- 日時
- 2021年05月21日(金)17:30~19:00
- テーマ
- 第77回日本放射線技術学会総会学術大会を振返る
(国立がん研究センター中央病院発信)
司会 国立がん研究センター中央病院 放射線技術部 石原 敏裕
1.深層学習を用いた術前CT画像からの肺腺がん術後再発予測法の開発
新潟県立がんセンター新潟病院 中央放射線部 佐々木 雄樹
比較的早期の肺がんに対して根幹となる治療方法は手術だが、手術を行ってもある一定の割合で再発を来す患者が存在する。治療開始前に術後再発が予測できれば、患者個人に適した治療法を提案できる可能性がある。そこで本研究では、人工知能の一技術である深層畳み込みニューラルネットワークによる深層学習を用いて、肺腺がん手術患者の術前CT画像から術後再発の有無を予測評価するコンピュータ支援診断システムを提案する。
2.腹部Dynamic造影CT検査におけるBolus Tracking法の新しいScan Delay設定についての検討
岐阜大学医学部附属病院 放射線部 三好 利治
Bolus Tracking法を用いたDynamic造影CT検査における膵実質相のように、造影剤到達からScan開始までにある一定のDelay時間がある検査の場合には、実質濃染ピークを捕らえる事に対する精度低下が問題となっていた。そこで今回我々は、腹部Dynamic造影CT検査を受けた114人の患者群の画像情報を利用しScan Delay設定法を検討したので報告する。今回の検討から、造影剤注入から腹部大動脈到達までの時間と、腹部大動脈到達から膵実質相Scan開始までの時間を1:1とすることが最適であると判明した。
3.Artificial Intelligence 技術を用いた前立腺がん VMAT 治療計画の線量評価:多施設研究
大阪国際がんセンター 放射線腫瘍科 上田 悦弘
近年開発された機械学習技術を用いた治療計画手法は、Knowledge-based planning(KBP)と呼ばれ、有効性が報告されている一方で、不明な部分も多く、計算手法が完全に確立したとは言えない。KBPの計算手法を確立するため、5施設で班を結成して、各施設のKBPモデルを比較した。各施設で前立腺がんに対するKBPモデルを2つ作成した(1st model、2nd model)。臨床で使用されたプランを登録することで、問題なく治療計画を立案できることがわかった。1st modelと2nd modelの比較により、質の良いプランを学習することが重要である。
4.肺がんVMATにおけるOリングライナックの線量分布の検討
国立がん研究センター東病院 放射線技術部 鹿野 和仁
ガントリー回転の高速化により効率的なVMATを可能としたOリングライナック(Halcyon、Varian社製)の運用が日本国内で始まっている。しかし、治療計画装置Eclipse(ver.15.6)(Varian社製)で作成される線量分布は、6MVFFF、二段構造の1cmMLCのHalcyonと6MV5mmMLCのTrueBeam(Varian社製)で異なることが予想される。そこで、本研究では肺がんを対象に同一Optimize時の2台の治療機器の線量分布を比較検討したので報告する。
5.アルコールベース銀系抗菌製剤によるX線診療室における抗菌効果の検証
国立がん研究センター中央病院 放射線技術部 鳥居 純
アルコールベース銀系抗菌製剤は、銀によるコーティング機能により持続的な抗菌効果を発揮すると報告されている。しかし診療放射線技師をはじめ、入院/外来患者及び感染症患者/易感染患者が混在し、検査時には診療放射線技師・患者の両者が機器や環境表面を高頻度で触れるX線診療室での検証報告はない。本研究によりアルコールベース銀系抗菌製剤をX線診療室に使用する事で菌数増加を抑制でき、持続的な抗菌効果の可能性を立証できたので報告する。