プログラム
- 国立がん研究センターがん対策情報センター長あいさつ
- 愛知県がんセンター副院長あいさつ
- 各県がん対策担当者あいさつ
- セッション1:施設内の相談支援体制の立場の確立~異なる職種・部門、院内周知や理解者の確立、質の担保および実績のアピール~
- セッション2:地域における相談支援センターの立場の確立
~地域でがん患者の療養ケアに関る関係者、患者団体との関係構築、部会単位での取組み、その中で私たちが大切に育ててきたこと~ - 県単位での体験共有
- 全体ディスカッション
- 閉会挨拶
概要
平成25年10月19日(土)に、東海・北陸ブロック計8県の相談員を対象に、愛知県名古屋市で「地域相談支援フォーラム」が開催されました。
この日は、東海・北陸ブロックのすべての県、さらに長野県と京都府から計97名の相談員の方と関連各県でがん対策を担当されている9名の行政担当者の方にご参加いただきました。
まず、国立がん研究センターがん対策情報センターの若尾文彦センター長から、がん患者さんに対する情報提供ネットワークを強化するための本フォーラムの趣旨について説明がありました。
そして同じ県の相談員同士、行政の方と相談員、そして県境を越えたヒューマンネットワークを作り持ち帰っていただきたいこと、相談員の皆さんのさまざまな工夫やユニークな取り組みについて、他県の皆さんにも提供いただき、また、他県の情報やアイデアを持ち帰ってこれからの相談支援に活かしていただきたい旨のお話がありました。そしてこれらの活動は、すべて患者さんやご家族のためになるものであり、今日は熱心な討論をしていただきたいとのあいさつがありました。
続いて、愛知がんセンター中央病院副院長である丹羽康正先生から、県を超えた相談員の皆さんが集まり、話し合い、情報が共有されることで、自分たちの施設あるいは自分の県の取組みを客観的にとらえなおすことができ、がん対策の均てん化にもつながること、また県境を越えて受療される患者さんに対応するためも、他県の相談員の方々と、顔の見える関係を築いておくことが重要であるとフォーラムの意義についてお話しいただきました。そして、このフォーラムにより、個々の相談員の方の基礎力の向上とともに、横のつながりを作る機会にしていただきたいとの期待をお話しいただきました。
関係各県のがん対策担当者の方からは、第二期の県がん対策推進計画において「患者さんの療養の質の向上」を重点対策として取り組むこと、県内のがんに関する情報を集約したサイトを開設したこと、地域の療養情報の作成に取り組んだこと、退院後の療養支援・就労支援などへのニーズの高まりに対応するために、地域の中に相談支援センターを開設したこと、ピアサポートの要素も盛り込んだ患者サロンや相談支援強化に取り組んでいることなど各県の取り組みについてご紹介いただきました。そして県を越えたつながりと県内でのつながりを深めながら、行政としても相談支援体制の発展を支援していきたいと心強い言葉をいただきました。
今回の研修プログラムは事例紹介とグループワークをセットにした2つのセッションを中心とした構成で、セッションに入る前には県ごとに集まり、それぞれの県の課題に照らしてこのフォーラムの中でどのような点に力を入れて情報収集や議論をするのかについて意識を合わせるミーティングを行いました。
午前のセッション1では、グループに分かれて「施設内の相談支援体制の立場の確立:〜異なる職種・部門、院内周知や理解者の確立、質の担保および実績のアピール」をテーマとして、施設内での相談支援体制を築いていくために日々どのようなことに困難を感じ、どのような工夫を積み重ねているのかについてディスカッションが行われました。ディスカッションに先立つ話題提供として、福井県済生会病院の笠島沙代さんと河内康恵さんに「施設内の相談支援体制の立場の確立」を、名古屋大学医学部附属病院の黒柳佳代さんに「大学病院におけるがん相談の取り組み」を、聖隷浜松病院の島田綾子さんに「相談支援体制の確立〜聖隷浜松病院の場合〜」を発表していただきました。それぞれの施設の特色を活かした先進的な事例でしたが、いずれも日々の現場での知恵や工夫、苦労の積み重ねにより実現した取り組みであり、相談実務の現場で参考になる要素に富む報告でした。
その後、グループワークでも活発なディスカッションがなされ、「相談員同士だから共感できた」「今までやってきて、よかったのか不安だったが、いろいろな角度からの意見がもらえて自信につながった」などの意見が聞かれました。
午後のセッション2では、新しいグループに分かれて「地域における相談支援センターの立場の確立:〜地域でがん患者の療養ケアに関わる関係者・患者団体との関係構築、部会単位での取り組み、その中で私たちが大切に育ててきたこと」をテーマとしてディスカッションが行われました。
話題提供として、高山赤十字病院の上野恵子さんに「地域とのつながりを大切にした取り組み」を、富山市立富山市民病院の島田真理子さんに「地域における相談支援センターの立場の確立」を、三重大学医学部附属病院の鈴木志保子さんに「地域でがん相談支援センターを活用していただくための取り組み」を、具体的にご紹介いただきました。
続いて行われたグループのディスカッションでは、「がん相談支援センターのパンフレットを一斉に配布しても効果がなかった」「地域の診療所やケアマネジャーさん、訪問看護師ステーッション、医師会などを訪問し、こちらから出向く形で広報活動を行っているという積極的な取り組みを聞くことができた」というそれぞれの経験や、「相談に来られる患者さんはいいのだが、本当に困っている患者さんは相談に来られないのではないか」、「相談員一人ではできないが県単位でまとまって広報活動をすれば、もっと効果が出るのではないか」などの意見が出されました。
最後に再度県ごとに集まり、それぞれが収穫してきた情報を共有し、県として今後どの課題をとりあげていくのか、どのような取り組みができそうかなどについてディスカッションを行い、その内容を共有しました。「名刺サイズの紹介カードを作成し、診察の際に医師から手渡し紹介してもらうようにしていきたい」、「相談者が来て下さるのを待っていたこれまでの姿勢を改め、一歩前に出る出前相談などもやっていきたい」など 、 具体的な活動を予定しているという発表もありました。行政の立場からは、病院の外に設置した統括相談支援センターとがん診療連携拠点病院のがん相談支援センターは両輪として重要な役割と位置づけていること、相談員や患者さんから相談を受けていた中から、具体的な施策へのアイデアが生まれていくこと、そのためにも相談員の皆さんとの連携を強めていきたい、などの意見も聞かれました。
最後に実行委員代表として富山市民病院の島田真理子さんと愛知県社会保険中京病院の大矢早苗さんから「離れた地域の相談員の方たちとも活発な意見交換ができ、がんを抱える患者さんやご家族のために、皆さんが本当に頑張っておられるのがよく分かり、元気をもらいました。また、県のがん対策課の方も交えたヒューマンネットワークを築く機会になりました。私たちが頑張っていることを外に出ていき、皆さんに伝えたいと思います。今後、私たちが連携していける機会を作っていきたいと思います。」と相談支援の充実に向けた抱負をいただきました。
がん対策情報センターはこれからも相談支援・情報提供の質の維持・向上を目指し、相談員同士のネットワーク作り、学びの場作りを応援してまいります。