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肝細胞がん(かんさいぼうがん)

更新日:2015年03月02日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2015年03月02日 「1.肝細胞がんとは」「2.肝がんと肝炎ウイルス」「3.症状」を更新しました。
2012年10月25日 更新履歴を追加しました。
2012年10月04日 タブ形式に変更しました。
2011年12月05日 内容を更新しました。
1996年05月23日 掲載しました。

1.肝細胞がんとは

肝臓は腹部の右上にあり、成人で800~1,200gと体内最大の臓器です(図1)。その主な役割は、栄養分などを取り込んで体に必要な成分に変えたり、体内でつくられたり体外から摂取された有害物質の解毒・排出をすることです。

肝臓のがんは、肝臓にできた「原発性肝がん」と別の臓器から転移した「転移性肝がん」に大別されます。
原発性肝がんには、肝臓の細胞ががんになる「肝細胞がん」と、胆汁を十二指腸に流す管(くだ:胆管)の細胞ががんになる「胆管細胞がん」、他には、小児の肝がんである肝細胞芽腫(かんさいぼうがしゅ)、成人での肝細胞・胆管細胞混合がん、未分化がん、胆管嚢胞腺(たんかんのうほうせん)がん、神経内分泌腫瘍(しんけいないぶんぴつしゅよう)などのごくまれながんがあります。胆管細胞がんは肝内胆管がんとも呼ばれます。胆管細胞がんについては「胆管がん」をご参照ください。日本では原発性肝がんのうち肝細胞がんが90%と大部分を占め、肝がんというとほとんどが肝細胞がんを指しますので、ここでは「肝がん」と記して「肝細胞がん」と同義とします。
図1 肝臓と周辺の臓器の構造
肝臓・胆のう・膵臓の形と名称
【転移性肝がんについて】
肝臓にみられるがんのうち、別の臓器に発生したがんの細胞が、リンパや血液の流れに乗って肝臓に移動し、そこで大きくなったものを「転移性肝がん」と呼びます。本ページでは「転移性肝がん」については扱いませんが、ここで、簡単に付記します。

原因となるがんの診断がなされていることもありますが、原因となるがんがわからない状態(原発不明がんといいます)で、「転移性肝がん」と診断されることもまれにあります。原因となるがんの診断と同時に発見されることも、治療後の経過で後から発見されることもあります。

転移の原因となるがんの種類は、胃がん、大腸がん、膵臓(すいぞう)がん、胆のうがんなどの消化器系のがんや、乳がん、肺がん、卵巣がん、腎細胞がん、頭頸部(けいぶ)のがんなどがあげられます。

検査や治療は、原因となるがんの治療に準じて進められます。がんの広がりや性質を調べるための画像検査(X線超音波〔エコー〕CTMRIなど)に加えて、血液検査による腫瘍マーカー検査や、がんの組織の一部を採取し、どの臓器や組織から転移したがんであるかを調べるための病理検査・病理診断などを行うこともあります。

大腸がんからの肝転移は、手術治療で取り除くことで良好な治療成績を得られる可能性が比較的高いので、転移が肝臓に限られている場合は、まず切除が可能かどうか検討されます。しかしその他の多くのがんの肝転移では、肝臓に多数の病巣があったり、別の部位への転移が同時に認められるため、手術ではなく、薬物療法(抗がん剤治療)が主流となります。原因となるがんの種類や病理診断の結果、これまでの治療の内容や効果によって、使用される抗がん剤の種類、副作用の起こり方が異なります。原因となるがんの治療後などで、肝臓以外にがんが広がっていないと考えられる場合には、肝臓の動脈に抗がん剤をカテーテルという細い管を通して注入する動注療法(どうちゅうりょうほう)を行うことがあります。がんの種類、状態や肝臓の状態、体調などを踏まえた上で、治療や療養の方針が検討されます。治療の選択肢が一つでないこともしばしばありますので、その都度、主治医とよく相談して方針を決めていくことが大切です。
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2.肝がんと肝炎ウイルス

1)肝がんの主要な原因は、肝炎ウイルスの持続感染

肝がんは、肺がんや子宮頸がんと並び、主要な発生要因が明らかになっているがんの1つです。最も肝心なのは、肝炎ウイルスの持続感染です。ウイルスの持続感染によって、肝細胞で長期にわたって炎症と再生が繰り返されるうちに、遺伝子の突然変異が積み重なり、肝がんへの進展に重要な役割を果たしていると考えられています。肝炎ウイルスにはA、B、C、D、Eなどさまざまな種類が存在しています。肝がんと関係があるのは主にB、Cの2種類です。

日本では、肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染、約15%がB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染に起因すると試算されています。このため、日本の肝がんの予防としては、肝炎ウイルスの感染予防と、持続感染者に対する肝がん発生予防が柱となります。

B型、C型肝炎ウイルスに感染すると、B型肝炎では約10%、C型肝炎では約70%の割合で慢性肝炎に至ることが明らかになっています。慢性肝炎になると、炎症が続くことで肝臓の繊維化が進み、肝硬変や肝がんになりやすくなります。したがって、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、肝硬変の状態を、「肝がんの高危険群(ハイリスクグループ)」といいます。さらに、高危険群の中でも、肝臓の線維化の進行度合いや高齢であること、高ウイルス量や飲酒歴などの因子によって、発がんリスクがより高くなるとされています。
高危険群の人は、定期的に肝機能のチェックを受け、慢性肝炎や肝硬変の治療を受けることで、肝がんに至るリスクが減少します。また、定期的に受診をすることで、たとえ肝がんが発症しても早期に発見して治療することができます。また、アルコールのとり過ぎは発がんの可能性を高めますので、注意が必要です。なお、B型やC型肝炎ウイルスに感染している人は、インターフェロン(注射薬)や核酸アナログ製剤などの経口薬による抗ウイルス療法やウルソデオキシコール酸・グリチルリチン製剤などの肝庇護(ひご)療法によって肝がんを合併する可能性を減少させることが明らかになってきています。
肝炎ウイルスに感染すると多くは「急性肝炎」という病気になります。その症状は、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、尿の濃染(尿の色が紅茶のように濃くなる)、さらには黄疸(おうだん)などです。しかし、自覚的には何の兆候もなく、自然に治癒したり、知らぬ間に慢性肝炎に移行することもあります。また、肝炎ウイルスが体に侵入しても、「肝炎」という病気にならず、健康な人体と共存している場合もあります。このように、体内に肝炎ウイルスを持っていても健康な人のことを肝炎の「無症候性キャリア」といいます。

その他に、ウイルス感染以外の肝がんのリスク要因として、大量飲酒と喫煙、さらに食事に混入するカビ毒のアフラトキシンが確実とされています。また、最近の傾向として、アルコール摂取歴がほとんどない脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎)が原因で肝硬変、肝がん発がんに至るケースが増えてきています。糖尿病などの生活習慣病との関連も示唆されており、健康診断などで肝機能異常を指摘された場合には、たとえ肝炎ウイルス陰性であっても、一度肝臓専門医を受診することが推奨されます。最近の研究において、糖尿病患者でリスクが高いことや、コーヒー飲用者でリスクが低いことを示す報告があり、その確認が今後の課題となっています。
【肝炎ウイルスの感染経路について】
肝炎ウイルスの感染経路としては次のようなものがあります。

(1)妊娠・分娩による感染

妊娠・分娩(ぶんべん)を介して「肝炎ウイルスを持った母親」から子どもへウイルスが感染する経路があり、これを垂直感染といいます。この垂直感染は、主にB型肝炎に多く認められ、同一家族・家系に何人もの肝炎ウイルス感染者が存在することがあり、これを肝炎の「家族集積」といいます。現在では、妊娠中の母親は血液検査で肝炎ウイルスの有無を必ず調べます。母親がB型ウイルスのキャリアと判明すると、垂直感染を防止するために、新生児には直ちにワクチン治療が行われ、B型肝炎の感染(ないし伝播)を防止する措置がとられています。

(2)血液製剤の注射による感染

肝炎ウイルスを含んだ血液の輸血を受けると、輸血を受けた人の体に肝炎ウイルスが侵入します。輸血が必要な場合は、病気・けがなどで体の抵抗力が低下していることが多く、肝炎が高率に発症します。「輸血」にはいろいろな製剤がありますが、血液中の赤血球だけでなく、上澄み部分(血漿(けっしょう))などの「ある成分」だけを注射しても、肝炎ウイルスに感染する可能性があります。現在は、輸血に用いる血液はすべて厳重な品質管理が行われており、特にB型、C型についてはウイルスの有無を検査して、ウイルスの存在する血液は輸血には使わないという体制が確立しています。そのため、現在では輸血による肝炎は激減しています。しかし、B型にもC型にも検査で見つけられない場合がわずかながらあることも事実で、輸血による肝炎が完全にゼロになったわけではありません。輸血は生命を救う唯一の治療である場合も多く、輸血をしなければならないこともありますが、「どうしても必要な輸血」以外は慎むべきですし、この考え方は広く医師に定着してきています。

(3)性行為による感染

性行為もウイルス感染の経路となる可能性があります。しかし、B型肝炎やC型肝炎の夫婦間感染率は低く、通常の性行為では感染する危険性は低いことが報告されています。ただし、B型肝炎でウイルス量が多い場合には感染力が高いとされています。B型肝炎の場合にはワクチン接種でHBs抗体を獲得すれば感染を受けるリスクがほとんどなくなりますので予防が可能です。是非専門医に相談することをお勧めします。

(4)針刺し行為による感染

これは、医師・看護師などの医療従事者が、採血時や検査・処置・手術中などに肝炎ウイルスを持つ人の血液が付いた針を誤って自分の皮膚に刺すなどの針刺し事故や、集団予防接種での針の再利用、入れ墨・鍼灸(しんきゅう)治療などに使った針の使い回し、覚せい剤注射の回し打ちなどで起こる感染のことです。事実、入れ墨を入れた人や、覚せい剤常習者では肝炎ウイルス感染が高率に認められています。しかし、集団予防接種での感染の問題は、現在では使い捨て注射針を用いていますので、心配ありません。
以上、肝炎ウイルスの感染ルートについて、現在わかっているものについて解説しました。しかし、(1)~(4)の感染ルートのどれにも思い当たるものがないという場合も多く、「このルートだ」と断定することは必ずしも容易ではありません。(1)~(4)以外の未知の感染ルートがあるかもしれません。したがって、肝炎ウイルスの感染は個人の意識・知識によってある程度予防できますが、防止できない部分があることも事実です。肝炎ウイルスに感染してしまったら、即、肝がんになり、生命が脅かされるわけではありませんが、肝がんを発症するリスクが高いと考えて対処すべきです。
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2)肝炎ウイルス感染を早期に知り、適切に対応することが重要です

肝炎ウイルスの検査は、地域の保健所やかかりつけの医療機関などで受けることが可能で  す。B型肝炎、C型肝炎に感染をしても自覚症状がないまま経過することが多くあります。特に症状がない場合でも、一生に一度は肝炎ウイルス検査を受けましょう。「日本人のためのがん予防法」でも、「肝炎ウイルス感染検査と適切な措置」が推奨されています。

なお、自治体によっては無料で肝炎ウイルス検査を行っています。無料検査の対象となる条件は、各自治体にお問い合わせください。

一般に、肝炎ウイルスに感染していることが判明する状況として多いのは、a. 体に変調を来し、病院を受診してウイルス性肝炎と診断される、b. 職場や居住地域の健康診断で肝機能の異常が発見され、精密検査で肝炎ウイルス検査を受けて発見されるc. 献血をした際に血液が輸血に適するか否かの検査で後日連絡を受ける、d. 他の病気で医師を受診して手術や検査を受ける必要が生じた際の血液検査で判明するなどがあります。また、家族の一員が肝炎ウイルスに感染していることが判明すると、医師は「家族集積」性を考慮して家族の他のメンバーの血液検査も勧めます。

B型肝炎、C型肝炎などのウイルスに感染していることが判明したら、次に、肝炎を発症していない「無症候性キャリア」であるのか、「肝炎」という病気になっているのかを調べる血液検査が必要です。どちらの場合でも、程度の差こそあれ、非感染者に比べて肝がんを発症するリスクが高いことが知られているからです。

3)肝炎ウイルス感染がわかったら

B型、C型肝炎ウイルスに感染している人は、自覚症状が出現してからではなく、日ごろから定期検査を受けることが必要です。定期検査の間隔は、「肝炎ウイルスに感染している」だけで他に異常がなければ3~6カ月に1回、血液検査や超音波検査などを行います。肝炎ウイルスの感染に加えて肝機能に異常があるときは、血液検査を1~3カ月ごとに行い、必要に応じてCT・MRI検査などを行います。腫瘍マーカーが上昇している場合には、さらに頻繁に検査することがあります。

また、これらの肝炎ウイルス感染者に、慢性肝炎や肝硬変、肝がんとなるリスクを減らすための治療法について、研究が進んでいます。肝炎ウイルスを体から駆除する治療法として、C型肝炎に対しては、ペグインターフェロンという作用時間の長いインターフェロンとリバビリンというインターフェロンの効果を高める内服薬の併用療法が中心でしたが、その後、C型肝炎ウイルスの増殖に関わるタンパクを阻害する内服薬も続々登場し、最近ではインターフェロンを使わず内服薬だけの組み合わせで治療することもある程度可能になりました。これらの治療によってC型肝炎ウイルスを駆除することにより、肝がんの発症を抑える長期的な効果が期待されています。またB型肝炎に関しては、内服の抗ウイルス薬(エンテカビル、テノホビルなどの核酸アナログ製剤)やインターフェロンなどによる治療が、たとえB型肝炎ウイルスを駆除できなくても肝硬変・肝がんへの進展を抑制し得るという長期的な効果が期待されることから推奨されています。

4)肝炎ウイルスの感染予防

肝炎ウイルスが通常の生活で他の人に感染することはありませんので、過度に気にする必要はありませんが、いくつか知っておくとよいことがあります。

●血液が付きやすいカミソリや歯ブラシなどは共有しないようにします。
●食器やタオルを別にする必要はありません。
●B型肝炎ウイルスの感染はワクチンで予防できます。
●ウイルス肝炎には、抗ウイルス療法による治療を行うことがあります。
わからないことがあったら、担当医に相談することをお勧めします。

3.症状

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期には自覚症状がほとんどありません。肝炎ウイルス検査を受けなかったために自分が肝炎にかかっていることを知らず、医療機関での定期的な検診や精密検査、他の病気の検査のときにたまたま肝がんが発見されることも少なからずあります。

肝がん特有の症状は少ないのですが、進行した場合に腹部のしこりや圧迫感、痛み、おなかが張った感じなどを訴える人もいます。がんが破裂すると腹部の激痛や血圧低下を起こします。

他には肝硬変に伴う症状として、食欲不振、だるさ、微熱、おなかが張った感じ、便秘・下痢などの便通異常、黄疸(おうだん:白目や皮膚が黄色くなる)、尿の濃染、貧血、こむら返り、浮腫(ふしゅ:むくみ)、皮下出血などがあります。肝硬変が進むと腹水(おなかにたまった体液)が出現したり、アンモニアが代謝されずに貯留することによる肝性脳症という意識障害を起こすこともあります。また、肝硬変になると肝臓に血液を運ぶ門脈の流れが悪くなり、そのかわりに食道や胃などの静脈が腫(は)れてこぶのようになります(食道・胃静脈瘤〔じょうみゃくりゅう〕)。これらのこぶが破裂して(静脈瘤破裂)大量の吐血や下血が起こることもあります。静脈瘤破裂は時に致命的となりかねないため、肝硬変と診断された場合には、定期的な内視鏡検査を受けることも大切です。

4.疫学・統計

年齢別にみた肝臓がんの罹患(りかん)率は、男性では45歳、女性では55歳から増加し始め、70歳代に横ばいとなります。年齢別にみた死亡率も同様な傾向にあります。

罹患率、死亡率は男性の方が高く、女性の約2~3倍です。

肝臓がん罹患率と死亡率の年次推移を生まれた年代別にみると、男女とも1935年前後に生まれた人で高くなっています。これは、1935年前後に生まれた人が、日本における肝臓がんの主な要因であるC型肝炎ウイルス(HCV)の抗体陽性者の割合が高いことと関連しています。

罹患率の国際比較では、日本を含む東アジア地域が高く、アメリカの東アジア系移民の中では、日系移民が最も低くなっています。

日本国内の死亡率の年次推移は、男女とも最近減少傾向にあり、罹患率は男性で減少、女性で横ばい傾向にあります。死亡率の国内の地域比較では、東日本より西日本の方が高い傾向にあります。

5.一般の方向け参考資料

【参考文献】
  1. 日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)
  2. 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)
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