プログラム
- 国立がん研究センターがん対策情報センター長あいさつ
- 宮城県立がんセンター総長(東北がんネットワークがん患者相談室専門委員長)あいさつ
- セッション1:「がん相談支援センターの様々な発展経緯」
- セッション2:「1施設を超えて患者さん・そのご家族を支えるためにできること」
- 県単位での体験共有
- 全体共有
- 平成27年度以降の地域相談員研修について
- 閉会あいさつ
概要
東北ブロック6県の相談員を対象とした地域相談支援フォーラムは、平成26年7月26日(土)に仙台国際センターにて開催され、東北6県(およびオブザーバーとして北海道より)総勢130人のがん相談支援センターの相談員が参加しました。
まず、若尾文彦センター長(国立がん研究センターがん対策情報センター)より、「平成24年度から開始した地域相談支援フォーラムが、他県の状況を知り、より多くの知恵や工夫を生み出すことのできる場として予想以上の成果を上げている。ぜひ明日からの現場へのヒントを持ち帰ってほしい」との挨拶がありました。続いて、東北がんネットワークがん患者相談室専門委員長の西条茂総長(宮城県立がんセンター)より、「第一線で実践している現場の方たちの経験を重視したフォーラムの意義を強く感じている」との挨拶をいただきました。
セッション1では、「がん相談支援センター」という新しい部門が院内外の関係者から認知され、評価・活用されるために、それぞれの相談員がどのような取り組みを重ねてきたのか、事例報告のあと、グループでのディスカッションが行われました。
最初の事例提供者である新谷明子さん(十和田市立病院・青森)からは、がん相談支援センターの重要性が院長にも認識されており、新谷さん自身が長い臨床経験をもつ看護職であり、がん体験者でもあることから、ぜひ「患者さんの声をじっくり聴いてほしい」との依頼を受けてがん相談支援センターが発足した経緯が紹介されました。活動状況に関しては、患者さんがアクセスしやすい立地とスタッフの増員により相談件数が増加したこと、多様な相談内容に対応できるようになったこと、院内のスタッフとの関係づくりやがん患者サロンの支援・運営を行ってきたことなど、発展の経緯が報告されました。
続いて舩水裕子さん(中通総合病院・秋田)よりがん相談支援センターの院内および地域に向けた活動について報告されました。院内周知に向けては、がん患者管理指導料の対象になること、それに該当する患者さんはいないかという呼びかけを行ったこと、院外に向けては地域の開業医を招いたカンファレンス、法人関連施設との連携の呼びかけ、地域の活動である「活き活き健康フェア」に出向いてがんについての対応コーナーを設ける活動などが紹介されました。そして、がんになった患者さんがどうやって生活を組み立て直していくのか、看護師としての専門性を生かすこと、科学的根拠のあるケアとその人の物語がきちんとつながることを目指して活動していることが語られました。
そして最後に、高石純子さん(公立置賜総合病院・山形)からは、がん相談支援センター開設に向けて、相談窓口に相談員を常駐させること、患者さんにとってアクセスしやすい場所・レイアウトへの変更、多職種で対応できる体制の確保と人員の増強に向け繰り返し要望を行ったことなど、実現への取り組みについて紹介されました。その他、地域連携会議やケア会議、出前講座等を重ねる中で、約3年間の間に相談件数は3倍近くに増加したことが報告されました。
グループでのディスカッションからは、「院内からもわかりやすくするため、窓口をはっきりさせることが大事」「なんでその患者さんが相談室に行ったの?と言われることもあるが、病棟も相談室も患者さんを共に支援するチームの一員であることを伝えることが重要」「病院内組織の委員会に位置づけてもらうことなど、どのような活動をしているのかを正式に院内で報告する場所を確保することが重要」「地域の介護の研修会等々、院内外のさまざまな場面に地道にいろいろなところに顔を出していくことが重要」「化学療法開始前の患者さんに看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーの対応がシステム化されていることが参考になった」「診療報酬で加算が得られることも重要」「県内の相談支援センターをつないでいくことも必要」といった意見が出たことが報告されました。
医師の立場で参加した方たちからは、「相談につないでうまくいった『成功体験』を院内で共有していくことが重要だと思う」「相談支援センターが実際にどんな対応ができるのか知らない医師も多い。がん診療を行う診療スタッフに実際にどんな相談対応をしているのか知ってもらうことで適切に紹介してもらえるようになるのではないか」「患者さんがどのようにサポートされているのかその結果がフィードバックされていくことが好循環を生むと思う」「相談支援センターの組織に医師を配置することで情報が診療部門にも周知されるようになるのではないだろうか」といったコメントがなされました。行政の立場からは、がん相談支援センターが、医療のプロとしての専門性に加えて、より広範な視点を併せ持ってもらうことでより有意義な活動が広がるのではないだろうか、というコメントがありました。
セッション2の「1施設を超えて患者さん・そのご家族を支えるためにできること」というテーマは、医療の空白はどこの県にもあり、それを直接埋めることは難しいが、相談の空白をなくすことを目指したいという実行委員の思いから設定されました。
最初の事例提供最初の事例提供者である佐藤好治さん(竹田綜合病院・福島)からは、福島県のがん相談支援部会で、拠点病院までのアクセスが難しいと思われる地域で診療所、市町村、訪問看護ステーション等を対象としたアンケート調査について報告されました。これら関係機関のスタッフの3割ががん相談支援センターを知らないこと、関係機関の人たちも住民のがん相談支援センターへのニーズがあると考えており、がん相談支援センターとのネットワークが必要であると感じているという結果であったことが報告されました。
大角亜希さん(八戸市立市民病院・青森)からは、「青森県がん情報サービス」の立ち上げに際し、県内のワーキンググループを組織し、持ち回りで検討会の開催と施設見学を行った活動が報告されました。「このシステムの立ち上げにより、相談員が共通のフォームで個人情報を除いた相談記録を入力し、相談対応について県内で共有できる体制となった。報告のためのデータづくりなどの労力も小さくなった。他院の相談対応を参考にできるようになった」というメリットが語られました。
続いて真渓淳子さん(東北大学病院がんセンター先進包括的がん医療推進室・宮城)からは、県内拠点病院ネットワークの情報ハブ機能を担う部署として、県内の空白地区を支える取り組みが報告されました。拠点病院を含め医療資源に乏しい県北地区において、保健所、市役所、市民病院、診療所、調剤薬局、福祉施設など地域の関係機関が連携して実施した在宅緩和ケア普及・啓発市民講座により、地域住民と専門職にその地域の資源について情報提供ができ、それにより“がんになっても安心して過ごせる”と思える人が増えたという成果を得られた事例が紹介されました。また、Webサイト「がん情報みやぎ」を開設し運営の過程で継続して見直しを行っていること、「みやぎがんサポートハンドブック」の作成と配布について報告されました。
武田裕子さん(由利組合総合病院・秋田)からは、はじめての院外サロンを実施するにあたって、院内の協力の下、がん診療連携拠点病院の活動として位置づけを担保し、講師や広報については、院外の協力を得て実施する体制をとったことが紹介されました。その中で「相談支援センターの利用者の口コミも重要であることが実感できた」と報告されました。
この後の各グループでのディスカッションの報告では、「往診医の先生、救急隊、行政、民生委員さんなどもともとある地域の社会資源をよりよく使っていくために工夫ができると思う」「空白の中には、院内の連携不足等によって生まれる空白もあり、それは自分たちの工夫で埋められるものもあると思う」「相談支援センターを知ってもらう広報は、部会など病院間で協力して働きかけていくことが有効ではないか」「回覧板レベルで地域でつながっていく努力をしたい」「新しいことに取り組むだけでなく、今もっている資源やネットワークを生かしていきたい」「地域の関連職種からも病院の敷居が高いと思われていることもあり、それを下げる努力もしていきたい」「地域に出かけていく巡回相談にも取り組みたい」「all東北で取り組んでいきたい」といったアイデアや抱負が寄せられました。
最後のセッションでは、各県ごとに一日の収穫を振り返り、各県の強み、課題、これからの県での取り組みの抱負が話し合われ、他県の仲間に向けたエールも送られました。
閉会にあたって、国立がん研究センターがん対策情報センターの高山部長よりフォーラムの総括と今後の研修プログラムの予定について報告されたあと、若尾センター長の挨拶で閉会しました。