- 日時
- 2025年02月13日(木)17:30~18:30
- テーマ
- 安心して受けられるゲノム医療のための遺伝性腫瘍診療
千葉県がんセンター 発信
千葉県がんセンター 遺伝子診断部 部長 横井 左奈
遺伝性腫瘍の診断は知りたい人だけでいい、そんな時代は過去のものになりつつあります。MSI検査、免疫染色、がん遺伝子パネル検査などは遺伝性腫瘍の存在を教えてくれ、その恩恵は患者さんのみならず何倍もの数の血縁者にもたらされます。一方、こうしたゲノム情報は適切に扱われないと不利益を及ぼします。実は自分が引き金を引いていたという事態にならないように、ゲノム医療法のいう「ゲノム医療を患者が安心して受けられる」とはどういうことか考えてみましょう。
1. 当院における遺伝性乳癌に対する診療状況
滋賀県立総合病院 放射線治療科(遺伝子診療センター) 主任部長 山内 智香子
当院においては、2018年より遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療として自費での遺伝学的検査とサーベイランスを開始した。2019年からは遺伝子診療センターを開設し、遺伝カウンセリング外来とがんゲノム外来を運営している。保険診療でのコンパニオン診断、HBOC症候群診断やサーベイランスのみならず、家系検査やがんゲノムプロファイリング検査後の二次的所見にも対応している。今回の発表では、当院における遺伝性乳癌診療状況について報告する。
2. HBOC以外の遺伝性腫瘍に対するがん専門病院での遺伝診療
兵庫県立がんセンター 腫瘍内科部長/遺伝診療科科長 松本 光史
当院遺伝外来は2013年2月に開設され、2025年1月で丸12年が経過する。テーマとしてはHBOCが多く、昨年度末までの全2266件の遺伝外来中1836件(81%)を占めている。次にリンチ症候群が212件(9.3%)、リ・フラウメニ症候群が93件(4.1%)、その他が125件(5.5%)の順となっている。サーベイランスや多遺伝子パネル検査も含めたHBOC以外の遺伝性腫瘍への対応の現状をまとめ、報告する。
3. 遺伝差別をしない、させないために医療従事者ができること
千葉県がんセンター 遺伝子診断部 部長 横井 左奈
リンチ症候群だったら切れる大腸癌も切らずに薬物療法を行う。遺伝性腫瘍の診断の重要性が増す一方で、診断を受けた患者さんの約3%が、職場や民間保険、がん治療の担当医などから差別を受けたと報告されている。本邦では2023年にゲノム医療法が成立し、遺伝差別防止への第一歩が踏み出されたが、罰則は未だない。本日は、日頃多数記載する民間会社への「診断書」が差別の引き金となり得ることをお話しし、患者が安心して受けられるゲノム医療のためにできることを考えたい。