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北海道・東北

平成30年度 地域相談支援フォーラム in 福島「患者と共に構築するがんと共に歩める社会」~「Access to Information」とその先にある「Life」~開催記録

開催日: 2018年11月17日(土) 10:00~17:00(9:15開場)
会場: コラッセふくしま 4階 多目的ホール
主催: 福島県がん診療連携協議会がん相談支援部会
共催: 国立がん研究センターがん対策情報センター
東北がんネットワークがん患者相談室専門委員会
青森県・岩手県・秋田県・宮城県・山形県・各がん診療連携協議会がん患者相談部会 福島県
後援: 青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県(順不同)

プログラム

10:00~10:10 開会あいさつ
10:10~12:00 第一部【発表】 各県のがん相談支援の取り組みにおける好事例の発表
12:00~13:00 昼食休憩
13:00~14:10 第二部(1)【講演】
テーマ:患者と共に構築するがんと共に歩める社会
講師:NPO法人がんとむきあう会 西村詠子 氏
14:20~16:45 第二部(2)【グループワーク】
16:45~17:00 総評・閉会あいさつ

開会あいさつ

本多つよし部会長写真

当日は、主に東北6県のがん診療施設を中心に、がん相談支援センターやがん相談窓口を有する施設などでがん相談支援に携わる方113名(実行委員・ファシリテーター含む)が参加しました。
まず、会津中央病院社会福祉士の大野史絵さんの司会で開会しました。
次に、主催者である福島県がん診療連携協議会がん相談支援部会の本多つよし部会長より開会のあいさつがありました。本多部会長からは、各県でのがん相談に対する取り組みは異なること、各県が集まって発表することによって、あの県はこんなことをやっているというようなことを学ぶことができる機会になること、全力で準備したので、今日一日活発な議論をよろしくお願いしたいとのあいさつがありました。

国立がん研究センターがん対策情報センターの若尾文彦センター長写真

続いて、共催者である国立がん研究センターがん対策情報センターの若尾文彦センター長からのあいさつがありました。若尾センター長は、この相談支援フォーラムが平成24年度に開始され、その後全国に回り、東北では平成26年と平成28年に仙台で開催していること、昨年が秋田ということで、東北では4回目ということになること、九州・沖縄が7回目、南関東が4回目を開催、北関東が2回目と、複数回開催しているところが増えていることを紹介しました。他の県の取り組みを知っていただくとともに、どんどん「いいとこ取り」をして各センターの活動に繋げてもらいたいこと、本日のテーマである「患者さんとともに支える」ことは重要で、ピアサポーターの研修も検討されているので、そちらも活用していただきたいとの言葉がありました。

藤谷恒明委員長写真

最後に、東北がんネットワークがん患者相談室専門員会の藤谷恒明委員長からあいさつがありました。藤谷委員長は、東北の相談員のネットワークを広げるという趣旨の会であること、東北がんネットワークには38の医療機関が加盟しており、歯科も含めると45の加盟があること、新たに新潟県の医療機関も加盟していること、来年以降も回していきたいと思っていること、行政の方も参加されていることが評価されている点であることであり、今回も楽しみにしているとのごあいさつをいただきました。

第一部【発表】 各県のがん相談支援の取り組みにおける好事例の発表

本題に入り、各県のがん相談支援の取り組みにおける発表がありました。
総合南東北病院社会福祉士の熊谷幸広さんの司会、福島県がん診療連携協議会がん相談部会の本多つよし部会長の座長のもと、青森県、秋田県、岩手県、宮城県、山形県、福島県の順で各県12分程度、3分の質疑応答形式で行われました。

須田山まさ子さん写真

最初の発表は、青森県から、三沢市立三沢病院のがん相談支援センター、須田山まさ子さんからの報告でした。青森県がん診療連携協議会相談支援部会について活動報告がされ、教育と広報のWGを設置し活動を進めているとのことでした。また、研修やがん療養冊子の作成について紹介があったのち、多職種連携によるがん患者の在宅での看取り事例や病院での看取り事例を紹介しつつ、患者が望む意思決定を支援するためには、医療者は多職種連携の橋渡し役をし、がん相談員は患者・家族と一緒に考える調整役になることが重要とまとめられていました。

中田純一さんと小川江美さん写真

二番目の発表は、秋田県から、秋田大学医学部附属病院地域医療患者支援センター・がん相談支援センターセンター主任MSWの小川江美さんと大舘市立総合病院相談支援センターMSWの中田純一さんからの報告でした。秋田県立図書館に出向き図書セット貸し出しや研修会の開催などがん相談支援センターの認知度向上・周知を図る活動をしていること、産業保健総合支援センター両立支援促進員による病院出張相談開始など就労支援の関係機関との連携と支援スキルの向上を図り、辞めないための支援や辞めてしまった方への再就職支援を強化していること、終末期のアセスメントを扱ったがん相談員研修会開催などがん相談対応能力向上のため、必要な研修を企画・実施し均てん化を図っていること、また大舘市立総合病院の取り組みとしては、がんサロン交流会の実施や、乳房補正具試着会の定期的実施、緩和ケアの講演・シンポジウムの開催などが報告されました。

近藤明昭恵さん、安藤玲奈さん写真

岩手県からは、岩手医科大学附属病院の近藤明昭恵さんと岩手県立久慈病院地域医療福祉連携室医療社会事業室の安藤玲奈さんからの報告がありました。まず岩手県情報提供・相談支援部会の活動の紹介がされ、医療機関や医療従事者が偏在していることが岩手県での課題であること、部会では相談員の対応力向上を目標に年に1回研修を実施していること、がん相談窓口の周知のためにいわてのがん療養サポートブックの配布などをしていること、PDCAのWGを立ち上げたことが報告されました。続けて「北三陸ネットを活用した地域連携とアドバンスケアプランニング」というテーマのもと、同地域で導入しているITC「北三陸ネット」を活用し、院内外の多職種で連携を図り情報共有し支援した結果、在宅療養継続のみならず、アドバンスケアプランニングにも繋げられた左乳がんの患者さんの事例が紹介されました。また、「北三陸ネット」活用によって患者の日常生活や薬剤管理状況、精神面の状態、院内での各職種共有状況など、地域と病院との間で情報共有が多角的に行われるようになり、有用であったということが述べられました。

伊藤茂樹さん、早坂美恵さん写真

宮城県からは、宮城県の早坂美恵さんと、石巻赤十字病院の伊藤茂樹さんからの報告がされました。
がん診療連携協議会患者相談部会との連携、宮城県がん総合支援センターとの連携、ピアサポーター育成・活動支援担当者連絡会議など、関係機関との連携が紹介されました。相談支援センターの機能強化のためにはピアサポーターの協力体制が不可欠であること、ピアサポーターの意向、拠点病院や地域の要請内容に沿った育成相談の実施の必要性が方向性として確認されました。また、患者相談部会の取り組みやがん相談実務者会議の実施、地域における他機関との連携、石巻赤十字病院の取り組みとして石巻商工会議所等も共催となっている「就労支援カフェ2018」が紹介されました。地域での広報活動の強化やがん相談員研修会のステップアップなどがこれからの活動として挙げられていました。

植木富和子さん写真

山形県からは、公共財団法人やまがた健康推進機構の植木富和子さんから報告がありました。山形県がん総合相談支援センターの取り組みとして、業務委託先として、県内5カ所に検診センターがあり、全地域に対応可能であること、気軽に立ち寄れる場所であることから、業務委託されたとのこと、アドバイザリーボードが設置されていること、相談業務やピアサポーター養成講座(44名が受講)、がん検診受診啓発などが、山形県がん総合相談支援センターの業務内容であることが述べられました。また、平成30年度からは、がん患者・家族サポートハンドブック(仮)の作成、専門相談会への対応、やまがた健康フェアでの相談コーナー設置やステージイベントなどの形での参加、がんサロン実施に向けての準備が新たに加わっていることが紹介され、それぞれについて詳しく報告されました。

阿部雅人さん写真

福島県からの発表は、まず福島県の阿部雅人さんから県の取り組みについて紹介がありました。例えば、患者団体との連携については、ピアサポーター養成講座、がんシンポジウム、ピアサポートサロン、緩和ケア研修会を実施していること、今後は県民ががんに関する情報を身近に収集できる方法を整備し、広報を強化していこうとしていることが述べられました。その後、いわき市立総合磐城共立病院の會田悦子さんから。相談支援部会についての報告がありました。年2回程度部会を開催しており、その他適宜WGを開催していること、研修WGと広報WGがあること、療養冊子を作成していることが紹介されました。また、福島県の課題は、拠点病院のない空白地域への取り組みとして、相談が行き届いていないのではないかというのが課題と考えており、その地域に向けて出張がん相談会と特別講演会を開催していること、平成28年には南会津で、平成29年には南相馬で実施したこと、南会津の参加者5名だった反省から南相馬では関係機関の協力も得た広報に変えた結果参加者が29名に増えたこと、平成30年は新地町で開催し36名が参加、相談も6件に増えたことが紹介されました。行政を巻き込んでいくことの重要性も述べられました。

全体討論では、医療者の会などではなく、多くの立場の方々を取り組んだ活動を望むという意見、活動に対する行政からの支援もお願いしたいということ、がんの療養冊子を何部くらい発行しているのか・予算はどうしているのか、などについて質問がありました。

第二部(1)【講演】 テーマ: 「病院の外の生活の場“元ちゃんハウス”でがん患者を支える」 講師:NPO法人がんとむきあう会 西村詠子 氏

午後は、会津中央病院社会福祉士の大野史絵さんの司会のもと、「病院の外の生活の場“元ちゃんハウス”でがん患者を支える」をテーマにNPO法人がんとむきあう会 西村詠子先生の講義で始まりました。
西村先生のご主人は前理事長で医師の西村元一先生です。2015年に3月に進行胃がんが見つかって2016年12月金沢に元ちゃんハウスを設立し2017年に西村元一先生は他界されました。ご主人が講演で使われていたスライドを使いながら、西村先生は、次のようなお話しをされました。

西村詠子先生写真

英国で乳がん患者マギー・ケズウィック・ジェンクスさんが、病人ではなく一人の人間に戻れる小さな家庭的な居場所として場を設立したのにならい、世界的な流れが広がってきました。その目指すところは、患者や家族、その友人が、孤独で戸惑い不安な時、安心して尋ねられる、明るく癒やされる空間で、自分の戸惑いを聞いてもらえるような場所ということだったそうです。そこでご主人は「金沢にマギーを!がんを患っても、その人らしく生きることができる場と、がんに関わるすべての人達の出会いの場を、街中(院外)に実現しよう」と考えたとのことでした。その一方で、ご主人は2015年 病気が発覚しました。検診を勧める身でありながら、自分では受けていなかったのです。抗がん剤、手術、抗がん剤、放射線治療、免疫療法を受けて、体力的にも治療的にも限界が見えてきました。がんが見つかってからさらに、生活のなかでがん患者を支援する施設創設の実現をしようと考えました。また、自分の体験を生かしてもらうために講演や執筆活動も精力的に行いました。ご主人は、患者となって医療者に伝えたいこととして、以下のようなことを挙げています。

  • 告知を受けた日から生活が一変する
  • 死を意識する、人生の終点を考える
  • 治療の選択はやり直しがきかない
  • ちょっとしたことでもバッドニュース
  • 神頼みでもなんでもあり
  • 医療者と患者では体感している時間の経過は異なる
  • 何かすることがある、何かができることは素晴らしい
  • 患者の気持ちは日々(1日のなかでも)変化する
  • 患者に土日など休みはない
  • 人は一人で生きていけない、誰かがそばに居てくれるから生きていける
  • 病棟看護師は患者とのコミュニケーションよりリスク管理などが忙し過ぎる?
  • スタッフのコミュニケーション能力の差
  • 自分の病態全体を把握しているのは電子カルテだけかも

日本人の2分の1ががんになる時代ではあり、ありふれた病気のはずなのですが、なぜかありふれていない感覚になり、自分を責めることになってしまいがちです。がんが特別視される原因としては、3つの原因があるのではないかと考えます。まず、患者は壁を作ります。次に、医療者は情報提供不十分です。そして世間には偏見があります。これら3つの結果として患者の居場所がなくなってしまうのです。そして本音が言えなくなります。患者には、相談したいこと、聞いてほしいことは山ほどあります。けれどもどこで話ししていいかわかりません。病院は一歩入ったらそこは非日常の空間で緊張します。相談内容がはっきりしないようなモヤモヤ感は相談できません。主人の目からすると、病院のがん相談支援センターやがんサロンの運用は、医療者目線であり、どうしても利用者としては一方的なものに受け取ってしまうようでした。さらに病院内だと患者・医療者の関係が必ずついてまわりますし、医療以外の話題や中立的なことが話題にしにくくなります。病院のなかという空間の問題もありますし、いろいろなピアの患者に繋げりにくくもなります。だからこそ、そうした場を作ろうとしました。
2015年12月から町家をがん患者拠点にしようと、月2回場を借りる試みをしました。しかし、常設の場が必須ではないかとご主人は言われました。そこで、2016年6月にNPO法人を立ち上げました。資金はすべて寄付でまかない、ビルを無償で借り、2016年12月1日に元ちゃんハウスをオープンしたのです。金沢市、金沢医療センター、金沢大学附属病院との連携をしはじめ、看護師など医療・介護の専門職が日替わりで常駐するコミュニティースペースを実現したのです。来訪者総数は3,000名を超え、がんを抱えた方が最も多く、体験者同士が語り合い、専門家からアドバイスを受けられる場になっています。3階にはサロンルーム、4階にはセミナールームがあります。同じ方が頻回に来られることもあります。また、今まで我慢できていたことが、がんになったことで、我慢できなくなったり、問題が表面化したりすることもあります。今後の継続のうえでは、資金と人材の問題が大きな課題として浮上しています。
一人だけでは患者は闘病もつらいし、家族は寄り添うこともつらいものです。誰かが心を寄せてともに居てくれる、そして何かできることがあり、居てもいいんだと思える場所があれば頑張れる、そう思っています。がんになったことがつらいのではなく、希望がかなえられないのがつらいのです。

以上が西村先生のお話しの概要です。今後の相談員にとって、まさにともに構築する共に歩める社会づくりという、地域に開かれた相談員の役割の重要性が強く認識される、そうした講演となりました。

第二部(2)【グループワーク】 「患者と共に構築するがんと共に歩める社会」

10分間の休憩の後、西村先生の講演を受けて、會田悦子さん(いわき市立総合磐城共立病院 社会福祉士)の司会のもと「患者と共に構築するがんと共に歩める社会」を実現するためのがん相談支援センターの取り組みについて考えるグループワークを実施しました。

最初に、椅子に座ったまま、首を回したり肩をあげたりスマイルしたりするアイスブレークの体操をしたのち、グループワークに入りました。前半のグループワークⅠでは、「がんとともに歩める社会」について考えてみようということで、県を超えたメンバー構成で8つのグループに分かれ、日々の相談支援において、病院内での支援に限界や不全感を感じたことは何か、地域に向けた取り組みのなかで不全感を感じたことはないか、そんなことを踏まえながら地域に目を向けて考える作業をしました(50分+まとめ10分)。さらに「患者と共に構築する」「がんとともに歩める社会」を目指して、がん相談支援センターの相談員にはどんなことができるのか、すべきなのかを、オブザーバーを交えて話し合いました。ポイントとしてAccess to Informationとその先にあるLifeが示され、患者の生活の場へ目を向けてみることにしました。最後に、司会の方中心にグループ内でのまとめを行いました。

グループワーク風景写真

休憩をはさみ、後半ではグループワークⅡとして、各県別の班メンバーに変わり(人数の多い県については2~4グループに分かれました)、11のグループで行いました。このワークでは「患者と共に構築するがんと共に歩める〇〇県」を実現するために、今後取り組んでいきたいこと、目指していいきたいことについて話し合いました(40分+まとめ10分)。
まず、グループワークⅠで話し合った内容をグループⅡのメンバーで共有しました。そして、「患者と共に構築するがんと共に歩める〇〇県」の実現へ向けた各県の課題を明らかにし、それに向けての取り組みについて話し合いました。希望や期待を込めた内容でもよく、思いを形にするのはまだ先になっても、思いを持つことが大切というスタンスを確認しスタートしました。

グループワーク風景写真

その後、各グループから内容の発表が全体共有としてなされました。
内容の例としては以下のようなものがあげられ(発表された内容の一部抜粋です)、どのような点に難しさを感じているのか、また、取り組みの工夫・アイデアも紹介されました。

グループワーク風景写真

A班 青森県グループ
ピアサポーターの方から、理想形について生の声が聴けたのがよかったという点が共通して語られた。がん患者が隠れないでいい社会が求められる。コミュニティーのなかで噂されず、入院の場でも隠れなくていい場が必要。がんになる前から、例えば子供のころからがん教育を受けて、正しい知識を普及させていくことも必要。企業にも広げていくべきである。まさにがんと向き合っている方々に向けては、さまざまな形でのサロンがあってもいい。少しだけ早くがんとわかった人と話しるサロンとか、再発の方のサロンなど。若尾先生が監修する朝の連ドラが全国で放送されて広く正しい知識が普及していくといい。

B班 秋田県グループ
力を入れたいのはネットワークづくり、行政、各病院、ピアサポーターとの連携。特にピアサポーターの育成が全県的にまだできていないので行政に働きかけたい。患者会も病院ごとの活動はできているが、県全体での活動ということで県に働きかけたい。サロンがなくなった病院でもサロンの復活をさせたい。

C班 岩手県グループ
相談員は期待されている。しかし周知が行き届いていない。情報発信をしていく必要があり、まずは院内で医師や看護師に紹介してもらえるように周知していくこと、企業や図書館などとのかかわりを継続していくこと、啓蒙活動として出張相談を考えてみることが求められる。ピアサポーターの声は貴重で患者会などとの交流を持つことが重要。

D班 宮城県グループ(1)
ピアサポーターとして学んだ方が活躍できるような場がほしい。県と協力しながらそうした場設定の協力ができればいい。敷居の低い相談支援センターを目指し、どのようなご相談ですか、予約ありますかという声かけは避けるべきである。相談員の個人個人が人として成長していくことが大切で、これは今すぐにするべき。地域のなかで気軽に行ける場所が必要である。支援スタッフにとって院内にはさまざまな縛りがあるが、外であればざっくばらんに話しる。「相談支援センターは外に出る」でまとまった。

E班 宮城県グループ(2)
相談支援センターを知らない人が多いので、医療者から直接案内してもらえるといい。実際にどうしたら活動が広がり患者とともに歩めるのか考える必要がある。サロンについても、患者が求めるサロンが充実しているかというとそうでもなく、ご遺族が行きやすいところがなかったりAYA世代が行きにくい場合もあったりする。地域格差もある。がん相談支援センターで何ができているのかが行政に発信していないのではないか。地域に出向いていかないのも問題。子供のころからがん教育をするなどターゲットにあわせた広報をしていく必要がある。

F班 山形県グループ(1)
がんサロンをする時に同じ病気・病状・心の持ち方であることを配慮しなければならないという話しがあり、それを受けて、がんサロンのあり方を考えなければいけないと考えた。患者会が活発で、ピアサポート44人で、その方たちの活躍の場をどう充実させていくのかが今後の課題である。患者会とピアサポートの役割を各々補いあう人材も必要である。

G件 山形県グループ(2)
がん相談支援センターの周知の課題があり、チラシの配布場所を拠点病院中心から公共の場や病院以外の場所(調剤薬局、医院など)へ広げていく必要がある。相談員・相談室の雰囲気づくりを工夫する必要もある。相談員に関するアンケートを取っているところがあるので県内で共有し相談員の質をあげていくこともできる。就労支援に取り組んでいても相談が少ないので、相談できることを周知していったり企業に向けての研修会の開催をしたりするのもいい。元ちゃんハウスのような場があると、いろんな人が行けるので繋げが生まれるのではないか。

H班 福島県グループ(1)
相談支援センターの役割の周知が院内外で不十分であり、横の繋げを広げていく必要がある、いろんな職種・立場の人の専門性を生かして役割分担するべき。皆がそろって活動できるというのが福島の強み。がんとともに歩める福島県を構築したらいいと思う。患者さんが安心して生活・治療ができる福島県づくりをし、心のゆとりをもって何でも受け止めてくれる場が必要なので、常設の場があるといい。ご家族、医療者、行政などが繋がれるといいというイメージ。

I班 福島県グループ(2)
相談支援センターについて院内での周知が必要。院外への周知は、病院ごとに伝えるのではなく、県で、相談支援センターについて、プロモーションビデオを作って流すのがいいのではないか。がん相談に来た人に「どうしましたか」と聞くと、何を相談したいのかわからない人には悩ましいので、姿勢を見直す必要がある。患者・家族を支援する力を高める必要性あり。相談支援センターのほうから外に出向いていくことも重要。

J班 福島県グループ(3)
病院の機能や役割が違うので、連携を相互に密にとるといい。治療に来ている患者さんは病院にあまり来てくれない、ピアサポートの相談だとゆらぎや迷いを聞いてくれるというところがある。エビデンスに基づくということとピアな部分とは違う。相談支援センターについて知らない方がいたり、高齢の方など自分から情報を得られなかったりする方も多いので、予防の観点からもがん相談支援センターについて周知が重要だろう。

K班 福島県(4)+他県グループ
県単位の部会を招集してもらいたい。外に出る機会を作ってもらえれば出やすい。AYA世代への取り組みを行政と一緒にやりたい。患者さんに、「聞いてもいいんだよ」と伝えることで、患者力を高められる。どう声掛けをしたらいいのかをしっかりと考える必要がある。次世代を担う人材をどう育てるのかも課題。さまざまなところにいろんな人が出向いていくことで、ネットワークの広がりを持つことができる県にしたい。

まとめの言葉を、西村詠子先生からいただきました。西村先生は、次のようなことを述べられました。

東北の患者さんは幸せです。これだけ患者さんのことを真に考えてここで話しされていることを患者さんは知っているのかと思いました。がん相談支援センターの周知についてよく述べられましたが、ドアは開いていますでしょうか。カーテンはないほうが入りやすいですし、にっこり笑顔があったほうがいいでしょうし、患者さんの気持ちをどこまで自分事としてとらえられるのかということも周知したほうがいいと思います。相談がないから悩みがないというわけではないと思います。相談を聞く方のスキルや人間性の話しもありましたが、この人なら話ししたいと思ってもらえるようにしたらいいのではないでしょうか。患者さんは心を開ける人と一人でも出会えれば闘病も光が見えてきます。患者は医師との関係がやはり悩みの中心であり、聞きたいことが山のようにあるのに「あなたは心配性」と言われがちです。そうだったら、看護師や相談支援センターに相談してみるように勧めることになります。「行ってみたら?」というような良い雰囲気づくりが重要です。がんに対するちょっとした抵抗が少しだけでも下がるような、がんの患者が住みやすい、皆が住みやすい社会になったらいいと考えながら聞かせていただきました。

このように、今後の取り組みに繋げる示唆的かつ重要なご指摘をされ、思いを大切にするような関わりはどのようなものであるのかについて考える場になったのではないかという司会者からのコメントとともに、グループワークは終了となりました。

グループワーク風景写真

総評・閉会あいさつ

まず、若尾センター長から、次のような総評がありました。

話ししやすい雰囲気づくりをすること、ドアはあけておくということは大原則です。患者さんは勇気をもってきてくれているのですから「来てくれてありがとう」ということを伝えてもいいでしょう。拠点病院の指定要件が変更となり、病院全体で相談支援センターの周知を図れる体制にすることが、厚労省から求められています。もちろん主治医から伝えていただけるのが一番良いのですが、「主治医の先生が忙し過ぎる」ことも考慮し、相談支援センター案内のカードを備えているような病院もあります。このようなものも考えていただきたい点です。
相談支援センターについて医療者が知らないということも多いので、医局会に相談支援センターメンバーが出向いて説明するということをしている地域もあります。相談支援センターによっては、看護師だけだったりMSWだけだったりすることもあるので、整備指針の改正の折、両方入れてほしいと要望しました。結果、患者さんの必要性に応じて院内で協働することという文言は入り、一方で周知は病院としての取り組みということになり、相談支援センターの業務から周知が消えています。相談支援センターの周知は病院としての広報活動という位置付けになったのです。地域連携室や病院の広報で対応していただくことになりますので、国の指針なども参考にしてください。プロモーションビデオの話しが出ましたが、熊本にはくまもんが相談支援センターに行くビデオ、岐阜には県の職員やミナモがレポーターとして登場するビデオ、三重県はアニメでわかりやすく相談支援センターを紹介するビデオ等があります。がん情報サービスでは、島根県がん診療ネットワーク協議会がん相談部会でもともと作成したビデオを一部編集した短縮バージョンを見られます。また、「がんになる前に知っておくこと」という映画が来年公開されます。また、がん相談の場を利用者目線でとらえた8話構成のラジオ用ミニドラマも相談員の皆さまであれば無償で利用できます。相談員サポートページから確認できます。イベントの時にでも使っていただければと思います。患者さんのために相談支援センターは大変重要です。病院を使って活動を広げ、地域に出て繋げって、患者さんが隠れないでいい社会づくりに繋げていただきたいです。今日得た知識や資料を相談支援センター内、院内のスタッフとぜひ共有してください。

引き続き、引き継ぎ式が行われ、宮城から秋田へ、そして秋田から福島へと、歴代の東北ブロック相談支援フォーラムで大活躍してきたタイマーが福島県がん診療連携協議会がん相談支援部会の本多つよし部会長から青森県がん診療連携協議会相談支援部の丹野弘晃部会長へと引き継がれました。青森県の次は山形県となる予定です。

最後に、福島県がん診療連携協議会がん相談部会の本多つよし部会長より閉会のあいさつがあり、閉会となりました。

更新・確認日:2018年12月17日 [ 履歴 ]
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2018年12月17日 掲載しました。
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