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愛知県のがん診療におけるPDCAサイクルの取り組み
愛知県がん診療連携協議会関係者インタビュー

愛知県がんセンター、藤田医科大学

愛知県がんセンター
薬物療法部 部長 兼 副院長
室 圭
(取材日:2021年3月5日 オンライン形式にて実施)

室 圭先生 写真

藤田医科大学
医学部 臨床腫瘍科 教授
河田 健司
(取材日:2021年3月5日 オンライン形式にて実施)

河田 健司先生 写真

経緯 : 中心となるメンバーを決めることから始め、体制を整備

—愛知県のPDCAサイクルの活動が始まった経緯から教えてください。

室 2014年、がん診療連携拠点病院の要件にPDCAサイクルの確保を進めていくことが定められたことを受けて、当時の院長から依頼され、PDCAサイクル推進検討部会の部会長を拝命しました。ただ、私はPDCAサイクルのことは詳しくなかったので勉強を始めるとともに、当時すでにPDCAサイクルに取り組み、愛知県がん診療連携協議会のコアメンバーでもあった河田先生に部会の事務局長になっていただきました。
そして、河田先生から、「名古屋大学医学部附属病院 副病院長の長尾能雅先生に、アドバイザーになっていただいてはどうか」という提案がありました。長尾先生は、同院の医療の質・安全管理部の教授で、全国でも珍しい医療安全に関する専従教授です。PDCAサイクルを活用した取り組みで、国内トップレベルの医療安全体制を構築してきた先生です。
今振り返ると、県内の関係者内ではPDCAサイクルについて十分な知識がなく、「PDCAサイクルは、工業製品の質を保証するためのもので、医療には関係ないのでは」という考えの人も多かった状況であったため、長尾先生にアドバイザーになっていただいたことは非常に大きかったと思います。

—河田先生は、2014年の時点ですでにPDCAサイクルの取り組みをされていたとのことですが、どのような活動だったのでしょう?

河田 私は2009年4月に名古屋第一赤十字病院に赴任しました。同院は、日本で初めて骨髄移植を導入した歴史ある病院であり、しっかりとした基盤に基づいた化学療法を行う体制とそれを裏付ける理論が必要だと考えていました。赴任した年の8月に受けた認定産業医の講習会でPDCAサイクルについて学ぶ機会があり、抗がん剤を安全に投与するためにも応用できるのではと思いました。早速『労働安全衛生マネジメントシステム(中央労働災害防止協会)』という本を購入して、読んでみると、半日ほどでPDCAサイクル活動開始の準備ができました。野村史郎先生(前、名古屋第一赤十字病院 副院長)に相談したところ、「すぐにやろう」とおっしゃっていただき、院内でのPDCAサイクル活動がスタートしました。その成果を2010年と2011年に日本臨床腫瘍学会総会で発表しました。2011年に米国臨床腫瘍学会(ASCO)の総会で発表、2012年には欧州臨床腫瘍学会(ESMO)でポスター発表を行いました。国際学会で実際に採択されたことで、このテーマは注目されているのだと実感しました。

—院内のPDCAサイクル活動はどのような形で進められたのですか?

河田 院内で抗がん剤を安全に投与するためのPDCAサイクル活動を開始しましたが、『労働安全衛生マネジメントシステム』に書かれていることを参考にしました。具体的には規約を作り、リスクアセスメント表とリスク管理表を活用しながら取り組みを進めていきました。
規約は、どこで話し合いをするのか、何か問題が起きたときにどのような手続きで進めるかなどを明文化したものです。規約のひな形は『労働安全衛生マネジメントシステム』の中に書かれているので、それを少しアレンジするだけで作ることができました。
リスクアセスメント表は、有害事象が起きたときのダメージの大きさと、発生する頻度を数値化して、取り組みの優先順位を決めるために使用します。

「リスクアセスメント表」の画像

リスク管理表の目的は、各リスクに関して対策をいつ開始したのか、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)のどの段階にあるのか、また、どのような効果があったのかを管理することです。

「PDCAサイクル リスク管理表」の画像

—その後、河田先生は藤田医科大学に移られています。

河田 私が藤田医科大学に赴任したのは2012年です。その年の『日本内科学雑誌』の12月号に、聖路加病院の福井次矢院長の「EBMからPDCAサイクルへ」という文章が掲載されました。EBM(Evidence-Based Medicine)は90年代後半から医療の分野に入ってきた。2000年以降様々なガイドラインができて、日本の医療に根づいたと言える。ただ、ガイドラインどおりの治療が行われているのは6割程度と言われているので、残りの4割の患者さんに対しても適切な医療が行われているのか、そのことを確認して、適切な医療を行うことを病院が担保するのがPDCAサイクルの本質だ、といったことが書かれていました。
この文章を読んで、私は「今後PDCAサイクルが注目されるだろう」と思いました。2013年4月に、PDCAサイクルを多施設で行うことを目指し「がん薬物療法の質・安全研究会」を立ち上げ、4施設で活動をスタートさせました。

「パラダイムシフト」の画像

—研究会では、どのような活動をされたのですか?

河田 PDCAサイクルについて学ぶだけでなく、参加した医師、看護師、薬剤師で、現状の問題点について話し合いを行ったのですが、「このような機会が得られて良かった」と非常に好評でした。手応えがあったので、10月には9つの病院が参加する形で開催しました。
2014年1月、がん診療連携拠点病院の要件にPDCAサイクルを推進すること、なおかつ県単位で共有することが加わりました。そこで、室先生と相談して「がん薬物療法の質・安全研究会」を解消して、PDCAサイクル推進検討部会に移行することにしました。

概要 : PDCAサイクル推進検討部会には、すべての拠点病院が参加し多職種で構成される

—愛知県内でPDCAサイクルに取り組む体制について教えてください。

室 愛知県がん診療連携協議会には、県内の27の拠点病院が所属しています。協議会には6つの部会があって、その一つがPDCAサイクル推進検討部会です。この部会には、最初から県内のすべての拠点病院を巻き込むことにしたのですが、その決断には、河田先生のご意見がかなり反映されていたと記憶しています。部会の構成員は医師、看護師、薬剤師、事務員で、私が部会長、河田先生が事務局長、医療の質・安全アドバイザーとして長尾先生に参加していただきました。あとは、医師・看護師・薬剤師の分科会長を置いています。

診療連携協議会の図

—事務員の方はどのような役割を担っているのですか?

河田 情報の伝達などをお願いしています。現在でも、毎回リスク管理表を回収しているのですが、事務を通して行っています。また、すべて連絡は事務を通していますし、会場にも来ていただいています。

—PDCAサイクル推進検討部会は、どのような形で運営されているのでしょうか?

河田 2014年10月、第1回のPDCAサイクル推進検討部会が開催されました。前身となる「がん薬物療法の質・安全研究会」では、各病院の担当者が自院での取り組みを発表し、聞いている人は拍手をして終わりでした。「これでいいのか」という思いがありましたので、アドバイザーとして入っていただいた長尾先生に、外部の視点で、また専門的な立場で多くのコメントや取り組みがよりよくなるためのアドバイスをいただいています。

—室先生と河田先生のリーダーシップ、そして、参加者がPDCAサイクルについて深く学べるように工夫したことが、各拠点病院を動かしているように思います。

室 河田先生が素地を作ってくださっていたことが、すごく大きかったですね。そこに乗って進めていけた感じで、最初から本格的な議論ができました。

成果 : 臨床で実感のある診療の質の改善が得られたことで、多くの関係者が賛同するようになり、継続した活動につながった

—PDCAサイクルの活動を通して、どのような成果が得られたのでしょうか?

河田 2015年5月には24の病院が活動に参加しました。病院ごとのPDCAサイクルを用いた取り組みの数の中央値は4で、全体で133でした。その後、全体の取り組み数は順調に増加して、2019年9月には250になりました。その後は、コロナウイルスの影響で活動が休止や終了したこともあり、若干減少しています。病院ごとの取り組み数は、7から8で横ばいという状況です。

愛知県PDCAサイクルの推移の図

国による要件では、PDCAサイクルの目標は「均てん化」となっているので、愛知県全体が良くなる共通の目標をみなさんと模索しました。実際に、共通の取り組みとして行ったものの1つが、化学療法によるB型肝炎の再活性化防止です。
すでに多くの病院が取り組んでいて、やらなければいけないという危機感もあったと思うのですが、薬剤師の分科会から「県全体で取り組みたい」という提案がありました。実際に取り組みを進めた結果、以下の表のように検査の実施率が改善しています。

B型肝炎の取り組みの図

また、抗がん剤曝露対策についても、薬剤師から実施したいという声があがりました。ただ、すべての病院で実施すると費用もかかるので、数カ所の病院で抗がん剤の曝露がどの程度あるのかを調べました。その結果、全体で取り組むのではなく、啓発を通して、曝露対策をしっかり行うことの大切さを伝えることになりました。
2016年に開催された第2回日本医療安全学会学術総会では、B型肝炎の再活性化対策と抗がん剤曝露対策について発表させていただきました。
現在は、免疫チェックポイント阻害薬の有害事象対策に取り組んでいます。その結果、「均てん化」が進んでいる実感があります。

室 当初は、PDCAサイクルに対して「これで医療が良くなるのか」という疑念や、やらされ感もありました。しかし、B型肝炎の再活性化対策を、徹底して連続して行ったことで、成果が上がることを実感しました。特に、当時は名古屋市立大学病院の薬剤部におられた黒田純子先生(現、福島県立医科大学附属病院の薬剤部長)は、薬剤師分科会の部長として活動を進めてくれました。また、同院の血液・腫瘍内科の楠本茂先生が中心となりB型肝炎活性化対策を徹底して進めた結果、得られた成果は学会発表され、論文化もされました。
長尾先生はよく、「PDCAサイクルを回すことが最終的に医療の質の改善につながらないと、取り組みは継続しない」とおっしゃいます。つまり、手段が目的になってはいけない、ということです。例えばB型肝炎再活性化対策として、適切なタイミングで必要な検査を行うことを目標とするようなPDCAサイクルが検討されますが、B型肝炎再活性化対策の真のアウトカムは、急性B型肝炎になる方を減らすことであり、最終的に急性B型肝炎で亡くなる方を減らすことです。こうしたアウトカムが得られていることが、名古屋市立大学病院のデータで証明された。さらに、他の施設でも成果が出たことで、「PDCAサイクルを回すことで医療の質が担保される」と実感できたことが、非常に大きかったと思っています。だからこそ、次のステージに進めたのだと思います。

室 圭先生 写真

課題と今後の展開 : PDCAサイクルに取り組むプロセスを標準化し、それに基づく取り組み状況をピアレビューしていく。テーマを広げていく。

—現在の関心事項について、教えてください

河田 PDCAサイクルは日本の製造業が作ってきたもので、現在、その製造業ではアウトカムの競争から、プロセスやコンプライアンスの競争に移っています。このような流れがあることを理解した上で、今後の活動を進めていきたいと考えています。
例えば、車の脱輪を減らす取り組みを行う場合、アウトカムは脱輪の件数です。プロセスは「車のタイヤを装着する業務の標準化」で、コンプライアンスは「標準化された業務の遵守」です。プロセスとコンプライアンスを徹底することで製品の質を高め、脱輪件数を減らすことを目指すわけです。
愛知県内で行っているPDCAサイクルの活動自体にこの考え方を当てはめれば、例えばB型肝炎の再活性化対策では、検査実施率がアウトカムで、プロセスは「PDCAサイクルの標準化」です。そしてコンプライアンスは、PDCAサイクル推進部会で検討している「ピアレビュー」です。
これまでの取り組みを通して、PDCAサイクルの標準化を進めるには、県内で共通の取り組みとした方が効率的で、学びやすいのではないかと思っています。もともとは、県全体の医療の質を上げるために共通の目標を設定したのですが、共通の目標を設定することでプロセスの標準化を効率的に進めやすくなり、アウトカムも得られます。「診療の質の均てん化」とは「PDCAサイクルの標準化」と「ピアレビューによる業務の遵守の確認」が行われていることだと考えています。

診療の質を高めるとはの図

PDCAサイクルを推進するには組織を改革して行く必要があり、そのために何をすればよいかを考えています。最近、興味があるのが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。DXについて、いろいろなことが言われていますが、要は、業務そのものや組織、プロセス、企業文化を改革することです。その目的は、医療の現場で言えば、患者さんのニーズに合わせて、よりよい医療を提供することです。今後、PDCAサイクル推進検討部会の組織が基盤となり、DXを進めていくことになるかもしれません。

—現時点での具体的な取り組みのイメージはどのようなものでしょうか

河田 考えているのは、外来化学療法センターの予約システムを作ることです。今は、スマホで新幹線の予約ができる時代です。一方、外来化学療法の予約は医師が行っている状態です。
これを変えるため、藤田医科大学の「外来化学療法センター」で新たな取り組みができないかと考えています。医師は、抗がん剤治療の日程だけを決め、実際の治療の時間は、患者さんと予約センターが相談して決めるというものです。将来的にはスマホやパソコンから化学療法の予約・変更ができるようになるかもしれません。
現状では、医師は予約を入力する必要がありますし、患者さんにとっては待ち時間が長くなる場合があるという問題があります。これをシステム化すれば、医師は入力の手間を省けるし、患者さんも、決まった時間に来院すればすぐに治療を受けられるようになります。患者さんの都合に医療側が合わせるようなDXを進めていくことが、組織の変革につながるのではないかと考えています。

河田 健司先生 写真

—興味深い取り組みだと思います。これまでPDCAサイクルを通して、標準化という概念を共有してきたからこそ、DXという考え方も共有できるような気がします。室先生が現在お持ちの関心事項について教えてください

室 私は、薬物療法の専門家なので、どうしても薬物療法の話になってしまいがちですが、放射線治療や緩和ケアにも、活動を広げていきたいと思っています。
部会の医師のほとんどが化学療法に携わっているので、どうしてもテーマが化学療法がらみになる。当面は、それを徹底してやっていこうということで取り組んできました。現在、緩和ケア部会でも「PDCAサイクルを動かそう」という話が出ているので、今後は、もう少し広いテーマで進めてもよいのではと考えています。

PDCAサイクル推進のヒント1 :薬剤師の方々などの多職種から協力を得る

—全国の都道府県でPDCAを回していくために、愛知県の経験からアドバイスをいただきたいと思います

河田 2009年8月、名古屋第一赤十字病院で私がPDCAサイクルについて説明したとき、すぐに理解してくれたのは野村前副院長と薬剤師の方たちでした。看護師にも説明したのですが、薬剤師と比べると受け止め方が違っていました。
PDCAサイクル部会がスタートした後は、薬剤師分科会部長(当時)の黒田先生が活動を引っ張ってくださいました。薬剤師の分科会のおかげでここまで来られた、と言っても過言ではないと思います。
PDCAサイクルには基準と目標がありますが、これは薬剤師の考え方に合っている気がします。一方、看護師はどちらかというとアート的で、患者さんの気持ちまで考えられる「個別化」というところが強みなのだと思います。
改めて振り返ってみると、PDCAサイクルを薬剤師分科会に牽引していただけたことが良かったのだと思います。

室 河田先生のおっしゃる通りで、薬剤師の皆さんは、決まったことをしっかりと積み上げ、きちんと数字に出して、評価・改善していくことにマッチしている職種なのだと思います。この点を考えると、特にリーダーシップがある薬剤師に動いていただくことがポイントかもしれません。

PDCAサイクル推進のヒント2 : 参加施設の取り組み状況を把握する

河田 PDCAサイクルはある程度継続すると成果を実感できるのですが、当初は、仕事が増えるという側面もあります。急いで広めようとするのではなく、PDCAサイクルのメリットを感じていない人もいることを前提に、ゆっくり一歩ずつ進めることも大切だと思います。

—具体的にどのように進めてきたのでしょうか?

河田 現在進めている免疫チェックポイント阻害薬に関する取り組みは、数年前に実施していた病院は8施設ほどでした。その段階では、まだ取り組みを始めるのが難しい病院があるだろうと考えて、「可能であれば、取り組んでみませんか?」というスタンスで進めました。その後、取り組みを始める病院が増え、現在では28の病院で実施されています。取り組みを開始した病院数が20を超えた頃から、未着手の病院には「ぜひ、取り組みを進めてください」とお願いしました。実施率が7割ほどになるまでは緩やかに進め、その先はスピードを上げるという対応がよいと思っています。

—他県で、「全施設が取り組みたくなるような共通目標を決めないと始めることができない」という話を聞くことがあり、今のお話は参考になると思います。

PDCAサイクル推進のヒント3 : 専門家の力を借りる

—次の質問ですが、他の県では、第一歩を踏み出したものの、モチベーションを維持できなくなっているケースもあるようです。先生方が、活動を継続していく上で心がけている点があれば、教えていただけないでしょうか。

河田 長尾先生のような専門的な立場の方が、私たちのレベルに合わせてアドバイスをしてくださったことも大きいと思います。

室 当院でも、また他の施設でも、すべてのスタッフがやる気に満ちた状態で活動を続けているわけではないと思います。今年度はコロナウイルスの影響で実施できませんでしたが、それまでは、年に2回PDCAサイクル推進検討部会を実施してきました。毎回3施設が取り組みを紹介するので、数年に1度発表の順番が回ってきます。多少付け焼き刃的であっても自分たちの取り組みを発表しなければいけませんし、長尾先生からコメントをいただくことで改善点や注意点がわかります。また、他施設の発表を聞くことも勉強になります。そういう意味で、3施設が取り組みを発表して長尾先生からサジェスチョンをいただく形式が、すごく良かったと思っています。

—他県で取り組みの発表を聞くことがありますが、発表に対して十分なフィードバックがないと「せっかく発表したのに」という雰囲気になることがあります。しっかりとしたコメントができる方がいるというのは大きいと思います。

室 本当にその通りです。私たちが、仮に「これでは解決になっていないのでは」と思っても、的確にコメントすることは難しいし、手厳しく指摘する立場にもありません。的確なコメントを言ってくださる長尾先生のような専門家の存在はすごく大きいですね。

—私も部会に参加させていただいたことがありますが、医療者同士で遠慮してしまいそうなところでも、厳しい指摘を含めて有意義な意見交換がなされていることは素晴らしいことだと感じます。

室 私たちだと「多少問題があるのでは?」と感じても、「よくやっていますね」と言ってしまう。一方、長尾先生は、「これではダメだ」と、しっかりと言ってくださいます。とても的を射ているアドバイスであり、意見を言われたほうも納得しますし、参加者にもとても勉強になっています。

—愛知県は、他県に比べると一歩も二歩も進んでいると感じます。室先生や河田先生が他県で行われているPDCAサイクルの事例発表会にアドバイザーとして参加して、コメントするという方法もあるのではと思いました。

室 当県の取り組みの紹介であれば可能だと思います。それが、ちょっとした刺激や起爆剤になるのであれば、協力させていただきたいと思います。

河田 私も、ご要望があれば伺いたいと思います。

—他の県の方が、愛知県の取り組みを勉強したいという県が出てきたとき、愛知県の会議にオブザーバーという形で、見学させていただくことは可能なのでしょうか?

室 当県の取り組みに興味を持たれる方がいるなら、ご要望に応えられる体制を整えてきたいと思います。

PDCAサイクル推進のヒント4 : 県内の関係者と実践例を共有し、PDCAの効果を実感してもらう

—PDCAサイクルを回そうとするとき、「上層部の方が理解してくれない」というケースがあります。何か、よい方法はありますでしょうか?

室 PDCAサイクルは、実際の取り組みの発表を聞いたり、活動の成果を見たりして、「これはすごい」という感動がないと、「本格的に取り組もう」という気持ちになるのは難しいと思います。何度も同じ話で恐縮ですが、B型肝炎再活性化対策で目に見える成果が出て、「こう回せばうまくいく」と身をもって体感できると、「これは空回りしている」とか「これはうまくいっているのでは」と、自分たちでもある程度判断できるようになると思います。たとえご自身が実践しなくても、多施設での実践例を共有してもらい、体感してもらうことが大事ではないでしょうか。

—私たちも、愛知県の取り組みを勉強させていただき、他県の方が体感できるような発信方法を考えていきたいと思います。最後に、ぜひ読者のみなさんにお伝えしたいことがあればお願いします。

河田 私自身、いつも実践できているわけではありませんが、「チームSTEPPS」を意識して活動を進めるとよいと思います。チームSTEPPSは、アメリカのAHRQ(医療研究・品質調査機構)によって医療の質と安全を高めるために開発されたツールです。チーム医療を進め、改革を成功させるためのエビデンスなので、ぜひ活用されるとよいと思います。

チームSTEPPSの図

室 私は5年以上PDCAサイクルに関わらせていただき、これまでの活動は医療の質の向上に寄与していると実感しています。これも、国がPDCAサイクルを拠点病院の要件として設定したことが大きいと思います。今後も、この流れが継続することを期待したいと思います。

—本日は、改めて愛知県の取り組みについて詳しく聞かせていただき、とても勉強になりました。ありがとうございます。

更新・確認日:2021年08月26日 [ 履歴 ]
履歴
2021年08月26日 愛知県がんセンター 室 圭先生の所属施設・部署名の誤記を修正しました。
2021年08月24日 掲載しました。
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