下咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス]
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下咽頭がん(かいんとうがん)

更新日:2013年03月25日 [ 更新履歴 ]    掲載日:1997年07月02日
更新履歴
2013年03月25日 内容を更新しました。
2013年03月15日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2004年12月02日 内容を更新しました。

1.手術(外科治療)

下咽頭にできたがんや、頸部リンパ節を切除するために行います。初診時60%以上が進行した状態で見つかる下咽頭がんにおいては、放射線や抗がん剤だけで完治する割合は非常に少ないため、手術が治療の中心となります。がんの手術では、下咽頭に限らず一般に、がんを正常組織で包み込むように余裕を持って切りとるのが大原則です。それが「がんは大きくとらなければいけない」とよくいわれる理由ですが、下咽頭を切除した場合、話したり、食物をのみ込んだりできなくなるので、大きく切除するほど機能が悪くなります。逆に、機能を残そうとすると小さい範囲しか切除できません。現在、がんの根治と機能保存を両立できる手術法が研究、開発されてきています。
【手術の方法について、さらに詳しく】

1)下咽頭・喉頭・頸部食道切除術

現在最もよく行われている手術で、下咽頭および喉頭の全部、頸部食道の一部または全部を切除します。下咽頭がんが喉頭に深く浸潤している場合に行います。切除後の欠損部には、腸の一部または皮膚を移植して食道を再建しますので、食事は今までどおり行えます。しかし、喉頭は全部切除するので発声はできなくなり、呼吸するための穴(気管孔)が一生頸部に開いたままとなります(詳しくは「永久気管孔(永久気管瘻)」を参照してください)。

術後の発声は、人工喉頭などの器具を使ったり、トレーニングで食道発声を習得したりすることによって可能になるため、発声による意思伝達が全くできなくなるわけではありません(詳しくは「発声障害(失声)」を参照してください)。

2)下咽頭・喉頭・全食道抜去術

下咽頭、喉頭の切除については1)と同様に行い、食道についても全部摘除します。切除後は、胃を持ち上げて咽頭の粘膜と縫合(ほうごう)します。食道にもがんがあり、手術が必要な場合や、何らかの理由で腸の移植ができない場合に行います。発声や気管孔については1)と同じです。また、「食道がん 生活と療養」も参考にしてください。

3)下咽頭部分切除術

喉頭の一部または全部を保存しながら下咽頭の一部を切除する方法であり、がんが喉頭に浸潤していないか、浸潤していても軽度の場合に行います。切除後は欠損の大きさによって下咽頭の粘膜を一時的に縫い縮めておいて、順次腸や手足の皮膚を移植して再建します。術後発声は可能であり、気管孔も必要ない場合がほとんどです。この術式は食事や発声の機能を保存でき、QOLの低下が少ない方法ですが、全ての下咽頭がんに行えるわけではありません。がんの広がり具合や年齢、持病の有無などにより、この手術が行えるかどうかが決まります。

4)頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)

下咽頭がんが頸部リンパ節に転移していたり、転移している可能性が高い場合に行います。上記の下咽頭に対する1)、2)、3)の手術と同時に行ったり、下咽頭への放射線治療後、頸部転移に対して単独で行ったりします。下咽頭がんから頸部リンパ節への転移は、がん細胞が頸部のリンパ管を通ってリンパ節へ到達して起こるので、リンパ節のみ切除してもあまり意味がなく、リンパ管とリンパ節(リンパ系)を根こそぎ切除してはじめて意味があります。リンパ系は主に頸部の皮膚裏面の脂肪組織の中に含まれるので、頸部郭清術はその脂肪組織を切除することになります。脂肪組織の中には重要な血管や神経もあるので、それらを傷つけないように脂肪組織だけを切除できれば理想的ですが、転移リンパ節の大きさや周囲への浸潤の程度によっては、神経や血管を残すことができない場合もあります。

5)内視鏡手術

下咽頭がんにおいても、胃や食道、大腸のように内視鏡を用いた手術が可能な場合もあります。ごく初期に偶然発見された場合、食道がんの治療後で定期的に検査をしていて見つかった場合など、表在がんとして上皮内がんのうちであれば内視鏡による切除を行っている施設もあります。また、下咽頭がんは、進行がんの状態で見つかることが多く、内視鏡手術の適応範囲は限られていますが、少しずつ適応が広がっています。
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2.放射線治療

放射線治療は、高エネルギーのX線などの放射線を利用してがんがふえるのを抑えて、治す方法です。下咽頭がんに対する放射線治療は、放射線単独で行う場合と、手術や抗がん剤治療と組み合わせて行う場合があります。

1)放射線単独で治療する場合

放射線単独での治療は、頸部にリンパ節転移が明らかでない比較的早期(I、II期)の場合やIII、IV期でも手術ができない場合に行います。この治療でがんが治癒すると、喉頭や咽頭の切除の必要がなく、発声やのみ込みの不自由があまりない発病前と同様の生活が可能です。

治療期間は通常6週から7週で、週5回(月〜金)放射線を照射します。触診やCT、MRIなどで頸部、咽頭周囲のリンパ節転移がないと診断されても、小さなリンパ節転移が存在する可能性があるので、咽頭上部から下方は鎖骨部までの広い範囲を治療します。この広い範囲の治療を4週から5週行い、その後は治療前にがんの存在がはっきりとわかっていた部位に小さく絞り込んで照射します。治療が終了してもがんが残ったり、見た目にいったん消失したがんが再び大きくなったりした場合は、手術が必要になることもあります。

2)手術前後に行う場合、抗がん剤と組み合わせる場合

手術と組み合わせた放射線治療は、手術を行う前にがんを小さくしたり、手術が終わってから再発を予防したりするために行います。

(1)手術前

手術前に放射線治療を行う場合、1)と同じく、咽頭上部から鎖骨部にわたる広い範囲に通常4週から5週の治療を行い、終了後1ヵ月までには手術をします。

(2)手術後

手術でがんをとりきれなかった可能性がある場合には、手術後に放射線治療を行います。治療範囲は上記と同様の広い範囲に通常5週から6週の治療を行います。がんが残っている可能性が特に高い部位に範囲を限って治療することもあります。

(3)化学放射線療法

後述する抗がん剤との組み合わせによる治療方法が進歩してきたおかげで、化学放射線療法は手術とほぼ同等の成績が出てきています。本邦における下咽頭がんの治療は、欧米と同様の方針で行われています。また、この治療法では音声機能が保たれますが嚥下機能は低下するという報告が多く出されています。手術が可能な施設が減少し化学放射線療法を行うことが増えてきています。放射線治療と抗がん剤治療の組み合わせは、続けて行ったり同時に行ったりするなど、いくつかのパターンがあります。

3)放射線治療の副作用と対策

放射線治療後には、疲れる、食欲がなくなるといった全身の症状が出ることもありますが、主な副作用は治療した部位に起こります。副作用が出てくる時期は、放射線治療開始より3ヵ月以内のもの(急性期)と3ヵ月以降に出現するもの(遅発性)があります。

なお、治療中に喫煙を続けると喉頭、咽頭の粘膜炎が強くなりつらい思いをします。タバコを吸っている人は禁煙しましょう。

(1)急性期の副作用

急性期の副作用としては、口腔、咽頭、喉頭の粘膜炎によるのみ込みにくさ、のみ込む時の痛み、声がかれるといった症状があります。通常、治療を開始してから2週間前後から症状が出てきます。唾液を分泌する唾液腺の機能が低下し、口が渇いたり、味覚が変わったりもします。次第に普通の食事をすることがつらくなってきて、刺激の少ないもの、柔らかいもの、液状の栄養剤の摂取が必要になることもあります。皮膚には日焼けのような変化が起こってきます。発赤、色素沈着、乾燥、皮膚剥離(ひふはくり)といった変化が起こってきます。かゆみや痛みを伴うこともあります。副作用が起こった場合は、症状を軽くする薬を服用するなどして対処しますが、完全には症状がとれないことがあります。粘膜炎の症状は治療が終わるとよくなりますが、口が渇いたり、味覚が変化したりすることは長く続くこともあります。食事摂取量が減ると体重減少もみられます。放射線治療を行っている間は、入院が必要になる副作用が出ることもありますが、多くの場合は外来通院での治療が十分に可能です。

(2)遅発性の副作用

治療が終了してからの遅発性の副作用には、頸部の皮膚が硬くなる、口の渇きが続くなどの症状があります。甲状腺機能低下症が起こることもありますが、症状が出ることはほとんどありません。非常にまれですが、咽頭・喉頭の炎症が続いて呼吸が苦しくなってしまうことがあります。その場合は、がんは治っていても咽頭・喉頭の切除が必要になることがあります。脊髄に多くの放射線が照射されると、脊髄症(身体・四肢の麻痺(まひ)やしびれ)が起こることがあります。副作用の頻度を下げるために、放射線照射の方法を工夫して脊髄への放射線量が少なくなるようにします。

3.化学療法(抗がん剤治療)

現在下咽頭がんの治療において、どのような病期においても化学療法を単独で行うことはほとんどなく、手術や放射線治療と併用されます。化学療法は、静脈(まれに動脈)から点滴により抗がん剤を入れることで行います。血液中に入った抗がん剤は、血流に乗って全身をめぐり、下咽頭のみならず外に広がったがん細胞にも効果があります。このことから、手術や放射線治療が局所治療と呼ばれるのに対し、化学療法は全身治療と呼ばれます。

下咽頭がんの場合、使用する抗がん剤は通常3種類(シスプラチン、フルオロウラシル、ドセタキシル)を用い、抗がん剤を投与する期間は1週から2週間ですが、同時に行う治療によって若干異なります。この抗がん剤治療を3週から4週ごとに、休みながら繰り返します。下咽頭がんが周囲臓器に深く浸潤していたり、頸部リンパ節転移が両側性や多発性であったりする場合(進行がん)に化学療法が多く行われます。このような進行がんは大きな手術をしても再発することが多く、機能温存を優先して手術を最小限にとどめ、化学放射線療法を行うことがほとんどです。

放射線治療と併用の場合に限るといった制限はありますが、セツキシマブも間もなく認可が下りる予定であり、さらなる治療成績の向上が期待されています。また手術などで、局所治療後に時間がたって肺などに転移した場合(遠隔転移)にも化学療法を行うことがあります。

●抗がん剤治療の副作用と対策

抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼします。特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球血小板の数が少なくなったりすることがあります。そのほかに食欲不振や吐き気、また肝臓や腎臓に障害が出ることもあります。

現在では、抗がん剤の副作用による苦痛を軽くする方法が進んでおり、副作用が強い場合には治療薬の変更や治療の休止、中断などを検討することもあります。
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