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心のケア

がんと上手につき合うための工夫

1.心のケアの必要性

心と体は一体のものです。こうしたつらい状態が長く続くと、心にも体にも大きな負担になります。これまでのがん医療では、体への治療の側面が優先され、心のケアはあまり重視されてきませんでした。しかし、現在ではがん患者さんの声などを反映して、早期のがんから進行がんの患者さん、がんが再発、転移した患者さんなど、状況にかかわらず、心のケアの必要性が強調されるようになってきています。心のケアは、日常生活の改善や痛みの軽減にもつながります。

2.自分の気持ちについて振り返る

心をケアするためには、まず、対象となる心の状態を知る必要があります。そのための一歩は、自分の気持ちについて振り返ってみることから始まります。今、どのような心の状態にあるのかを知ることが、適切な対処へつながります。次の1)2)の質問で簡単にチェックすることができます。

なお、精神的につらくて仕方がないとき、気持ちの落ち込みが強い場合は、自分だけで考えず、できるだけ早く担当医や看護師、もしくはご家族や信頼できる友人に話すなど、一人で抱え込まないことが大切です。

1)つらさと支障の寒暖計

図1 つらさと支障の寒暖計
図1 つらさと支障の寒暖計の図
(国立がん研究センター精神腫瘍学グループ「つらさと支障の寒暖計」より)

これは、心のケアの専門家に相談するべき気持ちのつらさがあるかどうかを判断するための自己診断法です。左側の「つらさ」の寒暖計が4点以上、かつ右側の「支障」の寒暖計が3点以上の場合は、適応障害やうつ病に相当するような中程度以上のストレスを抱えた状態であると考えられます。つらさの内容について、担当医や看護師、ソーシャルワーカーへ相談されることをお勧めします。

2)落ち込みのチェックリスト(米国精神医学会のDSM-IV診断基準に準拠)

  1. 一日の大半を憂鬱ゆううつに感じたり、落ち込んでいることが、2週間以上続いていませんか?
  2. ほとんどのことに興味をなくしたり、いつも楽しんでいたことが楽しくないと感じることが、2週間以上続いていませんか?
  3. 体重が5%以上減ったり、あるいは、食欲がない状態が毎日のように続いていませんか?
  4. 眠れない日が毎日のように続いていませんか?
  5. ほかの人に指摘されるくらい、そわそわして落ち着きがなくなることや、逆に、普段に比べて話し方や動作が遅くなってしまうことが、毎日のように続いていませんか?
  6. 気力がなくなるなど、疲れた状態が毎日のように続いていませんか?
  7. 自分自身のことを価値がないと感じてしまったり、過去にしたことやしておかなかったことについて、毎日のように自分を責めていませんか?
  8. 考えることや集中することができなくなったり、普段できていた日常の事柄を決められないことが、毎日のように続いていませんか?
  9. 物事がうまくいかないので、死ぬことを考えたり、死んでしまったほうがましだと思っていませんか?

まずは、1.2.の質問についてお答えください。

  • 1.2.ともに「ない」という方
    重い落ち込みではないようです。1カ月に1度くらい、上記の項目をチェックしてみることをお勧めします。
  • 1.2.の両方、あるいはどちらか1つが「ある」という方
    3.~9.の質問に答えてください。
    3.~9.の質問で、「はい」と答えた数を数えてみてください。1.2.の数も合わせた合計が5つ以上で、かつ2週間以上続いている方は適応障害やうつ病の可能性があり、専門家による心のケアが必要と考えられます。まずは担当医や看護師、ソーシャルワーカーへ相談することをお勧めします。精神科、精神神経科、心療内科、精神腫瘍科の医師、心理士による心のケアが役に立ちます。

3.日常生活におけるストレスへの対処方法

1)ストレス、性格、心の持ち方とがんの関係について

「ストレスによってがんになるか」、「がんになりやすい性格はあるのか」、「がんになった後の心の持ち方が前向きでないと、がんの経過に悪影響を及ぼすのか」といった質問はしばしば聞かれます。これまでの研究では、明らかに関連があるという科学的根拠は十分に得られていません。よって、現時点では「何が何でも前向きにならなければ…」といったように無理に自分を追い込むことなく、自分らしくがんとつき合っていくことが大切であると考えられています。

2)具体的なストレスへの対処方法

ここでは、ストレスの対処方法について、一般的なものを箇条書きにしました。患者さんご自身に合った方法の活用をお勧めします。

(1)過去に、自分にとって役に立った対処方法を思い出して実践する

気持ちのコントロールがなかなかできないときは、過去に経験したつらい出来事に対し、自分がどのように乗り越えたかを思い出してみましょう。「ほかのことに打ち込む」、「気分転換をする」、「誰かに相談する」など、それぞれに合った対処方法があると思います。自分に合った方法を見つけ、それを実践してみましょう。

(2)身近な家族や友人に気持ちを打ち明ける

がんを抱えた生活についての自分の気持ちを、家族や友人といったごく親しい人々に打ち明け、理解してもらうことは大切です。
日常生活を送っている家庭や職場に悩みを相談できる方がいることは、とても大きな支えになります。人に話をすることで気持ちが楽になったり、気持ちを整理することができます。

(3)正しい情報を集める

情報が不足していることで不安が強くなっている場合や、逆に、さまざまな情報が氾濫はんらんしていることで、何が正しいのか混乱して不安になっている場合には、正しい情報を集めることが、ストレス軽減に役立ちます。正しい情報を得るためには、担当医から病状について十分説明を受け、納得できることが大切です。「自分のがんをどの程度理解しているのか」、「自分のがんについてどこまで知りたいのか」、「どのように伝えてほしいのか」、といったことを担当医に伝え、聞きたいことを質問でき、互いに信頼できるような関係を担当医と築きましょう。実際には、診察時に質問事項を整理したメモを持参したり、家族や友人に同席してもらう方法をとる方が多いようです。また、希望があれば、看護師が診察に同席することもできます。

病院によっては、患者さんが利用できる図書館や、さまざまな相談を受ける窓口が設置されています。がん診療連携拠点病院にはがん相談支援センターが設置されています。がん相談支援センターでは、多くの冊子やインターネットなどによって情報をそろえ、患者さんの不安や悩みに応えています。また、直接、担当医に質問できないという場合においても、がん相談支援センターが担当医と信頼関係を結ぶお手伝いをしています。

(4)それぞれの問題に優先順位をつける

さまざまな問題が存在すると、混乱してストレスがたまります。まず、複数ある問題を箇条書きにしてみましょう。優先順位をつけて最も大切なことから徐々に解決していくようにすると、気持ちが落ち着く場合があります。

(5)自分を責めない

なぜがんになったのかについて考え込んでしまうとき、自分や周囲の人を責めてしまうことがあります。しかし、がんになったのは誰のせいでもありません。がんになった原因を突き止めることは、現在の科学では困難です。自分や誰かのせいにするのではなく、家族や友人とお互いに支え合い、一緒にがんと向き合っていきましょう。

(6)断る勇気を持つ

がんになったことで周囲に迷惑を掛けていると感じている場合に、自分の気持ちや意見を抑えてまわりに合わせてしまうことがあります。しかし、これはストレスの原因になります。自分の気持ちを尊重し、気の進まないことは断る勇気を持ちましょう。あなたのことを思ってくれている人は、あなたが本当にしてほしいことをしてあげたいと考えているはずです。

(7)リラックスできるように工夫する

日常生活の中でリラックスするための工夫として、深呼吸、瞑想めいそう、音楽、アロマセラピー、適度な運動(ストレッチや散歩など)、入浴、マッサージなどがあります。また、後述のリラクセーションを取り入れることもよいのではないでしょうか。大切なことは、自分なりの心地よい工夫をすることです。

(8)患者会、患者サロンやサポートグループに参加する

患者会、患者サロンやサポートグループは、同じような問題や悩みを抱えた参加者との話し合いの中で、体験や気持ちの分かち合い、励まし合い、情報の交換などを通じて、ストレスに対処する方法を見いだすものです。興味のある方は、ソーシャルワーカーに相談するとよいでしょう。

  1. 患者会:患者さん同士の情報交換を主な目的としています。活動内容としては、患者さん同士の交流会、専門家による講演会や旅行などです。
  2. 患者サロン:患者さんやその家族など、同じ立場の人が、がんのこと、生活のことなどを気軽に本音で語り合う交流の場のことです。
  3. サポートグループ:何人かの患者さんのグループに、精神科医・看護師・カウンセラー・ソーシャルワーカーなどが進行役として加わり、病気の体験や気持ちを語り合うものです。

(9)心のケアの専門家に相談する

心のケアの専門家に相談する場合は、主に精神科、精神神経科、心療内科、精神腫瘍科を受診することになります。がんのストレスで、これらの科を受診するのは大げさなのではないかと考える方がいるかもしれません。しかし、最近では、ストレス全般についての相談を受けています。専門家による心のケアの具体的な内容については、「専門家による心のケア 3.専門家による心のケアの例」をご参照ください。

4.付録 がんと取り組むための心の支え—ガイドライン—

ニューヨークのがん専門病院であるメモリアル・スローン・ケタリング・キャンサー・センター(Memorial Sloan-Kettering CancerCenter)のホランド医師により作成された心のケアのガイドラインです。このガイドラインは、こうしなければならない、といったものではありません。しかし、示唆に富む部分も多いので、療養する上での参考にしてみてはいかがでしょうか。

  1. 「がん=死」と思い込まないようにしましょう。現在では、がんの多くは治療可能です。また、がんによっては、新しい治療法が実用化されるまで、長期間コントロールできるものもあります。
  2. 自分のせいでがんになった、と思い込まないようにしましょう。がんになりやすい性格や、がんを進行させてしまうような性格の存在は証明されていません。
  3. 気持ちが動揺したときは、気持ちを落ち着かせるために過去に助けになった方法を行ってみましょう。また情報を集めたり、人に話すことがよいこともあります。それでも気持ちの動揺が十分におさまらない場合には、まわりの人に援助を求めましょう。
  4. いつも前向きな考え方ができないからといって、自分を責める必要はありません。どんなに適応能力がある人でも、いつも前向きというわけにはいかないものです。もし自分を責める気持ちがひどくなるようであれば、心のケアの専門家に援助を求める方がよいでしょう。
  5. 自分にとって助けになるなら、支援団体や自助グループのサポートを得るのもよいでしょう。
  6. 心のケアの専門家に相談することをためらう必要はありません。それは精神的に弱いということではなく、むしろ強さなのです。
  7. リラックス法や音楽といった、気持ちをうまくコントロールできるようになる方法を積極的に利用しましょう。
  8. 何でも質問できてお互いに尊重し、信頼し合えるような関係を医師との間に築いていきましょう。そして、治療上の「パートナー」になってもらうことが重要です。
  9. 病気に関しての悩みを、最も親しい身近な人にまで秘密にしないようにしましょう。医師と治療などについて話し合うときには、その方に一緒に居てもらうとよいでしょう。心の支えにもなりますし、不安が強いときには、しばしば医師の説明を聞き漏らしたり、理解しにくかったりすることもあるからです。
  10. あなた自身の精神的なよりどころを考えてみましょう。そして、過去にあなたをつらい状況から救ってくれたことがあれば、それを行ってみましょう。それが、あなたを癒やし、さらに病気を経験することの意味を見いださせてくれるかもしれません。
  11. 治療を投げ出して、代替療法に走らないようにしましょう。代替療法に気持ちがひかれたら、不安のサインかもしれません。まず、信頼できて、客観的に判断のできる人と、その治療のよい面と悪い面について話し合ってみましょう。
    (Jimmie C Holland: Cancer’s psychological challenge-Guidelines for coping with cancer. Scientific American Sep: 122-125, 1996)
更新・確認日:2023年04月05日 [ 履歴 ]
履歴
2023年04月05日 内容を確認してウェブページで公開しました。
2021年07月01日 ページをPDF化しました。
2012年02月20日 更新しました。
2006年10月01日 掲載しました。
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