がん専門相談員のための
小児がん就学の
相談対応の手引き
がん専門相談員のための小児がん就学の相談対応の手引き

第3章 病気療養中/入院中・退院後の教育の制度や体制を知る

更新・確認日:2015年12月24日 [ 履歴 ]
履歴
2015年12月24日 掲載しました。
SUMMARY
学習目標
通常の教育課程や制度について理解し、日本の病気療養中の教育体制についての理解を深めることを目指します。
内容
義務教育は、誰もが受けることができる「権利」であり、保護者はその教育を受けさせる「義務」があります。また平成6年(1994年)に、旧文部省(現文部科学省)から「病気療養児の教育についての通知」が出され、その中で、病気療養児の教育の改善をし、充実していくことが示されました。このたびの第2期がん対策推進基本計画で小児がん医療体制の整備が進められていることを受けて、各都道府県知事をはじめとする関係者に向けて、平成6年通知のさらなる徹底ということで、「病気療養児に対する教育の充実について(通知)」が文部科学省より出されました。

また平成19年には、「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校において、障害のある幼児・児童・生徒の支援をさらに充実させていくこととなり、障害のある1人1人の子どもの可能性を最大限に伸ばすことを目指して、適切な指導および必要な支援を行う教育が行われています。また特別支援学校は特別支援教育コーディネーターを中心に、さまざまな関連機関との調整や連携の担い手となる活動をしています。がん専門相談員は、病気療養中に活用できる教育体制について知っておくこと、そして、教育側の調整や連携の担い手となる特別支援学校や特別支援教育コーディネーターらとともに、円滑な就学・復学支援を進めていくことが求められます。

1.日本の教育制度

病気療養中の教育体制について理解するためには、まず通常の教育課程や制度について理解しておくことが必要です。

法律での「学校」とは、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学および高等専門学校のことで、そのうち、小学校と中学校、中等教育学校前期課程を「義務教育」といいます。義務教育の対象となる年の前年に、居住の市町村において、学齢簿が作成され、入学の準備が始められます。義務教育は、この学齢簿によって、誰もが公立の学校で受けることができる「権利」が保障されるとともに、保護者にはその教育を受ける「権利」があります2*。また、教育基本法においては、すべての国民に教育の機会が与えられること、そのために国や地方公共団体(自治体)が障害への配慮も含めて必要な措置を講じることと定められています。

ここで相談員にとって最低限必要な日本の教育制度に関する知識は、まず、義務教育は、誰もが受けることができる「権利」であることと、保護者はその教育を受けさせる「義務」があるということ、そして教育を受ける機会を保障するのが国および自治体の役割として法的に定められているということです。

2.病気療養児に対する教育

病気療養児に対する教育は、院内学級3*や病院に併設された特別支援学校、患児が通う地域の学校などで行われたり、教師を病院や児童生徒の家庭に派遣する訪問教育が行われたりします。平成6年に旧文部省(現在の文部科学省)から各都道府県教育委員会委員長あてに「病気療養児の教育について」が出され、病気療養児の教育の改善し、充実していくことが示されました(文初特二九四号 平成六年一二月二一日 文部省初等中等教育局長通知)。

 病気療養児の教育について(文部科学省
 
また、第2期がん対策推進基本計画(平成24年6月)等に基づき、厚生労働省において、全国15カ所の「小児がん拠点病院」の指定が行われ、診療機能の充実やより良い診療体制の整備のために専門医療の集約化、ネットワーク化が進められていることを受け、今後の病気療養児への指導等のあり方について、「病気療養児の教育について(平成6年12月21日付文初特第294号)」(以下「病気療養児の教育についての通知」という)の取り組みの徹底を図ることを目的として、特に留意する事項についての通知が、平成25年3月に各都道府県等の教育委員会教育長および各都道府県知事等宛てに出されました(表I—3—1)。ここでは、地方自治体の対応として、柔軟な就学(転学等)対応により多様な学びの場による教育の連続性を保障すること、そして、教育現場(学校)での対応のあり方などが示されました。

 病気療養児に対する教育の充実について(通知)(文部科学省

実際に相談員が、小児がんの療養中の子どもの就学の支援を行うときに、病院や学校などで、就学に関する理解が得られにくいことがあります。相談員に説明や説得が求められることもあるかもしれません。そのようなときに、ここにあげたような教育体制や国の通知の内容など、小児がんをはじめとする病気療養児に対する教育の体制整備の動きを知っておくことは、とても大きな後ろ盾になります。

2* 教育を受ける権利:「日本国憲法」第26条、「教育基本法」第4条
3* 院内学級:「院内学級」は通称で、特別支援学校の分教室や分校、小・中学校の病弱・身体虚弱特別支援学級、特別支援学校が訪問教育等を行う教室など、医療機関内に設置されている、教育を行う場の総称として用いられます。

表3ー1 文部科学省より出された「病気療養児の教育についての通知」

病気療養児に対する教育の充実について(通知)
24 初特支第20号 平成25年3月4日

各都道府県・指定都市教育委員会教育長殿
各都道府県知事殿
附属学校を置く各国立大学法人学長殿
構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長殿
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課長
大山 真未

病気療養児に対する教育の充実について(通知)

近年、医療の進歩等による入院期間の短期化や、短期間で入退院を繰り返す者、退院後も引き続き 治療や生活規制が必要なために小・中学校等への通学が困難な者への対応など、病弱・身体虚弱の幼 児児童生徒で病院等に入院または通院して治療を受けている者(以下「病気療養児」という)を取り巻く環境は、大きく変化しています。
また、このたび、政府の第2期がん対策推進基本計画(平成24年6月)等に基づき、厚生労働省において、全国15カ所の「小児がん拠点病院」の指定が別添のとおり行われました。現在、診療機能の充実およびよりよい診療体制の整備のため、このような専門医療の集約化、ネットワーク化が進められつつあります。
ついては、今後の病気療養児への指導等のあり方について、「病気療養児の教育について(平成6年12月21日付文初特第294号)」(以下「病気療養児の教育についての通知」という)により提示した取り組みの徹底を図るとともに、特に留意いただきたい事項について下記のとおり整理しましたので、各都道府県教育委員会におかれては所管の学校および域内の市町村教育委員会に対して、各指定都市教育委員会におかれては所管の学校に対して、各都道府県知事および構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長におかれては所轄の学校および学校法人等に対して、各国立大学長におかれては附属学校に対して、周知を図るようお願いします。

< 1 >小児がん拠点病院の指定に伴う対応
  小児がん拠点病院の指定により、市町村や都道府県を越えて小児がん拠点病院に入院する病気療養児の増加に伴い、転学および区域外就学に係る手続きの増加や短期間での頻繁な入退院の増加が予想されることなどを踏まえ、以下について適切に対応すること。
    (1) 都道府県教育委員会、指定都市教育委員会、都道府県知事、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長および各国立大学法人学長(以下「教育委員会等」という。)は、病気療養児の転学および区域外就学に係る手続きについて、病気療養児の教育につ いての通知で提示されているとおり、可能な限りその簡素化を図るとともに、それらの手続きが滞ることがないよう、域内の市町村教育委員会および所轄の学校等に対して、必要な助言または援助を行うこと。
    (2) 教育委員会等は、病気療養児の教育についての通知で提示されている取り組みに加え、入院中の病気療養児の交流および共同学習についても、その充実を図るとともに、域内の市町村教育委員会および所轄の学校等に対して、必要な助言または援助を行うこと。
    (3) 教育委員会等は、後期中等教育を受ける病気療養児について、入退院に伴う編入学・転入学等の手続きが円滑に行われるよう、事前に修得単位の取扱い、指導内容・方法および所要の事務手続き等について関係機関の間で共有を図り、適切に対応すること。
    (4) 病弱者を対象とする特別支援学校は、幼稚園・小学校・中学校・高等学校または中等教育学校の要請に応じて、病気療養児への指導に係る助言または援助に努めること。
< 2 >病院を退院後も通学が困難な病気療養児への対応
  感染症への対策などの治療上必要な対応や継続的な通院を要するため、病院を退院後も学校への通学が困難な病気療養児に対し、以下について適切に対応すること。
    (1) 通学が困難な病気療養児の在籍校およびその設置者は、当該病気療養児の病状や教育的ニーズを踏まえた指導が可能となるよう、病弱者を対象とする特別支援学校、小・中学校の病弱・身体虚弱特別支援学級、通級による指導などにより、当該病気療養児のための教育環境の整備を図ること。
    (2) 通学が困難な病気療養児の在籍校およびその設置者は、当該病気療養児に対する指導にあたり、 訪問教育やICT等を活用した指導の実施などにより、効果的な指導方法の工夫を行うこと。
    (3) 通学が困難な病気療養児の在籍校およびその設置者は、退院後にあっても当該病気療養児への教育への継続が図られるよう、保護者、医療機関、近隣の特別支援学校等との十分な連携体制を確保すること。
    (4) 教育委員会等は、域内の市町村教育委員会および所轄の学校等が行う上記(1)〜(3)の取り組みに対し、必要な助言または援助を行うこと。
< 3 >その他
   上記のほか、教育委員会等は、域内の市町村教育委員会および所轄の学校等に対し、「病気の子どもの理解のために(全国特別支援学校病弱教育校長会および独立行政法人国立特別支援教育総合研究所作成)」等の資料を周知するなど、病気療養児に対する教育についての理解啓発に努めること。

3.特別支援教育と特別支援学校

1)特別支援教育とは

「特別支援教育」とは、障害のある子どもの自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視点に立って、子ども1人1人の教育的ニーズを把握し、そのもてる力を高め、生活や学習上の困難を改善し、また克服するために、適切な指導や必要な支援を行うものです。平成19年4月から、「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校(つまり、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校)において、障害のある幼児児童生徒の支援をさらに充実させていくこととなりました。病気の子どもに対する教育もこの特別支援教育の枠組みに位置づけられます。

 特別支援教育について(文部科学省

2)特別支援学校とは

特別支援学校とは、障害の程度が比較的重い子どもを対象として専門性の高い教育を行う学校です。幼稚園から高等学校に相当する年齢段階の教育を、特別支援学校のそれぞれ幼稚部・小学部・中学部・高等部で行います。

特別支援学校は、障害のある子どもの教育についての専門性を生かして、地域の特別支援教育のセンターとしての機能を有します。そして、教育(学校、教育委員会、その他の教育機関)、医療(地域の病院、障害者専門医療機関)、保健(地方公共団体の保健担当部局、保健所、保健センター等)、福祉(地方公共団体の福祉担当部局、保育所、児童相談所、社会福祉協議会、障害者福祉センター、発達障害者支援センター等)、労働(ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、民間企業等)、その他(NPO、親の会、地域の活動グループ)などと連携し、子どもの教育的ニーズに応じて一環した支援を行います。
● 特別支援教育のパンフレット
パンフレット「特別支援教育」について(文部科学省

3)特別支援コーディネーターとは

特別支援教育コーディネーターは、特別支援教育を推進するために、すべての小中学校および特別支援学校で校務分掌に位置づけられ、1人から複数が指名されています。そして、保護者や関係機関に対する学校の窓口として、また、学校内の関係者や福祉、医療等の関係機関との連絡調整役としての役割を担っています。

※(参考) 「 特別支援教育を推進するための制度のあり方について(答申)」(平成17年12月中央教育審議会(文部科学省))

したがって、障害のある児童生徒の発達や障害全般に関する一般的な知識およびカウンセリングマインドを有する者が担うことが望ましいとされ、小中学校においては、特別支援教育コーディネーターの研修を受けた者のほか、これまでに特別支援学校や特別支援学級など特別支援教育の指導経験がある者や、教育相談などの担当者が指名されることが多くなっています。関係機関との連絡・調整が図りやすい教務主任や教頭などが役割を担う場合や、全児童生徒の様子を把握しやすい養護教諭や専科担当教諭が担う場合もあります。特別支援学校では、専任の特別支援教育コーディネーターがいたり、病院にある学校ではその担任が役割を担っていたりします。

障害のある子どもの教育については、担当する複数の教師、職員、保護者、外部の専門家が連携し協力しながら、子どもの教育ニーズに応じて適切な教育を準備することが必要です。特別支援教育コーディネーターは、学校内の障害をもつ子どもの把握、学校全体でその子どもたちをどのように支援するかの校内支援体制を検討する際のリーダーシップをとること、保護者の要望を参考にしつつ、個別の指導計画の作成を支援したり、学内外のどこで、どのくらいの時間、どのような内容の学習を行うかについて調整を行うことなどが役割となります。また、通常学級での様子を特別支援学級の教師や保護者に伝えたり、必要に応じて保護者や医療機関の関係者との連絡を取り合うなどの連絡・調整役としての活動を行います。

4.特別支援教育における「病弱・身体虚弱教育」

特別支援教育では、それぞれの障害に配慮した教育が行われます。障害のタイプにより、以下の8つがあります。
●視覚障害教育
●聴覚障害教育
●知的障害教育
●肢体不自由教育
●病弱・身体虚弱教育
●言語障害教育
●自閉症・情緒障害教育
●LD、ADHD の教育

その中で、小児がんの場合の教育は、主に「病弱・身体虚弱教育」にあたります。小児がんによる障害やその程度によって、その子どものニーズに応じた教育が行われます。

ここで「病弱」とは、慢性疾患等のため継続して医療や生活規制を必要とする状態、「身体虚弱」とは、病気にかかりやすいため継続して生活規制を必要とする状態をいいます。

(5)病弱・身体虚弱教育(文部科学省

特別支援学校(病弱)

病気等により、継続して医療や生活上の管理が必要な子どもに対して、必要な配慮を行いながら教育を行っています。特に病院に入院したり、退院後もさまざまな理由により小中学校等に通学することが難しい場合は、学習が遅れることのないように、病院に併設した特別支援学校やその分校、または病院内にある学級に通学して学習しています。

授業では、小・中学校等とほぼ同じ教科学習を行い、必要に応じて入院前の学校の教科書を使用して指導しています。自立活動の時間では、身体面の健康維持とともに、病気に対する不安感や自信の喪失などに対するメンタル面の健康維持のための学習を行っています。

治療等で学習空白のある場合は、グループ学習や個別指導による授業を行います。病気との関係で長時間の学習が困難な子どもについては、学習時間を短くするなどして柔軟に学習できるように配慮しています。

退院後も健康を維持・管理したり、運動制限等のために、特別支援学校の寄宿舎から通学、または自宅から通学し学習をする子どももいます。通学が困難な子どもに対しては、必要に応じて病院や自宅等へ訪問して指導を行っています。

病弱・身体虚弱特別支援学級

入院中の子どものために病院内に設置された学級や、小・中学校内に設置された学級があります。病院内の学級では、退院後には元の学校に戻ることが多いため、元の学校と連携を図りながら各教科等の学習を進めています。教科学習以外にも、特別支援学校と同様に身体面やメンタル面の健康維持や改善を図る学習を行うこともあります。

5.病弱教育の意義

病弱および身体虚弱の子どもに対して行われる教育は、病弱教育と呼ばれます。病気療養中の子どもは、長期、短期、頻回の入院などによって、これまで通っていた学校に通えなくなることで、学習に遅れが生じます。また退院後も治療の継続や副作用、体力の回復に時間がかかるなど、心身の状態が万全でないことなどの理由で学業不振となることも多くあります。病気療養中の子どもに対する教育は、このような学習の遅れなどを補完し、学力を保障する上でもとても重要なものです。また、その他にも、一般に次のような点についての意義があると考えられています。

積極性・自主性・社会性を育む

病気療養中の子どもは、長期にわたる療養経験から、積極性、自主性、社会性が乏しくなりやすいといった傾向もみられます。このような傾向を防ぎ、健全な成長を促す上でも、病気療養中の児の教育はとても重要です。

心理的な安定を促す

病気療養中の子どもは、病気に対する不安や家族、友人と離れた孤独感などから、心理的に不安定な状態におちいりやすくなります。また、健康回復への意欲を減退させてしまうということも起こり得ます。病気療養中の子どもに対して教育を行うことは、このような児童生徒に生きがいを与え、心理的な安定をもたらし、健康回復への意欲を育てることにつながります。 

病気に対する自己管理能力を高める

病気療養中の子どもの教育は、病気の状態や心身の回復具合など等に配慮しながら、病気を改善したり、克服するための知識、技能、態度を養うとともに、生活上の習慣および意欲を培い、病気に対する自己管理能力を育てていくためにも有用なものです。 

治療上の効果を上げる

経験的に、病気療養中に学校教育を受けている子どもが、治療上の効果が上がり、退院後の適応もよいと考えられています。また、再発の頻度も少なく、病気療養中の児の教育が、健康の回復やその後の生活によい影響を与えることが指摘されています。また、病気療養中に教育を行うことは、その子どもの療養生活の質の向上にもつながります。

その子どもらしい生活や育ちの場を保障するためにも、がん専門相談員として、療養と教育の両方の橋渡しを、どのようにできるのか、病気療養中の子どもと保護者、また医療や教育の関係者らとともに一緒に話し合い、考える場を特別支援教育コーディネーターと連携してつくっていく必要があります。

6.「多様な学びの場」〜病弱教育の形態

病弱教育が行われる形態(場)は、特別支援学校、小学校・中学校の特別支援学級、訪問教育、通級による指導、そして、小学校・中学校の通常の学級です。

特別支援学校は従前は特殊教育として、「視覚障害」「聴覚障害」「肢体不自由」「知的障害」「病弱・身体虚弱」の障害に対応した学校が制度化されていましたが、平成19年の学校教育法の改正に伴い「特別支援教育」として一本化されました。それに伴い、それまでの盲学校・ろう学校・養護学校の多くが校名を変更していますが、今でも盲学校・ろう学校・養護学校を校名として使用している学校もあります。

また、この特別支援教育制度への移行の中で、特別支援学校は多様なニーズをもつ児童生徒を受け入れることが定められ、また、地域の特別支援教育のセンターとしての機能をもつようになったことから、1つの学校が複数の障害種に対応するような場合も少なくありません。例えば、肢体不自由の特別支援学校が病弱にも対応する、視覚障害の特別支援学校が病弱にも対応する、といった特別支援学校です。こういった特別支援学校は、今後も増えていくことが予想されます。

いわゆる「院内学級」は、特別支援学校の分校・分教室として運営される場合と、通常の小学校・中学校による病弱・身体虚弱特別支援学級として運営されている場合とがあります。病弱教育を担う特別支援学校は、病院等の医療機関に隣接している場合が少なくありません。このような場合、隣接の病院から特別支援学校に通学したり、病院内の教室で授業を受けたり、ベッドサイドで学習したりします。

また、特別支援学校は、隣接の病院のほかにも、地域の病院で、教室4*を置いて授業を行ったり、訪問教育の形態で指導を行ったりします。

小中学校による病弱・身体虚弱特別支援学級は、学校内に学級がある場合(単に特別支援学級と呼ばれることが多い)と、病院など施設内にある場合(院内学級と呼ばれることが多い)があります。学級編制が1学級8名なので、複数の学年の児童生徒が在籍することもあります。平成24年度の学校基本調査(文部科学省)等によると、病弱・身体虚弱特別支援学級は全国に1,325学級あり、そのうち248学級は病院内にあります5*

訪問教育は、基本的に一対一の指導で、1回120分程度を週3回程度実施します。対象の児童生徒が同じ病院内に多く在籍している場合、担当の教師たちにより、弾力的な指導形態が組まれることもあり、「院内学級」との違いがわかりにくい場合もあります。訪問教育を行うのは、特別支援学校です(通常の小・中学校の教員が「訪問教育」を行うことは制度上ありません)。

通級による指導は、小学校・中学校の通常の学級に在籍している児童生徒が、週に数時間〜月1回程度、必要な指導を受けることができる学びの場です。例えば、病気が回復し、小学校・中学校等の通常の学級において留意して指導することが必要な児童生徒のうち、健康状態の回復・改善や体力の向上、心理的な課題への対応や学習空白への対応などのための特別な指導が必要だと考えられる場合などです。退院して前籍校に戻ったあと、定期的に通院する際に、病院に隣接する特別支援学校で指導を受けることも考えられます。通級による指導は、小・中学校、特別支援学校で行うことができます。

退院はしたけれど……、復学はしたけれど……、といった場合、通級による指導を受けることによって、子どものQOLを高め、より充実した学校生活が送れることが期待されます。

4* 教室:正しくは、分教室・分校ですが、通称で「院内学級」と呼ばれることもあります。
5* 病弱・身体虚弱特別支援学級:全国病弱虚弱教育研究連盟の施設調査によります。
小学校・中学校の通常の学級では、健康面や安全面に留意しながら学習している病気の子どもは少なくありません。また、多くの子どもの退院後の復学先となります。日常的な配慮や施設設備等安全面において、養護教諭や保健主事6*、特別支援教育コーディネーター等と連携して適切な対応が図れるよう、支援会議等を開催して共通理解を図ることが大切です。
図3-1 病弱教育の場
図3ー1 病弱教育の場
「教育支援資料〜障害のある子どもの就学手続きと早期からの一貫した支援の充実〜」(平成25年10月、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課) 「図3-Ⅴ-(2)病弱教育の場」より引用
6* 養護教諭・保健主事:小・中学校等には、養護教諭を置くことになっています。(学教法37条、他)「学校保健に関する事項の管理にあたる職員」である保健主事もまた、小・中学校等に置くこととされています。(学教法施行規則45-4)
養護教諭が専門教諭であるのに対して、保健主事は養護教諭や教諭が「充て」職として担います。養護教諭が保健主事を兼ねる場合もありますが、規模が大きい学校などでは、別に保健主事を置いています。

7.特別支援学校の“センター的機能”の活用

特別支援学校は、特別支援教育に関する地域のセンター的機能を担っています。それぞれの特別支援学校は、特別支援教育コーディネーターを中心とした教育相談のシステムをもち、地域の小・中学校等への支援や、保護者や教員からの相談に応じたり、市町村教育委員会と連携してさまざまな支援を行ったりしています。

病弱教育を担当する特別支援学校(以下、「特別支援学校(病弱)」と記載)は、こういった相談・支援の取り組みのほか、子どもの病気に関する学校での心配ごとの相談や、入院による就学に関する相談といった、医療機関や関係する教育委員会等との連携調整を行うことも少なくありません。

相談員は、こうした特別支援学校(病弱)の機能やノウハウを活用するためにも、常日頃から連携をとり、より円滑な就学・復学支援を進めていくことが求められます。地域における連携して行う支援の積み重ねにより、子どもの教育環境の整備が進み、教育の保障を目指すことにもつながります。