- 日時
- 2021年09月17日(金)17:30~19:00
- テーマ
- 放射線技術学における教育システムの構築‐子宮がん‐
(国立がん研究センター東病院発信)
司会 国立がん研究センター東病院 放射線技術部 副放射線診断技術室長 永井 優一
1.子宮がん概論
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 大澤 阿紋
婦人科がんは子宮頸がん、子宮体がん、卵巣・卵管・腹膜がんなどがあり、がん罹患者の約10%を占めている。婦人科がんのうち、子宮頸がんが26%、子宮体がんが42%、卵巣がんが32%を占める。子宮頸がんは若年層、子宮体がんは閉経期前後で発見されることが多い。診断は内診(触診)に加えて、超音波、内視鏡、CT、MRI、PET/CTなどの画像検査、血液検査の腫瘍マーカー、細胞診、組織診を組み合わせて行う。治療は病期や再発リスクに応じて手術、放射線治療、化学療法が単独または組み合わせて行われる。
2.CT検査
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 浜頭 孝成
子宮がんに対するCTの役割は、腫瘍及びリンパ節の評価や遠隔転移の有無である。画像所見は日本産科婦人科学会が採用する臨床進行期分類と病理学的TNM分類の決定に用いられる。当院初回でのCT撮影は、治療開始前の評価として、単純腹部CTと門脈相による体幹部の造影CTをルーチンとしている。子宮がんの主な画像所見は、境界不鮮明な腫瘍像を認めることが多い。しかし腫瘍浸潤の評価は、局所深達度の診断能が高いMRI検査との併用が望ましい。
3.MRI検査
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 平井 友美華
MRIは軟部組織のコントラストに優れており、CTよりも子宮内膜や筋層を良好に描出し、造影MRIでは腫瘤径の測定や局所深達度・周囲臓器浸潤を評価し、ステージングの決定に寄与する。dynamic撮像は、早期相で小病変や再発病変の検出に有用である。k-space充填方向を回転してエコー収集する体動補正法(Radial scan法)は、撮像中の被験者の動きを補正し、直腸にたまったガスや呼吸のアーチファクトを軽減することが可能である。
4.放射線治療
国立がん研究センター東病院 放射線治療技術室 良知 寿哉
子宮がんは体がんと頸がんに大別され、治療方法が異なる。体がんへの第一選択は外科的治療で、扁平上皮癌である頸がんは放射線治療が有効的な治療法である。頸がんは幅広い病期において放射線治療が実施され、増感作用として化学療法が併用される。放射線治療は外部照射と腔内照射があり併用することもある。近年は3次元画像による治療計画が一般化し、線量計算方法や線量評価方法が高度化し精度が向上している。また併用される抗がん剤は、抗腫瘍効果の高い薬剤が開発され臨床試験が進められている。今後、同時化学放射線療法による頸がんの標準治療は変化していく可能性がある。
5.ししゃもシステムのブラッシュアップ
国立がん研究センター東病院 放射線診断技術室 稲川 日華里
がん種別における放射線技術学の教育システムの構築において、過去のスライド資料を電子カルテ端末に保存し、若手スタッフの教育に利用してきた。しかしながら、教育後のスタッフの理解度を測ることができていない。そこで、新たに理解度チェッカーシステムを計画し、要求要件を整理している。指導者を含めて教育履歴が残ることは最低限ではあるが、医療機器管理システムで開発を進めているマイページ機能とのリンクにより、効率的な教育管理が可能になると考えている。がん診療に求められる人材育成のために忌憚のないご意見をいただきたい。