- 日時
- 2019年09月20日(金)17:30~19:00
- テーマ
- 放射線技術学における教育システムの構築-肝細胞がん-
(国立がん研究センター東病院発信)
司会 国立がん研究センター東病院 放射線技術部 副放射線診断技術室長 永井 優一
1.肝細胞がん概論
放射線診断技術室 橋爪 寧々
肝臓がん(主に肝細胞がん)は日本人男性におけるがん死の第3位を占めており、年間死亡者数は約3万人を超える。慢性肝炎、肝硬変の患者に発症することが多く、肝細胞がんの初期症状はほとんどない。診断は、超音波、CT、MRIなどの画像検査と、血液検査の腫瘍マーカーを組み合わせて行う。治療法は、手術・塞栓療法・穿刺局所療法・薬物療法・放射線治療がある。治療方針は肝機能、腫瘍径、数によって決定される。肝機能の良い状態で見つけることで、選択肢を狭めずに治療することができる。
2.CT・IVR
放射線診断技術室 平山 憲
肝細胞がんの確定診断・フォローアップにDynamic CTは欠かせない。また、診療報酬改定により画像等手術支援加算が追加となった。手術ナビゲーションを目的とする3D画像の提供は、手術前および手術中の解剖学的誤認を改善し、血管や周囲臓器への損傷防止に有効である。
IVRは、肝細胞がんの様々なステージで適応となり、TACEが一般的である。Angio-CTシステムを用いることにより選択的な治療が可能となるため、安全で迅速な手技が実施できる。
3.MRI検査
放射線診断技術室 真野 力礼
Gd-EOB-DTPAによる造影MRIは、初期の肝細胞がん、転移性肝がんおよび結節の描出に優れる。従来のパラレルイメージングでは息止時間が長い欠点もある。最近の圧縮センシング技術により撮像の高速化と高分解能化が可能となっている。また近年では、Multi Echo DIXON法などの撮像により、肝機能の定量評価も可能となっている。
4.RI検査
放射線診断技術室 稲川 日華里
肝予備能の評価にICG検査が一般的に行われる。しかし、黄疸やシャントがある場合や採血時間が守れない場合は乖離することも多いため、肝受容体シンチグラフィが有効となる。肝受容体シンチグラフィは、定量的指標として血中停滞率の指標(HH15)および肝集積の指標(LHL15)を求めることで、肝機能を評価することが可能である。
5.放射線治療
放射線治療技術室 渡辺 宝
肝細胞がんが門脈本幹や大血管もしくは中枢胆道系近傍領域に存在する症例は、大線量を短期間(40Gy/5回)に照射する手法であるStereotactic body radiation therapy(SBRT)の適応となる。精度向上のために様々な呼吸性移動対策法があるが、現在は呼吸同期照射法を採用している。呼吸波形と肝臓に留置した金マーカーを動体追跡し照射を行うことで、呼吸性移動による影響を改善できる。
6.ししゃもシステムのブラッシュアップ
放射線診断技術室 稲川 日華里
放射線技術学の多くがモダリティ別に整理される一方で、がん診療の専門施設であることから、がん種別に教育システムの構築を続けてきた。6年が経過しがん種の項目が増える一方で、再編集が必要な部分も目立ってきた。最新の内容を組み込み、ブラッシュアップを図っていく。