就学の支援に関して、相談員にはどこまで求められるのでしょう。
将来的には、相談員でなくても、身近な医療スタッフなら誰でも対応できるようになるのが望ましいのではないかと思います。つまり、質の向上、底上げです。そして、国民ががんになる前から必要な知識をもって、就学に関する情報をうまく使いこなせるようになればいいのかもしれません。
就学に関する体制の整備が進んで、数年後は状況が変わっているかもしれません。そうしたら、相談支援センターに求められる役割も変わってくるのだと思います。相談支援センターは、地域の資源として、「がん患者や家族等の相談者に、科学的根拠とがん専門相談員の実践に基づく信頼できる情報提供を行うことによって、その子の発達段階に応じた生活が選択できるように支援する」ために、今求められていることを探して、形にしていく存在なのだと思います。
そのためにも、今は、小児がん拠点病院の相談支援センターが率先して、就学の支援に関するノウハウを蓄積していくことが必要なのだと思います。
この手引きは、実際に小児がんの相談対応に関わっている相談員と病気療養児の教育を担当している教員および研究者とともに作成しました。この手引きを読んでも、「やっぱり難しくて、複雑」「とても活用できそうにない」と感じられた方も多いかもしれません。作成の過程でも、教育側の専門家に対して、それは何で?どうして?という場面がたくさんありました。身近なようで知らなかった教育に関することがたくさんありました。一方で、「困ったときはどうする?」に対する答えは用意されていました。それは、わからなかったら“特別支援教育コーディネーターに聞く”です。複雑だからこそ、そこで働く「人」=コーディネーターの存在が重要になってくる領域だということを改めて感じました。教育側のコーディネーターは、この手引きでも随所に登場した「特別支援教育コーディネーター」です。そして、医療側のコーディネーターの担い手の1人は、がん専門相談員です。複雑で難しそうではあるけれど、コーディネーター同士が力を合わせて、連携し、協力していけば、何とかなることもたくさんありそうだ、とも思えました。
まずは、地域の特別支援学校を調べてみてください。そして、特別支援教育コーディネーターに連絡をとってみてください。就学の支援を行うハードルが少し下がるかもしれません。
平成26年3月
執筆者を代表して
独)国立がん研究センターがん対策情報センター
情報提供研究部 高山 智子