PDCAサイクル開始の経緯
- 長崎県のがん対策は「長崎県」「がん対策部会」「がん診療連携協議会」が連携して進めており、協議会の下には「がん登録」「緩和医療」「研修・研究」「地域連携パス」「外来化学療法」「相談支援」「放射線治療」の7つのワーキンググループがある
- 2016年から、まず緩和医療ワーキンググループで、長崎医療圏の3つの拠点病院において、実務者によるPDCAサイクルの相互訪問を実施した
PDCAの具体的な取り組み内容や工夫
1) 緩和医療ワーキンググループ
- 長崎医療圏以外の医療圏では、多忙や病院間の交通アクセスが悪いことを理由に相互訪問が実施できなかった
- 解決策として、年に1回多職種が集まる「長崎県がん診療連携協議会実務者会議」を活用し、事前にPDCAサイクル表を作成して相互チェックを実施した
- その結果、年1回会議を実施するだけでは、情報の共有が主になって改善につながらないという課題が明確になった
- そこで、がん登録ワーキンググループや相談支援ワーキンググループで活用しているテレビ会議システム「あじさいネット」を、緩和ワーキンググループでも活用して相互チェックを開始することにした
- テレビ会議の準備として、日程の調整(事務者会議の2、3週間前に設定)と議論内容を決め、各施設で事前にPDCAサイクル表を作成してもらった
- テレビ会議で1施設ずつ発表し、内容を共有しながらフィードバックを行った
- テレビ会議終了後によい案が思い浮かんだ場合は、実務者会議でフィードバックすることとした
2) がん登録ワーキンググループ
- 評価指標を定量化し、各施設で項目ごとに採点して、テレビ会議で相互チェックを行っている
- 数値は時系列で確認でき、病院間の比較も可能
3) 相談支援ワーキンググループ
- ワーキンググループの中で、最初にPDCAサイクルの取り組みを開始した
- PDCAサイクル表は独自のシートを作成し、全国共通指標、県全体の指標、各病院の指標を記入して管理できるようになっている
- 最近行われた実務者会議のテーマは両立支援で、症例報告が行われた
PDCAの効果/振り返り
- PDCAサイクルによって情報共有が進み、質の向上につながった
- 緩和医療ワーキンググループでは、これまでメンバーが集まることが難しかったが、テレビ会議で相互チェックを行ううちに、実際に集まる機会を作った方がよいのではという意見が出るようになった
- がん登録ワーキンググループでは、テレビ会議を使った定例会で症例検討も行っており、徐々に登録の精度が向上している
- 現時点では、あじさいネットを活用したテレビ会議に離島中核病院は参加していないが、今後は、離島中核病院も参加できるよう準備を進めていく必要がある
今後のPDCA
- 緩和医療ワーキンググループでは、あじさいネットで電子カルテを共有することにより、症例相談を行いたいと思っている
- 研修部門では、テレビ会議システムを使った多職種によるキャンサーボードの共有化を進める方向で準備を進めているが、キャンサーボードの意義を理解してもらうと同時に、がんゲノム検査などの新しい取り組みについて情報を共有する場としたい
- がん地域連携パスワーキンググループでは、患者の情報が記入された手帳のデータをあじさいネットにのせる準備をしている
- 拠点病院とかかりつけ医が、あじさいネットを通して情報共有やカンファレンスができるよう、個人情報の保護も含めてしっかり準備をしたいと考えている