- 日時
- 2023年06月16日(金)17:30~18:30
- テーマ
- 高齢がん患者支援の取り組みと課題
(愛知県がんセンター 発信)
司会 愛知県がんセンター 看護副部長 向井 未年子
本邦の人口は高齢化が急速に進んでおり、それに伴い高齢のがん患者も増加している。 2023年3月に策定された第4期がん対策推進基本計画では、ライフステージに応じたがん医療の提供・支援が謳われており、高齢がん患者への支援は重要な課題である。愛知県がんセンターでは、2020年より高齢がん患者支援委員会を立ち上げ、意思決定支援やせん妄予防、治療継続に向けた支援に取り組んでいる。これらの当院での取り組みを報告し、課題について検討したいと考える。
1. 愛知県がんセンターの高齢がん患者支援の概要について
愛知県がんセンター 緩和ケアセンター看護師長 がん看護専門看護師 吉川 惠
愛知県がんセンターは、がん専門病院であり、2022年度の入院患者の平均年齢は64.5歳と高くはない。しかし、後期高齢者で他施設では治療のリスクが高いと判断された患者が、積極的治療を希望して紹介されることも多い。
がん治療において、75歳以上の高齢患者への標準治療は確立しておらず、低侵襲治療の進歩と共に、暦年齢に関係なく、多くの場合医師の経験や判断により治療方針が示されている。そのため看護師は、患者の認知機能やせん妄リスク、転倒リスクなどを評価しながら、患者の意思決定やQOLの改善や維持ができるよう支援している。
2. 手術を受ける認知症高齢がん患者の意思決定支援とせん妄予防
愛知県がんセンター 認知症看護認定看護師 松浦 由紀子
高齢者の入院増加に伴い、認知機能低下や認知症を伴うがん患者が増加している。課題は意思決定能力を適切に把握し、本人を置き去りにせず、意思が変わることを念頭においた意思決定支援である。また高齢者はせん妄を発症すると入院が長期化し、二次的合併症を引き起こすこともあるため予防ケアは大切といえる。今回、他施設では治療ができないと言われた認知症を伴う高齢がん患者が、当院で手術を受けることになった。その際の意思決定支援やせん妄予防の取り組みについて報告する。
3. 外来化学療法を受ける高齢患者を対象とした積極的な体調確認の取り組み
愛知県がんセンター 外来化学療法センター 副師長 大本 美穂
当院では、高齢独居、老々介護の中で外来化学療法を受ける患者が増えている。高齢者世帯の患者は、有害事象が発生しても受診行動など対応が遅れやすく、重篤化してから緊急入院となる事例がみられる。そのため、異常の早期発見、対応方法の指導、つながる安心感を目的に、70歳以上で初回レジメン投与後の患者全員に看護師が電話で体調確認を行う取り組みを始めた。今回は、取り組み内容と結果、今後の課題について報告する。