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がん検診

肺がん検診

1.肺がん検診検査法のまとめ

国立がん研究センターが作成した「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2006年版」では、肺がん検診の各種検査法について下記の推奨がまとめられています。推奨は、がん検診の有効性(死亡率減少効果)と、利益と不利益のバランスを勘案して決定されています。

非高危険群に対する胸部X線検査、および高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法
肺がん死亡率減少効果を示す相応な証拠があることから、対策型検診・任意型検診として非高危険群に対する胸部X線検査、および高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法を推奨します。ただし、二重読影、比較読影が必要です。

低線量の胸部CT
低線量の胸部CTによる肺がん検診は、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、集団を対象とした対策型検診としては勧められません。個人を対象とした任意型検診(人間ドックなど)として行う場合には、受診者に対して、肺がん死亡率減少効果が不明であることと、被曝や過剰診断などの不利益について適切に説明する必要があります。なお、臨床現場での撮影条件を用いた非低線量CTは、被曝の面から健常者への検診として用いるべきではありません。

2.肺がん検診検査法の有効性評価

1)非高危険群に対する胸部X線検査、および高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法

これまでの研究をまとめた結果、2000年代はじめに報告されたわが国からの4件の症例対照研究では、肺がん死亡率減少効果が認められていますが、それ以前に欧米で行われた2件の無作為化比較対照試験では認められませんでした。後者は20~30年前の研究であり、医療水準が現代とは異なっていること、受診を勧めても受けなかった人や勧めていないのに受けた人が相当数いたことも指摘されています。一方、わが国の研究では、すべての研究が同じ傾向を示していること、さまざまな方法で偏りの影響を減らしても、肺がん死亡減少の傾向を失わなかったことなどから、現代の日本におけるガイドラインに用いるべき証拠としては、最近のわが国からの報告を重視することが妥当と判断されました。40~79歳の男女に対する胸部X線検査と高危険群に対する喀痰細胞診併用法は、死亡率減少効果を示す相応の根拠があると考えられます。ただし、二重読影、比較読影などを含む標準的な方法が行われていない場合には根拠があるとはいえません。

胸部X線検査のみの効果に関する研究は少ないですが、喀痰細胞診との併用法において、胸部X線検査の寄与している割合は高いと推定されています。ただし、明確な上乗せ効果があるとする報告はありませんでした。

胸部X線検査の感度(肺がんがある場合に検査が陽性となる確率)は、実施方法・算出方法によってかなりの差がありますが63~88%、特異度は95~99%でした。喀痰細胞診の感度・特異度に関する報告はわずかで、感度25~78%、特異度99%台と報告されており、胸部X線検査よりも感度のバラツキが著しいとされています。

2)低線量CT

低線量CTによる肺がん検診の肺がん死亡率減少効果を検討した無作為化比較対照試験や症例対照研究は、2006年の段階で1つも発表されていませんでした。このため、死亡率減少効果を評価する証拠は不十分と判断しました。

* 低線量CT検診の有効性を評価したアメリカの無作為化比較対照試験であるNLSTの2011年の報告では、胸部X線検診に比べて20%の肺がん死亡率減少効果が示されています。しかし、この研究の対象者は重喫煙者を対象としたものであり、その後作成されたアメリカの複数のガイドラインでは非喫煙者に対しては行わないことが推奨されています。またNLSTのサブ解析の結果ではわが国の低線量CT検診発見がんの大半を占めるBAC type(腺がんの亜型)は死亡に影響せず、67.6~78.9%が、がん検診の不利益にあたる過剰診断であったと報告されています。この結果はわが国での低線量CT検診の効果を否定する結果であるといえます。

3.肺がん検診の不利益

胸部X線検査も喀痰細胞診も、検査前の食事・内服薬の制限や前処置は不要です。不利益としては、胸部X線検査による放射線被曝がありますが、直接撮影で0.04mSv、間接撮影で0.07mSvと報告されており、特に直接撮影の主流であるDRは現在ではさらに線量が軽減されており、人体への影響は極めて小さいと考えられています。ほかには、偽陰性(検査での肺がんの見逃し、中間期がん)によるがん発見の遅れと、偽陽性による精神的苦痛、および精密検査に伴う身体的苦痛や偶発症があげられます。

更新・確認日:2019年06月11日 [ 履歴 ]
履歴
2019年06月11日 現在の状況に基づいて掲載内容を更新しました。
2010年04月01日 掲載しました。
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