- 日時
- 2020年01月23日(木)17:30~19:00
- テーマ
- ストレス・痛みの数値化と臨床への応用
(呉医療センター/山口大学大学院/呉工業高等専門学校発信)
司会 呉医療センター 総合診療科(兼)臨床研究部 中村 浩士
かつては不可能と言われていた『情動や痛みの可視化』の命題に対して、現代の工学系センシング技術やAI・スマートホン通信技術を駆使し、医学や医療における“情動や痛み”を可視化出来る機器(IoT-ウェアラブルデバイス)を開発した。健常者における疼痛時のみならず、認知症や精神疾患患者、小児や高齢者といったコミュニケーション困難患者との“情動や痛みを介したコミュニケーション”も容易になるばかりでなく、病名診断や治療効果判定やさらには創薬にも生かせる可能性がある。本機器は、高齢者医療、救急外来、在宅医療、遠隔医療、緩和医療などの様々な臨床現場での観察研究が低コスト・侵襲性で簡単に実施できることからもヘルスケア分野だけでなく多様化社会にも親和性の高い利点がある。非常に低侵襲性の機器であるが“呼吸と循環”というふたつのクリティカルな生体情報を同時かつ公平性にリアルタイムで扱うことが出来る。従って、本機の社会実装には、個人情報や生命倫理、臨床治験法等の関連法案を遵守することはもちろんのこと、医療安全の観点からも“異常”を検知した場合の警告、警報などの即時フィードバックシステムの社会構築も必要となる。本機を用いて病院・職場や学域を超えた多職種連携で大学や学会主導による社会実装とバリデーションを行い、情動センサの開発者である総合診療医(プライマリ・ケア医)を基幹にした多職種連携とアカデミックな社会実装により新たな社会資源と地域雇用・ビジネスも創出できる可能性がある。
1.痛みの評価尺度と緩和ケア
呉医療センター 緩和ケア科 砂田 祥司
痛みの強さの評価ツールとして、信頼性・妥当性共に検証されているものは、NRS、VAS、VRSがある。医療者による評価方法は、STAS-Jがある。当院ではNRSを用いているが、患者自身が評価できない場合STAS-Jを用いている。臨床現場での取り組みについて紹介する。
2.LF/HFに代わる新しいストレス指標の提案
山口大学大学院 創成科学研究科 中島 翔太
現在、客観的かつ定量的なストレス評価には、交感神経の活性度を測るための心拍変動を用いたLF/HFから導出する手法が主流となっている。今回紹介する手法はLF/HFに比べ、交感神経活動を表す心拍変動と副交感神経活動を表す呼吸変動を直接評価することで高精度に短時間で計測できる。
3.AI基礎技術の解説と医療分野への利活用状況について
呉工業高等専門学校 平野 旭
研究・開発分野に限らず、「AI」は私達の生活の中に密接した言葉になりつつあるが、定義が曖昧かつ実体が見えないまま、「何でもできそう」な言葉として便利に利用されているのも実状である。AI基礎技術の解説と医療分野での利活用状況についてご紹介します。
4.ストレスと痛みのない健康社会の構築(Society5.0)
呉医療センター 総合診療科(兼)臨床研究部 中村 浩士
かつては不可能と言われていた『情動や痛みの可視化』の命題に対して、現代の工学系センシング技術やAI・スマートホン通信技術を駆使し“情動や痛み”を可視化出来る機器を開発した。多職種連携とアカデミックな社会実装により2025年に向けた新たなデジタル健康社会を創出できる可能性がある。がん関連疼痛のひとつとして幻肢痛(複合性局所疼痛症候群:CRPS)に対する鏡療法/VRケアへの地域の取り組みについても報告したい。