日時:令和7年12月5日(金)10:00~12:00
場所:ハイブリッド形式(会場:国立がん研究センター大会議室)
主催:国立がん研究センター
概要
令和7年12月5日、第13回都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会 緩和ケア部会が、国立がん研究センターの主催によりハイブリッド形式で開催された(資料:議事次第)。全国の都道府県がん診療連携拠点病院の緩和ケア部門責任者・実務者、ならびに各都道府県の緩和ケア関連会議の責任者が出席した。
冒頭、国立がん研究センターがん対策研究所所長 松岡豊より、本年8月に厚生労働省健康・生活衛生局がん・疾病対策課から通知された「2040年を見据えたがん医療提供体制の均てん化・集約化に係る基本的な考え方及び検討の進め方について」において、緩和ケアが「さらなる均てん化が必要な医療」と位置づけられたことを受け、15年後の緩和ケアのあるべき姿、あり得る姿について、多角的に検討し、活発な議論を行っていただきたいとの挨拶があった。
続いて、厚生労働省健康・生活衛生局がん・疾病対策課 糸谷涼課長補佐より、第4期がん対策推進基本計画の中間評価の進捗状況、ならびに「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会」の変更点について説明が行われた(資料)。
以降、議事次第に沿って、国立がん研究センターがん対策研究所がん医療支援部 藤澤大介が議事進行を務めた。
「これからの緩和ケアが担う役割」をテーマに、がん診療連携拠点病院、非拠点病院、ホスピス・緩和ケア病棟の立場から発表が行われた。
最初に、緩和ケア部会ワーキンググループ長である愛知県がんセンター緩和ケアセンター 下山理史委員より、「これからの緩和ケアのあり方を考える~がん診療連携拠点病院の視点から~」として、第2期がん対策推進基本計画以来「診断時からの緩和ケア」が推進されてきた経緯を踏まえ、緩和ケアが「さらなる均てん化が必要な医療」と位置づけられた現在、がん拠点病院が地域の緩和ケアを支える役割を再検討する必要があること、また部会委員全体で課題や認識を共有し、政策提言と現場改善を両輪で進めることの重要性が強調された(資料1)。
次に、筑波大学緩和医療学教室 濵野淳先生より、拠点病院よりも非拠点病院で最期を迎える患者が多い現実を踏まえ、拠点病院のみならず地域全体で緩和ケア体制を再構築する必要性が示された(資料2)。
続いて、日本ホスピス緩和ケア協会理事長・六甲病院 病院長 安保博文先生より、少子高齢・多死社会において緩和ケア病棟の役割を再定義し、がん以外の慢性疾患にも対応しながら、社会全体で生と死を支える仕組みを構築する必要性が述べられた(資料3)。
講演内容を踏まえて、指定発言として、ワーキンググループ構成員である広島大学病院の倉田明子委員、青森県立中央病院の山下慈委員が加わり、総合討論を行った。
まず、現在の緩和ケアの提供が、拠点病院中心の体制で整備されていることにより、非拠点病院の声が届きにくい現状が共有された。多くの都道府県のがん診療連携拠点病院連携協議会等では、拠点病院間の連携が主で、非拠点病院との関係は限定的であることや、コロナ禍で顔の見える関係が途絶したままの地域もあること等が指摘された。一方、緩和ケア推進病院を独自に設定し、非拠点病院も含めた全県的な参加を実現している事例も紹介された。地域との連携のタイミングについては、Best Supportive Careの段階からでは遅く、外来から早期に地域とつなぐ工夫が必要との意見が多かったが、一方で、患者の費用負担や、地域によってリソースに差があることが障壁として挙げられた。全体として、患者支援の網目を細やかにするため、拠点・非拠点・在宅を含めた協議の場の再構築が重要との認識が共有された。
最後に、緩和ケア部会長である国立がん研究センターがん対策研究所がん医療支援部部長 藤澤大介より、多様な課題がある中でも、目指すべき方向性の一端が見えた旨、当部会としても、今後さらに意見や工夫を集めて次につなげていく旨が述べられ、閉会となった。
議事次第 緩和ケアに関する情報提供 厚生労働省 資料1 これからの緩和ケアのあり方を考えるーがん診療連携拠点病院の視点からー 資料2 これからの緩和ケア部会が担うこと~非拠点病院の視点から~ 資料3 変わりゆく緩和ケア病棟の役割と専門的緩和ケアの再定義