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近畿

平成27年度 地域相談支援フォーラム in 近畿 「がん患者団体との『連携』と『協働』」開催記録

開催日時: 2016年1月23日(土)10:00~16:30
場所: TKPガーデンシティ大阪梅田 TKPゲートタワービル バンケット11A
(大阪市福島区福島5-4-21)
主催: 近畿ブロック6府県(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
がん診療連携協議会相談支援関連部会
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター
後援: 大阪府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県(順不同)

プログラム

  1. 開会のあいさつ
  2. 基調講演
    「がん診療連携拠点病院とがん患者団体とのより良い『連携』と『協働』のために」
    • がん診療連携協議会 会長の立場から
    • 患者支援団体COML理事長の立場から
  3. パネルディスカッション
    「がん患者団体が、がん相談支援センターに期待する連携と協働とは?」
  4. 6府県からの報告
    「地域におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について」
  5. グループワーク
    「府・県内のがん相談支援センターががん患者団体と『連携』・『協働』する際に、すべきことは何か?」
  6. 閉会のあいさつ

概要とあいさつ

「がん患者団体との連携と協働」を全体テーマとして、基調講演・パネルディスカッションと6府県からの報告・グループワークによる4部構成で行われました。

若尾文彦センター長(国立がん研究センターがん対策情報センター)

開会は、東山聖彦副院長(大阪府立成人病センター)の司会で、若尾文彦センター長(国立がん研究センターがん対策情報センター)のあいさつから始まりました。若尾センター長からは、がん相談支援センターは10年目となるが、研究班の調査では、がん相談支援センターを利用された方の満足度は約80%を超えるが、拠点病院の患者さんのうち利用した人の割合は7.7%と低く、認知度も46%であったこと、したがって、今後はがん相談支援センターを周知しより多くの方に使っていただくことが課題と考えられることが紹介されました。そして、地域相談支援フォーラムでは、複数の隣接する都道府県で共に開催することで、行政や患者団体との連携や協働のあり方など、多面的に近隣の県での取り組みを学び自分たちの活動につなげていただきたいとの話で開会しました。

基調講演:がん診療連携拠点病院とがん患者団体とのより良い『連携』と『協働』のために

東山聖彦副院長の司会で、がん診療連携協議会、がん患者会双方の立場から、2名の基調講演がありました。

がん診療連携協議会会長の立場から
大阪府がん診療連携協議会 会長 松浦成昭

大阪府がん診療連携協議会 会長 松浦成昭

直腸がん手術の写真などの提示とともに、がん医療の変遷が紹介されました。「がん」の表現が、カタカナの「ガン」からひらがなの「がん」を用いられるよう変化してきたことに象徴されるように、医学的な観点からだけではなく、患者の不自由を減らし、患者のQOLや希望を尊重する方向にがんの医療が変遷してきたこと、しかしながら依然として患者の不安などの心の問題症状・副作用・後遺症に関する悩みは現在も多くあることの紹介がありました。さらに、がん対策推進基本計画に基づいた政策に基づく大阪での取り組みや、がんプロフェッショナル養成プランなどにおいて、多職種でのがん医療専門職の養成と病院での配置が進んできたことにも触れられました。
最後に、

  • がんの治療成績がよくなりサバイバーが増えてきました。がん経験者は次のがん患者に、医療面~日常生活~悩みなどに対して自分の体験を通した情報を伝えていただきたいと思います。
  • 医療者側はがん経験者の声を聴き、学んでいく必要があります。また、その声を医療行政に取り入れていくことも必要です。
  • がん経験者は特に明日のがん医療を担う人材に対して、自分の体験を語って、教育にも参加していただきたいと思います。
  • がん患者団体と医療側の緊密な連携と協働が重要です。

とのまとめでお話が締めくくられました。

患者支援団体COML理事長の立場から
ささえあい医療人権センターCOML理事長 山口育子氏

ささえあい医療人権センターCOML理事長 山口育子氏

1990年から26年目となった患者支援団体COMLのこれまでの活動紹介やご自身の体験談を交えながら、患者目線でお話しいただきました。COMLでは、私たちひとりひとりが自分のからだの主人公であることを理解してもらい、主体的に医療に参加していける賢い患者を目指してもらうこと、また患者と医療者は対立するものではなく、患者のつらい症状をなくすという同じ目標に向かって協働していくものと捉えており、そのためのより良いコミュニケーションをサポートすることを目的としているとのことでした。COMLの設立時期以来の26年を振り返ると、COMLでの相談も、医療を取り巻く社会の変化に沿って、「お任せで受け身」の患者から、ソリブジン事件などによる患者の権利意識の高まりや過熱した医療ミス報道による医療不信の時代、「医療崩壊」と表現される時代を経て、患者の意識もよりよい医療構築のパートナーになるという成熟の段階に向かっていること、それに伴い「医療にまつわる何かがしたい!」と主体的に行動する人、また医療を個人の問題としてのみならず、社会を視野にいれた問題として捉えられる人も増えていること、さらにCOML自体も「医療で活躍するボランティア養成講座」等、その様な人材を増やすための取り組みを行っていることが紹介されました。
がん相談支援センターからは、がん患者団体に協働を呼びかけるにあたっては、具体的にどんなことに参加していただけるのか、効果や変化が期待できるのかを伝えていただくことが大事であること、また、お互いに自分たちの困っていることや限界を感じていることも伝えあう中で、上下関係や「患者側」「医療側」という概念ではなく、協働し互いに理解を深め、それぞれの得意分野を活かしていく関係が築けるのではないかとのお話をいただきました。

パネルディスカッション:がん患者団体が、がん相談支援センターに期待する連携と協働とは?

大松重宏さん(兵庫医科大学)、福岡有里子さん(和歌山県立医科大学附属病院)の司会で、三人の演者による発表とディスカッションが行われました。

口腔・咽頭がん患者会 三木祥男氏

口腔・咽頭がん患者会 三木祥男氏

口腔・咽頭がん患者会は、平成17年に発足し、大阪府立成人病センターを拠点に活動しているが、どこにかかっている患者でも参加でき、毎月新規加入者向けの会を開催するなど運営方法を変更したことで、安定した新規加入者数と参加者数を確保しているとの紹介がありました。患者会では、自分の体験を語ること、同じ病気の人の体験を聞くことで得られるセルフ・ヘルプ・グループ(SHG)の機能を最大限発揮することができる運営を行っていること、それにより孤独感から解放され・生活の知恵を得・元気と勇気をもらうといった効果が実感されており、患者会に入会した人の90%が「入会して良かった」と回答しているという調査結果も紹介されました。このことからも、医療とは異なる機能であり、医療とSHG両方の機能が必要であると感じていると語られました。同調査では告知直後に多くの患者が不安のピークを迎えていることにも触れ、専門相談窓口の存在だけではなく患者団体の相談機能についても、告知直後の早い段階から患者に伝わることが肝要と訴えました。
会の発足以来、病院との連携の状況は変化してきており、過去には苦労も多かったとのことですが、現在では十分な連携関係を築く中で、患者会へのニーズ調査も協働により実現できたこと、また調査結果からは患者会を知ることでよりニーズが引き出されることがわかり、より積極的な周知の必要性を感じているとのお話がありました。がん相談支援センターとの連携を具体化させるにあたっては、がん相談支援センター自体が院内で十分な「市民権」を確立し、その上で連携することが重要ではないかとの発言がありました。

がん患者グループゆずりは 宮本直治氏

がん患者グループゆずりは 宮本直治氏

神戸市で発足し、現在は市立芦屋病院に事務所を置き、病院との連携を深めて毎月定例会とサロンを開催しており、サロンでは同院の受診歴のない人や患者、家族も受け入れていること、病院スタッフもサロン運営に協力し、病院のホームページや市の広報にも定例会やサロンの案内が掲載されていることなどが紹介されました。
患者会ならではの支援のあり方として、「手術を勧められたが、決められない」という患者さんに、交流会の参加者それぞれがその人自身が迷った経験、決断した経緯などを語り、さまざまな経験が語られる中で、「『人に頼ること』の大切さがわかりました。道は一本ではないのですね。自分にできることをしていこうと思います。」ということをおっしゃったという事例などの紹介がありました。このような場面においては、特定の限られた人が助言するのではなく、大勢の参加者がいることで語られる経験も多ようになり、また発言者も言葉を選ぶため、聞き手が自分の心に響く言葉を選んで聞くことができると感じているとのお話もありました。サロンの世話役であるご自身が僧侶でもあることを紹介され、最期に向かう気持ちなどについても、ここではふたをせず話題にできる雰囲気があることも「ここの特徴」と補足されました。
相談員に向けては、地域の患者会やサロンに参加し、個々の患者さんの状況を把握する情報感度を上げると同時に、サロンや患者会が参加者に与えられる力を実感し、必要としている方に適切につないでいただきたいという希望が述べられました。

滋賀県がん患者団体連絡協議会 菊井津多子氏

滋賀県がん患者団体連絡協議会 菊井津多子氏

ご自身の体験から、がん治療の限界を超える患者の「内なる力」を引き出す「ピアの集い」の活用の必要性のお話がありました。また、2008年に発足した滋賀県がん患者団体連絡協議会は、現在会員数約350名であり、「滋賀県がん対策に関する条例」にも明記されていることもあり、がん対策の体制と密接に連携した活動を行っていることが紹介されました。具体的には、がん相談支援センターと連携し、「がん患者サロンの運営」や「滋賀の療養情報の作成」を行っているそうです。
相談員はこれからますます頼りとする存在となっていくものであるため、安定した相談員の配置は患者にとって非常に重要であること、そのため相談員の配置については、一病院の人事としてではなく、県単位、国としてのがん医療の大きな資源であるとして捉えてほしいといった要望も伝えられました。患者団体から見ると、相談員との「心からの協働」が必要であり、「がん患者サロン」の有用性を医療者に広めるためにどうしたらよいのかを一緒に考え、一緒に行動してくれることを期待すること、また、がん相談支援センターで待つのではなく、外に出て、まずは院内にある潜在的相談に応える体制を作ってほしい、そのためにも「余裕ある」がん相談支援センター、そして、相談員のケアと配置が重要だと思うとのメッセージがありました。

その後の質疑応答とディスカッションの中では、患者会や患者サロンでは、患者さんに誤った情報を提供したり過度に踏み込んだりすることがないよう配慮していること、またそれを医療者に知ってもらって信頼してもらえる関係を築く必要があると感じていることや、患者の不安のうち、生き方についての不安は医療では直接答えられないものであり、それは同じ経験者の言葉の方が支えになる場合もあり、医療とピアの力の両方が必要であると感じる、といった意見が出されました。

風景

地域におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について:各府県報告

岡村理さん(滋賀県立成人病センター)の司会で進行しました。

和歌山県

和歌山県 地域におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について

発表者:腰田典也さん(公立那賀病院)
県内のがん相談支援センター(国指定・県指定全9施設)にアンケートを行った結果が報告されました。◎すべての拠点病院に院内がんサロンが設置され、7施設でサロン開催の支援や協働、3施設ではがん患者会の支援をしました。◎市民団体が主催する「和歌山県がん患者ピアサポーター養成研修」に平成25年からこれまで4施設が協力しました。また、◎平成24年からがんサロン担当者、がん患者会、市民団体、行政、がん相談支援センターなどが参加する「がんサロンネットワーク」が発足しました。◎平成26年にはすべてのがん相談支援センターが参加するピアサポーターとの合同勉強会が企画・開催されるなど県単位の規模の取り組みも行われました。◎和歌山県立図書館と和歌山医科大学附属病院の共催による公開講座の取り組みもありました。取り組みの中で問題点も見えてきました。がんサロンについては、サロンを企画・運営する患者さんがなかなかいない、運営にかかる費用、がん相談支援センター以外の当該施設スタッフの関わりが薄いなどの運営の苦労がうかがえたものの、がんサロンに関する回答が多く、がんサロンが支援や協働の場として大きな役割を占めていると考えられました。院外のがんサロンの支援や協働をしている施設はありませんでした。またがん相談支援センターへの依頼は市民団体から各施設に個別に行われていたことが明らかになったとのことです。

地域におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について:和歌山県

滋賀県

滋賀県におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について

発表者:木村由梨さん(滋賀医科大学医学部附属病院)
平成20年に県内の患者会を束ねて発足した、滋賀県がん患者団体連絡協議会との連携・協働について紹介されました。滋賀県がん診療連携協議会は平成21年の設置時より、滋賀県がん患者団体連絡協議会の協力を得て運営されており、滋賀県がん対策推進計画では、平成24年までにすべての拠点病院でがん患者サロンを設置することが明記されました。本年度にはがん診療連携拠点病院がない空白医療圏においてもサロンが設置され、すべての二次医療圏にサロンが設置され、高齢で、交通の便が悪い方でも患者サロンにアクセスしやすくなりました。すべてのサロンが、滋賀県がん患者団体連絡協議会によって主催され、各拠点病院等が協力して運営されており、滋賀県が発行する広報誌には、県内どこのサロンでも参加できること、サロンが病院との連携で運営されており安心して利用できることなどが記載されています。がん相談支援センターとサロンは互いに紹介しあう信頼関係が築けており、評価の共有も行っているとのことです。

滋賀県におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について

奈良県

奈良だからできた患者・医療者・行政連携と協働の成果と課題

発表者:川本たか子さん(奈良県立医科大学附属病院)
奈良県では奈良県がん対策推進協議会には患者さんが委員として参加しており、奈良県がん対策推進協議会では患者会代表等との懇談会を設けていること、県内には8カ所の医療機関と3つの保健所で開かれています。もともとサロンは、患者さんからの熱烈な医療機関へのアプローチにより開催されるようになり、院外のサロンの設置、「カフェ」や患者会活動に発展していったとのことです。患者・医療者・行政の三者がそれぞれに役割を担って活動しており、課題もありますがそれぞれの顔が見える関係を維持しながら常に連携と協働を意識しながら前向きに取り組んできたこと、行政、特に保健師さんが医療機関と患者会のつなぎ役として重要な役割を果たしてくださっていることも紹介されました。「コンパクトな奈良だからこそできた」として、患者・医療者・行政三者の連携と協働を意識しながら前向きに取り組んでいると締めくくられました。

奈良だからできた患者・医療者・行政連携と協働の成果と課題

兵庫県

兵庫県におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について

発表者:橋口周子さん(兵庫県立がんセンター)
県内の国指定・県指定の拠点病院等47施設へのアンケートの結果、患者サロンや患者会がある施設はまだ一部にとどまっていること、ただ国指定の施設では全施設で患者サロンまたは患者会があり、がん相談支援センターとしての関わりは多岐にわたっていたことから、少しずつ連携や協働も広がっているのではないかとの現状報告がありました。
また、「兵庫県がん相談実務者ミーティング」と「ひょうごがん患者連絡会」との協働によるピアサポーターの活用事業について現状と課題が紹介されました。「ひょうごがん患者連絡会」は県内の任意の患者会がメンバーとなっている連絡会で、具体的な協働を模索する中では、顔が見えない状況でスタートしたため、窓口が不明確であったこと、多数の患者会による緩やかな連絡会であるため、「ピアサポート」への理解やスタンスが患者会個人によってさまざまであることなどから、ピアサポーターへの活動を依頼するとしても医療者側の不安が大きいこと、この連携事業の主体や責任の所在が曖昧であることなどの問題が顕在化しました。問題解決に向けて、ピアサポートを行う上での規約を作成し、ピサポーターの目的、役割、責任の所在、具体的な業務や流れについてのコンセンサスづくりを行っていることが報告されました。

兵庫県におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について

京都府

地域におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について

発表者:高下裕子さん(京都大学医学部附属病院)
京都府では、京都府がん対策推進計画に基づいてオール京都でがん対策の推進を行っています。府内21カ所のがん相談支援センターがありますが、病院では相談しにくい内容への支援を強化するため、平成25年に「京都府がん総合相談支援センター」が開設されました。京都府がん対策推進府民会議情報提供充実対策部会で作成した「京都府がん情報ガイド」でもがんサロン、患者会を紹介しており、拠点病院や市町村、患者会や薬局等で配布されています。
患者同士の支え合いの場として、15の患者会、33カ所のサロン、がんサロンピア・サポーター養成講座の運営が行われていますが、京都市に人口と医療資源が集中しているため、サロンの開催も南部に集中する傾向があり、北部地域でのがんサロンを増やしていくことが今後の課題とのことです。府内で開催されるがんサロンは一覧のカレンダーを作成し、調剤薬局などで配布したりもされています。ピア・サポーター養成講座の状況等については、意欲のある参加者を相談員がサポートすることで、新しい患者会が発足するなど、院内サロンの充実をはかることができていると報告されました。

地域におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について:京都府(PDF:433KB)

大阪府

大阪府がん患者団体との連携の現状

発表者:関根知嘉子さん(大阪医療センター)
まず、大阪府には合計63もの国指定、府指定の拠点病院があり、拠点病院間での情報共有や連携が難しく、全体で何か協議をしたり、意見交換したりすることも簡単ではないという全体の課題が報告されました。
がん患者団体との連携に関して、連携の現状と、「相談員の率直な気持ち」をくみ上げることを意図した調査を、大阪府内がん診療連携拠点病院に所属するがん相談員実務者を対象として実施しました。院内のがん患者会やサロンとの連携は84%が必要と感じているが、実際に患者会やサロンが活動的であると感じているのは31%にとどまり、連携できる団体、グループを見つけられない状況がうかがえました。参加者の継続性や、コアメンバーとなる参加者の主体性といった患者会・サロン側の要因とともに、院内スタッフの関心や、活動に避ける時間の有無という、がん相談支援センター側の要素も連携の促進要因として大きいと感じている相談員が多いことがわかりました。
また、院外の連携については、94%の相談員が必要と感じていましたが、31%が「この1年に何も関わっていない」と回答し、最も多い関わりは「団体からの郵送物(40%)」であるなど、関わりの程度は薄い傾向がありました。まずは患者団体について「知る」ことを課題として、部会と患者団体との協働についても検討していきたいと締めくくられました。

大阪府がん患者団体との連携の現状

報告のあとのディスカッションでは、患者会同士の連携の難しさや摩擦があることについて追加発言があり、滋賀県では「ピアサポーターの心得」を作成して共有することでそうした課題を乗り越える努力をしていることが紹介されました。

グループワーク:府・県内のがん相談支援センターががん患者団体と『連携』・『協働』する際に、すべきことは何か?

午後の部のグループワークでは、川本たか子さん(奈良県立医科大学附属病院)、橋口周子さん(兵庫県立がんセンター)が座長を務め、7-8名ずつの18のグループに分かれて4つのサブテーマについてディスカッションが行われました。

グループワーク 風景

1つ目のテーマ「ピアサポートの効果と効用」について話し合ったグループからは、がん患者同士のみでしか得られない、支えあう、わかりあうことのできること、支える側支えられる側双方が成長できることに大きな意義を感じることが全グループから報告されました。その上で、がん相談支援センターとの関わり方については、まず、ピアサポーターが何をしてくれる人なのか相談員が理解することが必要ではないか、相談員とピアの方が議論する場があるとよい、といった意見、会の円滑な運営への協力や必要な場合の適切な情報提供、機関紙を作る、イベントを開催するといった具体的な協力内容、そして、ほかの患者に効能の確かめられていない薬を薦めてしまったなどのトラブルの責任についての問題を整理していかなければならないといった点が話題となりました。

グループワーク 風景

ピアサポーターの養成については、滋賀県のように、はじめに規約を作っておく、県が後援して養成講座をするといった有効な実例が紹介されるとともに、ピアサポートが一定レベルになっているかをフォローアップをしていくことも必要ではないかとの意見、中には、ピアサポーターの講習を相談員も受けてみて、相談員自身が学ぼうという結論に至ったグループもありました。
ピアサポートの機能を効果的に活用するためには、医療者から声をかけると患者さんが参加しやすいという現状を踏まえ、院内医療者に周知が必要といった意見も出されました。

グループワーク 風景

2つ目のテーマ「がん患者会との連携」を話し合ったグループからは、実情として、必要性は感じながらも連携や把握ができていない、実際どのような患者会があるのかがつかめていない府県もあることがあげられ、二次医療圏ごとに病院と患者会がつながりを作り、情報を集約する仕組みが必要ではないか、それらを一覧にして示す必要があるのではないか、といった具体案も提案されました。連携を考えるにあたり、基本的な姿勢として、患者会やサロンはどう患者の声をひろいあげて立ち上げていくものであり、あくまで患者さんの主体性を支援していきたいという発言が複数のグループからあげられました。また、関わりの中で感じる困難としては、偏った考え方に傾いていると感じる場合、どこまで直接的に関わるのか、また一度立ち上がった会も若い人が確保できない、中心となる人が変わる過程で活動が維持できないなど、の難しい現状があること、患者会への相談員がどれくらい関わっていけるかに関しては、病院のトップに左右されることが多いといった点もあげられました。

グループワーク 風景

3つ目のテーマ「がんサロンの運営」について話し合ったグループからは、場所と予算の確保、中心となる人材の不足、参加者が少ないことやメンバーの固定化などが課題になっているとの意見が多く出されました。場所と予算の確保については、必要性や実績について説得力のある説明や資料が必要と思われること、アンケートの実施などデータを収集する必要があるのでは、といった対応案が出されました。中心となる人材については、ピアサポーターのモチベーションがわからない、人材がいても病状が安定しないといった課題が複数のグループから出され、患者さん主体で運営してほしいが、患者さんだけでは負担に感じる場合もあり、がん相談支援センターからのサポートが必要と思われること、一方で医療者任せになることは避けたいといった主体性の持ち方についてかじ取りの難しさも述べられました。参加者の確保については、院内医療者への周知をはかり、院内スタッフからの情報提供が有効ではないか、院内の掲示物やパンフレットのみならず、一度参加された方に次のアナウンスを郵送する、県の広報に掲載してもらうといった院外への広報の必要性もあげられました。

最後の4つ目のテーマ「地域活動の企画」を検討したグループからは、まず、地域にがん相談支援センターを知ってもらう必要があり、院内外においてがん相談支援センターの周知をはかっていく必要があるという意見が複数あがりました。そのために、医師会の協力を得ながら地域の診療所のパンフレットを置いてもらう、検診の前後に相談できる場を作るなど、地域に出て行く活動、地域の機関にがん相談支援センターが講演会等々で協力できることを伝えていくことが必要ではないかという具体案も出されました。また、患者会と協働することで、患者会をサポートする共に、患者会が持っている地域の力を活用させてもらうこともでき、それによって必要な人に情報を届けることができるのではないか、という意見も出されました。

全体討議 風景

全体討議では、子育て世代の患者さんや仕事復帰した人などサロンに参加してほかの人と話をしたいが参加しにくい患者さんもいること、そのためにはインターネットを利用した交流や、参加できるような開催時間や場所の確保についての工夫について意見が交わされました。サロンの運営にどれほどの柔軟さをもつことができるかは、病院の方針や経営者の裁量によるところもあり、土日に相談員が参加しにくいといった現状もあるが、カフェで行う、NPOや民間企業と連携するなどの実例も紹介しあいました。

閉会のあいさつ

東山副院長

若尾文彦センター長(国立がん研究センターがん対策情報センター)から、この場で得た情報を、参加できなかったほかの相談員伝えてほしいこと、明日からできることがあるのでそれを活かしてほしいこと、また組織の上長にも報告し、今日得たものがより有意義に組織に活かされるよう取り組んでほしいという希望が述べられました。また、継続してフォーラムが開催される地域においては、前回のフォーラムから何が変わったのかを互いに報告しあうことでPDCAサイクルが確保されていること、ぜひ近畿ブロックでも取り組みをつなぎ、継続してほしいというメッセージがありました。

東山副院長からは、このフォーラムが、2年かけて6府県の実行委員が取り組んだ会であることが紹介され、今日の隣県との情報交換の中で、自県の強みを知ったり、他県から知恵を得たりすることができる場になったと思う、ぜひこの6府県の取り組みを今後につなげていきたいという言葉で閉会しました。

資料

基調講演

パネルディスカッション

地域におけるがん患者団体等との連携と協働の現状について:各府県報告

更新・確認日:2016年02月22日 [ 履歴 ]
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2016年02月22日 掲載しました。
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