プログラム
- 国立がん研究センターがん対策情報センター長あいさつ
- 群馬大学医学部附属病院腫瘍センター長あいさつ
- 各県がん対策担当者あいさつ
- 事例紹介とグループワーク(1)(県境を越えて)
- 事例紹介とグループワーク(2)(県境を越えて)
- 事例紹介とグループワーク(3)(県ごと)
- 全体ディスカッション
- 閉会挨拶
概要
平成25年8月31日(土)に、北関東・信越ブロック計6県の相談員を対象に、群馬県高崎市で「地域相談支援フォーラム」が開催されました。
この日は、北関東・信越ブロックのすべての県、さらに平成26年度の開催県となる予定の宮城県と東京都から計90名の相談員の方と関連各県でがん対策を担当されている行政担当者8名にご参加いただきました。
まず、若尾文彦センター長から、相談員のスキルアップや相談の質の均てん化を目指していく中で、施設や県そして広域地域ブロック単位で好事例を共有していく必要があること、そして自施設・自県での取り組みの改善につなげていただくことを期待していると、本フォーラムの趣旨について説明がありました。そして、拠点病院のあり方、相談支援センターのあり方を含め、今後のよりよい相談支援・情報提供体制のあり方について、考えるきっかけにしていただきたいとの投げかけもありました。
続いて、群馬大学医学部附属病院腫瘍センター長である塚本憲史先生から、群馬県でも相談支援に関わる実務者同士の課題共有や研修開発を目的とした情報提供・相談支援部会を今年度発足させたこと、隣接県の実務者が集まり事例報告や情報共有を通して顔の見えるつながりを強化していくことが、個々の相談員の基礎力アップにも、また部会の取組みの活性化にもつながると、本フォーラムに対する期待についてごあいさついただきました。また、県境を越えて受療される患者さんに対応するためには、お互いに顔の見える関係を築いておくことが重要であると実感したと、ご自身の経験も踏まえてお話しいただきました。
関連各県のがん対策担当者の方からは、第二期の県がん対策推進計画において「がんになっても安心して暮らすことができる社会の構築」が加わったことで、情報提供・相談支援領域の強化が以前にも増して重点対策分野となっていること、その中でより多くの患者さんやご家族が、さまざまな入口から信頼できる情報にたどり着き、また不安・悩みを解消する上で拠点病院のがん相談支援センターを含む、各種相談窓口を活用することの重要性をお話いただきました。また日頃、拠点病院の幹部とは接点があるものの、なかなか相談支援業務の現場で何が課題となっているのかは十分にはつかめておらず、今回のグループワークが現場の生の声を聴く貴重な機会になると、期待の声も上がりました。
今回の研修プログラムは事例紹介とグループワークをセットにした3つのセッションを中心に構成され、グループワークを行う前に各地の実行委員数名がセッション毎のテーマに沿った事例発表を行いました。
午前中のセッション1では個々の施設内で相談支援体制を確立させていくために、院内各部門との連携で留意している点、各専門職の力を引き出すための工夫、患者さんの紹介元となる診療科へのフィードバックで心がけていることなど、院内連携をテーマとして、新潟県立がんセンターの名和さん、獨協医科大病院の岸田さん、埼玉医科大学国際医療センターの御牧さん、の三名にそれぞれの体験に基づいた発表を行っていただきました。その後、グループ毎にブロック各県から参加した相談員同士が、施設内で相談支援センターの立ち位置を確立し、相談者のみならず院内関係者にとっても欠かせない相談支援センターとしての付加価値を提供する上で苦労してきた点、院内で協力者・理解者を増やすために取り組んできたこと、その他管理者に正しく評価してもらうために積み重ねてきた工夫などを共有しました。
3午後からのセッション2では、地域の中でどのような工夫を重ねることによって、相談支援センターの認知度を高め、また幅広い関係者と信頼関係を築いてきてきたのか、地域の各種リソースとどのような形で機能補完関係を構築しているのか、その過程で何を大事にしてきたか、さらに地域に開かれた相談窓口としての機能をどのように発展させてきたのかについて、春日部市立病院の藤井さん、諏訪赤十字病院の橋爪さん、前橋赤十字病院の鈴木さんからそれぞれの体験をご紹介いただきました。その後、午前とは違うグループで、がん相談支援センターが地域での立ち位置を確立する上で、今抱えている課題や、他施設が試行錯誤で重ねてきた取組みなどを相談員同士で共有しました。
地域ごとの療養支援体制を整えるのは、各県にとっても大きな課題であることを反映してか、このセッションの発表の後には参加した多くの行政担当者からも期待を込めた発言がありました。
セッション3では「相談支援センターの院内での体制変遷の中で見えてきたこと」とをテーマとして、相談支援センター設置後6〜7年の経過の中で行われた院内の組織変更や拠点病院の指定要件の変化、さらに相談支援センター自体の位置づけや、体制の変遷の中で求められてきたこと、またその様な変化に対応する中でもたらされた影響などについて振り返りました。筑波メディカルセンターの大久保さん、済生会川口総合病院の竹内さん、埼玉県立がんセンターの小林さんがそれぞれの施設の特徴や歴史を紹介した上で、各施設における相談支援センターの組織上の位置づけやその変遷を紹介し、諸々の環境変化がもたらした相談現場への多面的な影響について、お話しいただきました。
また今後、相談支援センターに求められる要素を考える上で、組織体制などにも影響を与える可能性のあるトピックとして、昨年末からはじめられている「がん診療提供体制のありかた検討会」で議論されている「拠点病院の姿」や相談支援機能に関する要件などにつき、若尾センター長より説明があり、相談支援センターが有効に機能する上で、欠かせない組織体制上の要素などが活発に議論されました。
この日最後のグループワークでは、この日はじめて同じ県の相談員で編成した「県別チーム」に分かれて、この日行われた3つのセッションを通して気が付いたこと、比べてみて改めて認識した自施設の相談支援体制の特徴、これまで悶々と抱えていた課題への対処に関し、今日得られたヒント、自県の相談支援部会に持ち帰って提案してみたいことなどを、話し合いました。
「諏訪赤十字病院で活用している名刺サイズの相談支援センターの院内PRツールは是非自分の施設でも取り入れてみたい」「これまで手が出なかったが、市内のいくつかの指定病院と協力することで、地域の療養ケアプロバイダのマップを整備していきたい」「相談員のケアも視野に入れた部会の新規取り組みを検討したい」など、他県の取り組みに刺激を受けた発表があったほか、「1施設でできることには限界があるので、まずは県内の相談部会同士で機能補完しあえる関係を築くことが重要」「県指定推進病院の相談支援センターだが、拠点と共通した課題があることが再確認できた」「他施設の相談員が熱心に工夫を重ねている姿をみて、自分もリチャージできた」など、一日を振り返ってみて、広域ネットワークで情報交換を重ねる意義を改めて認識する発言も多くありました。
最後に若尾センター長より、今後このフォーラムをさらに実りのあるネットワーク形成および学びの場とするため、二度目以降は、いずれかの県で、開催県と隣接県の実行委員有志を募って主体的に企画していただきたいこと、がん対策情報センターは、それを側面支援していきたいことなど、来年度以降のフォーラム開催への期待を語りました。
がん対策情報センターはこれからも相談支援・情報提供の質の維持・向上を目指し、相談員同士のネットワーク作り、学びの場作りを応援してまいります。