がんと共に働く:[がん情報サービス]

  • がんと共に働く まず一歩前へ。
  • はじめに
  • 本人編
  • 家族編
  • 病院編
  • 職場編
  • 地域編
  • まとめ

もし、職場の誰かが、「がん」にかかったら……。 がんと共に働く時代。上司として、同僚として、そして企業として従業員の「がん」は決して他人事ではありません。 では、職場の仲間のがんに、どのように向き合えばいいのか。  自らも「がん」にかかった経験をお持ちで、現在は人事部長として、 社員の働きやすい環境整備に努めている(株)クレディセゾンの武田雅子さんのお言葉に耳を傾けてみましょう。

01 貴重な人材を簡単に手放さないでください

 私自身、がんにかかった経験がありますが、まずは企業の人事部長の立場からお話ししたいと思います。

 どこの企業でも同じかと思いますが、今のところ、がんという病気に特別な制度や規則を設けている例はほとんどないと思います。人事部が対応する疾病の例として、最近ではうつ病などのメンタル系の疾患の事例が増えていると思います。それも含めて、心臓病やがんなどの重い病気や事故によるけがなどについて、企業には傷病休職などの制度があり、休職・復職の仕組みは、がんであっても他の大病やけがと同様になっています。

 ですが、がんと他の病気では配慮のポイントが変わってきます。例えば、メンタル疾患に比べると、治療から復職までの時間的な経過がある程度予測できるという点もそのひとつです。がんの治療が進歩したおかげで、入院治療から早期に外来通院による治療に切り替わりますので、治療計画に沿って、本人の体調次第では、意外に早く職場に戻ることができることもあるのです。

 がんにかかった社員をサポートするうえで、企業としての第一歩は、貴重な人材を簡単に手放さない、ということです。本人の意志はもちろん優先しますが、なかには「がんにかかった」という事実に打ちひしがれて、落ち込んだり、あるいは混乱したりするうちに、「会社を辞める」と言い出す方がいらっしゃいます。そんな時、「ちょっと待って」と声を掛けるのが企業の、そして人事部の役割だと思うのです。

 企業内には、病気やけがによって、仕事に従事するのが困難になってしまった社員のための制度があります。その制度の利用方法をきちんと確認せずに、退職を速断してしまうのは、本人にとって望ましくないばかりでなく、会社にとってもさまざまなノウハウを持っている大切な人材を失うことになり、大きな損失なのです。

 上司や同僚だけではなく、人事部、健康相談室や産業医などが、がんにかかった社員の相談に乗り、ひとりで悩みを抱え込んでしまっている状態から、こんなチョイスもある、あんなチョイスもあると、さまざまな選択肢を見せた上で、最終的に本人が選択するというプロセスを経ることが大切だと思います。

 もちろん、がんに立ち向かうためには治療や静養の期間は必要です。ただ、会社に在籍しながら治療や静養の期間をきちんと取れるなら、早まって会社を辞める必要はないわけです。

 情報が足りないまま退社などの速断をさせない、さまざまな選択肢があることを、本人に伝え、自分で考えてもらう。一方、企業としてその社員に対してどんなサポートができるのかを一緒に考える。

 がんにかかった社員に対する人事部としてのサポートは、ここから始まるのです。

 がんにかかった社員が復職する時はこんな手順が必要です。まず、会社と本人とが、どんな仕事であれば就労可能なのか、本人が就労を続けるにあたって過度な負担がかからないためにはどうすればよいか、会社側としてその社員にどんな役割を担ってほしいのかについて、しっかり話し合います。

 こうした話し合いから、本人にとっても会社にとっても最良の形を見つけ出します。場合によっては、病気になる前とは別の仕事に就いてもらうことも必要です。

 実は、このように社員と会社とが話し合いをして、今後の方針を一緒に決めていくのは、通常の業務でもあり得ることです。何かのプロジェクトを推進する時に、社員をスタッフとして配置する時にはこうした話し合いが欠かせません。それと同じ考え方です。

 「これからどうするか」について社内あるいは部署で作戦をたてるわけです。具体的に人の配置をどう組み替えて、どのようなスケジュールを組めばよいのか、それらについて本人も含めスタッフ内で話し合い、コンセンサスを作るわけです。

 さらに、実際に社員が復職してからのサポートも大切です。どこかの部署に配置して終わり、というわけにはいきません。復帰した部署で本人が無理なく役割をこなせているのか、何か問題は生じていないかなど、フォローアップをすることが大切です。

 また、復職を果たしていても治療中の患者さんは体調が思わしくない状態になる場合もあります。そんな時、必要な時には気軽に「ヘルプ!」と助けの声を復帰した社員の方が上げられるような環境づくりも大事です。

 私たちは、「がんばってるね、すごいね」と復帰した社員に声を掛けるのはやめようね、と話しています。「がんばってるね」と声を掛けられるとと、真面目な社員ほど「がんばらねば」と考えがちになり、無理に仕事をしてしまったり、「ヘルプ!」と言えなくなりがちです。それでは本末転倒です。

  • 前のページへ
  • 01
  • 02
  • 03
  • 04
  • 05
  • 06
  • 07
  • 08
  • 09
  • 次のページへ

  • 01 貴重な人材を簡単に手放さないでください
  • 02 「どこまで決めるか」ではなく「どこまで決めないか」
  • 03 オープンな雰囲気が会社の力に、そして誇りになります
  • TOPICS 01-1 情報を集め、利用できる制度や支援の仕組みを活用しましょう
  • TOPICS 01-2 どう生き、働きたいか。 本人が主体的に 動くことが大切です
  • TOPICS 01-3 CSRプロジェクトを通じて感じた、仕事を続けることの大切さ
  • TOPICS 02-1 社員と会社、双方向の コミュニケーションを大事に
  • TOPICS 03-1 がんにかかる前の 信頼関係が、 自分を支えてくれました
  • TOPICS 03-2 がん患者さんが働きやすい就労の場所を創りたい

  • はじめに
  • 本人編
  • 家族編
  • 病院編
  • 職場編
  • 地域編
  • まとめ
  • がんと共に働く まず一歩前へ。 がんと共に働く まず一歩前へ。 国立がん研究センター がん情報サービス ganjoho.jp


フッターの始まり