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小児がん患者就学支援

第4章 就学の支援方法の実際を知る

SUMMARY

学習目標

就学の支援を行う際に必要となる、受験や進級、進学、転校に関する基本的な流れを理解することを目指します。

内容

就学および復学の支援は、入院したときから、復学を意識して支援を行うことが大切です。そのための連絡や調整も入院当初から必要になります。多くの場合、病院にある学校の担当者が連絡や調整の主な担い手になると考えられますが、病院に学校がない場合、その地域の担当者の経験の浅い場合など、相談員が積極的に動いて、連絡や調整を行う必要がある場合もあります。受験や進級、進学、転校するときに必要な基本的な流れを理解しておきましょう。

1.就学・復学の支援

1)入院したときから始める就学/復学の支援

よりスムーズに前籍校に戻れるように、入院=転学の時点から「復学」を意識して、前籍校との関係づくりをしておくことが大切です。その際、学校と学校の間での連絡等が中心になりますので、病院にある学校の担当者や特別支援教育コーディネーターなどが連絡や調整を行うことが望ましいといえます。しかし、すぐに適当な担当者が見つけられなかったり、担当者の経験が浅いために、連絡・調整がうまくいかなかったり、時間がかかるようであれば、相談員が率先して動くことが求められます。大事なことは、治療の状況や心身の状況を考慮しながら、その子どもの就学をはじめとする、それまでの生活で大切なものを維持できるよう支援を行うことです。

相談員は、下記に示した病院にある学校の担当者の動きを参考に、病院にある学校の担当者等から情報を得て、必要に応じて、病院にある学校の担当者等と連携して、前籍校への働きかけをします。

病院にある学校の担当者の動き

病院にある学校の担当者は、定期的に連絡を取り合うなどして、子どもが前籍校側とのつながりを保てるようにします。

  • 学校だよりや学級通信などの配布物をもらう。
  • 授業の進度状況の情報や、使用しているプリント等をもらう。
  • 中学校の場合、進路に関する情報(配布物等)をもらい、進路活動の情報を共有する。
  • 必要に応じて、前籍校の担任や学級の友だちとの交流の機会を設定する。(メールやテレビ会議システムの活用、お便りなど)

学校だよりや保健室だよりなど、学校からの配布物は、可能であれば前籍校の担任から保護者へ渡るようにすると、前籍校と保護者の関係が継続されるので、復学に向けて準備がしやすくなります。

2)入院時の支援

入院時の支援では、まず病院にある学校を紹介します。そして転校(転入学)の手続きを行う必要があります。入院時には保護者がすぐに病院にある学校の担当者や特別支援教育コーディネーターにつながりにくい場合もあるので、病院のスタッフや相談員が積極的に、情報提供を行い、確認する必要があります。早い段階で情報提供することにより、“ 相談できる人”という認識をもってもらえることにもなり、その後の就学上の不安や困りごとにも対応しやすくなると考えられます。

病院にある学校を紹介する

病院にある学校の担当者の動き病院にある学校の担当者の動き

転校の手続き(転入学)
病院にある学校の担任または特別支援教育コーディネーターが、連絡を受けてから、必要な手続きを進めます。
学校では、就学担当・特別支援教育コーディネーター(兼務の場合もある)・教頭などが、相手校や教育委員会との連絡を行います。

  1. 保護者は、入院したこと・転校したいことを在籍している学校に伝えます。このときは、担任に伝えてから、その後の指示を受けるようにします。保護者から連絡を受けた学校は、病院にある学校に連絡を入れ、必要な手続きを進めます。
  2. 保護者は、所定の手続き(就学に関する書類は学校にあります。在籍している学校に出向いて作成する必要がある場合もあります)を行います。在籍している学校から指定された書類を、市町村教育委員会に提出したり、病院にある学校の担当者等(院内学級の担任等)と「就学相談」の機会をもったりします。

相談員は、子どもが入院している病院にある学校の担当者を通して、手続きの流れや担当者を確認しておくと、円滑な転学手続きが図れます。お互いが「相手がやるだろう」と思い、なかなか手続きが進まなかったり、学校間や保護者との間で誤解を招いてしまったりする場合もあります。また、急な入院という展開に、保護者が気持ちの余裕がない場合など、必要な手続きを行いにくいこともあります。
必要に応じて、保護者の思いや不安を聞き、保護者に対しても必要な情報提供や適切な支援を行う必要があります。

◆◆相談員のチェックリスト!◆◆

  • 在籍している学校へは、誰が連絡するか
  • 病院にある学校へは、誰が連絡するか
  • 両校の担当(窓口)は誰か
    • 転出校:
    • 転入校:
  • 転入学日(学籍を移動する日)はいつか
  • 保護者は、必要な手続きを行ったか

相談員は、保護者から転校の意思を確認できたら、保護者と病院にある学校の担当者の面談(就学相談)の調整を行います。保護者に代わって、病院にある学校の担当者と手続き等について確認することが必要なこともあります。

また相談員は、病院にある学校の担任または特別支援教育コーディネーターが、病院に常駐していなかったり、新任者であったりする場合には、下記の要領で必要な手続きを依頼することが必要です。

◇◇相談員が必要な手続きを依頼する場合◇◇
(「病院にある学校の担任」または「特別支援教育コーディネーター」が病院に常駐していないなどで対応が 遅れそうな場合)

  1. 相談員は、保護者・本人の転校の意思を確認します。保護者には、在籍している学校の担任に、入院したこと・転校したいことを伝えてもらいます。
  2. 相談員は、病院にある学校の担任または特別支援教育コーディネーターに、入院児の転入希望があることを伝え、在籍している学校との転学手続きをお願いします。その際、保護者の同意を得て
    • 子どもの氏名・学年・在籍校名と連絡先・学級担任名
    • 入院日と予想される入院期間を伝え、面談日(就学相談)の設定を行います。

病院にある学校の担任または特別支援教育コーディネーターなどの就学教育相談の担当者が常駐していない場合は、病院にある学校の教頭に連絡を入れます。教頭は、当該の担当者につなぎますが、そのまま、教頭が対応する場合もあります。

入院する病院に学校がない場合、近隣の特別支援学校に訪問教育の実施を依頼したり、在籍する学校の管轄教育委員会に教育の保障について相談したりします。

◇◇相談員が必要な手続きを依頼する場合◇◇
(入院する病院に学校がない場合)
地域や自治体によっては、在籍する学校の管轄教育委員会に「訪問相談担当教員」を配置し、病院への訪問教育を行う場合があります。相談員は、保護者を通じて、当該地区にそのような制度があるかどうかの確認をします。

近隣の特別支援学校が、学校の状況等によっては、すぐに訪問教育を行えない場合があります。

在籍する学校の管轄教育委員会と、これまでに連携した経緯がない場合は、まず域内の特別支援学校(病弱)に相談して橋渡し役を担ってもらうことが効果的です。特別支援学校(病弱)は、教育相談と地域支援を担うセンター的機能を有しており、多くが広域(自校のある都道府県内)を対象としています。

教育委員会に相談の連絡をとる場合は、まずは在籍する学校の管轄教育委員会(市町村教育委員会等)に相談するようにします。次の手立てとして、都道府県教育委員会へ相談することが望ましいと考えられます。いずれの場合にも、特別支援教育コーディネーターが力強い味方となってくれます。相談員が病弱教育についてどうしたらいいかわからないときには、まず、特別支援学校(病弱)の特別支援教育コーディネーターに相談して、連携して動きましょう。

3)復学の支援

病院にある学校は、子どもたちが前籍校に戻る際、支援会議などを設けて、スムーズな復学ができるようにします。会議の名称はさまざまですが(「地域支援会議」「四者面談」等と呼ばれることがあります)、病院にある学校の担当者と、前籍校の担任や養護教諭、特別支援教育コーディネーター、管理職(校長や教頭)などの関係者が顔を合わせて、可能な範囲で医療関係者も同席する、今後の復学について話し合われる会議が開かれることがあります。本人・保護者が同席するかどうかは、本人と保護者の意向を確認してその場を調整していきます。

こういった機会を設定することで、復学に際しての子どもや保護者の心配・不安を軽減することができます。また、前籍校も、ときには受け入れに不安を抱いていることもありますので、双方で確認できるよい機会となります。復学後に困難が生じた際にも互いに相談しながら対応するきっかけをつくることにもなり、本人にとっても関わる機関(病院、学校)のスタッフにとっても安心につながります。特に、日常的に配慮が必要なことや、施設面での配慮、体育の時間の過ごし方など具体的な内容についても、確認することができます。特別支援教育コーディネーターがこのような話し合いの機会を設定することが多いですが、もし開かれない場合には、相談員が積極的に、関係者を集めた復学のための話し合いの場を設けることが大切です。

2.受験・進級の問題への支援

相談員が、入院している子どもの受験や進学の問題に対して、直接支援をすることは、ほとんどないかもしれませんが、子どもや保護者が悩んでいるときにその相談を受けた場合、どう対応すればよいか、相談員として悩むことがあるかもしれません。病気で入院したときに、受験や進学に関して問題として起こりやすいこと、対応できる支援について知っておくこと、そして、本人や保護者が、必要な情報収集ができるように、適切な相談先を紹介できるようにしておくことは大切です。

1)高校受験

一般的に、中学2年生の秋頃から、高校受験のための準備が始まります。三者面談などを繰り返しながら、受験する高校を絞っていきます。

また、受験のスタイルも多様で、それぞれ時期が異なります。相談員は、予定している「受験」があるか、ある場合にはどのような受験かを確認しておくと、その後の対応の準備がしやすくなります。

◆◆相談員のチェックリスト!−予定している「受験」を確認する◆◆

  • 公立学校の受験か、私立学校の受験か
  • 推薦(さまざまな推薦の形がある)受験か、一般受験か
  • 単願受験か、併願受験か など
    その上で、
  • 受験スケジュール

希望する受験のスタイルによっては、中学3年生になると早々に準備を進めなければならないこともあります。

★受験スケジュール表
高校受験の準備のあらまし(学校によって異なります)

  • 中2秋~保護者面談・三者面談による進路相談
  • 中3春~進路面接・保護者面談<志望校の絞り込み>
  • 中3夏~受験予定校の絞り込み【受験要項配布開始】
  • 12月~私立受験校決定・単願受験【内申書作成】
  • 1月~公立学校願書提出・私立受験・公立受験【自宅学習期間】
  • 2月~私立受験・公立受験・私立2次募集開始
  • 3月~私立受験・公立合否・公立2次募集開始【卒業式】

受験は、試験日が固定しています。入院時期や治療によっては受験できないこともあり、やむを得ない場合があります。相談員は、病院にある学校の担当者と連携しながら、受験準備を進める必要があります。主治医とも十分な連携を図り、本人に不利益な結果とならないようにすることが必要です。

また、受験に際しての配慮事項などについては、病院にある学校の担当者と連携をとりながら、必要に応じて、受験校への事前説明を行います。

病院にある学校の担当者は、自校の進路指導担当と連携しながら、受験等の進学についての準備を進めます。生徒が受験を志望する学校について、ときには、校長や教頭などの管理職を交えての事前説明に出向くこともあります。受験当日も、受験会場に関しては、人混みを避けるための個室等での受験や体力への配慮としての車椅子使用や自家用車の乗り入れ、受験会場の教室までの付き添いの許可といったことが想定されます。これらについて、事前に丁寧に説明に出向くことが、とても重要です。

Column
コラム 『病院内での受験』

治療のスケジュールから、受験日に外出が困難である場合、私立校が病院内の1室(院内学級の教室など)を特設の受験会場にして実施した例もあります。この場合、受験会場として適切であるかどうか、スタッフがどの程度必要であるか等について、事前に私立校による調査や参観・確認が行われました。こういった、受験先との調整は、子どもの体の状態をよく把握した上で、受験先と病院側との調整を行う必要があります。

■病院に学校等がない場合

入院している病院に学校がなかったり、特別支援学校の訪問教育の担当者も訪問しなかったりする場合、受験の手続きは在籍する中学校等(中学校、中等教育学校前期課程)により行われます。

相談員は、保護者を通じて、在籍する中学校の担任や進路指導担当から必要な情報を得るようにします。入院中の生徒の受験については、中学校等でも十分な情報を持ち合わせていないことが考えられます。地域の特別支援学校(病弱)に相談して必要な情報を得て、保護者や在籍する中学校等の担任や進路指導担当に伝えたり、必要に応じて、本人・保護者・在籍する中学校の担任・特別支援学校(病弱)の相談担当者等を交えた話し合いの場を設定したりします。

2)「浪人する」という選択

受験準備を進めてきたが、やむを得ず受験できなかったり、または、受験を見送ったりした場合、中学卒業後は、いわゆる「高校浪人」になります。義務教育段階を終えているので、法律上は何の問題もありませんが、高校全入時代といわれる今日、周囲の友だちがみんな行っている高校に行かないことを気にする子どももいます。

自ら選択して、受験しなかったことだとしても、周囲は配慮する必要があります。例えば、社会的資格としての「高校卒業」は、今後、高卒認定試験や通信制高校などにより取得可能であることや、高校生活を通して培われるさまざまな体験活動や経験、集団の一員としての所属感などに対しては、サークル活動や生涯学習活動などといった地域社会資源の活用、といったような、選択肢の幅を広げられるように情報提供をしていくことも大切です。

相談員は、本人の意向に沿って、保護者も交えながら、こういった情報提供などのフォローアップを、病院にある学校の担当者と連携しながら行うことが望ましいと考えられます。

また、さまざまな卒業後の情報資源としては、地域の特別支援学校(病弱)を活用することもできます。

3)高等学校への進学について

高等学校は、定められた教育課程の必要単位を履修することで、進級や卒業が認定されます。単位が認定されるためには、各校の内規に従って、必要な出席日数や成績を収めなければなりません。

入院や治療のために授業を欠席すると、出席日数が足りないため単位が認定されず、結果として単位不足で留年することも生じます。実際には、出席日数不足や定期試験等の成績が規定に達しない場合、多くの高等学校では、追試験や補習授業、補助課題としてのレポート提出などにより、単位を認定するように配慮しています。しかし、入院などによる一定期間を欠席することになると、学校も対応は困難になってきます。

留年を避けるためにも、入院中も継続して学業が続けられる環境が必要です。病院にある学校に、高等部がある場合、または近隣の特別支援学校による訪問教育が可能な場合は、積極的にその制度を活用するようにしたいものです。しかし、実際は、入院している高校生への対応は十分な状況にありません。ICTなどを活用して、在籍する高等学校による教育支援を可能としている地域もありますが、特別支援学校(病弱)の高等部設置など、病院にある学校の高校生への対応の充実が求められます。

Column
コラム 『入院時期と治療中の受験』—A君の高校受験

中学校3生年の2学期以降入院してきた場合、治療中に受験になります。A君の場合、担当医と相談して、治療を可能な範囲で受験に差し障らないようにずらしてもらいました(白血球値が落ちないようにする、輸血をするなど)。高等学校には、感染症のリスクを考え、別室での受験をお願いしました。進学が決まったあとは、担当医と高等学校と病院にある学校、本人・保護者との情報交換の会議をしてから進学しました。情報交換の会議を3月にしておくと、4月以降治療が継続した場合の単位や出欠についても相談ができます。

4)大学への進学について

高校生であると、進路選択の1つに大学等の高等教育機関への進学があります。現在、各大学では、学生支援センターの充実を図り、在学生の修学に関するさまざまな支援を行うようになっています。

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)では、大学等での障害のある学生の修学支援の充実を図るために、大学等に向けて「障害学生修学支援ガイド」を作成しています。内容は、大学等の教職員に向けたものですが、入試段階から大学生活一般において、どういった支援や配慮を受けることが可能か、考える際の参考になります。

障害学生修学支援情報(独立行政法人日本学生支援機構)

また、受験に際しては、センター試験を利用する場合は所定の手続きを行うことで、障害の状態等に応じた配慮を受けることが可能になります。詳しくは、独立行政法人大学入試センターのweb サイト「受験上の配慮案内」で確認できます。

多くの大学では、オープン・キャンパスの機会に入試に関する相談を受け付けています。こういった機会に、具体的な相談を行ったことにより、入試段階から入学後の生活において、必要な支援や配慮について大学側と相談して進められた例もありますので、関心のある大学等のオープン・キャンパスや説明会の機会を利用して相談してみるとよいでしょう。

発病の時期や入院期間、体調によってはオープン・キャンパスや説明会に参加できないこともあります。その場合は、各大学の入試担当課へ事前に問い合わせをすることで、所定の手続きを経て、受験時の配慮を申請することができます。

病院にある学校の高等部(特別支援学校)に在籍している場合は、特別支援学校の進路担当や担任が、必要な手続きを行います。

3.転校するときの支援

1)小学校・中学校への転校

入院先の病院にある院内学級が、公立の小学校・中学校により設置されている場合は、通常の転校手続きを関係の教育委員会を通して行います。
 
入院先の病院にある院内学級が、都道府県立の特別支援学校により設置されている場合や、隣接の特別支援学校の先生が訪問教育を行う場合は、市町村教育委員会から都道府県教育委員会へ連絡され、「就学決定通知」が出されることになります。地域によっては、手続きに2~3カ月を要することもあります。平成25年9月の法改正を受けて、子どもの発達の程度、適応の状況等を勘案しながら、柔軟に転学ができることや、就学に関する手続き等についての十分な情報の提供を行うこと等が求められています7*ので、今後、転学の手続きが改善されていくことも考えられます。けれども現時点では、時間のかかることを念頭に、早めに準備に取りかかるほうがよいでしょう。

また、在籍している学校が、院内学級の小学校・中学校と同じ市町村内の学校であったり、転校先が同じ市の市立特別支援学校であったりする場合は8*、市町村教育委員会によっては、転校手続きの簡略化を実施しているところもあります。

7* 就学に関する手続き等についての十分な情報提供:「 障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」(平成25年10月、文部科学省)
8* 在籍している学校が、院内学級の小学校・中学校と同じ市町村内の学校であったり、転校先が同じ市の市立特別支援学校であったりする場合:同じ市内であっても、県立特別支援学校では手続きが異なる場合があります。

いずれの場合も、保護者が所属の学校に転校の意思を伝え、教育委員会が必要な手続きを進めることになります(小学校・中学校は、保護者が市町村教育委員会に必要な書類を提出する場合が多い)。

Column
コラム 『入院時期と治療中の受験』—A君の高校受験

地方あるいは保護者によっては、まだ特別支援学校へ籍を動かすことに拒否感をもたれることが少なくないかもしれません。「メリット」を明確に伝えること、前例について話すことが、効果的です。

また、将来的にも履歴書等には義務教育は○○小学校卒業、○○中学校卒業しか記入しないので途中の転入によって就職等で不利になったりする心配はありません。特別支援学校に籍を動かしたことによる記録は学校の書類にしか残らないので心配はいらないことも知っておくとよいでしょう。

支援冊子「病気の子どもの理解のために」(国立特別支援教育総合研究所)をはじめとして、特別支援学校や特別支援学級で復学の際に活用するために作成している冊子等には、入院当初から、前籍校の担任に、ずっとクラスの一員であることの意識をもってもらうよう働きかけがされています。(1)名簿(学級や学年など、子どもたちの目にとまるところで使用するものだけでも)には、名前を入れておいてもらう、(2)教室の掲示物はそのままにしてもらう、(3)机等の「席」を確保=そのままにしてもらう、(4)学級のたよりなどにまぜてもらう/届けてもらう、(5)学校の行事には可能な範囲で、参加できるようにしてもらう……など、してもらいたいことを、子どもや保護者、病院側からお願いするとよいでしょう。

2)高等学校への転校

入院先の病院に、特別支援学校が高等部の院内学級を設置していたり、訪問教育による教育を行っている場合や、隣接の特別支援学校に高等部がある場合など、高校生も手続きにより教育を受けることが可能です。

その際、高等学校は義務教育ではないので、教育課程上の問題はないか、復学できるかの2つの点について、事前に十分な確認をしておくことが重要です。

■教育課程(取得できる単位)上の問題はないか

高等学校には、普通科のほかに、職業科をはじめ、多くの特化された科・コースがあったり、「学校設定科目」といった学校独自の科目があったりします。特別支援学校の高等部の場合、そのほとんどが普通科の教育課程です。

例えば、公立高等学校の工業科の生徒が、普通科で学ぶことになると、工業科の専門科目については、普通科で履修することが基本的に困難となります。第1学年であると、普通科との共通科目が多いので、普通科に設定のない専門科目をどうするかについて、学校間で合意がなされれば解決することも可能です。「工業数理基礎」を普通科の「数学Ⅱ」と「物理ⅡB」に読み替えて対応した、という例もあります。職業科の場合、学年が上がると実習等も多くなるため、受け入れ先の特別支援学校がどのように対応可能か、在籍校の教務担当者との協議が重要となります。

■復学できるか、復学できる際に必要な手続き

高等学校によっては、一度転出した者の再編入等を認めない、とする場合があります。復学を前提とするのか、復学できなくても高校卒業資格のためまたは教育継続のために特別支援学校に転学するのか、高等学校を休学するのか、それぞれの場合の利点等を整理し、本人が納得した選択、決定ができるようにすることが大切です。

復学を前提とする場合には、高等学校との話し合いに、高等学校側と保護者・本人(可能な範囲で)のほか、特別支援学校の管理職や特別支援教育コーディネーターといった、第三者を交えることで十分確認がなされるようにすることが大切です。また、単位認定の問題から、どのタイミングで戻ることとするのか、といった確認も必要です。(卒業認定のために、例えば3年生の10月までに復学するようにと条件を出す例もあります)

復学を前提としない(高等学校には戻らないで特別支援学校でそのまま卒業する)場合や、休学をする場合は、それぞれのメリットとデメリットを明確にして、十分に納得した上で決定できるようにします。

高等学校に戻れる場合でも、退院後の体調等を考慮して、特別支援学校高等部で学ぶことを選択する例もあります。高等学校卒業後の進路を見据えて、どこで、どのように学ぶことがより適切であるかを考える必要があります。

相談員は、生徒本人が納得して自己選択ができるように、病院にある学校の担当者等と連携して、十分な情報提供をすること、場合によっては、関係者が話し合える場の設定などを行うことが必要です。

4.就学前の支援

1年以内に小学校入学を控えている場合は、居住地の市町村委員会により就学の手続きが進められます。

相談員は、4月以降に教育を受けることになる病院にある学校の担当者や特別支援教育コーディネーターに連絡をとり、連携して就学の準備に対応することが望まれます。その際、当該の市町村教育委員会との連絡・調整も必要です。場合によっては、地域の特別支援学校(病弱)に相談し、関係者間の必要な情報の共有や手続きの確認を行います。

Column
コラム 『“ 担任の先生” をつくっておこう』

『4月から地元の公立小学校に入学する予定でしたが……』
小学校1年生の場合、地域の小学校に入学しつつ、病院の学校ともつながりがあると、その後の復学支援がしやすくなります。
小学校の入学式は出られないけれど、病院にある学校の入学式に出られる場合は4月1日は小学校に入学して、病院にある学校の入学式の日に転入し、入学式に出席した例があります。小学校でも名簿に入れておいてもらうことで1年○組の△△さんという意識づけが小学校の先生にも子どもたちにもできます。国語では小学校で「はじめてかいたなまえ」を一緒に飾ってもらいました。

乳幼児の発達

乳幼児期は、保護者とのやり取りや周囲からのさまざまな刺激を受けながら成長する時期です。子どもは、親とのさまざまな形のコミュニケーションや同年齢の集団での遊びなどの体験を通して、社会性を身につけていきます。病棟内という環境においては、同世代のやり取りよりは保護者や医療関係者といった大人とのやり取りが多くなったり、親とのコミュニケーションの形や機会も制限されたりします。また、幼稚園や保育所、近所の公園といった社交の場での遊びの体験の機会も制限されてきます。

相談員は、病院内や病棟に保育士がいる場合は、患児の病棟での様子や保護者との様子について情報の共有をして、適切な発育を促す環境整備や働きかけを行います。

きょうだい児

患児にきょうだいがいる場合、保護者と情報を共有しながら、きょうだい児の様子に留意します。

きょうだい児は、自分のきょうだいが病気になって入院したことに関しては、さまざまな心のストレスを感じています。特に、患児の兄姉であると、大人が想像する以上の「我慢」をして、無意識にがんばりすぎてしまう子もいます。

自分のきょうだいが病気になってしまった不安に、保護者とりわけ母親が患児にかかりきりになってしまう寂しさなど、「家族」のあり方が変化することによるストレスが、さまざまな行動化や身体化としてあられることが少なくありません。具体的には、学校で反抗的な態度になったり、暴言や暴力がみられるようになったり、体調不良を頻繁に訴えるようになったり、学校に行きたがらなくなるなどです。または、急に元気に活動的になったり、「大丈夫」を繰り返したりするなど、過活動になることもあります。わがままを言うようになったり、周囲の大人に甘えるようになったりする場合もあります。こういった「変化」が、学校での活動や友だち関係に影響を及ぼすこともあります。きょうだい児の様子について、学校の先生から様子を聞くなどして共通理解を図っておくことにより、きょうだい児が過度の叱責を受けてさらにストレスを抱えることを防ぐことができます。

また、きょうだい児が患児と同じ学校に在籍している場合、患児の病気や入院について学校に伝える際に、きょうだい児の担任も一緒に知ってもらうようにするなどの配慮が必要です。きょうだい児には、患児の病気などについて、学校で聞かれたり言われたりしたらどう答えればよいか、といったシミュレーションを事前に行うことは、不安軽減のためにも大切なことです。

相談員は、保護者ときょうだい児について話す機会をもつなどして、きょうだい児への配慮を保護者とともに考えるようにします。

【子どもの状態等に応じた多様な学びの場での就学のあり方】

これまで、学齢期に達した子どもに適切な教育を受けさせるために、市町村教育委員会9*は「就学指導委員会」において、子どもの発達の状態等を考慮して、特別支援学級や特別支援学校で教育を受けたほうがよいなど、小学校で教育を受ける場合にはどのような配慮が必要か等を検討し、決定してきました。

平成25年9月に、文部科学省が「学校教育法施行令の一部改正について(通知)」を発し、より子どもの状態等に応じた多様な学びの場での教育を可能とするため、就学先を決定する仕組みの改正について、整備を行うように通知しました。これは、「障害者基本法」をはじめとする、障害のある人に関する一連の法整備が行われてきた中で、中央教育審議会初等中等教育分科会10*報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」において提言されたことです。

例えば、これまで「就学指導資料」とされていた就学に関する手続きのガイドは、今回の法改正を受けて「教育支援資料」として新たに文部科学省から出されています。それによれば、これまでの「就学指導委員会」に該当する組織を「教育支援委員会(仮称)」としています。

具体的には、これまでの就学基準11*に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するとしていた仕組みを、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みにする、というものです。

これまでは該当の障害(学教法令22-3)のある子どもは、原則特別支援学校へ就学、または市区町村との協議で必要な施設設備等の準備・対応が可能なら地域の小学校へ就学(認定就学)でした。それが、今回の通知により、「該当の障害があれば特別支援学校への就学ができます」、という該当の障害(学教法令22-3該当)があることが、特別支援学校就学への条件となりました。つまり、障害があることでこれまでのように特別支援学校へ就学、とするのではなく、小学校の通常の学級・小学校の特別支援学級・特別支援学校のどこで教育を受けることが本人にとって最も適切かを、障害の状態、本人・保護者の考え、今後生涯にわたっての展望を含めた見解とともに、就学先となる学校等の施設設備等の状況(=基礎的環境整備)や学校等のソフト・ハード面での個への対応の状況(=合理的配慮) をもって、判断するということです。また、これら「どこで学ぶか」は、小学校就学時に決定したままではなく、前述のさまざまな判断条件について、必要に応じて検討し直し、学ぶ場を弾力的に変更していくことが必要とされました(なお、家庭教師は、「学校教育」にならないので、これら一連の中では対象としていません)。

図4-1 障害のある児童生徒の就学先決定について(手続きの流れ)

図4-1 障害のある児童生徒の就学先決定について(手続きの流れ)

「教育支援資料~障害のある子どもの就学手続きと早期からの一貫した支援の充実~」(平成25年10月、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課)p275参考資料.「障害のある児童生徒の就学先決定について(手続きの流れ)」より引用

9* 市町村教育委員会:正式には、市区町村教育委員会が、就学の決定を行います。
10* 中央教育審議会初等中等教育分科会:文部科学省に設置されている中央教育審議会、いわゆる「中教審」にある5分科会のうちの1つです。
11* 就学基準:学校教育法施行令第22条の3

更新・確認日:2015年12月24日 [ 履歴 ]
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2015年12月24日 掲載しました。
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