- 日時
- 2022年03月18日(金)17:30~18:30
- テーマ
- 呉医療センター・中国がんセンターにおける研究と症例報告
(呉医療センター・中国がんセンター 発信)
司会 呉医療センター・中国がんセンター 臨床検査科 副臨床検査技師長 庄野 三郎
1.乳児に発生したMicrosporum canisによる頭部白癬の1例
呉医療センター・中国がんセンター 臨床検査科 佐伯 由美
Microsporum canisは、犬や猫から感染する皮膚糸状菌の一種である。今回、飼猫からの感染が考えられる二ヶ月女児の頭部に感染した1症例を経験し、サブロー培地や日常的に使用する血液寒天培地、クロモアガーカンジダ培地におけるコロニーの形態及び発育状態、顕微鏡的形態を経時的に観察したので報告する。
2.クロスミキシング試験が診断に有用であった後天性血友病Aの1例
呉医療センター・中国がんセンター 臨床検査科 高坂 菜摘
後天性血友病Aとは、第Ⅷ因子に対する自己抗体が産生されることで、止血反応が抑制され出血症状を生じる後天性出血性疾患である。膠原病や悪性腫瘍、妊娠などの基礎疾患により免疫機構が破綻して発症すると考えられているが、明らかな基礎疾患を認めない症例も存在する。また、発症早期に重篤な出血が生じて死亡するリスクが高いため、早期診断、治療が大切である。
今回原因不明のAPTT延長患者において、クロスミキシング試験が診断に有用であった症例を経験したので報告する。
3.心エコー検査を契機に収縮性心膜炎の診断に至った1例
呉医療センター・中国がんセンター 臨床検査科 田中 友梨
症例は83歳女性。顔面および両下腿浮腫、労作時呼吸困難を主訴に受診し、心不全と診断され入院となった。心エコー検査では左室収縮は良好であったが、Kussmaul徴候を認めたことから収縮性心膜炎が疑われた。再度施行された心エコー検査では、心膜癒着サインなどの特徴的な所見を認めた。左室収縮は保たれているが右心不全症状を認める場合には、収縮性心膜炎を念頭に置き、心エコー検査を行う重要性を再確認した症例であった。
4.消化器がんにおけるAnnexin A10の臨床病理学的重要性
呉医療センター・中国がんセンター 病理診断科 石川 洸
Annexin A10(ANXA10)はカルシウム/リン脂質結合蛋白の一つであり、胃や十二指腸のブルンネル腺などに発現しているとされる。しかし、その意義は明らかではない。我々は消化器臓器横断的にANXA10の臨床的意義について解析した。胃がんでは、ANXA10は早期から、がん進展に関与し、抗がん剤への感受性に影響を与えていた。小腸がんや膵がんでは、ANXA10が重要な予後マーカーである可能性が示唆された。