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小児がん中央機関アドバイザリーボード 開催記録

第7回小児がん中央機関アドバイザリーボード概要

令和3年3月9日、第7回小児がん中央機関アドバイザリーボードが国立成育医療研究センターにて開催され、小児がん中央機関アドバイザリーボード委員、厚生労働省健康局がん・疾病対策課、小児がん中央機関が参加した(出席者名簿)。
開会にあたり、国立がん研究センターの中釜斉理事長、国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長より挨拶があった。また、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の片岡伸介がん対策課長補佐より挨拶があった。

1.小児がん診療の集約化の実態等

松本公一センター長(国立成育医療研究センター小児がんセンター)から、中央機関の取り組みについて報告がなされた。(資料1

意見は以下のとおりである。

  • 連携病院の選定基準はブロック間で異なり、実際に指定する際にはブロック内の協議会で決めるスタイルになっている。この均てん化をはかるため、厚労科研費QI松本班にて、連携病院のQIを算定すべく動いている。
  • 一部では、「小児がん領域は8割の患者が治癒を期待できるので、成人ほどドラッグ・ラグの問題は深刻でない」という話があるが、「8割治るということは、2割は治らない」ということである。難治患者は拠点病院に集まっており、数は少なくともその人たちに薬の提供がうまくできていないことが問題と考える。
  • 成人の新規治療薬を承認する際に、同時並行で小児の治験も義務付けるようにしてほしいという意見がある。現状では他国ではできているが、国内ではできていない。成人の薬剤を開発するときに小児治験の義務があれば、小児の薬の開発がもっと進むのではないかと考える。小児がん中央機関ないし、協議会の方から要望を出したほうが良いのではと感じる。
  • 国立がんセンターではゲノム検査をして、分子標的薬を提供している。実際に成人がんのパネルで、薬の適用がありそうな患者は20%である。成人に比べ小児に適用できる薬は少ないという現状であり、それを解決するために、小児に向けた対策が今後重要になる。ゲノム情報を共有することで、広く小児がんの中で診療体制を整えていくことが大切である。
  • 長期フォローアップセンターのインフラ整備について、長期フォローアップセンターから小児がん経験者・家族への具体的な情報提供として、厚労科研費松本班でアプリを開発中である。治療歴を入れると、どの時期に、どういった検査をすべきかを通知するシステムを検討している。
  • 研究班では人間ドックの利用の可能性も検討しているため、提言できればと考えている。
  • 長期フォローアップロスをどのように拾い上げるかも課題となり、フォローアップセンターとうまくつなげられればと考えている。もう一つ重要なのは受診体制の整備である。住む地域においてどのようにフォローアップができるかと考えることが重要であり、拠点病院があるところだけではなく、全国に散らばっている人たちにどうやって医療を届けられるかが課題である。
  • 連携病院に対するインセンティブがないことが課題の一つである。成人診療科との連携も重要と考えている。
  • 中央診断はかなりの部分が医師のボランティアによって成り立っている実態があると思うが、予算的な裏付けのもと、医師が安心して中央診断の仕組みを運営できるようにしていただきたい。

2.小児がん中央機関の行うべき業務

(1)国立がん研究センターからの報告(情報提供・相談支援)について

若尾文彦センター長(国立がん研究センターがん対策情報センター)から、国立がん研究センターでの情報提供について報告がなされた。(資料2

意見は以下のとおりである。

  • 「病院を探す」は以前別の会議で確認したとき、7月頃公開予定と聞いたが、成人も含め半年以上症例数が見にくい状態になっていることで、患者側では大変困っている。ここからは意見に対する回答と思うが、システム更新のスケジュールを前倒しすることは難しい。成人の症例数を検索できる簡単なシステムを早めに公開できるよう準備中である。それと同時に院内がん登録の件数については、院内がん登録閲覧システムで施設別の登録件数を確認できる。問い合わせをしていただければ、今公開していない情報も含めて回答することができる。
  • 症例数について、例えば成育のHPを見ればPDFで各施設の情報が出てくる。しかし、正直なところかなり見づらく、一般の患者はそこまでたどり着けずに終わってしまう現状がある。院内がん登録では、一部患者の利便性を考えた掲載方法として、ランク形式のように多いものから並べるようにしている。
  • 新システムでは小児やAYAに絞った件数等でも検索できる形で作成中である。また、個人特定を防ぐため10例以下は区分となっているが、症例数の少ないところの患者が困難を抱えていると思うため、個人特定されない方法を検討していきたい。
  • 当初は、連携病院で院内がん登録をしていない施設もあるが、最低限、どんながんをどれくらい見ているかという情報は、取れたほうがよいと考える。
  • 来年より18歳以上が成人となるが、未成年に対して情報を取る場合、保護者の許可のこと等、どうするかは検討する必要があり、課題がまだあると考える。

(2)相談・支援について

鈴木彩医療社会事業専門員(国立成育医療研究センター)から、各研修やWGについて、また、小児・AYA世代がん患者の教育に関する要望書(案)をまとめていることなど、相談支援事業についてが報告された。(資料3

意見は以下のとおりである。

  • 妊孕性の温存に関しては、相談支援が非常に重要であり、相談支援センターだけが対応できることではないが、来年度相談支援センターの機能の一つとして、妊孕性温存に関する説明と情報提供支援について重点的に指定要件に入れていただきたい。
  • 小児がん拠点だけでは情報提供や相談支援への対応はなかなか難しい点がある。AYA世代のがんを見ている成人拠点の皆さんとも一緒に取り組みたいと考えている。小児がん拠点はブロック単位だが、成人がんになると都道府県になるため、都道府県のがん診療連携協議会の相談支援部会等でも積極的に成人がんの方と連携していきたい。
  • 3月24日に文科省へ要望書を出す予定である。
  • 小児・AYAの妊孕性について、都道府県単位で生殖のネットワークも作られており、施設と相談支援の点で強固につないでもらい、紹介逆紹介等も進めていただきたい。義務教育の患者でさえも院内で教育を受けられていない実態を聞くことがあるが高校教育支援を含めて充実していただきたい。ぜひ要望書を出していただきたい。

(3)診断支援について

出口隆生診療部長(国立成育医療センター小児がんセンター小児がん免疫診断科)から、衛生検査センターの設立など、免疫中央診断支援について報告がなされた。(資料4-1)また、宮嵜治診療部長(国立成育医療センター放射線診療部放射線診断科)より、画像中央診断について報告がなされた。(資料4-2)また、義岡孝子統括部長(国立成育医療センター病理診断部・病理診断科)から病理中央診断の経費などについて報告がなされた。(資料4-3

意見は以下のとおりである。

  • 症例数の増加に伴い、病理中央診断のコストは6年前と比較して2倍以上に増えている。
  • 国立がんセンターでは、病理コンサルテーションという形で、他施設から出てきた検体の診断を請け負っている。事業費で賄っている部分もある。
  • 希少がんにおいても中央診断という形にするのか、病理コンサルテーションの延長とするのかは議論が続いているところである。持続的に、制度として安定的に稼働するかは希少がんと小児がんに共通の課題と考える。
  • 小児がん中央機関の役割として、小児がん拠点病院と連携病院の診断支援があるため、中央機関の事業費で賄うことができればと考えている。持続可能性という観点で、中央診断加算などの診療報酬でのカバーも検討したい。

(4)登録準備について

瀧本哲也診療部長(国立成育医療センター小児がんセンター小児がんデータ管理科)から、小児固形腫瘍領域や、長期フォローアップ体制の構築の登録準備について報告がなされた。(資料5

意見は以下のとおりである。

  • 脳腫瘍の捕捉症例数が上がっているが、どれくらい捕捉しているかと質問を受けたが、年間600例中、300~400例くらい捕捉できている。100%の捕捉率を目指していくためにはどうすればよいかという意見もある一方、まず二次登録の登録率を上げるべきという意見もある。

(5)看護部会について

松谷弘子看護部長(国立成育医療研究センター看護部)から看護部会の活動について報告された。(資料6)小児がん病棟を取り巻く看護管理上の課題と取り組みの情報共有、研修・見学等の交流を看護部会の活動計画としているが、コロナにより施設見学や実施研修ができないため、小児がん看護の現状紹介、今後の看護部長会議について話し合った。

(6)人材育成について

小野裕子看護師長(国立成育医療研究センター看護部)から、看護セミナーについて報告がなされた。(資料7-1)また、余谷暢之診療部長(小児がんセンターがん緩和ケア科)から、小児緩和ケアチーム研修会について報告がなされた。(資料7-2)また、加藤元博診療部長(小児がんセンター移植・細胞治療科)より、がんゲノム医療研修中央診断について報告がなされた。(資料7-3

(7)その他

加藤元博診療部長(小児がんセンター移植・細胞治療科)より、がんゲノム医療拠点病院としての報告がなされた。(資料8

3.総合討論

  • ピースでは患者の声が反映されているが、小児でできるかどうか大事な視点と思うため、そういったことが取り入れられるように考えたい。
  • がんゲノム医療について薬剤到達率は成人でも議論になるが、小児ではそういった数字は出ているのかと質問があった。成人では10%前後と聞いているが、小児に関して成育の数字でいうと、30例強がん検査を行って、実際に薬剤に到達した患者は1例である。24%と言われているため、最大限整備されれば、それぐらいの患者が恩恵を受け得ると思う。小児がんの場合、治療標的の探索だけが最終目標ではなく、更に診断や予後予測というところまで考えると本当はもっとたくさんの患者がゲノム検査の恩恵にあずかれるような体制を目指すべきである。
  • 看護師への研修について、拠点病院以外の看護師はどれくらいの割合だったのかと質問を受けたが、35施設から参加した。
  • 小児がん看護学会の研修制度があり、この度、学会認定看護師を輩出することになる。相互に協力できればよいと考える。
  • 長期フォローアップセンターについて、早めに構築できるよう進めてほしいという意見があったが、ハードとソフトが長期フォローアップにはあると思う。今はハードを作っている段階である。既にフォローアップしている人、これからフォローアップしている人、これを全て網羅できるようなハードにしたいと考えているが、どうしても時間はかかる。ソフトは、どういった情報を集めるかということになるが、何のためにそれを使うのかということを考えたうえで、情報を集めたい。
  • 長期フォローアップに関して、外科手術に関する長期合併症についての質問があり、以下のように回答した。
    COGのガイドラインにも外科治療のフォローガイドラインができているため、これに準拠する形で見ていく必要がある。JCCGの長期フォローアップ委員会の中にも外科医が参加しているため、JCCGと連携していきたい。
  • 小児がん拠点病院の評価について、外科手術に関するQIとしてどのような報告で考えているかと質問を受けたが、木下先生、米田先生にもご協力いただいて手術に関する合併症にかかるQIを構築していきたい。
  • がんゲノムの実装のことは、遺伝カウンセリングの問題が入ってくるのと、サバイバーのフォローは、成人側との連携が重要と考える。
  • がんゲノムと長期フォローアップとの連携性について、重要性を認識しているため、連携が重要と考える。
  • ソフトについては、各組織や学会が連携して、研究班横断的なかたちで作っていけたらと考えている。依藤先生と連携して、ソフトを強化できないかと考えている。
  • 長期フォローアップセンターについて、小児がんまごころ機構と連動しているか。電子カルテとの連動はどう考えているかと質問を受けたが、まごころ機構とタイアップしての携帯アプリを開発中である。電子カルテとの連動は、OCR機能、QRコード読み込みを適用して作れないか、考えている。
  • JCCGの固形腫瘍観察研究について、血液との住み分けというか、見た目がきれいでないと思うがどうかという意見があったが、TCCSGのコホートは大部分が白血病、造血器腫瘍である。データセンターは名古屋と成育で造血器と固形で分かれており、長期フォローアップに関しては、基本的には造血器の成育として集めたいと考えている。TCCSGであえて始めるのはそういった背景があることをご理解いただければと思う。

第7回小児がん中央機関アドバイザリーボード資料

更新・確認日:2024年01月11日 [ 履歴 ]
履歴
2024年01月11日 「第7回小児がん中央機関アドバイザリーボード概要」を掲載しました。
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