- 日時
- 2022年09月16日(金)17:30~19:00
- テーマ
- 当院で行っている若手診療放射線技師への教育システム‐食道がんを例として‐
(国立がん研究センター東病院発信)
司会 国立がん研究センター東病院 放射線技術部 副放射線診断技術室長 永井 優一
1.概論
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 横田 健斗
食の欧米化や飲酒、喫煙などにより食道がんの罹患者数が増加している。症状は胸の違和感、飲食物のつかえ感や体重減少、胸や背中の痛みや咳と声のかすれなどが挙げられる。組織型の多くは扁平上皮がんと腺がんであり、日本人では扁平上皮がんが90%、腺がんが5%程度である。食道がんの確定診断には食道内視鏡検査や上部消化管造影検査が行われる。がんの進行度の診断にはCT、MRI、PET、超音波、内視鏡などの画像検査が行われる。
2.消化管検査
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 平山 憲
当院では主に食道胃接合部がんに対して上部消化管造影検査を行っている。食道胃接合部がんは食道胃接合部(EGJ)の上下2㎝以内にがん種の中心があるものと定義され、内視鏡、X線検査、病理から総合的に判断される。EGJは透視画像上、内腔が最も狭窄している部位として描出され、腫瘍の位置や大きさ・病型分類・壁深達度などを評価する為の適切な撮影を行うことが重要である。
3.CT検査
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 井上 幹太
食道がんに対するCT検査の役割は、腫瘍や浸潤の診断、リンパ節転移や遠隔転移の評価である。食道表在がんは内視鏡検査が主要な検査である一方、進行がんなど狭窄が強く内視鏡検査が不十分な場合はCT検査が有用となる。また切除可否の判断が困難な症例に対して、気管支や大動脈への浸潤を評価している。
4.IVR
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 浜頭 孝成
食道がんの術後合併症の1つに乳び胸が挙げられる。胸腔内へリンパ管から乳びが漏れ出し、呼吸困難や感染症のリスクが生じる。超音波ガイド下で鼠径リンパ節より穿刺することで順行的にリンパ管を造影し破綻部を塞栓する。リンパ管造影は血管造影とは異なり、濃染するまで時間を要する。そのため透視のFrame rateを落として撮影し、被ばく線量の低下を行っている。本手技は乳び胸だけでなく乳び腹水や腹部リンパ漏に対しても有効な治療法である。
5.核医学検査
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 藤本 裕也
食道がんに対するPET-CTの役割は、おもに全身検索である。食道がんは早期から広範囲の遠隔転移をきたしやすく再発率も高い。また喉頭、咽頭、肺などの重複がんの頻度も高いため、治療前の全身評価は重要である。食道がんのFDG集積は腫瘍増殖能を反映しているとされ、予後判定にも有用である。
6.放射線治療
国立がん研究センター東病院 放射線治療技術室 本田 和颯
放射線治療は食道がんの幅広い病期で用いられる治療法である。また切除不能なStage Ⅳa症例に対する標準治療として位置付けられている。食道がんへの放射線照射方法には根治照射、術後照射、術前照射、緩和照射があり、患者の病期にあった照射方法が選択される。食道は生理的な移動を伴う臓器であるため、4DCTを撮影して呼吸による体内の移動を評価及び考慮した高精度治療を行っている。
7.当院における教育システムの展望
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 浜頭 孝成
昨年度から教育システムを活用して理解度テストを行っている。今年は子宮がんに関する教育資料の学習前後でテストを実施した。12点満点の〇×形式で受講対象は主任未満の診療放射線技師とした。学習前は9.03点に対して学習後は10.24点であった。理解度テストの前後で点数が向上し教育システムの効果を実感した。理解度を深めることは診療に関する知識を増やし、診療放射線技師としての医療の質を向上することにつながる。