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がん検診

肺がん検診

1.肺がん検診検査法のまとめ

国立がん研究センターがん対策研究所が作成した「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年版」では、肺がん検診の各種検査法について下記の推奨がまとめられています。推奨は、がん検診の有効性(死亡率減少効果)と、利益と不利益のバランスを勘案して決定されています。

重喫煙者への低線量CT検査
重喫煙者*1を対象に実施された複数のランダム化比較対照試験(RCT)による肺がん死亡率減少効果を示す科学的根拠があります。不利益は過剰診断、放射線被ばくなどがありますが、それらを総合しても重喫煙者に対する利益が不利益を上回ると判断されるため利益と不利益の対比から対策型検診・任意型検診での実施を推奨します。

*1 重喫煙者: 喫煙指数 (1日平均喫煙本数×年数) が600以上の者。禁煙から15年以内の禁煙者を含む。

重喫煙者以外への低線量CT検査
重喫煙者以外に対する低線量CT検査の肺がん死亡率減少効果を示す科学的根拠は、現時点で不明です。一方、重喫煙者と同等あるいはそれ以上の不利益があると考えられるため、対策型検診としては実施しないことを勧めます。任意型検診としては利益と不利益に関する適切な情報を提供し、個人の判断に委ねます。

胸部X線検査
国内の症例対照研究による肺がん死亡率減少効果を示す相応な証拠があります。米国のRCTの追跡期間5-7年の解析結果も矛盾しません。利益が不利益を上回る可能性が高いため、対策型検診・任意型検診での実施を推奨します。

重喫煙者に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法
重喫煙者に対して、胸部X線検査に喀痰細胞診を併用することにより、死亡率減少効果の上乗せを示す十分な科学的根拠はありませんでした。国内の重喫煙者の減少により、喀痰細胞診の対象病変である肺門部扁平上皮癌が大幅に減少しています。検診としての実施は不利益のみを与える可能性があり、対策型検診および任意型検診として実施しないことを勧めます。

2.肺がん検診検査法の有効性評価

1)重喫煙者への低線量CT検査

重喫煙者を対象とした低線量CT検査のRCTが複数報告されています。米国のRCTの対照群は胸部X線検査であるのに対し、欧州のRCTの非介入群は無検診でした。米国のNLST研究では対照群(胸部X線)と介入群(低線量CT)の肺がん罹患率と死亡率を比較しました。介入群の肺がん死亡率比は0.84(95%信頼区間[95%CI] 0.75-0.95)と有意に減少しました。オランダ・ベルギーのNELSON研究では対照群(無検診)と介入群(低線量CT)を比較しました。介入群の肺がん死亡率比は0.76(95%CI 0.61-0.94)と有意に減少しました。小規模に実施された他のRCTの多くは死亡率減少効果を認めませんでした。対照群別に実施されたメタアナリシスでは、低線量CTは無検診と比べると統計学的に有意な肺がん死亡率減少効果を認め、胸部X線と比較すると有意差を認めませんでした。

2)重喫煙者以外への低線量CT検査

日本を含む東アジアでは、非喫煙者の肺がん死亡リスクは欧米に比べて高いことが知られています。日立コホート研究では、低線量CT群(非喫煙者54.4%)と胸部X線群(非喫煙者66.3%)を約10年追跡しました。胸部X線群を参照基準とした場合、低線量CT群では肺がん死亡率が51%減少(95%CI 0.34-0.70)しました。しかし、全死因死亡率も43%減少(95%CI 0.52-0.62)したことから、ヘルシースクリニーバイアス(健康意識が高く死亡リスクの低い人たちが低線量CT群に偏った)の影響により低線量CTの効果が過大評価されたと考えられます。現在、世界で唯一の非喫煙者および軽喫煙者*2を対象とした低線量CTのRCT(JECS研究)が国内で進行中であり、報告が待たれます。

*2 軽喫煙者: 禁煙年数にかかわらず喫煙指数が600未満の者。喫煙指数が600以上であるが、禁煙年数が15年より長い禁煙者を含む。

3)胸部X線検査

1990年代後半に米国で実施されたPLCO研究では、胸部X線群と無検診群の肺がん死亡リスク比 (追跡期間13年) が評価されました。13年目の肺がん死亡リスク比は0.99 ( 95%CI 0.87-1.22) でした。ただし、胸部X線は研究開始から最大3年間のみ実施というデザインであったため、胸部X線の前臨床期間sojourn time*31-4年を考慮すると、追跡期間13年が長すぎた可能性があると論文中で考察されています。実際、初回検診から6-7年目には介入群と対照群の間で最大11% (95%CI 0.80-1.00) の肺がん死亡率低下が認められました。その後、この差は徐々に縮小し、13年目で消失しました。前臨床期間に比して過度に長い追跡期間によって検診効果が希釈される可能性*4 (減弱効果dilution effect) を考慮すると、PLCO研究において5-7年目の解析結果で評価することは妥当であり、国内の症例対照研究の評価と矛盾しないと判断できます。

*3 前臨床期間sojourn time: 検診で発見可能になる時点から症状発現までの時間。
*4 減弱効果dilution effect: 検診の有効性評価研究において観察される繰り返し検診による死亡率減少効果の変化。検診介入が行われない追跡期間中は介入群と対照群に均等にがんが発生するため、長く追跡すると検診介入の効果が減弱し、効果推定値は1に近づく。

4)重喫煙者に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法

喀痰細胞診は肺門部扁平上皮癌の発見に有用な検査です。肺門部扁平上皮癌と喫煙には非常に強い関連があります。重喫煙者に対する胸部X線と喀痰細胞診併用法 (以降、併用法) は、喀痰細胞診による上乗せ効果を期待して実施されます。
しかし、米国で喀痰細胞診の上乗せ効果を評価したメタアナリシスでは、対照群 (胸部X線) に対して介入群 (併用法) の死亡ハザード比は0.81 (95%CI 0.74-1.05) であり、喀痰細胞診による有意な上乗せ効果は示されませんでした。

3.肺がん検診検査法の不利益

1)低線量CT検査

低線量CTの不利益として、過剰診断、放射線被ばくなどが検討されました。欧米のRCTのメタアナリシスでは、過剰診断割合は30-49%でした。欧米に比べて、日本を含む東アジアでは肺腺癌が多く、腺癌の約30%はlepidic predominant adenocarcinomaです。Lepidic growthを主体とする腺癌は一般的に緩徐に進展します。低線量CTではこのような病変が多く発見されるため、過剰診断が懸念されます。非喫煙者や軽喫煙者では、とくに過剰診断が問題となります。台湾では女性の非喫煙者に対する低線量CTが普及しています。その結果、肺がん罹患率は増加したものの、死亡率は変化しなかった事例がすでに報告されています。
一方、低線量CTの1回被ばく線量は2.5mGy以下ですので、対象者を50-74歳に限定して実施するのであれば、被ばくによる発がんリスクの上昇はそれほど大きくないと考えられます。

2)重喫煙者に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法

併用法の不利益として、偽陽性例に対する気管支鏡検査の負担や偶発症があります。気管支鏡検査は侵襲性が高く、肺門部病変の偶発症発生率は1.32% (出血は0.89%) と消化管の内視鏡検査よりはるかに高頻度です。また、死亡例 (0.004%) も報告されています。

4.重喫煙者への低線量CT検査の検診導入へのプロセス

低線量CTの対策型検診への導入に関して、厚生労働省は対策型検診の項目導入に係る4段階のプロセスを示しています*5。①国やアカデミアによる研究、②国立がん研究センターによる有効性評価、③導入に向けた検討として、厚生労働省では導入に向けた妥当性や論点の整理、アカデミアによるマニュアル作成、自治体でモデル事業として低線量CTによる肺がん検診を実施した後に、厚生労働省の検討会で導入の是非を検討し、④導入となります。低線量CTは③の段階にあり、導入に向けて検討を続けています。

5.重喫煙者に対する対応

がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針が令和7年12月に一部改正されました*6。肺がん検診の検診項目は質問と胸部X線検査となりましたので、自治体による住民検診では、併用法は実施されなくなっていきます。
ただし、喀痰がある人にとって喀痰細胞診は有用な検査であることは変わりません。喀痰がある人は有症状者であるため、がん検診ではなく、速やかに医療機関に受診するように勧める必要があります。

更新・確認日:2026年04月01日 [ 履歴 ]
履歴
2026年04月01日 「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年版」および「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針 (令和7年12月24日一部改正)」に基づいて内容を更新しました。
2019年06月11日 現在の状況に基づいて掲載内容を更新しました。
2010年04月01日 掲載しました。
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