鹿児島大学
大学院医歯学総合研究科・臨床腫瘍学講座 助教
鹿児島大学病院 腫瘍センター 副センター長
鈴木紳介
(取材日:2016年12月14日)
——PDCAサイクルを通して、どのような取り組みをされているのでしょうか。
私はがん診療企画部門の中で化学療法部門を担当しており、毎週の化学療法カンファレンスなどを通して、抗がん剤の副作用などを皆で共有するようにしています。抗がん剤特有の副作用にはまだまだ不明な点も多々あるため、皆に広めておく必要が大きいのです。
——カンファレンスの参加メンバーはどういった方々でしょうか?
消化器、呼吸器、血液造血器など、各科の関係者が集まっています。
これまではカンファレンスというと診療科ごとの開催が多かったのですが、最近は臓器横断的な管理療法というのが中心になってきています。
——鹿児島大学では先進的にさまざまな取り組みをされていますが、それを「どのように県全体に広げていくか」についてはいかがでしょうか?
年に2回ほど4部門合同研修会を開催しており、そこで県内のがん診療連携拠点病院の中心メンバーの先生方に集まってもらい、症例提示や抗がん剤特有の副作用などについての議論を行っています。
特に最近は、いわゆる「免疫療法」が中心になってきています。通常は抵抗を覚えがちな領域ではあるのですが、私自身がもともと造血器腫瘍を専門としており、免疫療法に関しては昔から慣れ親しんでいるため、そうした点を詳しくご説明できるところはいかしていきたいと思っています。
——今後、鹿児島県の化学療法分野の医療を前進させるために行いたい活動などありますでしょうか?
がん診療は大きな変動期を迎えており、従来の抗がん剤とは異なるものも出てくるかと思います。例えば、ニボルマブ、免疫チェックポイント阻害剤など、従来の殺細胞性抗がん剤とはまったく違うものが出てきており、例えば皮膚科の病気である悪性黒色腫では免疫療法が初発の標準治療になっています。おそらくこういった治療法が、いろんな「がん」でも出てくると思います。
したがって、その辺りの情報を提供し広めることが、ひいては患者さんのためになればいいと思っています。
——通常、そうした領域は各病院単位で取り組んでいるケースが多いと思うのですが、ほかの病院とはどのように連携をはかっているのでしょうか?
テレビ会議を利用したり、あるいは、なるべく地区のほうに行って話をさせていただいたり、そうした機会をできるだけつくるようにしています。
——最後に、改めて強調しておきたいことなどはありますでしょうか?
繰り返しにはなりますが、がんの治療は今後変わってくるかと思います。
従来の殺細胞性抗がん剤というのは、がんの遺伝子や宿主側の要因をほとんど無視した治療だったと思います。今後は、そういったところを勘案した治療を実践していかなければなりません。また、私自身、それを鹿児島県内に広めていく、あるいは、そういう機会を多くもつようにしたいと思います。
加えて、臓器別の治療ではなく診療科横断的な治療が必要になってくると思います。
私自身も固形がんの治療をしたことがない状態で、4年ほど前から、週に一度の科横断的なカンファレンスの開催、月に一度の「キャンサーボード」という各症例を討議する場などで意見交換をしてきましたが、それを通した学びは非常に大きかったように思います。
したがって、診療科横断的な治療を積極的に進めていきたいと考えています。