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膵臓がん(すいぞうがん)

更新日:2017年07月25日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2017年07月25日 「膵癌診療ガイドライン 2016年版」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
2014年10月14日 「4.疫学・統計」を更新しました。
2013年04月12日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月20日 内容を更新しました。
1995年12月25日 掲載しました。
診療の流れ、セカンドオピニオンなど、本格的に治療を始める前に知っておいていただきたい情報については「治療にあたって」をご参照ください。

1.膵臓について

膵臓は、胃の後ろにある、長さ20cmほどの左右に細長い臓器です(図1)。本人側からみて右側のふくらんだ部分は膵頭部(頭部)といい、十二指腸に囲まれています。左側の幅が狭くなっている部分は膵尾部(尾部)といい、脾臓(ひぞう)に接しています。膵臓の真ん中は体部といいます。膵管という細長い管が、膵臓を貫いて網の目のように走っています。
図1 膵臓の構造
図1 膵臓の構造
膵臓には2つの役割があります。食物の消化を助ける膵液の産生(外分泌機能)と、血糖値の調節などをするホルモン(インスリンなど)の産生(内分泌機能)です。

膵液は膵管によって運ばれ、主膵管という1本の管に集まります。十二指腸乳頭で、肝臓から総胆管を通って運ばれてくる胆汁と合流して、十二指腸へと流れていきます。

2.膵臓がんとは

膵臓にできるがんのうち90%以上は、膵管の細胞にできます。
これを膵管がんといい、膵臓がんとは、通常この膵管がんのことを指します。

このほかに、神経内分泌腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍などがあります。

3.症状

膵臓は、胃の後ろの体の深部に位置していることから、がんが発生しても症状が出にくく、早期の発見は簡単ではありません(図2)。
図2 膵臓と胃の位置関係
図2 膵臓と胃の位置関係
膵臓がんの初期には症状は出にくく、進行してくると、腹痛、食欲不振、腹部膨満感(すぐにお腹がいっぱいになる)、黄疸(おうだん)、腰や背中の痛みなどを発症します。その他、糖尿病を発症することもあります。
ただし、これらの症状は、膵臓がん以外の理由でも起こることがあり、膵臓がんであっても、症状が起こらないことがあります。

4.統計

膵臓がんと新たに診断される人数は、男性では1年間に10万人あたり約29.1人、女性では1年間に10万人あたり約25.5人と、やや男性に多い傾向があります。年齢別では、60歳ごろから増え、高齢になるほど多くなります1)

5.発生要因

膵臓がんのリスク因子としては、慢性膵炎や糖尿病にかかっていること、血縁のある家族内に膵臓がんになった人がいること、肥満、喫煙などがあります。

6.予防と検診

日本人を対象とした研究結果から定められた、科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法」では、禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形、感染予防ががんの予防に効果的といわれています。

関連情報
日本人のためのがん予防法

がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。

しかし、膵臓がんについては、現在、指針として定められている検診はありません。
気になる症状がある場合には、医療機関を早期に受診することが勧められます。

なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。がんの診断や治療が終わった後の検査は、ここで言う検診とは異なります。

関連情報
がん検診について
がん検診Q&A

7.「膵臓がん」参考文献

1) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録全国推計値2012年
2) 日本膵臓学会編.膵癌取扱い規約 第7版.2016年;金原出版
3) 日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会編.膵癌診療ガイドライン2016年版 第4版.2016年;金原出版
4) James D. Brierley, Mary K. Gospodarowicz, Christian Wittekind, editors. UICC: TNM Classification of Malignant Tumours, 8th Edn. West Sussex: Wiley-Blackwell; 2017.94-95
更新日:2017年07月25日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2017年07月25日 「膵癌診療ガイドライン 2016年版」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
2016年12月07日 「膵癌取扱い規約 第7版(2016年)」より、「2.病期(ステ-ジ)」を更新しました。
2014年10月14日 「2.病期(ステ-ジ)」を更新しました。
2013年04月12日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月20日 内容を更新しました。
1995年12月25日 掲載しました。

1.膵臓がんの検査

膵臓がんが疑われる場合、腹部超音波(エコー)検査、CT検査MRI検査が行われます。

これらの検査から診断に至らない場合には、病状に合わせて、超音波内視鏡検査(EUS)、MR胆管膵管撮影(MRCP)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、PET検査などを行い、総合的な判断を行います。
図3 膵臓がんの診断の流れ
図3 膵臓がんの診断の流れ
日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会編「膵癌診療ガイドライン2016年版」(金原出版)より作成

2.検査の種類

1)腹部超音波(エコー)検査

体外からプローブ(超音波を発生する装置)をおなかにあて、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。患者さんの負担が少なく簡便に行えます。
エコー検査では膵臓を観察することができますが、患者さんの体形や状態、部位によっては見えにくい場合もあります。

2)CT検査

X線で体の内部を描き出し、病変の状態や周辺の臓器へのがんの広がり、転移の有無を調べます。
膵臓がんの診断には、造影剤を用いたマルチスライスCT(MDCT)検査が推奨されています。MDCTは、1回のスキャンで多方向からの観察が可能です。また、造影剤を用いることで、血流や病変を詳しくみることができます。なお、通常、ヨード造影剤を用いますので、ヨードアレルギーのある人は医師に申し出てください。また、ぜんそくやアレルギー体質の人、腎機能が悪い人は副作用が起こる危険が高くなりますので、医師に申し出てください。

3)MRI検査

磁気を使って体の内部を撮影する検査です。
MRIではガドリニウムという造影剤が用いられます。ぜんそくやアレルギー体質の人、腎機能が悪い人は副作用が起こる危険が高くなりますので、医師に申し出てください。

4)超音波内視鏡検査(EUS)

超音波装置の付いた内視鏡を口から入れて、胃や十二指腸の中から膵臓などに超音波をあてます。体外からの超音波検査に比べて、病変の状態や周囲への広がりをより詳細に観察できます。腹部超音波検査で膵管拡張や膵のう胞が認められた場合などに行われます。
腫瘍組織を調べるために、針を刺して腫瘍の細胞を採取する穿刺(せんし)吸引細胞診(EUS-FNA:EUSガイド下穿刺吸引細胞診)を行うこともあります。

5)MR胆管膵管撮影(MRCP)

MRIを使って胆管や膵管の状態を調べる検査です。内視鏡や造影剤を使わずに、後述の内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)と同様の画像を得ることができ、患者さんの負担が少ないので、ERCPの代用として行うことが多くなってきています。

6)内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)

口から内視鏡を入れ、先端を十二指腸に留置したあと、膵管と胆管の出口(十二指腸乳頭部)に細い管を介して造影剤を注入した上で、膵管や胆管をX線撮影します。
この際、膵管内の組織を採取する検査を行うこともあります。

7)PET検査

放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出する検査です。PETを用いても膵臓がんを早期に診断することは困難ですが、膵炎との鑑別や、がんがリンパ節や離れた臓器に転移しているかの確認、膵臓がん手術後の再発診断に用いられることがあります。

8)経皮経肝胆道造影(PTC)

黄疸(おうだん)があるときは、ERCPではなく、皮膚の上から直接肝臓を貫いて胆管に針を刺し、造影剤を注入して胆管をX線撮影することがあります。
その後、胆汁を体外へ排出するために、皮膚から挿入した細い管を胆管に留置する「経皮経管胆道ドレナージ(PTBD)」という治療が行われます。

9)血液検査(腫瘍マーカー、血中膵酵素)

腫瘍マーカーとは、体のどこかにがんが潜んでいると異常高値を示す血液検査の項目で、がんの種類に応じて多くの種類があります。膵臓がんでは、CEA、CA19-9、Span-1、DUPAN-2、CA50などがあります。
また、膵臓がんがあると、血液中の膵酵素(血清アミラーゼ、エラスターゼ1など)が異常値を示すことがあります。
しかし、腫瘍マーカー、血中膵酵素ともに、がんがあっても高値を示さないことや、他の病気によって高値を示すことがあります。

関連情報
がん診療連携拠点病院を探す がんの種類から探す 膵がん
更新日:2017年07月25日 [ 更新履歴 ]
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2017年07月25日 「膵癌診療ガイドライン 2016年版」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。
2016年12月07日 「膵癌診療ガイドライン2016年版」より、「図2 膵臓がんの臨床病期と治療 」を更新しました。
2016年02月10日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2014年10月14日 「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2013年版」を反映しました。
2014年10月03日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2013年04月12日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2006年10月20日 内容を更新しました。
1995年12月25日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

1)病期

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。

病期は、がんの大きさや広がり、リンパ節や別の臓器への転移があるかどうかによって決まります。膵臓がんでは、0期、I期、II期、III期、IV期に分類されています。

膵臓がんの病期は、日本膵臓学会が定めたもの(表1)と、国際的に使われている「UICC分類(表2)」とで内容が多少異なるため、両方が使用されています。
表1 膵臓がんの病期(日本膵臓学会)
  領域リンパ節への転移 離れた臓器への転移がある
なし あり
大きさが2cm以下で膵臓内に限局している IA IIB IV
大きさが2cmを超えているが膵臓内に限局している IB
がんは膵臓外に進展しているが、腹腔(ふくくう)動脈や上腸間膜動脈に及ばない IIA
がんが腹腔動脈もしくは上腸間膜動脈へ及ぶ III
0期:がんが膵管の上皮内にとどまっている(非浸潤がん)。
copyright
日本膵臓学会編「膵癌取扱い規約 2016年7月(第7版)」(金原出版)より作成
表2 膵臓がんの病期(UICC第8版)
  領域リンパ節への転移 離れた臓器への転移がある
なし あり
1~3個 4個以上
大きさが2cm以下 IA IIB III IV
大きさが2cmを超えているが4cm以下 IB
大きさが4cmを超えている IIA
がんが腹腔動脈、上腸間膜動脈、もしくは総肝動脈へ及ぶ III
0期:がんが膵管の上皮内にとどまっている(非浸潤がん)。
copyright
UICC: TNM Classification of Malignant Tumours, 8th Edn. Wiley-Blackwell; 2017.94-95.より作成

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含め検討し、担当医とともに決めていきます。

膵臓がんの標準的な治療法は、手術(外科治療)、薬物療法化学療法)、放射線治療の3つです。がんの広がりや全身状態などを考慮して、これらのうちの1つ、あるいは複数を組み合わせた治療(集学的治療)を行います。
膵臓がんは、消化器がんの中でも手ごわいがんの1つですが、有効な治療法の開発が活発に行われています。

図4は、膵臓がんに対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図4 膵臓がんの臨床病期と治療
図4 膵臓がんの臨床病期と治療
日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会編「膵癌診療ガイドライン2016年版」(金原出版)より作成
手術が可能な場合は、手術と薬物療法を組み合わせて治療を行います。がんが大事な血管を巻き込んでいたり、別の臓器に転移したりして手術ができない場合は、放射線治療や薬物療法を行います。

2.手術(外科治療)

膵臓がんの治療では、手術でがんを切除できると考えられる場合、手術の実施が推奨されています。

手術ができるかは、CT検査などの所見を総合し、「切除可能性分類」に従って、肝臓や肺などへの転移がないか、大きな血管にがんが広がっていないか、などの点から、以下の3つに分類されます。

・「切除可能」
・「切除可能境界」
・「切除不能」

「切除可能境界」は、遠隔転移はないものの、がんが主要な血管に広がっているものを指します。がんが動脈系(上腸間膜動脈、腹腔動脈、総肝動脈)まで広がっているか、門脈系への浸潤にとどまっているかによってさらに細分されます。いずれも、標準的手術のみでは、がんが組織学的に残存する可能性が高いとされ、個別の状況に応じた治療法が検討されます。

1)手術の種類

手術の方法は、がんの位置や広がりなどを考慮して次のような方法が選ばれます。

(1)膵頭十二指腸切除術

膵頭部を中心にがんがある場合、十二指腸、胆管、胆のうを含めて膵頭部を切除します。
がんが胃の近くにある場合は胃の一部、血管にがんが広がっている疑いがある場合は血管の一部も切除します。
切除後は、残った膵臓を小腸に縫い合わせ、膵液が小腸に流れるようにします。同様に、胆管と小腸、胃と小腸をつなぎ合わせます。

(2)膵体尾部切除術

膵体尾部のがんの場合、膵臓の体部と尾部を切除します。通常は脾臓(ひぞう)も摘出されます。切除後の消化管の再建は必要ありません。

(3)膵全摘術

がんが膵臓全体に及ぶ場合は、膵臓をすべて摘出します。手術によって膵臓の機能が失われ、代謝や消化などに障害が生じるため、切除による治癒が期待できない場合は行いません。

(4)バイパス手術

がんの切除ができない場合でも、十二指腸ががんで塞がっている場合には、食事がとれるように、胃と小腸をつなぐバイパス手術(胃空腸吻合[ふんごう]バイパス術)を行うことがあります。また、胆管ががんで塞がって黄疸(おうだん)が出ている場合には、胆管と小腸をつなぐバイパス手術(胆管空腸吻合バイパス術)を行うことがあります。

2)手術の合併症

手術方法により異なりますが、一般的には、膵尾部よりも膵頭部の切除のほうが、腸とつなぎ合わせる部位が多いため、回復に時間がかかります。
がんの位置によっては、腸の動きを調整する神経を切除するため、下痢を起こしやすくなります。

(1)膵頭十二指腸切除術の合併症

切除したり、縫い合わせた部分から胆汁や膵液が漏れることがあり、感染、腹膜炎、出血が起こることがあります。また、胃の動きが整わず、食事がうまく食べられなかったり、吐き気が起こることがあります。食事の食べ方を工夫したり、時間をおくことで次第に食べられるようになります。
胆管空腸吻合部の逆流によって胆管炎が起こり、高熱が出る場合には、抗菌剤を服用します。

(2)膵全摘術の合併症

糖代謝の障害(糖尿病)や、消化吸収障害、脂肪肝などが起こります。
糖尿病に対しては、定期的にインスリンを使用します。また、消化吸収障害、脂肪肝に対しては、膵液の代わりになる消化剤を服用します。

3.放射線治療

1)放射線治療の種類

(1)化学放射線療法

放射線治療と化学療法を組み合わせた治療です。明らかな遠隔転移はないものの、がんが主要な血管を巻き込んでいる場合に行われます。化学療法と組み合わせることで治療の効果を高めることが期待でき、標準治療の1つとして推奨されています。

(2)痛みなどの症状緩和を目的とした放射線治療

骨転移による疼痛(とうつう)などの症状を和らげる一つの方法として、実施することがあります。

2)放射線治療の副作用

放射線の量などによって症状は異なりますが、一般的には、皮膚の色素沈着、吐き気・嘔吐(おうと)、食欲不振、白血球の減少などです。まれに胃や腸の粘膜が荒れて出血し、黒色便が出ることもあります。

関連情報:
放射線治療
放射線治療のことを知る患者必携サイトへのリンク

4.薬物療法

1)薬物療法の種類

(1)術後補助化学療法

膵臓がんを手術で取り除いた場合でも、一定期間、化学療法(細胞障害性抗がん剤を用いた治療)を受けると、再発しにくくなったり、生存期間が延長したりすることが示されています。そのため、手術後の化学療法が推奨されています。
一般に、以下のような化学療法が行われます。

・テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1:ティーエスワン)単剤療法
・ゲムシタビン単剤治療

(2)手術ができない場合や再発した場合の化学療法

手術ができない場合や再発した場合にも、化学療法によって、生存期間を延長したり、症状を和らげたりする効果が示されており、実施が推奨されています。放射線治療と組み合わせて実施されることがあり、その場合を「化学放射線療法」といいます。
一般に、以下のような化学療法が放射線治療と共に行われます。

・FOLFIRINOX療法 (フルオロウラシル[5-FU]+レボホリナートカルシウム+イリノテカン+オキサリプラチン)
・ゲムシタビン(ジェムザール)+ナブパクリタキセル(アブラキサン)併用療法
・ゲムシタビン単剤治療
・ゲムシタビン+エルロチニブ(タルセバ)併用療法
・テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1:ティーエスワン)

2)細胞障害性抗がん剤の副作用

細胞障害性抗がん剤には副作用があるため、体の状態やがんの状態を考慮した上で、適切な治療を選択します。担当医から、治療の具体的な内容をよく聞き、不安な点やわからない点は十分に話し合った上で、納得できる治療を選びましょう。

特に、口や消化管などの粘膜、髪の毛、骨髄(こつずい)などの新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすいため、口内炎、下痢、吐き気、脱毛などが起こることがあります。その他、全身のだるさや、肝臓や腎臓の障害が起こることもあります。
多くの副作用は一過性で、症状を抑える薬剤も有効ですが、副作用が強い場合には、治療の休止や変更も検討されます。

なお、免疫療法などのその他の治療で、膵臓がんに対してはっきりと延命効果が確認されたものはありません。

関連情報
化学療法を受ける方へ
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がんの治療に使われる主な薬 がんの種類から探す:膵臓がん

5.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。
以下に、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータを示します(参照:相対生存率)。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【膵臓がんの生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、手術だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。
表3 膵臓がんの病期別5年相対生存率 (対象:2006~2008年に診断を受けた患者さん)
病期 症例数(件) 5年相対生存率(%)
I 234 41.2
II 789 18.3
III 751 6.1
IV 1,941 1.4
全症例 3,820 9.2
外部サイトへのリンク 全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 KapWeb(2017年5月集計)による
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6.リハビリテーション

治療の途中や終了後は、体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示のもと、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などを、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

7.合併症に対する治療

1)黄疸や感染に対する治療

膵頭部には胆管が通っています。がんができることで、胆管が閉塞され、胆汁が正常に流れずにたまってしまうことがあります。その結果、肝機能障害や黄疸のほか、胆汁に細菌が感染して胆管炎が起こることがあります。胆管炎は悪寒や発熱のほか、ショックと呼ばれる急激な血圧低下を引き起こすことがあるので、注意が必要です。
また、黄疸や胆管炎の影響で、手術や化学療法ができない場合もあります。

たまった胆汁を排泄するために、細い管を胆道に留置する「胆道ドレナージ」を行うことがあります。以下の方法がありますが、通常は体の負担が少ない内視鏡的胆道ドレナージが推奨されます。

・内視鏡的胆道ドレナージ(ERBDもしくはENBD):内視鏡を用いて、胆管に細い管を挿入する方法
・経皮経管胆道ドレナージ(PTBD):皮膚から肝臓を経由して胆管に細い管を挿入する方法

8.緩和ケア

緩和ケアとは、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。患者さんのニーズに応じて幅広い対応をします。患者さん本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えるようにしましょう。

関連情報
がんの療養と緩和ケア-4.がんの痛みと緩和ケア

1)痛みや吐き気への治療

膵臓がんは痛みや吐き気などの症状を伴うことが多いので、多くの場合、症状を和らげるための医療(緩和ケア)が行われます。全身状態が悪く治療の負担が大きすぎると考えられる場合などには、無理せず症状のつらさを和らげる治療に専念することも考えられます。

痛みや吐き気への治療には、放射線治療、薬物療法(非オピオイド鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬など)のほか、神経ブロックなどが用いられます。

9.臨床試験

「標準治療」とは、科学的根拠に基づいた観点で最良の医療であり、保険診療で受けることができる治療法です。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねで作り上げられてきました。よりよい標準治療の確立を目指して、「臨床試験」や治験などの研究段階の医療が行われています。

関連情報
研究段階の医療(臨床試験、治験など) 基礎知識

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

関連情報
がんの臨床試験を探す 膵臓がん

10.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

膵臓がんは、がんが小さいうちから膵臓周囲のリンパ節や肝臓などに転移しやすい特徴があります。

再度手術できる場合はまれで、薬物療法や放射線治療のほか、痛みや食欲の低下といった症状に応じた緩和ケアを行うことが一般的です。

再発した場合には、それぞれの患者さんの状況に応じて、総合的に治療方法を判断し、その後のケアを決めていきます。

がんの再発や転移のことを知る患者必携サイトへのリンク
緩和ケアについて理解する患者必携サイトへのリンク
痛みを我慢しない患者必携サイトへのリンク
もしも、がんが再発したら [患者必携]本人と家族に伝えたいこと患者必携サイトへのリンク
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2006年10月20日 内容を更新しました。
1995年12月25日 掲載しました。

1.日常生活を送る上で

病状や、術式、治療の状況により、日常生活の注意点は異なります。自分の体調をみながら、担当医と注意点などをよく相談して無理のない範囲で過ごしましょう。

1)手術後の日常生活

(1)消化のよい食事をとる、食事のとり方を工夫する

手術によって、脂肪の消化吸収に重要な胆汁や消化酵素を含む膵液が減少したり、分泌されなくなることがあります。その結果、消化不良による下痢などを起こしやすくなるので、食事は、バランスよくなるべく消化のよいものをとりましょう。栄養士に相談することで、個々の状況にあった献立や調理の工夫を聞くことができます。

以下、食事のとり方の工夫を示します。

・食事は控えめの量から少しずつ:消化や吸収に時間がかかることがあります。
・少量ずつ何回かに分ける:一度にたくさん食べると消化吸収が追いつかないことがあります。
・脂肪分をとりすぎない:動物性脂肪を控え、植物性脂肪をとりましょう。
・良質なタンパク質(大豆製品や魚など)をとる。
・香辛料は控えめにする。
・コーヒー、紅茶は控えめにする。
・アルコール(飲酒)については、医師に確認する。

(2)血糖の変動に注意

手術で膵臓を切除した場合、糖尿病を発症したり、もともとあった糖尿病が悪化したりすることがあります。その場合は糖尿病専門医の診察が必要になります。

膵全摘術をおこなった場合には、血糖を下げるホルモン(インスリン)が分泌されなくなるため、自分で注射を打ってインスリンを補います。注射の方法などは、退院前に担当医あるいは看護師、薬剤師から指導を受けます。

2)化学療法中の日常生活

近年、抗がん剤支持療法の進歩に伴い、通院によって抗がん剤治療を行う外来化学療法が増えています。仕事や家事、育児など今までの日常生活を続けながら治療ができる一方で、いつも医療者がそばにいるわけではないという不安があるかもしれません。担当医へ予想される副作用や出現時期、その対処法について事前に確認し、外来時には疑問点や不安点などを相談しながら治療を進めるとよいでしょう。また、副作用については家族や周りの人のサポートを得ながら、自分なりの対処法を見つけることも大切です。

なお、性生活には、支障はありませんが、治療中は避妊しましょう。妊娠・出産を希望される場合は担当医とよく相談されるとよいでしょう。経口避妊薬などの特殊なホルモン剤をのむときも、担当医とよく相談してください。

2.経過観察

手術後も、回復の度合いや再発の有無を確認するために、定期的に通院して検査を受けます。通院の頻度は個別の状況により異なりますが、少なくとも手術後5年間は必要です。
診察では、黄疸(おうだん)の有無や血糖、ホルモンの状態、腫瘍(しゅよう)マーカーなどを調べるための血液検査を行います。必要に応じて、X線、腹部の超音波(エコー)、CTなどの画像検査を行います。

体調の変化や後遺症に関する問診に続き、診察で、黄疸の有無やおなかの痛み、食欲の変化をみます。黄疸は自分では気が付きにくいですが、白目が黄色くなる、尿の色が濃くなる、などが目安になります。少しでも気になることは、担当医に相談しましょう。
強い痛みや、胆管炎などで発熱がある場合は、入院治療が必要なこともあります。早めに医療機関に連絡しましょう。