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がんの冊子皮膚のリンパ腫(ひふのりんぱしゅ)

更新日:2015年11月26日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2015年11月26日 「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」「造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月(第1版)」「科学的根拠に基づく 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年7月)」より内容を更新しました。
2006年10月01日 掲載しました。

1.皮膚のリンパ腫とは

皮膚のリンパ腫とは、悪性リンパ腫の種類の1つで通常の皮膚がんとは区別され、皮膚組織の中のリンパ球ががん化したものです。早期の症状は皮膚症状ですが、進行するとリンパ節や他臓器に病変が広がっていきます。

診断を確定する方法は皮膚生検で、発疹のある皮膚を切除し詳しく調べる病理検査を行います。

病型は大別すると皮膚T/NK細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、血液前駆細胞腫瘍に分けられ、さらに皮膚T/NK細胞リンパ腫は菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)、セザリー(Sézary)症候群、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎(しきえん)様T細胞リンパ腫、進行性皮膚T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD4陽性小・中細胞型T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病・リンパ腫(皮膚だけに病変がある場合)など、多くの病型に分けられています。皮膚B細胞リンパ腫は、さらに4つの病型に分けられます。血液前駆細胞腫瘍の病型には、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍があります。

非常にまれな病気ですが、その中でも菌状息肉症は約半数を占めています。菌状息肉症とセザリー症候群は類似する疾患で、治療方針や病期分類もほぼ同様です。

それぞれのがんの解説「悪性リンパ腫」では、悪性リンパ腫の治療の全体像や大まかな治療の流れなどを解説していますので、併せてご参照ください。

用語集関連情報

2.菌状息肉症

1)菌状息肉症とは

菌状息肉症(MF:Mycosis fungoides)は皮膚T細胞リンパ腫の一種で、年単位で病気が進行する「低悪性度」に分類されます。

2)疫学

悪性リンパ腫全体の中で、発症頻度は非常にまれです。主には成人および高齢者に発症しますが、小児や若年者にみられることもあります。男女比は約2:1で男性に多く発症します。

3)病期分類

皮膚病変の広がりと性状(T)、リンパ節の病変(N)、内臓病変の有無(M)、血液中の異型リンパ球の割合(B)の4つの要素によって評価するTNMB分類が用いられ、病期はⅠ期(ⅠA、ⅠB)、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB)、Ⅳ期(ⅣA1、ⅣA2、ⅣB)の9段階に分類されます。症状による分類は、紅斑(こうはん)期(patch)、局面期(plaque)、腫瘍期(tumor)に分けられます(図1)。

紅斑期(patch)には、かゆみや痛みがほとんどない、淡い紅色や褐色などさまざまな色調の発疹(紅斑)が、おなか、腰、太もも、背中などにみられます。病期がⅠA期(皮膚病変が体表面積の10%未満)であれば、多くの患者さんが長期にわたりこの状態にとどまります。

局面期(plaque)に進行すると、紅斑がふくらんだ状態になります。色調もくすんだ色ではなく鮮やかな紅色調になってきます。病期ではⅠA期からⅡA期までにあたり、この紅斑期・局面期までは非常にゆっくりと進行します。

腫瘍期(tumor)は病期ⅡB期以降にあたりますが、1cm以上の腫瘤(しゅりゅう)あるいは潰瘍(かいよう)のようながんが増殖していく状態です。病変が体表面積の80%以上になるとⅢ期であり、紅皮症(こうひしょう)と呼んでいます。さらに病期が進むとⅣ期となり、リンパ節、肝臓、脾臓(ひぞう)、肺や血液中など全身に病変が進行します。

用語集

4)治療

治療方針は皮膚のみに病変がある場合は、紫外線療法や病変に対する薬物療法、放射線治療を基本として行います。進行した場合は、全身に対する化学療法を行います。
図1 菌状息肉症・セザリー症候群の病期と治療
図1 菌状息肉症・セザリー症候群の病期と治療
日本皮膚科学会・日本皮膚悪性腫瘍学会編「科学的根拠に基づく 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版」(金原出版)より作成
【病期別の治療について、さらに詳しく】

(1)ⅠA期~ⅡA期

ⅠA期では、症状がなければ無治療で経過観察することも可能です。治療を開始する場合、ⅠA期からⅡA期の紅斑期・局面期では、ステロイド外用療法など病変に対する薬物療法や、人工紫外線を照射する紫外線療法、放射線治療が行われます。紫外線療法にはPUVA療法、BB-UVB療法、NB-UVB療法などがあります。

(2)ⅡB期

「腫瘤があるが、皮膚病変は体表面積の80%に達していない」時期には、BRM療法(生体応答調節剤療法)と局所療法の併用が推奨されています。具体的には、BRM療法はエトレチナート内服やインターフェロン(IFN)の投与で、局所療法は紫外線療法(PUVA療法)、放射線治療、TSEB療法(全身皮膚電子線療法)の中から選択されます。

(3)Ⅲ期

「皮膚病変が体表面積の80%以上」の状態では、ⅡB期と同様の、BRM療法+局所療法が推奨されています。この他、ECP療法(体外光化学療法)も有効ですが、保険適応外です。

(4)Ⅳ期(セザリー症候群)

ECP療法、TSEB療法、化学療法、インターフェロン投与を組み合わせて治療を行います。

(5)Ⅳ期(菌状息肉症)

病状がリンパ節や臓器など全身におよび、血液内にも異常なリンパ球が増えてくるため、全身的な治療となる化学療法を行います。低用量メトトレキサート単剤、低用量エトポシド内服療法などが用いられることが多く、ステロイド剤も単独あるいは化学療法との併用で使用されています。また、がん細胞の中の増殖に関わる分子だけを標的とした分子標的薬のボリノスタットやモガムリズマブ(CCR4陽性の場合)という新薬も使用可能になりました。その他、ゲムシタビン(保険適応外)、ドキシル(保険適応外)などの抗がん剤が候補になります。
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3.セザリー症候群

1)セザリー症候群とは

菌状息肉症の中でも、紅皮症(皮膚病変が体表面積の80%以上)がみられ、セザリー細胞という腫瘍性T細胞が末梢(まっしょう)血の白血球内に1,000個/μL以上みられるという、3つの基準を満たすものと定義されています。菌状息肉症のⅣ期の一部で、皮膚T細胞性リンパ腫の一種です。主に60歳以上で発症し、男性に多い傾向があります。

代表的な症状は、全身の皮膚病変(紅皮症)とリンパ節腫脹です。皮膚病変はかゆみ、脱毛、落屑(らくせつ:皮膚が角質となってはげおちること)、むくみ、苔癬化(たいせんか:ごわごわと皮膚が厚く硬くなってしまった状態)、手のひらや足の裏の硬化とひび割れ、爪の変型などがあらわれます。

2)治療

全身のリンパ節に病変が及び、血液内にもセザリー細胞が増殖していくため、皮膚に対する治療と同時に化学療法を行います。低用量メトトレキサート単剤、低用量エトポシド内服療法などが用いられることが多く、ステロイドも単独あるいは化学療法との併用で使用されています。また、分子標的薬のボリノスタットやモガムリズマブ(CCR4陽性で再発の場合)という新薬も使用可能になりました。その他、ゲムシタビン、ペントスタチン、フルダラビン、ドキシル(すべて保険適応外)などの抗がん剤が候補になります。

ECP療法も、インターフェロン(IFN-α)との併用やTSEB療法との併用で推奨されていますが、保険適応外です。

4.皮膚T/NK細胞リンパ腫(菌状息肉症・セザリー症候群以外)

菌状息肉症とセザリー症候群以外で皮膚から起こるT/NK細胞リンパ腫は非常にまれです。しかし、その中でもゆっくり進行する病型と、比較的急速に進行する病型があります。

ゆっくり進行する病型のうち、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫では、放射線治療や手術による切除が第一選択となります。皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫では、放射線治療やステロイドの内服が推奨されています。原発性皮膚CD4陽性小・中細胞型T細胞リンパ腫では、放射線治療が最も推奨されています。しかし、いずれの病型でも進行してくると抗がん剤による化学療法が必要になります。

比較的急速に進行する病型の進行性皮膚T細胞リンパ腫(原発性皮膚CD8陽性進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、原発性皮膚ガンマ・デルタ[γδ]T細胞リンパ腫)では、初期からCHOP療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)など複数の抗がん剤を用いた化学療法を行います。また、分子標的薬のボリノスタットやモガムリズマブ(CCR4陽性の場合)という新薬も使用可能になりました。

5.原発性皮膚B細胞リンパ腫

皮膚から起こるB細胞リンパ腫は非常にまれです。がん化しているB細胞の種類によって、ゆっくりと進行するもの(低悪性度群)と、比較的急速に進行するもの(中悪性度群)があります。低悪性度群では、皮膚病変に限られていれば手術による切除や放射線治療を第一選択とします。中悪性度群では、複数の抗がん剤を用いた化学療法を行います。その他、B細胞リンパ腫(CD20陽性の場合)には、分子標的薬のリツキシマブが効果があるため用いることもあります。

関連情報
がんの治療に使われる主な薬:
    「皮膚T細胞性リンパ腫
    「菌状息肉症
臨床試験について
がんの臨床試験を探す 白血病、リンパ腫

6.「皮膚のリンパ腫」参考文献

1) 日本血液学会編.造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版),日本血液学会
2) 日本血液学会/日本リンパ網内系学会編.造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月(第1版),金原出版
3) 日本皮膚学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編.科学的根拠に基づく 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年7月),金原出版
4) WHO Classification Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues.2008.
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