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首都圏

平成28年度 地域相談支援フォーラム in 東京・埼玉・神奈川・千葉 「がん専門相談員ができる意思決定支援を紐解く」開催記録

開催日時: 平成28年11月12日(土) 9:30~16:30
場所: 国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟 5階501
主催: 東京都がん診療連携協議会 相談・情報部会
共催: 国立がん研究センターがん対策情報センター
後援: 東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県(順不同)
運営: 地域がん相談支援フォーラムin 東京・埼玉・神奈川・千葉 実行委員会

参加者数:128人 修了者*数:125人
*全プログラムの3/4以上参加

プログラム

09:30~09:45 開会・オリエンテーション
09:45~10:45
講演1: アドバンス・ケア・プランニング-いのちの終わりについて話し合いをはじめる-
10:45~11:30 グループディスカッション1
12:30~13:30
講演2: 「私のキセキ-遺伝性乳がんとともに生きて-」~患者の立場から~
13:40~14:55 グループディスカッション・情報共有2
15:10~16:20 グループディスカッション・情報共有3
16:20~16:30 閉会

概要とあいさつ

東京都がん診療連携協議会相談・情報部会長 黒井克昌医師

「がん専門相談員ができる意思決定支援を紐解く」を全体テーマとして、講演とグループワークの2部構成で行われました。
開会にあたり、東京都がん診療連携協議会相談・情報部会長 黒井克昌医師より、本フォーラムの全体テーマに用いられている「紐解く」という言葉には、「書物をひらく」「衣をひらく」「つぼみがひらく」の3つ意味があること、「書物をひらく」は情報を得る、「衣をひらく」は心を開く、と読み替えることができ、相談支援の「つぼみがひらく」ような実りのある会になるようオープンマインドでさまざまな情報交換を行っていただきたい、との挨拶がありました。

講演1:アドバンス・ケア・プランニング-いのちの終わりについて話し合いをはじめる-

木澤義之先生
講師: 木澤義之先生(神戸大学大学院医学研究科内科系講座 先端緩和医療学分野 特命教授)


アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の第一人者である木澤義之先生からは、ACPとは何か、ACPの重要性、ACP導入の難しさ、ACPのメリット・デメリット、ACPの方法についてご講義いただきました。

ACPとは「今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス」とされており、「なぜそのように書いたのか」「どうしてそのように考えたのか」といった患者の価値や結論までのプロセスを共有することが大切、とのお話がありました。
また、「患者は自分の意向が尊重されることを重要視しない」ことが研究で明らかになっているものの、医療者は患者の意向を決定内容と扱っており、患者と医療者でのACPの考え方の相違についてお話がありました。ACPにあたっては、患者と医療者で意向が異なっていた場合に、患者が言ったことを優先するのか、医療者がよいと思うことを優先するのかを、患者にあらかじめ聞いておくことが重要であるとお話がありました。
さらに、ACPを行う際の留意事項として「患者の感情に留意し、感情への対応を優先すること」「ACPの話だけに終始しないこと」が大切であるとの講義がありました。
さらに、ACPはロールプレイなどを通し練習を重ねる必要があり、経験を尋ねる質問などACPの際のキークエッションを用意しておくことがヒントとしてあげられました。
最後に、がん患者の最期は代理決定者に意思決定してもらうことが多くなるが、最期の時点まで自分が代理決定者であることを知らされていないケースがほとんどであり、早い段階から患者に代理意思決定者へ伝えてもらうことが必要であるとの講義がありました。

講演2:「私のキセキ-遺伝性乳がんとともに生きて-」~患者の立場から~

講演2 風景

遺伝性乳がんの体験者であるTさんより、診断・治療の過程でどのようなことに直面し、それぞれの局面でどのように意思決定をされてこられたのか、当事者の立場からお話しいただきました。

治療開始当初は術前化学療法の効果・副作用や仕事のことなど目の前のことに精いっぱいで、HBOC(Hereditary Breast and Ovarian Cancer/遺伝性乳がん卵巣がん症候群)についてはそれほど深く考えていなかったこと、主治医からの勧めで適切なタイミングに遺伝カウンセリングを受けることができ、そこで遺伝性乳がんへの対処方法を知ることで、情報のみならず希望を受け取ったように感じられたこと、遺伝カウンセリングの前にHBOCやリスク低減手術に関する情報を求めて多くの本を調べたものの、なかなか求めている情報には行き当たらず、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)のガイドラインを読み込んで、はじめて探し求めていた情報を見つけることができたことなどが語られました。
また、リスク低減手術を受けるかどうかについて、1人で考えることに限界を感じた際には、友人や看護師など他者に話を聞いてもらったこと、詳細を説明したり質問に受け答えするうちに自身の考えが整理されていったことなど、聞き役となる存在の重要性についてもお話がありました。
最後に、HBOCと家族という観点から、20代の娘がいる従兄夫婦とのやりとりについて紹介があり、前もって遺伝子検査を受けることで得られるメリットや懸念されること、HBOCが家族全体に与える影響の大きさなどについても触れられました。

グループディスカッション・情報共有

木澤義之先生

●グループディスカッション1
「日頃の意思決定支援を振り返りましょう」

グループワークでは、木澤義之先生の講演をふまえて、がん相談支援業務の中で日頃実施している意思決定支援について振り返りが行われました。

グループディスカッション風景

●グループディスカッション・情報共有2
「がんサバイバーの方の講演を聴いて、がん専門相談員として何ができるか」

グループワークでは、「がんサバイバーの講演を通して感じたこと」「がん専門相談員ができる関わり」についてディスカッションが行われました。「がんサバイバーの講演を通して感じたこと」の話し合いの中では、自分自身で情報や思いを整理できていた、どうして欲しいのかを周囲の人たちに伝えることができていた、医療者とのコミュニケーションのとり方という点で素晴らしかった、との意見があげられました。その結果、適切なタイミングで適切な場所との連携が取れたのでは、との結論に至ったグループも多くありました。また、「がん専門相談員ができる関わり」として、がん相談支援センターの認知度を上げ、がん相談支援センターにまず来てもらうことが必要である、との意見が聞かれました。さらに、意思決定を行うために適切な情報を適切なタイミングで伝えること、患者の持っている点と点の情報を1本の線のようにつなげること、情報を常に更新しながらネットワークを持つことも、がん専門相談員としてできること、との意見があげられました。

グループディスカッション風景

●グループディスカッション・情報共有3
「私たちは今後どのような意思決定支援ができるでしょうか」

一日の締めくくりとして、本フォーラムでの学びを今後の実践につなげていくためのグループディスカッションを行い、その内容をフロア全体で共有しました。「患者・家族が表出されていることだけではなく、その奥にある背景や価値観を大切にしたい」「自施設内の連携を強化し早期からの介入を図ること、そして患者・家族との関係を十分に構築した上で意思決定支援を行っていきたい」といった意見、また、「相談員それぞれが持つ強みを生かしながら、相談者に正確な情報を提供すること、相談者にとって必要な窓口へとつないでいくことが重要」「相談員同士がつながることで、患者・家族が大切にしていることもつないでいくことができるのではないか」など、さまざまな意見が出されました。さらに、「『その人が何かを決めようとしていることに対して支援をすること』が意思決定支援ではないか」、といった意見も紹介され、支援を行う上での手段となる情報やネットワーク、また、相談員が相談者と向き合う際の基本的姿勢などについて、改めて重要性を認識する機会となりました。

閉会あいさつ

国立がん研究センターがん対策情報センター高山智子より、閉会の挨拶がありました。地域相談支援フォーラムは2012年熊本で最初に行われ、関東では一昨年の神奈川に続き2回目であること、東京は日本の人口の1/10程度であり、東京が変わると日本のがん相談支援はよい方向に進みやすくなる、といったお話がありました。さらに、首都圏は多くのがん患者を対応している地域であること、交通網が発達し、患者の移動範囲も広いことから、相談員同士のネットワークの必要性も述べられました。最後に、本フォーラムと同日に東北でも同様のフォーラムが開催されており、来年以降も開催が決定したとの報告があり、東京・埼玉・神奈川・千葉の地域でも再来年以降も継続して行ってもらいたい旨の説明がなされました。また、埼玉県立がんセンター池田智佳さんより、来年度は「相談員のセルフケア」をテーマとした相談支援フォーラムを、埼玉県が中心となり企画している旨の説明があり、「平成28年度 地域相談支援フォーラム in 東京・埼玉・神奈川・千葉」は閉会いたしました。

資料

更新・確認日:2016年12月05日 [ 履歴 ]
履歴
2016年12月05日 掲載しました。
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