腫脹や皮膚病変などがあり、急性型とリンパ腫型の皮膚病変は、結節腫瘤型(1cm以上のかたまり病変が増殖)や紅皮症型(体表面積の80%以上の紅斑性病変)で重症である場合が多いとされています。

3)慢性型

慢性的に病状が経過し、剝脱性皮疹(はくだつせいひしん:皮膚が赤くはがれやすくなる)がよくみられます。皮膚に病変がある場合を除けば、症状はほとんどありません。

4)くすぶり型

皮膚や肺に病変がある場合を除けば、症状はほとんどありません。
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3.原因

原因は、HTLV-1というウイルス感染です。HTLV-1に感染した白血球の中のT細胞が正常なリンパ球に直接接触すると他人にも感染しますが、多くの場合は発症することはなく経過し、発症した場合でも感染者のごく一部で、約30~50年間の潜伏期間があります。HTLV-1ウイルスに感染しても発症しない人を「キャリア」といいます。

感染経路は、母乳による母子感染、輸血、性交による感染です。発症につながる重要な感染経路は母乳による母子感染であるため、発症率が高い地域では妊婦検診で抗HTLV-1抗体検査などの検査を行い、母子感染予防の対策が行われています。輸血による感染は、献血のときに抗HTLV-1抗体検査を行い、陽性者の血液を使用しなくなったことから感染することはなくなりました。また、性交による夫婦間の感染は、発症までの潜伏期間が長いため、夫婦間で感染した後に発症したという報告はありません。発症の危険因子としては、母子感染、高齢者、血液中のウイルス量が高い、家族に発症した人がいる、他の病気の治療中にHTLV-1陽性が判明したことなどがあります。

4.疫学・統計

世界の中でも日本の西南部(九州・沖縄地方)に多く、1977年に日本ではじめて提唱された疾患です。日本でのHTLV-1感染者(キャリア)は、西南日本沿岸部を中心に110万人ほど存在し、感染者の発症率は年間1,000人に0.6~0.7人です。日本以外では、中央アフリカや中南米に比較的多く発症し、HTLV-1感染者が多い地域と一致しています。感染から発症までの潜伏期間が長いためHTLV-1感染者が生涯に発症する確率は約5%程度とされています。
20歳代までの発症は極めてまれで、年齢とともに増加し60歳ごろを発症のピークとして以降徐々に減少します。
【参考文献】
  1. 日本血液学会、日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月 第1版;金原出版
  2. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版;金原出版
  3. Swerdlow, S.H. et al. eds.: WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues., 2008; IARC.
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