鹿児島大学
緩和ケア認定看護師
がん相談支援看護師
田畑 真由美
(取材日:2016年12月14日)
——PDCAサイクルを通して、どのような取り組みをされているのでしょうか。
平成24年がん相談支援センターに就任し感じたことが「ネットワークがないこと」。拠点指定病院の相談員の顔すら知らない中で相談業務を行うことに不安を感じていましたので、県内23カ所の拠点・指定病院の相談員の方へ声をかけ、がん相談支援部会を立ち上げました。そして、年に2回相談支援部会を開催し、顔の見える関係づくりを行いながら、鹿児島県内のがん相談支援センターの問題や、どこを強化していけばよいのかについて会議を行いました。部門会を設置した当初から、ワーキングループ活動を開始したかったのですが、委員の同意が得られず見送りました。
2年後の平成26年に、相談支援センターに必要な項目として、大・中・小項目を組み合わせたアンケートを作成し評価しました。できていない項目は各施設で取り組む、そしてまたそのシートを用いてチェックを繰り返し、成果や取り組み状況が見える化できるシートを作成しました。
また、平成27年度には「九州・沖縄ブロック地域相談支援フォーラム」が鹿児島県で開催され、1年かけてプログラムを遂行したので、さらに委員が一致団結し、「顔の見える関係」が強化されたと思います。
フォーラムを終え課題として見えてきたものを解決するためには、やはりワーキンググループを立ち上げ、それぞれの問題に丁寧に取り組むことが必要だと委員全員が一致し、本年度から研修企画班、広報周知班、情報誌作成班、活動評価班の4グループで活動を実施しています。具体的に何を目指し、どのようにして目標を達成するかという点については、当院の看護部で活用している「BSC」を用いて評価しています。すべてにおいて、トップダウンではなく、各ワーキンググループの委員が計画を立案し、皆で作り上げるという形をとりました。
——平成24年度に部門会ができた後、実にさまざまな取り組みをされていることがわかりました。これまで、田畑さんから積極的に働きかけをされてきたのでしょうか?
私もそうでしたが、委員の皆さんも相談員同士のネットワークが欲しかったという前提がありましたから「困ったときに助けてくれる仲間がいる」というのは強みだと思います。
——働きかけの際の工夫などありましたら、ぜひお聞かせください。
鹿児島県の相談部門を盛り立てていくために、「委員全員が主体的に動けるように」という点を大事にしています。グループ活動も各グループリーダーが指揮をとり、目標達成に向けて、委員全員で取り組んでいただいているので大変ありがたいです。
——ワーキンググループの創設にあたり、下準備や皆さんへの配慮が必要だったと推察します。
おそらく、平成24年にワーキンググループを設置してもうまくいかなったと思います。相談員同士のつながりや信頼関係、「こうしていきたい」という委員の思いなど、このようなプロセスがあったからこそ今があるのではないかと思います。
——ワーキンググループのグループ長はどのようにして決定したのでしょうか?
グループ内でリーダーを決めてもらいました。
若干調整はしましたが、グループのメンバー構成も自主性に任せました。
——自主性を重んじながら、そうした状況をつくっていかれたというのはすごいと思います。開始当初は、ある程度の視点は提供したのでしょうか?
ある程度の枠組みは提案しますが、その中で実施内容を具体化するのは委員の皆さんです。
今年、BSC評価シートの基盤をつくることができたので、来年度はこれを基に委員の皆さんから新たなアイデアを出していただけるのではないかと期待しています。
——他県には、さまざまな方が参加してもらえるような土壌がない組織や分野があると思います。がん相談・連携部門の取り組みのエッセンスについて伺えますでしょうか?
まずは、部会などを通して相談員同士の横のつながり、つまり「顔の見える関係づくり」を強化したことは大きかったと思います。
そして、相談員以外の協力者「医師」「行政をどう巻き込むか」という点も重要なポイントだと思います。鹿児島県はこの両者の協力がスムーズに対応できていると思います。
私たち委員だけでできることには限界がありますので、誰を巻き込み協力をもらうか!は大事な要素だと思います。